「トリックオアトリート!!」
IS学園も既に秋、季節はタイトル通りの時期になっていた。当然というべきか、楯無さんがハロウィーンパーティーを開催しており、俺達もまた仮装をしていた。
「おう、シャル……随分ときわどいのを選んだな」
「そういうクロト兄もシンプルなのだね」
シャルロットはどうやら小悪魔を選んだのか、黒い小さな羽付きのチューブトップの上着に、黒いフリルのついたショートスカート……もう小悪魔じゃなくてサキュバスなのではという際どい衣装だった。
かくいう俺の方もヴァンパイア……吸血鬼で、黒いマントに燕尾服、そして髪を一時的に逆立たせている。
「お~クロ君、シャルるん、トリックオアトリート~!!」
「あ、本音、トリックオアトリート!!」
本音……多分魔法使いをイメージしたのか、黒いとんがり帽子に黒いローブ、そして手には長ったらしい気の杖を持った姿をしていて、やはりというかローブの長袖がダボダボになっていた。
「似合ってるぞ本音」
「えへへ~ありがとうクロ君♪」
「む~、二人とも私を忘れてないよね~」
シャルが不満そうに言ってくるので、俺は軽く頭を撫でてあげると、シャルはまるで猫のような鳴き声で顔をにやけている。
「あら。クロトさん、Trick or Treat!!」
「おっすセシリア……」
流暢な英語で言われ気づいた俺が彼女を見て少しだけ驚いた。プリンセスモチーフなのか、淡い蒼のロングドレスに、カボチャをモチーフにした手提げ鞄を持っている。なんというか、
「派手だな」
「派手だね」
「セッシーは派手だね~」
「揃って異口同音ですの!?いえ、それは構わないのですが、もう少し他に何か……」
セシリアは残念そうに頭をガックリと下げると、それにつられてドレスにて強調されていた部分も一緒に動くわけで、
「「……」」ジー
我が妹と彼女は同時に自分の同じ部分に視点を当てる。二人とも俺から見たらそれなりに成長しているのだが、如何せん、目の前にそれ以上の存在がいるため
「「……セシリアは私の敵だ」」
「なんでですの!?どうしてですかクロトさん!!」
あまりのことに驚いて俺に泣きついてくるが、これに関して俺が言ってしまえばはっきり言って事故案件になってしまうため、軽く苦笑いを浮かべるに留まることにした。
パーティー会場の中にはいると、それぞれの衣装に身を包んだクラスメイトや学友達がいた。というか、少し露出高くないか女性陣?
「お、四人とも来たな!!凄い似合ってるぜ!!」
と、声をかけてきた一夏にとりあえずトリックオアトリートと挨拶する。一夏はどうやら狼男のようで、少しワイルド系な衣装に身を纏っている。
「おう一夏、馬子にも衣装といった感じか?」
「やっぱりか……マドカにどうしても着てくれって頼まれてさ……」
「大丈夫だよ一兄さん!!ちゃんと似合ってるから!!」
「うぉ!!どこから湧いて出た!!」
一瞬で現れたマドカに驚きながらも、定型文のようにトリックオアトリートと挨拶する。
マドカは定番中の定番、ジャックオーランタンといった感じで、頭にはカボチャの被り物を、体は黒いローブにカンテラと妙に拘っている。
「兄さん達が居るところにマドカあり!!話題に出れば地の果てだろうと一瞬で這い寄る混沌なんです!!」
「どこのクトゥルフだ。そだ、春秋達は?」
「あぁ、春秋と総士なら……」
一夏が視線をずらし、俺達もつられて見ると
「「Trick or Treat!!」」
「「「「キャァァァァァァァァァ!!」」」」
何故か仮装しながら二人でギターを引いてやがった。後ろには軽音部らしき少女ドラマー、ベース、キーボードの子達もいて、中々にしっかりとしてる。
しかし問題があるとすれば外見だ。どちらもソンビ系のテーマなのだが、そこまではまだいい、問題は姿だった。
総士の方は白い薄汚れたローブにエクステでも使ったのか長くボサボサの髪、さらにメイクで色白だった顔と肌がさらに白くなっていて、あきらかに遊○王の『ゾ○ビ・マス○ー』である。
対して春秋はこちらはドクロ系のゾンビで、紫色のローブに仮面で出来たドクロフェイス、さらに王冠まで被って……こちらもまた遊○王でお馴染みの『ワ○ト○ング』だ。
まぁ確かにハロウィンだし、ゾンビも定番と言えばそうなのだけど……もう少し何とか成らなかったのだろうか?
