IS 月は出ているか?   作:ドロイデン

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Episode19 オータム

「……で、結局のところ教えてもらおうかウサギィ?」

 

「いや怖い、顔が物凄く怖いよクーくん……」

 

 あの後、数時間以上にも及ぶ取り調べを終えて会社に戻ってきた俺は、少しばかりウサギとO☆HA☆NA☆SHIをしていた。

 

「いったいどこがどうしてどうなったら、元だか何だか分からねぇけど、亡国機業の幹部を部下にしてるんですか?しかも俺らにそのことを何も言ってなかったですよね?」

 

「アハハ……言わなきゃダメ?」

 

「……シャル、リミッター全解除しても良いぞ」

 

「え?クロト兄良いの?ホントに?」

 

「ちょ、ちょっと!!それはマズイって!!私の体が真っ二つどころか肉塊になっちゃうよ!!」

 

 ウサギは大慌てで縋り付いてくる。

 

「え~、束さん、折角ボクと楽しめると思ったのにな~」

 

「シャルちゃん目が座ってるから!!ていうか一人称が変わってるよね!?」

 

「束さ~ん、一緒に遊ぼうよ~!!ボクもベルフェも疼いて疼いて……」

 

「イーヤー!!私がシャルちゃんに頂かれちゃうぅ!!クーくんヘルプ!!ヘルプゥ!!」

 

 シャルの顔を見たら、目からハイライトが消え、顔色は真っ黒、しかも怪しい笑みをしていて……

 

「ヒィ!!」

 

 俺は溜まらずウサギを引き剥がしてシャルに向かって投げ飛ばす。

 

「イーヤー!!なんで投げちゃうのクーくん!!」

 

「大丈夫だウサギ……後で墓穴ぐらいは掘ってやる」

 

「私死ぬこと前提!?ていうか逃げないでよ!!」

 

 俺は何も聞こえない。そう思って俺はウサギの研究室から逃げ出した。

 

 その日、哀れな一人の研究者の悲鳴と一人の病んだ美少女の喜声と、そしてとても派手な爆発音がフリーデン地下に響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

「…………ということがありまして、こっちに来た次第です」

 

「そ、それはヤベェな…………」

 

「ホントね……」

 

 地下から一変、社員寮らしき一画へ逃げ込んだ俺は二人の居る部屋へと上がっていた。

 

 二人は今さっきの悲劇を聞いて顔を引き攣らせているものの、その表情はどこか馴れたような雰囲気だった。

 

「しかしシャルロットだっけ?あの嬢ちゃん?なんか見た目の割にスゲェえげつない攻撃ばかりするよな……」

 

「……俺としては、顔の見た目が怖いオータムさんが、こんなプロ顔負けのお好み焼きを作ってる方が意外なんですがね」

 

「見た目が怖いは余計ぇだ!!」

 

 いや、実際目の前にあるのだから仕方ないよ。キャベツも豚バラも良い感じに焼けてあるし、粉もパサパサしてなくてふんわりしてるし、ソースなんか市販でこれか?と突っ込みたいほどの完成度だった。…………見た目が怖いけど。

 

「フフ、オータムは見た目はちょっとおっかないかもしれないけど、こうした料理とか掃除とか、凄く得意なのよ」

 

「スコール……///」

 

「おーい、百合モードに入るのはいっこうに良いけど、俺も居るんですよ~」

 

 少しだけ居心地の悪さを感じつつ、目の前のお好み焼きを口にする。

 

「……で、どうしてウサギの部下になんかなってるんですか?」

 

「ん~、端的に言えば切り捨てよ、切り捨て」

 

 スコールは自分のヘラでお好み焼きを口にしつつそう言った。

 

「切り捨て?」

 

「そ、元々は私は地位で言えば三番目くらいの幹部だったんだけどね、突然変な男にその座を奪われて、しかも部下だったMっていう子を人体実験に使おうとしてたのよ。たしか、『第一次脳量子力学とISコアにおける感応実験』……だったかしら」

 

「脳量子……それってもしかして!!」

 

 俺はシャルが誘拐、洗脳された事件の際に見た少女達を思い出した。現在フランスの大きな国立病院にて未だ意識不明で入院している彼女達は、ガミルさんの話によると肉体や遺伝子情報に何ら不思議な事は起こってないが、脳波だけ、まるで全員が一つの個体に集まるように、全員が全く同じ波形を永遠と繰り返しているらしい。

