あの日本旅行からはや半年、それだけの時間が経って色々なことが起こった。
まず探していたテストパイロット、これは帰って約一ヶ月で決まってしまった。
一人は束さんのお手伝いとして原作にいたクロエ・クロニクル。どうやら出生は銀髪黒兎と同じくデザインベイビーとして生まれながらも、ISと過剰にシンクロしてしまう為に暴走が絶えず、廃棄されたところをウサギが拾ってきたらしい。感情を表さないことが多く、常に目が据わってるので時々怖く感じるが、まぁ悪いやつではないは確かだ。……もっとも絶対にキッチンには立たせないがな。
そしてもう一人……こちらの方は俺とシャルは最初とてつもなく嫌だった。ていうかアレだ、
しかも名前を聞けば、なんとビックリ『シオニー・レジス』と名乗ったからもう俺はビックリ。どこかで聞いたことがある声だと思ったらまさかのスパロボZ破壊編のボスキャラの女性だとは思いもよらなかった。
もっとも彼女自身、既にIS離れようとしていたらしく、会ったときには小学校の教師をしていて、持っていた『リヴァイブ』もあれから殆ど弾丸の補給をしてなかった。言葉遣いも高圧的ではなく、寧ろオドオドと頼りなく、俺と再開した時は生徒の前だというのに恥もなく土下座を慣行してくるという、なんか俺の方が悪人に思えてしまった。
まぁそんなこんなでテストパイロットが揃って、かつ機体の運動データが採れたことによって第三世代量産機のコンペでは他国を圧倒、デュノア社の頃から『リヴァイブ』を使ってる国から支持され、数年以内にEU内の主力量産機になることと相成った。
「……それで、なんで私達がフランスに来てるんでしょうか?」
と、フリーデン地下研究室……通称ウサラボにて、簪と本音、そして楯無の三人が、俺とシャル達を前に聞いてきた。
「いや専用機頼まれてたからさ、殆ど完成したから最終調整に本人を呼ばないと……って思いまして。ついでにもうすぐクリスマスだし一緒にと考えまして」
「……だったら、データにして私に送ってくれれば、仮想空間で幾らでもテストできたのに……」
頬を脹らませてジト目を向ける簪を可愛いと思うが
「痛い痛い!!シャル、本音、つねるな脛を蹴るな!!」
「「彼女が居るのに鼻の下伸ばしてるクロト兄(クロ君)が悪い」」
「確かにそうね~、でもこんなに女の子に囲まれてるなんて、君も幸福者ね~w」
俺たちの何気無い会話に、それぞれが少しずつ笑いあう。
「それで、できはどうなの?技術者としては」
「そうだな……はっきりと自信作っては言えないけど、それでも並みの機体なら負けないっていう自負はある」
「それって、私の専用機を相手にしても?」
楯無さんが扇子で口を隠しながら聞いてくる。
「……流石にロシア代表の貴女と戦ったら無事じゃないでしょうけど、スペックデータならうちの『イノベイク』をも上回りますね」
「む、そこは可能性はあるとか言うところよ?」
「技術者が技術師向きの人間に嘘を言っても仕方ないもんで」
にべもなくいう俺にシスコンさんは苦笑いをしてるが、事実だから仕方ない。
「……そういえば、なんでここウサラボなんて呼ばれてるの?」
「天災ウサギの住み処だから」
「「「天災ウサギ?」」」
「そ、今世紀最大の天災の住み処なんだよ、ここヌァ!!」
そう言おうとした瞬間、頭の上にとてつもなく固い物体が落ちてきおった。しかもご丁寧に旋毛というとても痛い部分に突き刺さるような形で。
「こらウサギ!!いきなりスパナなんて投げんな!!怪我したらどうすんだよ!!」
頭を抑えながら犯人に文句を言うと、当の本人はギロリとかなり鋭い目で睨んで向かってきた。
「クー君の紹介が酷すぎるんだもん!!こう見えても私はクー君達よりも体のスペックが一回りも二回りも上なんだからね!!」
「だったら人にスパナとか物を投げちゃいけないって事ぐらい分かるだろうが!!見ろ!!三人が驚き通り越して目を回してるだろうが!!」
グヌヌ……と互いに意地を張り合い、間には激しい火花が弾ける。
「はいはい、二人ともいい加減にしないと……ボクと一緒に遊ぶことになっちゃうよ♪」
「「ビクッ!!すみませんシャルロット様!!どうかお怒りをお沈めください!!」」
「うん、よろしい♪」
(((なんか……ここのヒエラルキーの格差が分かったような気がする……)))
なんか変なことを思われたけど……実際黒シャルモードになったら簡単には止まらないんだって。え、どうなるって?……あのウサギが二、三日精神崩壊したほどだ。つまりそういうことだ。
「とりあえず、この三人に一応自己紹介頼む」
「う~ん。とりあえず私が篠ノ之束、知っての通りISの産みの親にして大天才科学者なのだ~!!よろしくね~」
「「「あ、はい……よろしくお願いします」」」
流石のハイテンションに三人とも呆然としてるが、これくらいで驚いていたら心臓が幾つあっても足りない。
「それで……そこの茶髪っぽいのがクー君の彼女さんで良いのかな?」
「え、そうです……」
いきなり話題を振られるとは思ってなかったのか、本音はいつもののほほん節じゃなくて、普通の言葉になってる。
「ふむふむ……」
と、いつのまに移動したのか、ウサギは本音の体を舐め回すようにじっくり観察すると、何を思ったのかうん、と頷いた。
「決めた!!えっと……君の名前は?」
「えっと……布仏本音です……他の人はのほほんさんとか本音って呼んでます」
「じゃあのほほんちゃん、君にね――
――私特製の専用機を作ってあげよう」
