「……」
放課後、織斑一夏は自分の部屋で物思いに耽っていた。
「(春秋もクロトも……あのシャルロットって子も、みんな凄い動きをしてた)」
昼間に見たスタジアムでの模擬戦、俺はそれを見て鳥肌がたった。
あのインコムとかいうビームを反射する武器と、ロングレンジのビームライフルを巧みに使いこなし、相手を翻弄していた弟の春秋。
大型のクローを自由自在に操り、格闘戦や大剣を使った近接戦で他の二人を圧倒していたシャルロット。
そして、その二人を下し、かつ、様々なパッケージを使いこなしていたクロト。三人とも、今の俺に勝てるのかと言われたら多分無理だと思う。
「一夏」
と、部活の見学を終えたらしい箒が部屋に戻ってきたようで俺に声を掛けてくる。
「あぁ、箒か……」
「あぁ、じゃない。どうした、そんな浮かない顔をして」
「いや……」
心配してくれたようだが、今の俺にはそれが一番辛かった。
「……もしや、あの試合を思い出していたのか?」
「……三人とも、俺でもはっきり分かるくらいに強いと思う。多分、今の俺じゃ三人の誰に対しても勝てないと思う」
いや、三人だけならまだいい。あのシャルロットという子はセシリアの話だと自分と同じ代表候補生とか言っていた。つまり、セシリアもシャルロットと同じぐらいの実力を持っていても不思議じゃなかった。
そして妹のマドカ、千冬姉のクローンであり、暗部としてISの実働部隊として行動していたということらしく、多分彼女も少なくともシャルロットクラスの実力を持っているはずだ。
「……そうか、つまり一夏は三人を見て萎縮した……そういうことか?」
「……」
「一夏……恐らくそれは正しいことだと思うぞ」
無言の俺に、箒は諭すようにそう言った。
「正しいこと?」
「一夏、お前は初めて動かしてきたときから、ずっと流されて行動してきたんだろ?ここに来ることも、セシリアと戦うことも。自分の意見も全く言わないで」
「…………」
「一夏、多分お前は今本当の意味で試されてるんだ。自分がどうしたいのか、何をしたいのか……その答えを」
「……箒は、その答えを出したのか?」
なんとなしに聞き返すと、箒は苦笑いを浮かべた。
「どうだろうな、少なくともその機会はもう一度は来ていたがな」
「そっか……」
「それに……いや、なんでもない」
箒はそう言うと何故か木刀を取り出してきた。え?どういうこと?
「えっと?箒さん?」
「なに、すぐに考えが纏まるでもないだろう。少し外で久しぶりに一緒に素振りでもどうだ」
「……そうだな。最近竹刀とか振ってないし、丁度いいかもな」
俺は木刀を受けとると、とりあえず後ろを向いた。
「?どうした一夏」
「い、いや……軽装に着替えなきゃだし……その……な?」
「……!!///」
その言葉で分かったのか、箒はさっと自分の着替えを持ってシャワールームへと駆けていった。
「……マドカに注意されといてよかった」
本音side
「む~!!」
「グヌヌ……!!」
「ピクピク!!」
みんなこんばんわ、視点でははじめましての本音だよ~。さて、私は今、再び修羅場の中にいる。というのも
「第二回!!どっちの兄(姉)が凄い論争!!」
そう、前のオマケであったこの論争がまた起こってるのだ~。しかも今回はマドマド(マドカ)の部屋で、同室の子はあまりの負のオーラに食堂へ退散しちゃった。え?私は逃げないのかって?だって
「本音、さっさと司会進行」
「かんちゃんが怖いよ~」
ということである。私にもお姉ちゃんはいるけど、こんな風にシスコンとかの部類じゃないんだけど……。
「じゃあマドマドから」
「うん!!姉さんは言うまでもなくブリュンヒルデで強いし、何より姉さんが居なかったら私は居ないんだ~。それに一兄さんは料理も掃除も得意で、織斑家の主夫なんて異名もあるんだよ!!春兄さんは勉強が凄い得意でね、常に学年トップで、良く私の勉強を親身になって教えてくれたんだよ」
……マドマドの話を聞くと、流石は織斑家、どこか人外化してるんだね~ていうか三人で戦略級な気がするよ。
「じゃあシャルるん」
「クロト兄は皆も知ってるけど、ISの操縦が凄く上手いんだよ!!私がどう考えてるか言う前に分かってるし、本音には悪いけどクロト兄の為なら私はなんでも……」
「それ以上はだめ!!」
シャルるんはもうシスコンを超えてヤンデレになってるよ~!!私、結婚したらシャルるんに刺されそうで怖いんだけど……。
「じゃあ最後はかんちゃん」
「お姉ちゃんはその……ロシアの代表だし……料理も武術も勉強も得意なんだよ……この前のクリスマスに、私のために苦手な編物でセーターを編んでくれたんだ……」
……もう、なんだろ、これってただののろけ話な気がしてきた。はぁ……少し頭が痛くなってきた。
「で、本音はどうなの?」
「そうだよ。本音にもお姉さんが居るんだよね?」
マドマドとシャルるんの言葉に私は少し固まった。かんちゃんは訳を知ってるために少しビクリとする。
「……ふふふ」
「あ、あれ?」
「ほ、本音?目が据わってない?」
二人も漸く気づいたようで若干震えてる。
「うん、お姉ちゃんは凄いよ。私よりメイドの仕事上手だしお茶を入れるのも上手だし、料理なんか楯無様と一緒にやってるから私なんかより随分上だし、洗濯だって流石従者ってレベルだしね。うん、私なんかより凄いんだから……どうせ私はマスコット扱いなんだよ、料理も一般人レベルだし裁縫も編物もできないし、従者としてなんか不適合なんて他の人たちから言われるし、アハハ……そっか、私ってメイドとして失格なんだね、いつも失敗ばかりで何をしてもマイナスにしか働かないし、こんな私なんて存在しちゃダメなんだよね、私は無価値なんだよね……アハハ……アハハハハ……」
そうして私は暫く小声で、まるで呪詛のように続き、聞いてるマドマドとシャルるんは互いに抱き合ってガタガタ震えてる。
「……二人とも、本音にお姉さんの事を聞いたらダメ」
「ほ、本音のお姉さんってそんな……」
「うん、絶妙な仕事人間、それと周りから毎日のように比べられてたから、本音は本当の意味でシスターコンプレックスなの」
「……本音ってもとに戻るの?」
「……多分大丈夫、でも」
かんちゃんの言葉に二人が首をかしげる。
「……本音がこの状態になったら、もとの本音に戻るまで逃げられない。前に一度なったときは……」
「「……」」ゴクリ
「居た部屋の襖が突然閉まって、どんなに引っ張っても開かなくなって、窓もピクリとも動かなくなった。」
その言葉に二人は言葉を失った。試しにマドカが窓を開けようとするが、まるでコンクリートで固められたように一切合切開かなくなっていた。
「アハハ……アハハハハ……」
周りに私の狂ったような嗤い声が恐ろしく響く。そして
「「イ、イヤァァァァァァァァ!!」」
数十分後、漸く元に戻った私が見たのは部屋の隅でガタガタ震えてるマドマドとシャルるん、かんちゃんの姿だけだった。