OP『DREAMS』(歌手『ROMANTIC MODE』
ED『非実在青少年』 (歌手『いとうかなこ』
「さて……と、」
とりあえず泣き止んだシャルをだっこした俺は、一先ずここを出ることを優先することにした。
因みにどういうわけか、あのあとベルフェゴールは待機状態になってしまい、現在シャルの髪に白い飾りとしてくっ付いてる。
「とりあえず、ここからどうやって出ようか?」
「え、来た道を真っ直ぐ戻れば良いんじゃないの?」
シャルは不思議そうに言うが、俺個人としては勘弁してほしかった。
というのも、通ってきた道には屑鉄と肉塊となったISと、恐らくベルフェゴールの餌食となった少女達が入ってる檻の目の前を通らなければならないのだ。そんな状況は可能な限り避けたい。
「(エネルギーはギリギリ……か)……仕方ない、シャル、少し俺にピッタリとくっ付いててくれ」
「?」
シャルは不思議そうな顔で言われた通りにすると、俺は背中のディバイダーを右手に持つ。
「照射じゃ崩れると大変だから……な!!」
俺は砲口を展開すると、それをカッター状に形成して天井へ発射する。当然天井には一直線に貫通し、大きな傷が入る。
「そりゃ!!もう一丁!!」
確認すると同時に、俺は少しだけ移動して、さっきつけた傷に垂直になるように二本の傷を入れる。
「これで、お終いっと!!」
最後にもう一本発射すると、それはまさしく四角形を象り、天井板が支えを無くして落ちてきた。
「…………凄い」
「といってもエネルギーが限界なんだけどな、何せさっきの戦闘でSEごと持ってかれたし」
軽口を叩きつつ、シャルをお姫様だっこして開けた穴から脱出する。と、その時だった。
『クーく~ん!!』
今、一番聞きたくない声を聞いた気がした。
「……ねぇクロト兄?」
「聞いたら敗けだ、あれは幻聴だ」
「それって認めてるような物だよ」
シャルの鋭い指摘にため息一つ付くと、声のした方向を振り向く。
そこにはつい数時間前に俺が乗っていた、カルロスさんの付き人の車が、此方に向かって走ってきていた。ついでにボンネットには、見たことのあるウサミミを付けた変態の姿も確認できる。
「お兄ちゃん……あれって」
「……篠ノ之束、ISの産みの親で、天災で変態な残念美女だ」
「……もう私は驚かないよ」
シャルは何処か諦めたように言うが、それは全くもって同感だった。エネルギーも残り少ない為、仕方なくウサギの方へ進み、着陸すると共に機体を解除した。
「いや~やっぱりクーくんがあの『月下銃士』のパイロットだったんだね~!!」
「もう、隠すのも面倒なんで、但し機体スペックは見せませんよ」
途端にウサギがブーブー言いながら覗き込むように近づいてきて、ふむふむとこっちを観察してくる。ていうか無駄に存在感ある爆弾の谷間が見えそうなんだが…………。しかしそれにムッとしたのか、シャルの表情が何処か怖い。
「クロト兄、明日のご飯抜きね」
「シャルさん、一応俺命の恩人なんだけど」
「ドスケベなお兄ちゃんに食べさせるご飯はありません」
「横暴だ!!断固、抗議する!!」
そんなコントにカルロスさんはにこりと笑って見ている。どこをどう見ても我が子を見守る親のそれの表情だった。
「……たく、それでこれからどうするんだ?」
俺はため息と共に父さんにその事を聞いた。今回は事なきを得た……のかは分からないけど……から良いものの、何も手を打たなければおんなじ事が繰り返されかねない。
「まずはあの女を捕まえる事にするかな。ここにはどうやら、人体実験のデータやら被験者もいる、使えるカードはこれで充分だ」
「そりゃ、確かにあそこには…………まぁ、居たけどさ、それでどう繋げるつもり?」
IS部隊の奴等は脅した奴を除いて全て肉塊になってるし、研究員達には恐らく既に逃げられてる可能性が高い。
「ま、そこは色々と……ね?」
明らかに黒い笑いで父さんはそう言った。うん、聞かない方がいいかもしれないね。
「まぁ、その後は……何処か田舎で人知れずゆっくりと暮らすのもアリだが、まぁその点はクロトくんに任せるよ」
「おいおい、一応父さんが家長なんだから、父さんが決めてくれよ」
「いや、僕は保護者にはなるけど基本的には放任主義だからね。ちゃんとやることをやってさえいれば後は何も言わないよ」
無責任なと思うも、母さんもそういえばそういった感じだった。結婚はしてなかったとはいえ、愛し合ったものは似るものなのだろうか?
