問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ?   作:白ウサギ@FGO

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第六話

“サウザンドアイズ”の門前に着いた僕達を迎えたのは例の無愛想な女性店員だった。

「お待ちしておりました。中でオーナーとルイオス様がお待ちです」

「黒ウサギ達が来る事は承知の上、ということですか?あれだけの無礼を働いておきながらよくも『お待ちしておりました』なんて言えたものデス」

「………事の詳細は聞き及んでおりません。中でルイオス様からお聞きください」

 定例文にも似た言葉に憤慨しそうになる黒ウサギ。

 けどまあ、店員の彼女に文句を言っても仕方がないことだ。

 店内に入り、中庭を抜けて離れの家屋に僕達は向かう。

 中でこちらを迎えた男―――ルイオスは黒ウサギを見て盛大に歓声を上げた。

「うわぉ、ウサギじゃん!うわー実物初めて見た!噂には聞いていたけど、本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった!つーかミニスカにガーターソックスって随分エロいな!ねー君、うちのコミュニティに来いよ。三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」

 ルイオスはそう言って、黒ウサギの全身をなめまわすように見てはしゃぐ。

 なんなの?“サウザンドアイズ”って偉い人みんな変態なの?

 黒ウサギはさっと脚を両手で隠すと、飛鳥は黒ウサギの壁になるよう前に出る。

「これはまた………分かりやすい外道ね。先に断っておくけど、この美脚は私達のものよ」

「そうですそうです!黒ウサギの脚は、って違いますよ飛鳥さん!!」

「そうだぜお嬢様。この足は既に俺のものだ」

「そうですそうですこの脚はもう黙らっしゃい!!!」

「違うよ、十六夜。黒ウサギの脚は誰のものでもなく、皆の物だ」

「黒ウサギの物です!!」

「よかろう、ならば言い値で」

「売・り・ま・せ・ん!あーもう、まじめなお話をしに来たのですからいい加減にして下さい!黒ウサギも本気で怒りますよ!!」

「馬鹿だな。怒らせてんだよ。」

 スパァーン!とハリセン一閃。

 僕達のやり取りが終わるまで唖然と見つめ、唐突に笑いだした。

「あっはははははははは!え、何?“ノーネーム”っていう芸人コミュニティなの君ら。もしそうならまとめて“ペルセウス”に来いってマジで。道楽には好きなだけお金をかけるのが性分だからね。生涯面倒見るよ? 勿論、その美脚は僕のベッドで毎夜毎晩好きなだけ開かせてもらうけど」

「お断りでございます。黒ウサギは礼節も知らぬ殿方に肌を見せるつもりはありません」

 黒ウサギが嫌悪感を吐き捨てるように言うと、隣で十六夜がからかう。

「へえ? 俺はてっきり見せる為に着てるのかと思ったが?」

「ち、違いますよ! これは白夜叉様が開催するゲームの審判をさせてもらう時、この格好を常備すれば賃金を三割増しにすると言われて嫌々……」

「ふぅん?嫌々そんな服を着せられてたのか。………おい白夜叉」

「なんだ小僧」

 キッと白夜叉を睨む十六夜。両者は凄んで睨み合うと、同時に右手を掲げ、

「超グッジョブ」

「うむ」

 ビシッ! と親指を立てて意志疎通する二人。話が進まず、ガクリと項垂れた黒ウサギを見かねたのか、先ほどの女性店員が家屋の外から助け船を出す。

「あの………御来客の方も増えましたので、よろしければ店内の客間に移りましょうか?みれば割れた食器の破片も散らかってますし」

「そ、そうですね」

 一度仕切り直す事になった僕達は、“サウザンドアイズ”の客室に向かうのだった。

 

          *

 

 座敷に招かれた僕達は“サウザンドアイズ”の幹部と向かい合う形で対面に座る。

 長机の対岸に座るルイオスは舐め回すような視線で黒ウサギを見続けていた。

「―――“ペルセウス”が私達に対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけましたでしょうか?」

「う、うむ。“ペルセウス”の所有物・ヴァンパイアが身勝手に“ノーネーム”の敷地に踏み込んで荒らした事。それらを捕獲する際における数々の暴挙と暴言。確かに受け取った。謝罪を望むのであれば後日」

「結構です。あれだけの暴挙と無礼の数々、我々の怒りはそれだけでは済みません。“ペルセウス”に受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと。“サウザンドアイズ”にはその仲介をお願いしたくて参りました。もしも“ペルセウス”が拒むようであれば“主催者権限(ホストマスター)”の名の下に」

「いやだ」

 唐突にルイオスは言った。

「………はい?」

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れ回ったって証拠があるの?」

「それなら彼女の石化を解いてもらえば」

「駄目だね。アイツは一度逃げ出したんだ。出荷するまで石化は解けない。それに口裏を合わせないとも限らないじゃないか。そうだろ? 元お仲間さん?」

 嫌みったらしく笑うルイオス。

 けど筋は通っている。

「そもそも、あの吸血鬼が逃げ出した原因はお前達だろ?実は盗んだんじゃないの?」

「な、何を言い出すのですかッ!そんな証拠が一体何処に」

「黒ウサギ、これ以上は無駄だよ」

 そう言うと黒ウサギはぐっと黙り込む。

 白夜叉に迷惑がかかることに気づいたのだろう。

「じゃ、さっさと帰ってあの吸血鬼を外に売り払うか。愛想のない女って嫌いなんだよね、僕。特にアイツは身体も殆ほとんどガキだしねえ―――だけどほら、あれも見た目は可愛いから。その手の愛好家には堪たまらないだろ?気の強い女を裸体のまま鎖で繋いで組み伏せ啼かす、ってのが好きな奴もいるし? 太陽の光っていう天然の牢獄の下、永遠に玩具にされる美女ってのもエロくない?」

