「ふぁーあ……ヤバイな……」
着替えを終えて観客席……には行かず屋上へとやってきた俺はあくびをかきながら床に座る。が、その右手は頭の横に置かれている。
(……ディソードの反動が来たなこりゃ)
俺個人が元々有するギガロマニアックスとしての力にはデメリットが幾つかある。一つは脳細胞の異常な肥大化、こっちはまぁ然程今は気に止めなくても大丈夫だろう。これはどちらかと言えばじわじわとやって来る癌みたいなもんだし。
そしてもう一つは、使いすぎることによる脳及び肉体の過剰疲労だ。今回俺は約1時間近くディソードを使ってISを動かしていた。そこにガンバレルを使った脳の複雑演算も含めると、かなりの疲労が頭に来る。
その結果、今俺は酷い頭痛と眠気を患っているというわけだ。しかも
(……最近、ISに乗るたびに少なからず眠気が現れるよな……)
そう、俺がルナークを使ってミサイルを迎撃したときや、シャルを助けにいったとき、さらにセシリアと最初に出会ったテロ事件の際には無かった眠気が現れるようになった。詰まる所……
「……睡眠障害……いや、違うか、ディソードで脳が潰れかかってるのか」
いっそギガロマニアックスを使わないという手段ならばこの障害も消えるだろうが、何分今の立場があるせいでそれもままならない。
「さてさて、いったいどうしたものか」
「……ここにいたのか」
と、いきなり現れた声に俺は少しだけ身を構える。その声の主は黒いスーツに黒い髪、何よりつり上がった両目……
「織斑千冬……先生ですか?」
確認すると彼女はコクりと頷く。どうやら俺が頭を押さえてるのを見て大声はあげないようだ。
「……先程の試合二つ見せてもらった。中々に素晴らしい動きをしていた」
「そりゃどうも……少なくとも妹も先生の弟もかなり手強かったっすけどね」
「だろうな、春秋はまだしも、貴様の妹の方はまるで鬼神でも取りついたような近接パワー型としてのスタイルを確立させていたようだ、現役時代の私ですら、貴様の妹と戦えといわれて、負けはせずとも引き分けにできれば充分だろうな」
「へぇ……かの絶対王者ことブリュンヒルデがそこまで言いますか……」
「私は少なくとも、自分が常に最強とは傲っていない。この教師としての職務もまだ馴れないことだらけだしな」
自嘲するように言うが、その目は強者を望む野獣のような鋭さがあった。
「……貴様のことは束から聞いている。あの時は少なからず世話になった」
「あー、もしかして『双騎士事件』すか?」
もう懐かしくなったあの事件、白騎士こと織斑千冬と、俺のルナークこと月下銃士によるミサイル迎撃事件だろう。
「もしあの時協力してもらえなかったと思うと、今更ながら震えが止まらない」
「それは別にいいですけど、けどあの時俺を攻撃してきたのはマジでヤバかったですよ。何せ操縦に殆ど馴れてないのに、後の世界最強と戦わされたんですから」
「そうだな、しかしそれでもかなり胸踊る戦いではあった」
「戦闘狂ですかアンタは……」
まさかの出来事に俺はため息を付きたくなった。シャルロットといいオータムといい、そしてブリュンヒルデといい、俺の回りには戦闘狂しかいないのか?戦闘狂のバーゲンセールか?
「それで、貴様はどうしてここにいる?試合中とはいえ、今は授業中だ」
「……俺はIS使うと、最近酷い眠気と頭痛がするんで軽い睡眠休憩をしようと思いまして」
「そうか……病院には……行ける分けないな」
済まない、と世界最強は素直に謝る。今のご時世、俺や春秋といった男の操縦者が外に出歩くだけでテロが起こるといって過言じゃない状況へ陥っている。
学園に来る前にも一度風邪を引いて病院に行ったら、行った病院で診察中に病院内で女権によるテロ騒ぎという事件が起こった。まぁ一緒に来ていたオータムとシャルによって軽く捻られ女権どもは御用と相成ったが、病院から理不尽だが出禁を喰らってしまったのだ。
「ホントですよ。……折角日本のドクペを買いだめ出来ると思ったのに買い物にも行けやしない……」
「そんなものは通販やらで購入しろ、馬鹿者」
それを言われたら元も子もないが、事実だから仕方ない。
「んで、先生はなぜここへ?」
「なに、授業中に屋上へ行く馬鹿者を見かけたのでな、注意をしてやろうとな」
「そうですかい」
うまくはぐらかされた気がするが、まぁ言ってもせんなきことだからどうでもいい。
「……月下銃士は使わないのか?」
「逆に聞きますけど、使っていいなら使いますよ?勿論アレも含めて」
「そういうことではない、貴様は一人でコアを二つも所有してる……その事がバレれば大変なことになるぞ」
「ご心配しなくとも、月下銃士……ルナークは使いませんよ。もしも使うとすれば、それは貴女と全力で戦うか、もしくは――」
そこで俺は言葉を止めた。言ってしまえば実現してしまう、そんな気がしたからだ。
「そうか、ならもう一つ聞こう……お前は、この世界をどう思う」
「どう思う……ですか」
その答えなら俺は決まってる。
「俺はこの世界が……歪んでると思います」
「……そうか」
そう言って織斑千冬は少し微笑んで去っていく。俺はただ一人、誰もいない屋上に取り残される。
「……あぁ、この世界は歪んでるよ……だってさ」
――歪んでなきゃ、俺という存在は生まれなかったんだからな
オマケ二十五 シャルvs春秋(?)
クロトがスタジアムに居ない頃、現場では凄まじい試合をしていた
シャル「アハハ!!楽しいね春秋!!」
春秋「うぉ!!ヤバイから!!そのクローを近づけるな!!」
シャル「喰らえぇ!!ソニックスマッシャー!!」
春秋「ギャァァァァ!!」
織斑春秋、死合にてソニックスマッシャーに飲み込まれ