それは、朝のニュースが始まりだった。
転生する前ぶりの日本の時間差に戸惑いながらも、何時ものように6時に起きた俺は、ルームサービスに今日の朝刊と紅茶を頼み、届くまでにシャワーを浴びる。一人部屋だからか、何時ものようにシャルが夜這いしてくることもなく清々しい朝を向かえたというのに、何故か心に不信なものを感じた。
そして何事もなく紅茶と朝刊が届き、俺はニュースを付けながら新聞を読む。久し振りの日本の活字に心が踊り、内容が政府の汚職やら何やらといった不穏なものばかりとはいえあまり気にならなかった。
そのときだった。ニュース画面のアナウンサーが突然表情を曇らせて、さらにテレビの中の他のアナウンサー達も不穏な表情を浮かべる。
どうしたのかと思いながらも紅茶を手にもって飲もうとするが、次の瞬間、俺は無意識にコップを離し、それは割れるが、今の俺にはどうでもよかった。
『今入ったニュースです。つい30分ほど前、東京都郊外にある倉持技研の研究所が、突然の襲撃と爆発により全焼、さらに研究者達計20数名全てが、焼死体で発見されました』
「なん……だと!?」
俺の呟きに応えるように、倉持技研があった場所の風景映像がニュースで流れる。壁は無惨にも爆破され、大きめの弾痕が残っていた。明らかにISの実弾銃の弾痕のそれと酷似している。
『また、倉持技研にて研究、及び保管されていた第三世代IS試作機『打鉄弐式』、『白式』の2体とISコア計14個が盗まれており、警察、及び国際IS委員会はISを狙うテロリストによる犯行だと考えており、現在捜索を…………』
「『打鉄弐式』と『白式』をだと!!いったいどうしてだ!!」
どちらも原作の機体であり、尚且つ『白式』は主人公である織斑一夏の専用機となる機体だ。だが、『白式』にはウサギが原作開始少し前に細工した展開装甲採用型ブレード『雪片弐型』のせいで、テクニックがなければまともに戦闘な戦いができない機体だ。
しかも現段階だとまだ『雪片弐型』は搭載してないうえに、欠陥機として御蔵入りされていた筈だ。それなのにいったい……
『くーくん!!今大丈夫!!』
「!!ウサギか!!」
突然ISの通信ネットワークからウサギの顔がどアップで映し出る。
「いったいどういうことだ!!なんでこのタイミングでISの研究施設が襲われる!!しかも第三世代試作機を!!」
『私にも良く分からないんだよ!!オーちゃんやスコールに通信で聞いてみたけど、二人とも亡国機業が関係してるとは思えないって言ってる』
「……それはどうしてだ?」
「単純に性能だよ、性能」
突然ドアが開いたかと思うと、オータム、スコール、シャルの三人が部屋へと入ってきた。
「スコール、父さんは?」
「今、日本政府に詳しい現状とかを電話で聞いているわ。今回、正式に商取引するつもりだったから、現状を聞く義務があるって」
「そうですか、それとオータム、今の台詞はあれか?スペック的な問題か?」
「そうだ。アタシらも奪われた二機のスペックデータはそれなりに知ってる。が、アイツらが奪うにしてはかなり物足りない、寧ろ捨て置いてもかまわないくらいだ」
オータムは淡々という。彼女の言うことは最もで、その場の全員が押し黙る。
「でも束さん、コア14って、かなりの数じゃないのかな?」
『そうだねシャルちゃん、コア一つだけですら世界的にはかなりの価値を持ってるのに、それを二桁も一つの研究施設が所有してる、これは明らかにおかしいね』
「でも日本のISの開発元って『倉持技研』だけなんだろ?それならあり得ない話じゃ……いや、どっちにしろ国で管理してる筈だから、あり得ないか……」
どっちにしろ二機を奪う理由が全くもって分からない。いったいなんの意味が――
「――いや、違う」
俺はある仮説を思いついた。しかしそれはまずあり得ない、でももしそうだとしたら。