 

 そんな事は素人から見ても絶対にあり得ない。医学の知識を持たない俺でも、人間が全員、同じ行動をしたら同じ脳波を出すかと言われたら違うと知っているからだ。それは個人によってばらつきがあり、似たような波形になることはあれど全く同じには絶対的にならない。

 

「おそらくクロト、貴方が予想してる事は正しい。恐らく貴方が救いだした少女達も実験の被験体……モルモットだったはずよ」

 

「……じゃあ、その脳波はいったい何処に集まってるんだよ」

 

「流石に私でもそれは分からないわ。私はISパイロットであっても科学者じゃない。私にできたのは、オータムとMを連れて逃げる事しかできなかった。今持ってる機体は、私の座を奪った女が開発した機体をチョロまかして、自分の元の機体と組み合わせただけなの」

 

「そう……ですか……」

 

 俺はスコールの話を聞きながら自分のグラスに注がれたドリンクを口にして、勢いよく吹き出した。

 

「オ、オータム!!これ烏龍茶じゃなくて烏龍ハイじゃねぇか!!」

 

「かはは!!気にすんな!!男ならたかが酒の一つや二つ!!」

 

「自分まだ未成年ですって!!ていうかなんですかこの缶ビールとウィスキーボトルの山は!!自分来たときこんなに散らかって無かったですよ!!」

 

「あ、それの半分は私よ。さっき話ながら飲んでたのよ~、三本くらい」

 

「そんなに飲むなぁ!!」

 

 俺はツッコミスキルを使いながら散らばっている空き缶と空き瓶を袋に放り込んでいく。と、

 

「アヒャヒャ~!!タァ!!」

 

「ちょ、オータムさん!!抱きつかないでくださいよ!!当たってる!!当たってますって!!」

 

「良いんだよ~当ててるんだから~」

 

「こんな何とも思ってない酔っぱらいに言われるとは思わなかったよ!!ほら、さっさと離れて……」バシュン!!

 

 言う前に、彼女の機体『ジャイオーン』……もとい『アリアドネ』のファンネルのビームが後ろから耳元すれすれで発射され、目の前の空き缶五つくらいがそれのせいで消滅した。

 

 

 

~数時間後~

 

「アハハ!!どうだいどうだい!!アタシが注いだ酒の味わよぉ!!」

 

「あ、はい、大変美味しいです、はい……」

 

 俺は泣く泣く、オータムの酒の相手をすることになってしまった。そりゃ前世では20ちょい過ぎだったし、酒の味はそれとなく知ってるが、まさか転生してから原作始まる前に酒を飲むことになるなど誰が予想しようものか……。

 

 ちなみにスコールさんはついさっきシャワールームに行ってしまった。そのためこの場には俺とオータムさんの二人だけである。何のお楽しみもあるわけないが。

 

「アハハ!!それでよォ!!マドカの野郎、アタシが料理作ったところ見てさ、『人は見かけに依らないものだな』、なんて言いやがったんだぜ!!そんなにアタシが料理得意で悪いのかっての!!」

 

「はぁ…………」

 

「しかもさ、最初アタシが作ったって言わないで食わせてネタバラシしたらさ、アイツ何も言わずにトイレに行きやがったんだぞ!!アタシが何をしたんだってんだよ!!」

 

 話を聞いてて解る通り、どうやらオータムはM……もとい織斑マドカに対する愚痴を延延と言ってきてる。ちなみにこの話は既に五回目だ。

 

「オータムさんって、マドカの事を良く見てたんですね」

 

「そりゃそうだ!!なんたってアイツは私の妹分だからな。マドカって名前も、実はアタシが着けた奴だし」

 

「へぇ……」

 

 意外な事実に、俺は手元のビールをオータムさんのグラスに注ぐ。

 

「元々アイツは織斑千冬のクローンでよ……Mっていうのはアイツのクローンとしての番号だった。初めて出会ったのは……アタシ達がアイツの居た施設を破壊した時だった。当時のアイツはよ、織斑千冬のクローンのなかで唯一の成功例で、まだ専用機すら持ってなかったアタシやスコールが、素手とはいえ二人がかりでギリギリ勝てたくらいの強さだった。ついでにかなり脆かった」

