Episode9 若社長!!
「さて、これから作る第三世代型ISの検討会に入りたいと思います」
日曜日、一応フリーデンの専属パイロット(秘密裏だが)兼技術部の一人となった俺は、ジルダさん含め多数の技術者と協議することとなった。
「まずテーマですが、重要なのは大きく分けると二つです」
「二つ?どういうことですか?」
ジルダさんが疑問に思って聞いてくる。回りも同様に首を傾げたり、他の人と喋ったりと少なからず動揺しているようだ。
「まず一つ目、試作機を作るにして、いずれはそれを量産化するわけなので、可能な限り扱いやすく、尚且つうちのトップ商品『ラファール・リヴァイブ』のような動きが可能であること」
これは言わずもがな、ISのコア数には限度がある。うちにはコアの開発者であるウサギがいるが、彼女はおそらく追加でコアは造らないだろう。
そうなると、第三世代量産機が主流になったときに、第二世代のうちの機体は真っ先に売れなくなる。つまりは会社がトブ可能性だってあるのだ。
そうならないためにも、『ラファール・リヴァイブ』を乗ってる人間に、それと同じ感覚で動かせ、尚且つ他の第三世代型に負けないスペックが必要になる。
「二つ目、これは第三世代型の特徴になるともいえる特殊武装だ」
「特殊武装…………最近で聞くところの、イギリスの『BT兵器』のようなものですか?」
「そうです。それを量産でも使える、低コストで効果的なものが必要になります」
その言葉に、開発陣は一斉に黙ってしまう。そりゃそうだ。そんな画期的なシステムを簡単に考えられたら苦労なんてしない。
「とりあえず、今回は例として自分が考えたものをあげたいと思います」
「よ、四代目が自らですか!?」
「なんだよ、その四代目って。まぁともかくこれだ」
俺はホロディスプレイで企画書をそれぞれの目の前にオープンする。
「機体名は……あー、便宜上『アタッカー』とさせてもらいます。様々なパッケージをその場その場で換装し、近接、中距離、遠距離での戦闘を瞬時に入れ換えることをコンセプトにしました」
思いっきり『ストライク』ですね、うん。ていうか、ラファール系に近いっていったらこれしか思い付かないし。
「なるほど……ですがパッケージが無いと随分とシンプルですな」
「ええ、ですが今現在考えてるのは、武装をシンプルにして高機動戦を中心としたもの、大型の剣を一本とブーメランなどを搭載したもの、高火力レーザー砲とミサイルなどを装備するもの、その三つを構想しているつもりです。」
俺の言葉に社員達はそれぞれがなるほど、と称賛の言葉をあげている。が、
「パッケージについては構わないでしょうが、そのパッケージだけでは使うに不十分なのでは?」
当然ジルダさんが疑問点をあげてくる。父さんも言ってたけど、この人、すごい有能すぎる。
「そこは追々、新しいパッケージを皆で考えれば良いんでは無いでしょうか?ここには優秀な技術者が沢山居るんですし、技術力こそが、自分達の、フリーデン社の持ち味だと思いますし」
「なるほど…………そういうことなら、私からは何もありませんね」
熟考したのち、彼はとりあえず認めてくれた。
「勿論、この機体は私が、まだ学生の私が考えたものです。私より長く技術を磨いてきた皆さんなら、もっと良い機体を考えてくれると、私は考えてます」
そう締め括ったところで、会議はお開きとなった。そのあと暫く賛辞の雨霰を頂いて、俺は少し形見が狭い思いをしたのだった。
午後になって、俺はウサギに呼び出されて研究室まで足を運んでいた。
普段なら死んでも近付かないだろうが、今回ばかりは仕方ないと割りきってドアの前に立つ。
「ウサギ、入るぞ」
「え、クロト兄!?ちょっとま」
開けた途端、中からシャルの声が聞こえたと思って入ってみると、そこには下の下着以外は生まれたままの美少女がそこに…………って、
「…………」
「……………………(汗」
「キャァァァァァァ!?」
当然の叫び声と共に、彼女の投げたスパナの直撃を受け、俺は暫く意識を宙へと飛び立たせるのだった。
「(…………白かったな……)」
何がとかは突っ込むべからず、下手な興味は身を滅ぼすからね。これ絶対。
「もう!!なんでお兄ちゃんがこんなところにくるのさ!!」
十分位経って漸く目を覚ました俺は、目の前の修羅に正座させられていた。ていうかここフランスだよね?なんで正座?
「仕方ないだろ。今日はウサギに呼ばれてたんだからさ」
「だからってあのタイミングで来る!!ていうか、ちゃんとノックぐらいしてよ!!」
「いや、ウサギの研究室だからノックなんて要らないと思いまして」
「なんでさ!?」
シャルが某正義の味方みたいな事を言ってるが、気にしたら負けだ。
「それで、問題のウサギは何処だ?」
「こっこだよ~!!」
突然魔王の声が聞こえたかと思うと、背中にどういうわけか不思議な感触が現れる。うん、シャルさん目が怖いよ、顔が黒いよ(意味深)
「……おいウサギ、真面目にやるつもりないなら俺とシャルは帰らせて貰うが?」
「にゃはは~いや~シャルるんの顔が面白いからね~ついつい弄り……遊びたくなっちゃうんだよね~」
「今弄るって言いかけたよ!!完璧確信犯だよ!!」
シャルが憤慨したままに言ってくる。うん、ここは賢者になって何も言わぬが吉、か。
「まぁとりあえず離れるとして~、お久だね~クーくん」
「俺は出来ることなら関わりたくないんだけどな」
恨みがましくそういうと、ウサギはまたまた~とかなんとか言ってハイテンションだ。
「ハァ…………で、頼んでたシャルの検査結果はどうだったんですか?」
俺がそういうと、ウサギは珍しく真剣な顔になる。
「うん、結果から言うと、あの『ベルフェゴール』とかいう機体からのシャルるんの副作用はなかった。細胞、遺伝子にもね」
「本当か?Nシステムの影響が何もなかったのか?」
「うん、束さんが自ら調べてみたけど、そういう反応はなかったよ。…………脳波以外は」
「脳波?」
あまりに不思議な言葉に、俺は思わずそう聞き返す。
「うん、普通に調べたら何の異常も無いんだけどね、なんていうか……嫉妬?そういったマイナスの感情になると一定の感脳波を発してる」
「感脳波って、一卵性双生児が互いに考えてることが分かるみたいなもんか?」
「簡単な例だとそれだね。けど、シャルるんの場合はその範囲が大きいんだ」
ウサギの言葉に、俺はもしかしたらと思う。
「シャルるんの感脳波は、さっきクーくんがあげたそれの数倍、いや数十倍の影響力がある。良い意味でも悪い意味でもね」
「……具体的には」
「そうだね……死んだ人間の心をダイレクトに受け取ってしまう程に強力だね」
その事を聞いた俺は真っ先に頭を抱えた。まさしくそれは『ティファ・アディール』並のニュータイプ能力だ。それを持ってるということはつまり、
「…………」
「…………」
「えっと、二人とも、いったいどういうこと?」
シャルは分からないように聞いてくる。
「……最悪、この前みたいな誘拐が起こりかねないってことだよ」
「え?」
「クーくんの言う通り、知られれば今度は色々な人間が狙ってきてもおかしくないんだよ」
俺達二人の言葉に、シャルは驚いて口をパクパクしてる。
「まぁ、俺がいるうちはそんなことさせないけどな。とりあえずは安心しとけ」
「うん…………」
シャルにそうは言ったものの、俺は見えない敵を思って緊張するのだった。