問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ?   作:白ウサギ@FGO

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第五話

 翌日になり、僕達は“フォレス・ガロ”のコミュニティの移住区を訪れる道中、昨日のカフェテラスで声をかけられた。

「あー!昨日のお客さん!もしや今から決闘ですか!?」

『お、鉤尻尾のねーちゃんか。そやそや今からお嬢達の討ち入りやで!』

 ウェイトレスの猫娘が近寄ってきて、僕達に一礼する。

「ボスからもエールを頼まれました!ウチのコミュニティも連中の悪行にはアッタマきてたところです!この二一〇五三八〇外門の自由区画・移住区画・舞台区画の全てでアイツらやりたい放題でしたもの!二度と不義理な真似が出来ないようにしてやってください!」

 ブンブンと両手を振り回しながら応援する猫娘。

 飛鳥は苦笑しながら強く頷く。

「ええ、そのつもりよ」

「おお!心強い御返事だ!」

 満面の笑みで返す猫娘。だがしかし、急に声を潜めてヒソヒソと呟く。

「実は皆さんにお話があります。“フォレス・ガロ”の連中、領地の舞台区画ではなく、居住区画でゲームを行うらしいんですよ」

「居住区画で、ですか?」

 答えたのは黒ウサギ。初めて聞く言葉に僕は首を傾げる。

「黒ウサギ。舞台区画ってなに?」

「ギフトゲームを行う為の専用区画でございます」

「しかも!傘下に置いているコミュニティや同士を全員ほっぽり出してですよ!」

「………それは確かにおかしな話ね」

 僕達は顔を見合わせ、首を捻る。

「でしょでしょ!?何のゲームかは知りませんが、とにかく気を付けてくださいね!」

 熱烈なエールを受け、僕達は“フォレス・ガロ”の居住区画を目指す。

「あ、皆さん!見えてきました………けど、」

 僕は一瞬、目を疑った。僕以外のメンバーも同様。

 それというのも、居住区が森のように豹変していたからだ。

 ツタの絡む門をさすり、鬱蒼と生い茂る木々を見上げて耀は呟く。

「………。ジャングル?」

「虎の住むコミュニティだしな。おかしくはないだろ」

「いや、おかしいです。“フォレス・ガロ”のコミュニティの本拠は普通の居住区だったはず………それにこの木々はまさか」

 ジンはそっと木々に手を伸ばす。

「やっぱり―――“鬼化”してる?いや、まさか」

「ジン君。ここに“契約書類(ギアスロール)”が貼ってあるわよ」

 飛鳥がそう言う。門柱に貼られた羊皮紙には今回のゲームの内容が記されていた。

 

『ギフトゲーム名“ハンティング”

 

 ・プレイヤー一覧 久藤 飛鳥

          春日部 耀

          神代朔夜

          ジン=ラッセル

 

 ・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパー

        の討伐

 ・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討

        伐可能。指定武具以外は“契約(ギアス)”によっ

        てガルド=ガスパーを傷つける事は不可

        能。

 ・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満

       たせなくなった場合。

 ・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。

 

  宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

               “フォレス・ガロ”印』

 

「ガルドの身をクリア条件に………指定武具で打倒!?」

「こ、これはまずいです!」

 ジンと黒ウサギが悲鳴のような声を上げる。

 何か不味いんだろうか。飛鳥も心配そうに問う。

「このゲーム八そんなに危険なの?」

「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はこのルールです。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、耀さんのギフトで傷つける事も、朔夜さんのギフトで攻撃する事も出来ない事になります………!」

「………どういうこと?」

「“恩恵(ギフト)”ではなく“契約(ギアス)”によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません!彼は自分の命をクリア条件に組み込む事で、御二人の力を克服したのです!」

「すみません、僕の落ち度でした。初めに“契約書類”を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに………!」

