IS 月は出ているか?   作:ドロイデン

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Episode35 きっとな

「「「「……」」」」ジー

 

(どうしてこうなった?)

 

 俺、織斑一夏は今現在かなり疲れていた。肉体的ではなく精神的に、いや、もしかしたら両方かもしれない。

 

 そもそもの発端は二ヶ月ほど前のあの日、春秋と共に藍越学園の受験に行った際に、何故か会場で迷ってしまい、適当にドアを開けたらISが鎮座してて、それに見惚れて触ったのが運の尽き、結果が今この場所、IS学園にマドカも揃って三人仲良く放り込まれた。

 

(助けてくれ箒!!)

 

 もう自棄になって幼馴染みの少女にアイコンタクトをしてみると、逆に今は耐えろと切り捨てられ肩透かし、もうドン底だった。

 

「大丈夫、一兄さん」

 

「マドカ……お前が唯一の救いだよ」

 

 隣で心配してくれる妹に心で涙を流す。弟の方はどうやら三組になってしまったので、昼休みと放課後以外で顔を合わせる事が出来ないのだ。

 

「全員そろってますねー。それじゃあSHRを始めますよー」

 

 と、漸く先生が入ってきたと思って前を向くと、少しだけ眼を瞑った。別に半袖にカーディガンというのは構わないんですが、もう少し自己主張の少ないものに出来ないんですか。どことは言わないけど。

 

「兄さん?」

 

「……いえ、何でもないです」

 

 マドカからの冷たい目線を受けて俺は身を縮ませる。何故だ?

 

「このクラスの副担任の山田真耶です。皆さんよろしくお願いします」

 

 と、ありがたいお言葉を戴いてるというのに、クラス全員が全くの無反応。というか先生の言葉より俺に対する視線の方が興味の対象は上なのか?

 

「えっと……よろしく……お願いします」

 

 先生の方も無反応とは思ってなくて、再び言うもまた無反応、これには流石に同情する。ていうか俺への視線をいい加減にやめてくれないですかね。無理だろうけど

 

「……グスッ……と、とにかくみんなの自己紹介からしましょう!!」

 

(教師ってのも苦労するんだな……)

 

 まぁその理由のもとが自分なんだから何とも言えないんだが。

 

「それじゃあ織斑君、自己紹介お願いします」

 

「あ、はい……」

 

 とまさかこんなに早く来るとは思ってなかったので、とりあえず立ったは良いものの、内容なんて一切思いついていない。

 

「えっと……織斑一夏です……以上です」

 

「「「「ズコッ!!」」」」バタン!!

 

 言った瞬間にクラス全員がずっこけた。え、俺なんかやった?

 

 と、その時頭に鋼鉄のような何かが振り落とされた。

 

「いってぇ!!」

 

「全く、自己紹介すらまともにできんのかお前は」

 

 聞きなれた声にまさかと振り返ってみると、そこには

 

「げ、モノ○マ!!」

 

「誰が超高校級の絶望だ。しかも中の人ネタはするな馬鹿者!!」

 

「いやそれもメタイタ!!」

 

 俺の突っ込みに再び先程の得物……いや出席簿という名の破壊兵器が振り落とされた。地味どころか普通に痛いんだけど!!

 

「やれやれ……すまんな山田先生」

 

「い、いえ、それよりもう終わったんですか?」

 

「あぁ、何せ今年は男子操縦者が()()も居るからな。それに関する話で時間が掛かってしまった」

 

 ……あれ?なんかさらっと重要発言しなかったか?四人?俺と春秋と……他に二人も居るのか!?

 

「さて、私が担任の織斑千冬だ。お前らをこの一年でまともな操縦者にするつもりだ。返事ははい、イエスしか認めん。嫌でもイエスと言え、いいな」

 

 いやそれ横暴でしょ。そんなこと言われたって誰も

 

「「「「キャァァァァァァァァァァァ!!」」」」

 

 と思ったらまさかの黄色いソニックウェーブ!?そうだった、千冬姉はブリュンヒルデとして世界中にファンが居るから、こうなるのは目に見えてた。

 

「本物の千冬様よ!!」

 

「私、千冬様に会うために北九州から来ました!!」

 

「御姉様!!もっと私たちを罵って!!」

 

 あぁ……これが所謂千冬信者ってやつなんだな……ドンマイ。

 

「やれやれ、私の受け持つクラスは毎回こうなのか?」

 

「アハハ……」

 

 あ、これが毎回なのね……ホント、ドンマイ千冬姉。ていうか未だにマドカ以外の女子からの千冬姉へのラブコールが鳴り響いてるんだけど?