「ま、とりあえず俺が『ルナーク』のパイロットだって事はバレてそうだからな……」
「その点ならモーマンタイだよ!!この天才束さんがハッキングして映像が外部に漏れないようにセーフティしたからね!!」
妙にご都合主義な塊のウサギはそう宣う。ていうか一々跳び跳ねたりしてアピールするな、目のやり場に困る。
「お兄ちゃん、一週間にしようか?」
「断じて俺は疚しい気持ちはないぞ、シャル」
自然に心を読んでくる妹に驚きながらも、ポーカーフェイスで突っ込む。
「どっちにしろ、今のままじゃ第二、第三のシャルが出てきかねないからな……可能なら何処かに所属してるって事にするのが一番なんだけど」
「僕のデュノア社なら可能だろうけど、結局はあの本妻を何とかしないことには…………」
「あと、出来るだけバレないようにとなると……」
ふむ…………俺とシャル、父さんはう~んと唸りこむ。実際こんな条件を簡単に受け入れられるほどの起業など聞いたことがない。
「はいはーい!!この束さんの頭にアイデアがナウプリーディング!!」
「……ダメもとで聞くけど、ちゃんとしたアイデアなんだよな?」
「もちろん!!というのも…………」
数週間後、俺達三人はまさかウサギの作戦がうまく行くとは思わず、少し唖然としていた。
「しかし、流石は篠ノ之束というべきか……突拍子のないように見えて、その実本質を見てるというかなんというか……」
「「アハハ……」」
ウサギの作戦、それは簡単に言えば、企業合併というなんともシンプルかつビックリな手段だった。
簡単に言うと、まずはウサギが独自のIS開発企業『ラビット社』なるものを設立、そして社長である父さんと束さんが秘密裏に(正確にはデュノア社の男性重役社員と古くから支えてる人間にだけ、重要極秘案件として伝えていたそうだが)それを纏める。
そして纏めた次の日には社長が社員一同を集めてそれを発表し、さらにその際の人事で現妻及びその傘下の派閥女性陣を一気にリストラしたのだ。
当然ながら妻及び傘下の女性陣は一斉蜂起、抗議活動をしようとしたが、数少ない束さんに対して好意的なFBIの一人が研究所に関して捕縛、逮捕され、彼女達は現在取り調べの真っ最中、恐らく釈放される事は無いだろうという見解だそうだ。
これに伴い父さんは現妻を元妻とし、はれて俺達二人を養子として迎え入れたのだった。
「しかし、後は彼らがだが…………」
社長椅子に座りながら、父さんはため息混じりに空を見る。
「大丈夫だって父さん、ちゃんと話はしたんでしょ?」
「そうだよ。お父さんのこと、ちゃんと分かってくれると思うよ?」
「……だといいがな……」
とその時だった。ノック音が三回鳴り、父さんは慌ててネクタイを締め直す。
「どうぞ」
「…………失礼します」
ドアが開き、入ってきたのは十数人ばかりの大人達だった。それぞれが中々に引き締まった顔で、まるで歴戦の猛者という風格がある。
「…………来てくれたか、ジルダさん、皆」
「…………ええ」
ジルダさん……父さんがまだ社長に就任して間もない頃から、事務として、また一技術者として、父さんを支えてきた一人だった。そして、元妻に一番最初に邪魔だと会社から追い出された一人でもあった。
他の人たちも、父さんを最初期から支え、デュノア社を盛り上げ、そして元妻達の一派に追い出された優秀な技術者達だ。
「我々は……最初は乗り気でなかった。あの女達に再び会うことなんて、例え社長、あなたの言葉でも断るつもりだった」
「そう……だろうな。人事をあの女達に任せた、私にも落ち度はあったからな。信じられないのも無理はないだろう」
「ですが、貴方の息子さんや娘さん達の言葉を、貴方の本心を知ったからこそ、私は、いえ私達はここに戻ってきました」
そういってジルダさんたちは、自分達の鞄から一枚の紙を取りだし、それを社長である父さんに渡す。
それは、まさしく彼らの血と、努力と、そして社長達に対する思いを形にした、次期第三世代型ISの設計図だった。
「我々は、貴方のもとをついていきます。今度は、定年過ぎても、この会社に残るつもりですよ」
「そうか…………」
そういうと、父さんは椅子から立ち上がり、彼らの前に出た。
「これからは忙しくなるぞ?」
「覚悟のうえです。社長」
デュノア社という会社は終わった。しかし、ただでは終わらなかった。
新たな結束、クロトやシャル、さらにはIS生産部門顧問となった束の参戦により、フランスのIS技術は飛躍的に上昇した。
『フリーデン』そう新しく名付けられたその会社から発表された機体は、後に世界大会、モンドグロッソの優勝をすることになるのは、いまはまだ、遠い話。