「はぁ…………頭痛い」
翌日、俺はため息混じりに昼食のお弁当をいつものメンバーで食していた。というのも
「いや~何度見ても凄いよなこれ!!」
ディオが夢中ながらにスマホで動画を見てる。しかもその動画というのが
「この『白騎士』って奴の剣の動きもだけどさ、特に『月下銃士』とかいう奴のビームなんて、男心擽られるぜ!!なぁクロト!!」
「あ、あぁそうだな(言えねぇ、まかり間違ってもそれが俺だなんて絶対に言えねぇ)」
「クロト兄、なんか表情硬いよ?」
シャルが心配そうに聞いてくるが、俺は何でもない、と返す。
(はてさて……いったい何日ぐらい俺の平和は続くのかね~)
一ヶ月ぐらいかな、と思いつつ、俺は弁当のサンドイッチを完食するのだった。
月日は数年ほど流れ、俺とシャルは相も変わらず母さんと三人でゆったりと生活していた。
ハイスクールの中等部の生活にも慣れ始め、色んな意味で世界は原作通りに変わっていった。そして現在、俺とシャルは家の畑で野菜の収穫をしている。
「シャル、そっちのトマトを収穫頼む。こっちのジャガイモはもうすぐ終わるから」
「分かったクロト兄」
といってもシャルは女尊男卑の影響を全く受けず、男の俺やディオとも相も変わらない日常を送っていた。
「うん、取れた取れた!!」
「お疲れシャル、悪いな、日曜の朝方だってのに」
「ううん、私はクロト兄とお母さんがいれば全然大丈夫だから。むしろ家族の役にたてて嬉しいくらいだもん」
「そっか……」
そういうシャルに、俺はよしよしと頭を撫で、シャルはそれに顔の頬を少し緩ませている。とその時、何やら不思議な気配が背後を襲った。
「……シャル、俺はちょっと用事があって少しここを離れるから、野菜を家に運んでくれないかな?」
「ん、分かったよ」
シャルはなんの疑いもせずに野菜を持って家の方へと向かっていく。そして俺は畑の中からニンジン何本か房抜いてその場を離れる。
近くの森まで来ると、俺はISのハイパーセンサーだけを起動し、辺り一帯を確認する。そして、
「必殺!!キャロットミサイル!!」
手元のニンジンを一気に投げ飛ばした。すると、
「ニンジンさ~ん!!」
なんとウサミミを着けてアリスの格好をした変人が、蛙跳びで四つほどなげたそれをいとも簡単に両手と口でキャッチして見せた。ていうかウサミミならせめてうさぎ跳びにしろよ。
「…………」
「ニンジンさ~ん…………ってあれ?」
「……えっとFBIですか?今目の前にニンジン泥棒してるウサミミの指名手配犯が…………(迫真の嘘)」
「あわわ!!それだけは勘弁してぇ!!」
ウサギの悲鳴は森のなかに大層響き、小鳥たちが一斉に飛び立っていった。
「で、アンタは確か数年前にISを発表した、天災で頭のネジが一本どころか全部抜けてて、なおかつ指名手配犯の篠ノ之束でいいんだよな?」
「はい、その通りです」
まさかの敬語に俺は驚きながらも、目の前でひれ伏してる残念美女にジト目を向ける。
「その指名手配犯様が、いったいぜんたい、一健全な男子学生になんのご用ですか?自分とはなんの関わり合いもないと自覚してますが」
「いや~君の持ってるISについて、ちょっちO☆HA☆NA☆SHIしたいな~なんて」
「何をふざけた事を言ってるんですか?そのウサミミは飾りなんで引っこ抜いて良いですよね?良いんですか?良いんでしょう?」
「三段活用上手すぎ!!え、君ってホントにフランス人?」
驚くところそこかよと思いつつ、俺はため息をついて後ろを振り返った。
「ともかく、俺はアンタみたいな変人と付き合う義理は毛頭ないから、さっさとこっから消えて日本に戻りやがれ」
まぁ実際、俺の予想に反して数年もウサギさんが来るのが遅かったのは正直驚きだが、干渉してくるのならば逃げるだけのスタイルである。
「そうは…………いかないよ!!」
さて、ウサギさんの人間場馴れした跳躍を確認すると、俺は手元のスイッチを躊躇いなく押した。すると突然地面と木々の上からトリモチ弾と網が発射され、敢えなくウサギは文字通り確保された。
「ちょっと!!なにこれ!!」
「ISの開発会社が売ってる、対テロリスト用の強化トリモチ弾と、漁師とかが使う網ですよ。暫くそこで大人しくしておいてください」
俺はそういって家の方に歩き進める。途中ネットを引っ張ったりするような音が聞こえたが、とりあえず放っておく。
(なんせ、女性の小指すら入らないほどに網目の小さいうえに、芯材にタングステン使った最高クラスに丈夫な網だからな。あれは)
もっとも、それを破壊しかねないのがあの変態ウサギだということも含めると、俺の頭痛の種が増えるのだった。
「あ、クロト兄お帰り!!」
家に戻ると、既に朝食の準備を終えたシャルが出迎えてくれた。最近は母さんが病気で寝込むことが多く、俺とシャルの二人で家事炊事をするのが日課だった。
「ワリィなシャル、今日は俺が料理の当番だったのに」
「気にしなくて大丈夫。用事があったんだから仕方ないよ」
素直にシャルに謝るが、彼女は笑ってそれを返す。
「でも、今度ショッピングに連れてってね。クロト兄の奢りで」
「おいおい、家族でそれはキツいって」
「冗談だよ。さ、お母さんを起こしに行こ」
「おう……」
冗談に聞こえない冗談を笑いつつ、俺はシャルを追って母さんの部屋に入ると、そこには
ベットで肌が異常に白くなって、息をしなくなっていた母親がそこにいた。