 そう言われ、黒ウサギは案の定ウサ耳を逆立てて叫んだ。

「あ、貴方という人は………!」

「しっかし可哀想な奴だねーアイツも。箱庭から売り払われるだけじゃなく、恥知らずな仲間の所為でギフトまでも魔王に譲り渡す事になっちゃんたんだもの」

「………なんだって?」

 僕がそう言うと、ルイオスがこちらを見て言う。

「報われない奴だよ。“恩恵(ギフト)”はこの世界で生きていくのに必要不可欠な生命線。魂の一部だ。それを馬鹿で無能な仲間の無茶を止めるために捨てて、ようやく手に入れた自由も仮初めのもの。他人の所有物っていう極め付けの屈辱に耐えてまで駆け付けたってのに、その仲間はあっさりと自分を見捨てやがる!目を覚ましたこの女は一体どんな気分になるだろうね?」

「………え、な」

 黒ウサギは絶句し、見る見るうちに蒼白に変わっていった。

 ルイオスはにこやかに笑うと、蒼白な黒ウサギにスッと右手を差し出す。

「ねえ、黒ウサギさん。このまま彼女を見捨てて帰ったら、コミュニティの同士として義が立たないんじゃないか?」

「………?どういうことです?」

「取引をしよう。吸血鬼を“ノーネーム”に戻してやる。代わりに、僕は君が欲しい。君は生涯、僕に隷属するんだ」

「なっ、」

「一種の一目惚れって奴?それに“箱庭の貴族”という箔も惜しいし。そっちの君でもいいよ?」

 そう言って、こちらを見てくるルイオス。

 飛鳥は長机を叩いて怒鳴り声を上げる。

「外道とは思っていたけど、此処までとは思わなかったわ!もう行きましょう!こんな奴の話を聞く義理なんて無いわ!」

「待って、飛鳥」

「ま、待ってください飛鳥さん!」

 そう言って座敷を出ようとする飛鳥。

 だが、黒ウサギは動かない。

 はっきり言って、僕自身も悩んでいた。

 それに気づいたルイオスは厭らしい笑みで捲まくし立てる。

「ほらほら、君は“月の兎”だろ?仲間の為、煉獄の炎に焼かれるのが本望だろ?君達にとって自己犠牲は本能だもんなあ?」

「………っ」

「ねえ、どうしたの?ウサギは義理とか人情とかそういうのが好きなんだろ?安っぽい命を安っぽい自己犠牲ヨロシクで帝釈天に売り込んだんだろ!?箱庭に招かれた理由が献身なら、種の本能に従って安い喧嘩を安く買っちまうのが筋だよな!?ホラどうなんだよ黒ウサギ

「黙りなさい!」 

 ガチン! とルイオスの下顎が閉じ、困惑する。見かねた飛鳥の力が原因だ。

「っ………!?………!!?」

「貴方は不快だわ、そのまま地に頭を伏せていなさい!」

 混乱するように口を押さえたルイオスは体を前のめりに歪める。

 しかしすぐに体を起こすと、何が起こったのかを理解した彼は強引に言葉を紡いだ。

「おい、おんな。そんなのが、つうじるのは―――格下だけだ、馬鹿が!!」

 そう言ってルイオスは懐からギフトカードを取り出すと、光と共に現れた鎌を飛鳥に向かって振り下ろす。

 ギリギリのところで、シムルグを槍に変えて受け止める。

「な!」

「いったん落ち着いて。話し合いで解決するんでしょ?あとさっきの話、僕でも問題ないかな?少し考える時間が欲しいんだけど」

 そう僕が言うと、黒ウサギが驚いた表情をする。

「ああ。僕的にも君でよかったし。そうだな………一週間だけ待ってあげる」

 にこやかに笑うルイオス。

「それじゃあみんな、行くよ」

 そう言って、さっさと屋敷を出ていった。

 

          *

 

“サウザンドアイズ”支店を後にして噴水広場を歩いている僕に黒ウサギは何か言おうとしてくる。

「あの、朔夜さ

「十中八九、あいつの物になるつもりだったんじゃないの?」

「っ………」

 そう言うと、図星だったようで顔をうつむかせる。

「やっぱりそうだと思ったよ」

「ですが………」

「僕なら、一応男だからそこまで酷いことにはならないと思うしね。それに一応一週間は売られるまでに時間があるわけだし、打開策の一つや二つ見つかるでしょ」

 そう言うと、驚いた顔をする。

「そこまで考えていたのですか………」

「うん。当たり前でしょ?」

 黒ウサギはそんなことも考えていなかったようだ。

 そんな会話をしていると、飛鳥達がやって来て、色々と問い詰められた。

 ただし一人、十六夜は僕の考えを察していたようだったが。

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