「「「「「はい?」」」」」
うん、今ウサギは何と言った?専用機?しかもウサギお手製?直々に造る?……うん
「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」
俺たち全員の心が一つになった瞬間だった。
「おいウサギ!!お前何言ってるんだ!!」
「だってクー君の彼女さんだよ?私が気に入ったクー君の彼女さんになら、私の機体をあげても差し障りないもん」
「いやいや!!というかコアは!?束さん、はっきり言って自前のコアそんなにありませんよね!?」
「だいじょーぶ!!あと予備のコアは30個近くあるから問題なし!!」
「「大有りだ(です)!!」」
とりあえずおれはウサギに逆海老に固め、さらにシャルがヘッドロックを決める。
「イダダダダダダ!!ギブギブ!!ちょ、それは洒落にならないって!!」
「黙れウサギ!!というかなんで本音にIS渡すんだよ!!本音は代表候補でもないんだぞ!?」
「話すから!!理由を話すから!!とにかく関節が色々と逝っちゃうから離して~!!」
仕方なく離してやると、ウサギは曲げられた関節に手をやって擦っている。
「う~、クー君やっぱり容赦無いよ。初めてあった時からそうだよね」
「んなことはどうでもいい。さっさと理由を話せ」
「そうですね、でないとまた……」
「分かってるからシャルちゃんは黒くならないで!!」
なんでかこの作品だとウサギが突っ込みだったり犠牲担当だったりするが、まぁ基本的に自業自得な面が多いから関係なし。
「それで理由だけどね、ほらクー君って男の子じゃん、けど今は女尊男卑だよね」
「……お前のせいでな」
「まぁそこはいいから。それでね、もしクー君とのほほんちゃんがデートなんかしてるときに、女権のテロ行動に巻き込まれたら何もできずに殺られちゃうでしょ?」
「……確かにな」
俺自身、女権のテロ活動に何度か巻き込まれており、その度にシャルに展開して貰ってから、隠れて『ルナーク』になるというのが毎度だった。
「そうならない為にも、クー君の彼女であるのほほんちゃんには専用機を持ってもらって、何かあったとき助けてあげて欲しいんだよ~」
「……つまり、クロト君の彼女である本音ちゃんに、ボディーガードを兼任してもらおうって、事で良いのかしら?」
「その通りだよ、確か17代目の楯無だっけ?先代さんはお元気?」
「ええ、母さんなら暗部の最前線からは抜けましたが、今でも元気です」
ウサギがまともに言葉を交わしてるのに若干驚きながらも、とりあえずさっきの言葉の意味は分かった。
「それでどうかな、のほほんちゃん?受けてくれる?」
「……私なんかで大丈夫なんですか?」
彼女の弱気な声が俺に伝わる。当然だろう、今まで知ってはいたものの乗る気はなく、寧ろ自分の主のための技術師となろうとしていた本音だ。当たり前に戦闘経験も無いし操縦もあくまで素人だ。
俺自身、最初に機体を動かしたときは凄いと思うと同時に怖いと感じた。もし絶対防御が効かなかったら、もし相手を自分の引き金で殺してしまったら、そう考えるだけでびくびくした。だが、
「……本音、自分がどう思ってるのかはっきり言った方がいい」
「クロ君……」
「俺は、本当の事を言えば本音に無理をしてほしくはない。俺も男だからな、男なら彼女は何がなんでも自分の手で守るって思ってるし、絶対に本音を傷つけないって誓える。
……けど、世界はそんな綺麗事を許してはくれない。俺もシャルも、一度女権のせいで運命を狂わされそうになった。その時凄い悔しかった、自分には何もできないのか、って。だから俺はシャルを助けたあと、シャルを守るために技術者になろうと思った」
だけど、
「だけど、本当に辛いのは、本音が、シャルが、望まない機体を持って、それで自分を傷つけてしまう事だ。自分の事を偽って、他人からどう思われたいからって嘘の仮面を被って、それで誰かに傷つけられる……そんなのは一番嫌だ」
「クロ君……」
「だから本音、正直に言ってくれ。自信がない、上手くできるか分からない、本音を語ってくれ。そんで、自信がないなら俺や簪を頼ればいい、怖いなら俺が慰めてやる。だから……」
――素直に、自分の言葉を言って欲しい。
俺のその言葉が響いたのか、本音の目から溢れる涙が流れていた。
「クロ君……私、大丈夫だよ。クロ君の為なら、私は何時だって側に居たいし、クロ君が私を守ってくれるように、私がクロ君を支えてあげたいって思うから」
「本音……」
「だからね、束さん。その話、受けさせてください」
その時の本音の顔は、涙で濡れて、目は赤くなっていたが、彼女の本心を漸く皆に話せた瞬間で、俺の心は、目は、彼女以上に染みていた。
オマケ21~ シオニーさん頑張る
私、シオニー・レジスは疲れていた。それはもうデスクで気絶できるくらいには疲れていた。
カルロス「大丈夫かね、シオニー君」
シオニー「大丈夫ですよ……小学校の低学年の担任と歴史教師しながら、尚且つフリーデンで夜にテストパイロットを数時間して、そこから朝の六時には学校に向かってを毎日繰り返してますから……もう慣れました……」
カルロス「……ちなみに、ここ最近の平均睡眠時間は?」
シオニー「えっと……二時間位ですね」
カルロス「休みなさい」
シオニー「へ?でも」
カルロス「良いから休みなさい、これは社長命令だ」
その後、私は数日間眠り続け、起きたときには二日ぐらい寝過ごしていたそうな。