いつでもそうだった。私が何かを得ようとすると、結局誰かに奪われるということに。
私がそう思ったのはもうずっと前からだった。私がどんなに努力して両親に喜んで貰おうとしても、二人はそれが当然のように何も言ってくれない、褒めてくれない。むしろお姉ちゃんと比べられてばかりだった。
日本の国家代表候補生になったときも、周りからは家柄のおかげだと私を貶すばかりだった。一度も家に頼ったことはなかったのに。全て自分の努力で勝ち取ったのに。
そして自分の専用機も、私は設計の時から、開発者の人達と意見を言い合って完成を目指してきたのに、それさえも奪われてしまった。
(私って……ここに居て良いのかな……)
そう思ったときは何度もあった。私はどうせ暗部の次女だ、暗部としての訓練は然程させて貰えなかったし、多分成人になったら家の名を語ることは無くなる。結局私には何も残っていないんだ。
その時だった。私の部屋のドアにノックの音が少し荒く鳴った。
「…………」
私は誰だろうと思った。お姉ちゃんだったらノックしなくても天井裏から勝手に入ってくるし、本音や虚さんならもう少し丁寧にしてくる。
そして再びノックが鳴った。私はそれを無視できずゆっくりとドアを開けた。そこにいた人物に私は驚いた。
「……クロ……ト……君?」
本音の想い人でつい昨日私の友人になってくれた彼、クロト・D・フェブリエが目の前に居たのだ。
「昨日ぶりだな、簪」
「なんで……ここに居るの?」
私は当然のように聞いた。本音が会いに行くとは言ってたけど、まさか連れてくるとは思ってもなかった。
「本音から簪がスゲェショック受けてるって聞いてさ、一応知らない仲じゃないからさ、様子を見に来たわけ」
「そう……ありがと」
素直にお礼を言うけど、私は少しだけジトリとした目を浮かべた。とりあえず立ったままだと落ち着かないから、私は部屋のなかに彼を入れる。
(部屋……そこまで汚くないよね?)
私は自分の部屋を軽く見なおす。服とかもちゃんとしまってあるし、うん、大丈夫だ。
「まぁ女の子の家に勝手に来たのは悪いとは思ってるけどさ、なんか簪って、一人で溜め込んじゃいそうだからさ」
それを聞いて少しだけムッとした。確かに一人で溜め込んじゃうのは自分なりにも認めてるけど、まさか会って一日二日の人に言われるとは思ってみなかった。しかも笑顔で言ってくるんだから少しだけ腹が立つ。
「……簪、お前自分がここに居なくても良いって、そんなこと考えてる訳じゃねぇよな?」
「ッ!!」
まさか、どうしてその事に気づいたんだろう。
「……お前の目、俺の知ってる日本の女の子のそれと同じなんだよ」
「日本の……?でもクロトって……」
「あぁ、歴としたフランス人だよ。でもそいつがフランスに来てて、偶々同じ場所で遊んでいたんだ」
その目はかなり悲しくなっていて、見てるこっちが憂鬱になりそうだった。
「…………そいつは、ある団体に両親がどっぷり嵌まっちまって、とある科学者達によって人体実験をされていたんだ」
「人体……実験」
その言葉に、私は半年前のフランスでの少女人体実験のニュースを思い出した。確か噂だとそれがきっかけでデュノア社がフリーデン社に合併されたはずだった。
「俺も詳しくは知らないけど、その友人はまるで囚人のような格好にさせられてた。薬なんて当たり前、酷いときには脳を弄られたりしてきたそうだ」
「酷い……どうして……そんな……」
「そいつにはな、ある特殊な才能の片鱗があった。その力は、下手したら現実を別の現実へ変化させる事ができる。事象の干渉なんてレベルじゃない、物事自体が物理法則を無視してそうなるってなっちまう」
物理法則の無視、それを聞いて私は驚愕した。私はどちらかと言えば理論派の人間だから、彼の言うそれは私にとってはあり得ないという言葉しか思い付かない。
「…………その女の子は?」
「さぁな……俺が知ってるのは、フランスに来たのは偶々そういった施設がフランスにもあったからということと、五年前、東京での巨大地震で死んだってことだけだ」
「五年前…………澁谷……もしかして」
私はその事件の事を知っていた。というよりも
「…………澁谷地震」
「!!知ってるのか!!」
「知ってる……というよりも、私もその時に澁谷の近くに居たから」
それは渋谷で突然起こった原因不明の大地震、謎の光とともに大規模震動が起こり、200人以上の死傷者を出したという今でも謎とされている事件。
しかも渋谷以外でほとんど地震は起こらず、街の被害も無かったが故に、その前に起こっていたあの事件と含めて最悪な事件とされている。
「!!……簪、変なことを聞くようで悪い、その事件の時に、何か心の底から願ったことはないか?もしくは最近身の上で何か変なことが起こったとか?」
「…………願ったことは……ある」
それは私が一番思っていたこと、自分自身の劣等感だったこと。
「私は……誰でも良いから自分の事を認めてほしいって、誉めてほしいって願った……とおもう」
「…………簪、正直に答えてほしい。俺の右手に何があるか」
「右手?」
私は少しだけ疑問に思ったそのとき、彼の右手に突然巨大な剣が握られていた。しかも何もない空間から、まるではじめからそこにあったような存在感があった。
「何…………それ……剣……なの?」
「ッ!!やっぱり…………簪にも……見えちまうのかよ……」
クロト君は心底嫌そうにそう呟いた。というよりも、その剣自体が存在して欲しくないというような顔をしている。
「簪、はっきり言う……お前はこれから絶対に、渋谷には行くな」
「…………どうして?」
「お前は『
「ッ!!」
彼の言葉に私は驚きを越えて恐怖を覚えた。その言葉が確かなら、渋谷は確かに危険なのかもしれない。
「……簪、気休めにしかならないかもしれないけど、自分を一人だと思うな。お前には姉や親友がそばに居るんだから」
彼はそう言って私の部屋から出ていこうとする。
「……待って」
「ん?どうした?」
「その女の子の名前……教えて」
私は自分でも何を言ってるのか分からなかった。けど、何故か聞かなければならない、そんな気がしていた。
「…………南沢」
「?」
「南沢……泉里……確かその子は……そう言っていた……と思う」
彼はそう言って部屋から出ていった。
「南沢泉里……さん」
私は彼の事を知りたい、そう思ったときにはお姉ちゃんを呼んでいたのだった。
オマケ⑰ 動き出すもの④
クロトは携帯電話を取りだし、とある人物に連絡を取っていた。
クロト「…………」
???『…………誰だ』
クロト「久しぶりだな……いや、
???『貴様……何者だ』
クロト「あぁ、名乗るのを忘れていたな、……俺は
???『ッ!!用件はなんだ?』
クロト「…………俺が聞きたいのは、
~次回本編へ続く~
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多分あるゲームやアニメを見てたかたは、この話でクロト君がどこの世界の人間なのか、分かりましたよね?