「敵は命がけで五分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白くていいけどな」

「気軽に言ってくれるね………条件は結構厳しいな。指定武具はガルドの近くにあるとして、ギフトがほとんど効かないのがなんとも………」

 そう言うと、十六夜以外が首を傾げている。

「ん?どうかした?」

「どうして指定武具がガルドの近くにあるって分かるの?」

「簡単だよ。自分を倒せる武器を近くに置いておけば、取られそうになっても邪魔できるし、取って油断したところを攻撃する事も可能だろうからね」

 そう言うと驚いた顔をする、四人。

「朔夜って、頭よかったんだね」

「まあ、それくらい考えてないとすぐに死にかねないからね。それよりも速く行こう?」

 そう言った後、十六夜がジンに何か言い、僕達四人は門をくぐった。

 

          *

 

 門の開閉がゲームの合図だったのか、生い茂る森が門を絡めるように退路を塞ぐ。

 緊張した面持ちのジンと飛鳥に助言する。

「大丈夫だよ。周りに生き物の気配はまったくしないから」

「貴方、生き物の気配が分かるの?」

「うん。これでも森の中で暮らしてたからね」

 そう言うと、ジンがこちらに訪ねてくる。

「詳しい位置は分かりますか?」

「さすがにそれは無理。たぶん、何処かの家にでも隠れてるんじゃない?」

「ではまず外から探しましょう」

 そう言って、僕達は森を散策し始める。

「彼にしてみれば一世一代の大勝負だもの。温存していた隠し玉の一つや二つあってもおかしくないということかしら」

「ええ。彼の戦歴は事実上、不戦敗も同じ。明かさずにいた強力なギフトを持っていても不思議ではありません。耀さんはガルドを見つけても警戒は怠らないでください」

 散策する飛鳥とジンとは別に、耀は一番高い樹に乗って警戒している。

 僕もシムルグに頼んで探してもらっている。

「………駄目ね。全然見つからないわ。春日部さん、朔夜さんガルドは見つかった?」

「見つけた」

 そう言った耀を飛鳥とジンは目を向ける。

 ちょうどシムルグも帰って来た。

「本拠の中にいる。影が見えただけだけど、目で確認した」

 そう言った耀の目は普段と違い、金の瞳になっていた。

「そういえば鷹の友達もいるのね。けど春日部さんが突然異世界に呼び出されて、友達はみんな悲しんでるんじゃない?」

「そ、それを言われると………少し辛い」

 しゅん、と元気をなくす耀。

 それを見て、飛鳥は耀の肩を叩き、僕達は警戒しながら本拠の館へ向かい始めた。侵入を阻むように道を侵食している木々はまるで命じられたかのように絡み合っている。

「邪魔だな………燃やすか」

「え?」

「ううん。何でもない」

 そんな話をしていると、どうやら館に着いたようだ。

「見て。館まで呑みこまれてるわよ」

「ガルドは二階に居た。入っても大丈夫」

 中に入ると内装は酷いことになっていた。

「この奇妙な森の舞台は………本当に彼が作ったものなの?」

「………わかりません。“主催者(ホスト)”側の人間はガルドだけに縛られていますが、舞台を作るのは代理を頼めますから」

「代理を頼むにしても、罠の一つも無かったわよ?」

 その疑問に耀が答える。

「森は虎のテリトリー。有利な舞台を用意したのは奇襲のため………でもなかった。それが理由なら本拠に隠れる意味がない。ううん、そもそも本拠を破壊する必要なんてない」

 やはり、何かあるのだろうか。そう考えながら、僕達は二階に行く。

「二階に上がるけど、ジンと飛鳥はここにいて」

「あら、どうしてかしら?私達もギフトを持っているから、足手まといにはならないと思うけど」

「違う。上で何が起こるか分からない以上、二手に分かれる方がいい。二人にはこの退路を守ってほしいんだ」

 そう言ったが、飛鳥達は不満そうだったが、退路を守る重要性を彼女らは分かっているようで、階下で待っていてくれる。

 耀と僕は階段を物音たてずにゆっくり進む。階段を上った先にあった扉を開け、中に入る。

 中には、

「ギ………」

 

「―――――………GEEEEEYAAAAAaaaa!!!!」

 

 言葉を失った虎の怪物が、白銀の十字剣を背に守って立ち塞がった。

 