「…………ウサギ、奪われたコアのナンバーを今すぐに調べろ」
『コアナンバー?それって…………あ!!』
どうやらウサギも気付いたようで急いでキーボードを叩く音が聞こえる。
「ねぇ、クロト兄、どうしてコアナンバーなんかを?」
「…………これは仮説なんだが、俺は以前自分の『ルナーク』とシャルの機体のベースになった『ベルフェゴール』のコアについてウサギに調べて貰ったことがあった。結果は至って普通のそれだったが、ナンバーだけが違った」
「ナンバーだけ?」
「俺のは『CN―470』、シャルのは『CN―469』……469番目と470番目に作られたコアだった」
俺の発言に、オータムとスコールが目に見えて驚愕の表情を浮かべる。シャルの方は何が何だか分からないようで首を傾げてるが、まぁ問題はない。
「ちょ、ちょっと待て!!ISコアの数は467個の筈だ!!例え束が一、二個余分に作り置きしてたにしても、二人はウサギとは一切合切無関係だった筈だ!!」
「そうだ。けど俺は実際には第一世代機の型だから二桁番号になってもおかしくないし、シャルの方は出自が出自だからな。けど、今はそれについてはどうでもいい。問題なのはコアの特性だ」
「特性だと?」
「ウサギ曰く、コアには人間の感情にも似た、それぞれの象徴みたいなのがある。俺のは『月』、シャルの『悪魔』、オータムの『蜘蛛』、そしてスコールの『金』といった風に、二次移行すると機体にその象徴が顕著になって表れるらしい」
実際、ウサギ曰く、ブリュンヒルデである織斑千冬の『暮桜』のコアの象徴は『桜』で、遠距離斬撃などは桜の花が風で飛ぶのを象徴としているらしい。最も、
「そして、俺が予想してるなかで一番含まれて欲しくないのは、1番、そして467番だ」
「?どういう意味だ?」
「俺が予想してるなかで、一番最悪なナンバー特性を持つ可能性があるのが、その二つなんだ」
『クーくん、ネットワーク解析終わったよ……』
と、ウサギが漸く画面に戻ってくる。
「それで……」
『うん、クーくんの予想通り、奪われたのは18、27、29、53、105、206、233、248、299、303、361、400、そして……1と467』
「やっぱり……テロリストの狙いはそれだったか」
「おい、クロト、一体どういう……」
『それはねオーちゃん、コアナンバー1は白騎士に使われた『創成』の特性を、コアナンバー467は『破滅』の特性を持つ可能性があるからだよ』
「「「「!!」」」」
流石にこの言葉には、予想してた俺や、今まで言ってる意味が分からなかったシャルですら驚いた。
「……コアの特性は機体にも、下手をすれば使用者にすら影響をもたらす」
「てことは何か、敵はそのコアを使って戦争でもおっ始めようっていうのか?」
『そうだね。もともとその二つは対になるコアだから、上手く使えば永久機関になりかねないし、悪く使えば……』
そこでウサギは言葉を詰まらせる。いや、言えないと言うのが本音だろう。もしそうなるとしたら、それこそ核被害より甚大なことになりかねない。
「…………とりあえず、俺は少し電話してくる」
「電話?」
「あぁ、恐らく、俺たち以上に大変な立場になってるだろうからな……」
そして俺は自室から出て、携帯を取り出しつつ人気のない場所へとやってくる。
「…………」
『…………もしもし』
電話の相手は、俺が昨日助けた少女…………布仏本音だった。
「すまない……今から簪と一緒に出てこれるかな?」
オマケ⑭ 動き出すもの達
??「……どうやら例のコアが奪われたみたいだね」
??「そうだな……どうやら俺達も動かなきゃならなくなりそうだ」
??「でも、どうやら彼も動いてるみたいだよ?」
一人が携帯で映していたのは、ホテルを出るクロトの姿だった。
??「さて、僕達も手伝わせて貰うとしよう……『転生者』である僕達が、ね……」