「ここが簪達が暮らしてる家……か」
俺は楯無さんと本音の案内のもと連れてこられたのは、なんというか、fa○eの衛宮邸もかくやというような大きな建物で、白塗りの壁に覆われたそれと門に、初めて見るという事を抜きにしてもかなり立派な建物だった。
「……なんか、凄い場違い感が……」
「でもクロくんも一応、フリーデンの社長の子息なんだから、場違いじゃないと思うよ~?」
「言っとくが俺の自宅はあまり人が居ないところの一軒屋だからな。こんな大物政治家やら極道やらが住んでそうな所に住んでないから」
実際フリーデン社から自宅までは車で1時間前後掛かるし、少し移動すれば、時期ならばジビエ用の狩猟場となってる森林もあるが、時期じゃなければそれこそ人数はめっぽう少ない。
「ていうか、確か更識って暗部家業の家元だろ?こんな立派な建物で良いのかよ」
「一応表では色々とやってるのよ?まぁそれでもIS関連の事業を展開してる所には負けるでしょうけど」
「表でって、確か親父達曰く、更識で楯無という名前を聞いたら諦めろ……とかなんとか言われたんだけど」
「それは多分先代の楯無ね。私は去年襲名したから、そこまで極悪人では無いわよ」
失礼しちゃう、と言いながら開かれた扇子には『憤慨』と異様な達筆で書かれていた。
「それで、俺はこの中に入って大丈夫なのか?こんな裏の情報がたんまりある所に」
「あら、あなたは簪ちゃんと本音の大切な友人よ?そんな人を入れてダメなわけないじゃない」
「さいですか……」
もう仕方ないと割りきって俺は服装を軽く整える。そしてかなり大きな自動門が横に開き、最初に見たのは。
凄く柄の悪そうなサングラスに黒スーツの大男達の大群が、どういうわけか道幅に沿って立ち尽くしていたのだ。
「…………」
「あら?どうしたのかしら?」
どうしたじゃない。幾らなんでもこんなにも強面の男が多く居たら怯まないわけがない。どこの仁侠映画だこれは?
「大丈夫よ、ちゃんと話はしてあるし、こう見えて皆楽しい人たちよ」
「どこが楽しいのかはあえて聞きませんけど、ていうか、ここはどこぞの組の頭首の家ですか」
「一応暗部の本家だからね。むしろ今日は少ない方よ」
「いつもはこの倍近くは並ぶもんね~」
本音のその言葉に俺は少しだけ表情を暗くする。
「…………簪の為か?」
「そうね。日本政府の命令っていうのもあるけど、何より大事な簪ちゃんのためよ、動かない道理はないわ」
やはりというべきか、俺の周りには良い意味でシスコンが多いと思う。あのウサギでさえ、最近では妹のために何かを開発してるらしいし(とはいえ経費を勝手に使われるのは問題だが)
「……んで、とりあえず簪の所に案内してくれ」
「あ、その前にちょっと来てもらう場所があるわ」
着いてきて、と楯無が行く。仕方なく俺と本音も着いていくと、そこはかなり広めの武道場だった。畳が綺麗に敷き詰められ、壁には木刀や竹刀といった有名どころや、薙刀や槍といった物まで掛けられている。
「……いったい何を」
「まずは腕試しって所よ。私を相手にね」
そう言われ振り向くと、既に彼女は胴着に着替えていて、その目はかなり鋭い。
「……実力を図るって事ですか?」
「簡単に言ったらそうね。柔道や剣道、なんでも良いから私と勝負して勝ちなさい。それが出来なきゃ、話にならないわ」
「…………」
少なからず予想はしていた。簪を救うには、俺自身にもそれなりの実力と覚悟が居るということを。それをこいつは図ろうとしてる。
そして同時に、
「…………楯無さん。対戦とは別の形で、俺の実力を見てもらえませんかね……できれば一人稽古するときなんかに使うサンドバッグとかにしてもらいたいんですけど」
「?別に構わないわ。いったい何をする気かしら?」
俺はそれに答えず、少し目を瞑る。頭のなかである物をイメージする。
(それは俺の本質……願望……望み、それを全て一つの物にした、俺だけの……
そして目を再び開くと、既に目の前にはサンドバッグがあって、そして視界の左端に少しだけボヤけてはいたが確かに、先程までは存在しなかったそれは存在した。
「楯無さん……いきます!!」
俺はそう宣言し、思いっきりサンドバッグに右ストレートを打ち付けた。そしてその瞬間、
「「!!」」
当然ながら、楯無さんと本音は息を飲んで驚いている。当然だろう、これは人間の所業ではあり得ない。
「どういうこと……パンチの瞬間的なパワーもスピードも、至って平均男子のそれと対して差はなかった。しかもサンドバッグがインパクトで破けるなんて普通あり得ない!!」
そりゃそうだろう。俺の筋力はそこそこだし、スピードも普通のそれだ。確かにISのテストパイロットはしてるが、それとこれは別問題。絶対にあり得ない現象だ。だが、
「これが、俺の実力です」
「貴方の実力……いえ、あり得ない……ISに乗った人間が同じことをすれば似たような結果にはなるかもしれない。けど、貴方は男の子、なのに……なんで!!」
楯無さんはまるで訳が分からないという表情をしている。俺自身、初めてこの能力を現実で使ったときは受け入れられなかったしな。
「……いったい、貴方は何者なの」
「…………俺は、ある精神疾患を患っています。その事は、妹も、親父も、あのウサギでさえ知らないと思います」
そして俺はさっき出現したそれを手に掴み、それを現実へと召喚した。
それは剣だった。しかしどこか悍ましく流麗、無機的なのに人のような存在感、そして緑色の目のようなシルエット、まさしく俺自身の本質といって変わりない姿をしていた。
「「!!」」
二人はさっきのような驚きを浮かべる。当然だろう、何故ならそれは彼女達からすれば
「…………これが、俺の正体であり、精神疾患による副作用みたいなものです」
俺はそう言って剣を再び空間に戻す。再びそれが無くなったことで、二人はなにも言えなくなった。
「…………本音、さっきのを確認したわよね」
「う、うん」
「クロトくん、いえ、クロト・D・フェブリエ、貴方はいったい何者なのかしら?」
「…………」
言いたくない、いや、言えなかった。彼女が暗部であるから尚更に、
「…………2009年の9月から11月」
「…………え?」
「それを調べれば、もしかすれば分かるかもしれませんよ……」
俺はそう言うと、自分一人この場所から離れた。彼女と話すために。
オマケ⑯ 動き出すもの③
暗い室内、そこでは三人の大人達がテーブルを囲んで一枚の写真を眺めていた。
???「そうですか、あの力を持つ人間が現れましたか」
???「そうみたいだ。何よりもあの力の強大さを、我々は知っている」
???「まさしくカオスの申し子……さてさて、彼がどう動くのやら……クロト・D・フェブリエ」
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これ、感の良い人ならクロトが何者か絶対に分かるんですよね~。いったいどこの世界の人間なのやら……