 

「とにかく、自己紹介はあとは自由にやれ。授業は明日から本格的に行われる。今日はゆっくりするといい」

 

 

 

 

「はぁ……疲れた」

 

「大丈夫、一兄さん」

 

 休み時間、もう回りからの視線に疲れ果てて机に突っ伏す。クラス内だけでなく、二年生達上級生まで集まってるのだから、俺は客寄せパンダかと言いたくなった。

 

「もうやだ……お家帰りたい」

 

「どうどう、大丈夫だよ。一兄さんには私が居るんだからね」

 

「……ちょっといいか?」

 

 と声をかけてきた人物に頭を上げると、そこには先程アイコンタクトして見捨てた箒が目の前に居た。

 

「箒……」

 

「久しぶりだな一夏、ところでそっちのは?」

 

「織斑マドカ、俺の義理の妹」

 

「……また姉さんが原因か?」

 

 もう諦めたというように箒はガックリと肩を落とす。

 

「えっと、あなたが篠ノ之箒さん……ですよね?」

 

「あぁその通りだ。少し一夏と二人で話をしたいんだが……いいか?」

 

「あ、はい……別に構いませんよ」

 

 すまないと箒は言うと、俺も仕方なしに立ち上がり廊下へ向かおうとした瞬間、彼女に襟首を掴まれる。

 

「何処へいく?」

 

「いや、屋上に行こうと……」

 

「恐らく屋上に行くまでに女子に捕まるだろ。そんなくらいなら」

 

 そう言って掴まれたまま窓際に移動すると、少し嫌な予感が生まれた。いやまさかありえないだろ、そんなこと――

 

 そんなことを思っていると、お約束通り箒は窓から俺を連れて飛び降りた。うん、

 

「嘘だぁぁぁ!!」

 

「――――飛燕、飛行魔法をステップに」ボソ

 

『Yes.Lord』

 

 死んだな、そう思っていると突然空気抵抗が無くなり、やがてゆっくりと足から地に降りる。

 

「さて、これで邪魔は入らないな」

 

「……箒、もう少し常識を考えろよ」

 

「すまないな、私が居たところではこれくらいできなければ、精神的にやっていけないのでな」

 

「どんな環境だよ……」

 

 千冬姉も束さんも何処かずれてたけど、まさか箒までこうなるなんて……あれ?これ俺もなるフラグ?

 

「兎も角、久しぶりだな一夏」

 

「……そうだな箒」

 

 とりあえず挨拶を交わすも、そこから互いに言葉が出なくなる。というか何を話していいのか分からないというか……

 

「……災難だったな一夏」

 

「え?」

 

「なに、一夏はISに関する事件に事欠かないからな、昔から」

 

「あー、もしかして箒も知ってるのか?あの事件」

 

 日本では新聞に一切載ってなかったが、第二回モンドグロッソの際に、俺は女性権利団体の連中に誘拐された。弟の春秋を逃がせたお陰で、俺が誘拐されたことを通報してもらえて何とかなったが、それでも結果として千冬姉を決勝を辞退することになってしまった。

 

「まぁな、姉さんに会った際に、教えてもらった」

 

「まぁ、確かにな……今回の事といい、前の事といい、ISと関わって良いことなんか無かったかもな」

 

「……なら、一夏は今……」

 

「そこまでだ箒」

 

 彼女の続く言葉を無理矢理止める。

 

「俺は後悔してないさ。確かに巻き込まれたのは不幸だったかもしれないけどさ、それも何かの運命かもしれないなら割りきれるよ」

 

「運命……か」

 

「あぁ、きっとな」

 

 俺はそう言って微笑みかける。箒は少し驚いた顔を見せるが、やがて苦笑を浮かべた。

 

「さて、じゃあ授業もあるし戻るか」

 

「そうだな。では先ほどとは逆のやり方を」

 

「……ごめん、それだけは勘弁してくれ」

 




オマケ二十二 ところで……

一夏「そういや箒、さっき降りるときに変な声が聞こえたんだけど?」

箒「…………気のせいではないか?」

一夏「いや、なにその間は?」

箒「気にするな、私は気にしない」

一夏「俺が気にするよ!!」

箒(悪いな……迂闊に喋ったら魔王と死神と子狸に何をされるか分かったものではないのでな……)
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