          *

 

 目にも留まらぬ突進を僕達は咄嗟に左右に避ける。

「飛鳥、ジン、逃げろ!」

 階段を守っていたジンと飛鳥にそう言うと、飛鳥はジンの襟を掴んで逃げる。

 標的を飛鳥達に定めたガルドも階段から飛び降りて立ち塞がる。

「っ、スカーレット」

 そう言うと、手の中に鞭が表れ、ガルドの足を止めさせる。

 そうすると、ガルドはこちらを先に倒すべきだと思ったのかこちらに向き、鞭を振りほどいて襲いかかってきた。

 それを避けると、ガルドは僕の方ではなく、耀の方に向かっていく。

「っ………!」

 耀の方を向くと、耀は剣を取るのに夢中でガルドに気づいていない。

「危ない!!」

「え?」

 そう言って、剣を取った耀を突き飛ばす。

 耀は助けられたけど、直撃したせいで暫く動けなさそうだ。

 何とか意識を保ち、自分に治癒の精霊魔術を使う。

 これをゲーム中に治すのは厳しいだろう。

 そんなことを考えていると、耀が僕をつかんで外に出る。

 少し走り、飛鳥達のところに着く。

「誰?」

「………私」

 そう言って茂みから出てきた血だらけの僕達を見て、悲鳴のような声を上げる。

「さ、朔夜君と春日部さん!大丈夫なの!?」

「私は大丈夫。でも、朔夜が………」

「一応、休んでいれば大丈夫………でも、このゲーム中はほとんど動けないと思う」

 そう言うと、飛鳥は立ち上がり、剣を取って僕達に告げる。

「今からあの虎を退治してくるわ。ジン君達はここで待っていて」

「あ、飛鳥さん!?駄目です、一人じゃ無理です!」

「大丈夫よ。どんなに強くても知性のない獣に負けないわ。―――それに、悔しいじゃない?朔夜君達は、私達じゃ勝てないと思って二人だけで戦ったのよ?一〇分で決着をつけるわ」

 そう言って飛鳥は、館に向かっていった。

 

          *

 

 飛鳥が館に向かって少したった後、ゲーム終了を告げるように、木々は一斉に霧散した。

 少しして、黒ウサギと十六夜が走ってくる。

「黒ウサギ!こっちだ!」

 ジンがそう言うと、黒ウサギは僕を見て息を呑む。

「もう血は止まってるから大丈夫。血だらけだけど、治癒の精霊魔術もかけてるから」

 僕がそう言って、黒ウサギに背中を見せると安心したような顔になる。

「よかっのです。ですが、血が足りなくなっていると思うので、工房で治療しましょう」

「うん。おねがい」

 そう言って黒ウサギは僕を抱え、いったん本拠に戻るのだった。

 

          *

 

 その後、工房で治療を受けて僕はベッドに寝かされている。

 精霊魔術でゲーム中ずっと治していたからか、血が少し足りないだけですんだ。

 動くのも問題なさそうだったけどレスティア達が、

『少しの間でいいからじっとしていて』

 と言われてしまった。

 暫くして飛鳥達が帰って来て、ゲーム後何があったか教えてくれた。

 ジン達は他のコミュニティに名と旗印を返したそうだ。

 話が終わり、飛鳥がこちらに聞いてくる。

「傷は大丈夫なの?」

「うん。少し血が足りないだけだで、問題ないよ」

「そう。よかったわ」

 そんな話をしていると、

「さっきはゴメン」

 と、耀が言ってくる。

「何が?」

「さっきのゲーム、私のせいで朔夜は怪我をした。私がちゃんと気を付けていれ

ば―――」

「えい」

 ビシッ

 何か言おうとした耀の声を遮って頭にチョップする。

「いたい………」

「普通そこは“ありがとう”じゃないのかな?仲間なんだからさ」

「うん………ありがとう」

 うん。それでいい。

 そんな話をしていると黒ウサギがこちらにやって来て、何があったのか説明し、“サウザンドアイズ”に行くことになった。ジンはここに残るそうだ。

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