 

 オータムは自分のビールを飲みながら語るように喋り続ける。

 

「アタシ達はアイツを連れて帰って、人間らしく振る舞わせようとそりゃ必死に頑張ったさ。アイツの生まれが生まれだからよ、戦いなんかに巻き込みたくなんかなかった、アタシ達みたいなテロリストにならないように精一杯努力した……けど、アイツは私たちに負担を掛けたくないって言って亡国機業に入った」

 

「そしたら皮肉なもんにアイツは私たちなんかより圧倒的に強かった。昔は二人がかりとはいえ勝てたのに、ナイフ戦でアタシら二人に無傷で勝ちやがった。恐らくは織斑千冬の細胞のお陰なんだろうけどね……」

 

「そんなこんなでスコールが漸く幹部にまで昇格して、アタシら三人で部隊を組んで、マドカのやつ仏頂面な癖に顔を赤くして喜んでやがったよ。多分、今までで一番良い笑顔だった」

 

「けどあの女にスコールが下ろされて、マドカがモルモットにされそうになって、アタシは居てもたってもいらんなかった。実験される前日に、アタシらは逃げ出した。当てなんか無かった。とにかくアイツらから逃げられるんなら何処にだって逃げた」

 

「そんな時だよ、あの篠ノ之束と出会ったのは。アイツはアタシらが亡国機業から逃げてきたのをどういうわけか知ってた。マドカを救える方法を知ってた。アタシらはそれに頼るしか無かった。……たとえ離れ離れになると分かっていても……」

 

 オータムは最後の一滴まで飲み干して、グラスをテーブルに叩きつける。

 

「それでもよぉ……アイツが……普通の女の子として、普通に平和な生活を送ってくれる事の方が、アタシにとっては嬉しかった。アイツには辛く言っちまったけどよ……アタシゃぁ、マドカが幸せでいてくれるなら……それで…………」

 

 そのままスコールさんは突っ伏すように寝てしまった。顔は酒のせいで赤く、しかし表情は安らかなほど穏やかだった。

 

 そして、タイミングを見計らったようにスコールさんがバスローブ姿で戻ってきて、オータムさんにタオルケットを掛ける。

 

「…………」

 

「…………ふふ、意外でしょ。オータム」

 

「ええ、まぁ、少しは」

 

「まぁオータムも、元々は戦災孤児だったからかしらね、マドカの事をずっと気にしてたのよ……。ホント、似た者同士っていうか……」

 

 スコールさんはそういうとオータムさんの髪を優しく撫でる。

 

「表では悪ぶって見えるけど、裏では誰よりも仲間思い、だからこそ、オータム自身は嫌がってたけど、亡国機業内ではかなりの人望があった……」

 

「そう……だったんですか……」

 

「ええ、そうよ。さ、クロト君もシャワー浴びてらっしゃい。バスローブぐらいなら用意しておいてあげるから」

 

 スコールさんの言葉に従って、俺はシャワールームへと歩いていった。

 

(現実は小説より奇なり……か……)

 

 オータムとスコール、原作では敵だった二人の過去を垣間見た気がした俺は、フッと少しだけ笑みを浮かべるのだった。




オマケ⑩ その後

クロ「フゥ……さっぱりした」

スコ「あら、意外に早く上がったのね」

クロ「まぁそれは……ところで俺はどこで寝れば良いんでしょうかね?」

スコ「そうね…………(あ!!)」

 その時スコールの目が怪しく光る。

スコ「仕方ない、私と一緒に寝ましょう?」

クロ「へ?」

スコ「だってベットのうち一つは完全に酔っちゃったオータムの分で埋まっちゃってるし、なら私のベットで一夜を空かしましょう?」

クロ「い、いや……ソ、ソファーとかがあるならそれで」

スコ「残念だけどここにソファーなんて無いし、毛布も布団も無いわよ。諦めなさい」

クロ「……嘘ですよね?」

スコ「ホントよ。さあ、いらっしゃい♡」

クロ「oh……my god……」

 その日、クロトはいろんな意味で眠れず、次の日、シャルとウサギとスコールからこっ酷くお説教されたそうな……。

クロ「理不尽だ…………」
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