「あんな感じ」
「なんだろ……曲聞いてないから何とも言えないけど、なんか嫌な予感が……」
『おい一夏兄さん!!クロト来たならさっさと連れてこい!!』
「……やっぱりか」
「そういうことだ、んじゃ行くぞ」
「あぁ、もう、分かったよ!!」
俺は彼女たちから暫く離れ、バンドスペースに上がると、一夏がドラムを、俺は総士からギターを受け取って真ん中に立ち、その総士はベースへ、春秋もキーボードへと移動する。
「そんじゃ……一曲目」
「「「俺達の歌を聴けぇ!!」」」
「!!」タンタンタン←一夏
シャルロット視点
「クロト兄達、やっぱり凄いね」
四人の即興ライブを聴きながら私はそう思った。右手にはマカロンを持っていて、隣ではマロングラッセを美味しそうに食べる本音もいる。
「そうだね~クロ君ってフランスでギターとかやってなかったの?」
「一時期の趣味で少しはやってたみたいだよ。友達とバンドやってたみたいだし」
「それでもやっぱり凄いね~」
私達が納得していると目の前に知り合いが二人通り掛かった。鈴とラウラである。二人とも自分の属性というか、鈴はチェシャ猫モチーフ、ラウラは純粋なバニーガール姿だった。
「あ、二人ともトリックオアトリート!!」
「トリックオアトリートね。しかし一夏も春秋も、私が日本に居たときより上手くなってるわね……」
「ほう、鈴は嫁と同じ学校に通っていたと言っていたな。その頃の嫁の話を聞かせてくれ」
それには私も少しだけ興味があった。クロトも総士も春秋もそれなりに過去について話してくれたけど、一夏に関してはあまり話してくれないのだ。
「う~ん、昔から一夏はあんな感じだった。無自覚に女の子にフラグ立てまくって、そのくせ一方的にへし折る。噂じゃ、毎日誰かしらが枕を濡らしてたって噂まであったし」
「それはなんというか……鈍いんだね?」
「ホントそう!!そのくせ料理になったら異常なほど鋭くなって、隠し味をバラすどころか手抜きの一切合切を食べただけで分かるんだから、それなりに苦労したわ」
あー、それに関しては納得する。以前の料理対決でもクロト兄と楯無さん含めて三人で私達女子の心を完膚無きまでに破壊し尽くしたし。
「けどあいつ、こうと決めたら一直線で、そんなところが……ね?」
「ふむ……なるほど」
「あら?四人ともトリックオアトリート♪」
ラウラが納得していると、今度は楯無さんと簪さん、そしてどうしてか箒と三人がやって来た。
楯無さんはどういうわけかキョンシーのようで、額にはお札が貼り付けられている。というかヨーロッパの文化で中国妖怪なんだ……。チョイスがなんというか……
簪はそれと変わってミイラ男ならぬミイラ女。これはどちらかといえばラウラがなりそうなイメージだったんだけど……まぁ意外性があって面白いね。
そして箒は……これまた意外というか魔女で、白いベレー帽に金色の杖、さらに白と青をベースにしたドレスローブのような姿をしていて、ダーク系なイベントでは珍しい白色系の姿をしていた。
「トリックオアトリート。三人も楽しんでるようですね」
「わ、私はただこの人に連れられてだな……」
「箒、アンタそんなガチなコスプレ衣装するなんて思ってもみなかったわ……」
「いや、これは知り合いの服を裁縫で真似たものでな……コスプレでは……だんじて…………ない」
いや、誰がどう見てもコスプレです。私達全員がそう思った。
「……ところで楯無さん、そのお札……」
「あら?シャルロットちゃん、これがどうかしたの?」
「いえ……これを外したらどうなるのかな……と、思いまして」
すると楯無さんは脱兎の如く逃げようとするが、箒とラウラの物理系ほぼ最強コンビに取り抑えられる。
「分かりやすすぎますよ……それで、外したらどうなるんですか?」
「……生徒会の仕事10倍、おこずかい全額カット」
「…………」
それを聞いた私たちは一瞬黙った後、思いっきりそれをひっぺがした。
「イヤァァァァァァァァ!!」
「お嬢様、書類が溜まりに溜まってますので、さっさと行きますよ」
「ギャァァァァァァァ!!みんなのブワァァァァァァァァカァァァ!!」
(((今までの行動の結果です)))
全員が全員、またそう思ったようだ。
パーティー終了後、俺は本音の部屋へとやって来ていた。部屋には俺と本音の二人きりで、簪はどういうわけかシャルロットの部屋へと行っているらしい。
「パーティー楽しかったね~クロ君」
「そうだな」
個人的にはああいったイベントを事前予告抜きでやるのは勘弁してほしいが、まぁ本音が楽しめたならそれはそれで問題ない。
「……ねぇ、クロ君」
「ん?どうした本音?」
「これからも、こんな日常が続けばいいのにね」
俺はその言葉に、彼女の心の悲しみを感じ取った。
「そうだな……この半年は特に酷かったし」
「謎の襲撃に、ラウラウの暴走事件、臨海学校の襲撃に学園祭テロ……私達一歩間違えば死んでたんだよね」
「……死なないさ」
俺はそういって本音の後ろから軽く抱き締める。
「本音は俺が守る。前からそう言ってるだろ?」
「うん……でも」
「……はぁ、仕方ない」
俺は柄にもなく彼女を振り向かせると、その唇を無理矢理重ねる。本音も最初は驚いたが、すぐに腕を俺の首裏に絡ませる。
「俺は口約束でも、約束は絶対に反故にはしない。分かってるよな?」
「……そうだね。クロ君は、絶対に約束を守ってくれるもんね」
「おう。命を懸けてでも守ってやるから、大船に乗った気で安心しろ」
「うん♪」
本音の笑顔に、俺は少しだけドキリとした。
「ねぇ、クロ君」
「ん?」
「……かんちゃんなら、今夜はシャルるんの部屋から戻って来ないから安心だよ?」
「……へ?」
突然のその言葉に俺は少し思考を止めた。え、簪が今晩戻ってこないって……え、つまり……え?
「だ、だから……私に……トリックオアトリート……して欲しいな///」
「!!///」
漸く理解して俺は瞬時に赤くなる。しかも惚れた彼女の上目使いのおねだりという最強コンボ……つまるところ……
「……言っとくけど、加減は出来ないからな?」
「うん、クロ君の思うがままに……イタズラして?」
「おう……」
そして俺たちは一つのベットに潜り込み、そして一つとなった。