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おかしい、幾らなんでも切り裂かれる感覚が一向に来ない……そう思って私は瞑った目を開くと、一夏さんの機体の剣は私の真横に突き刺さっていました。
「生き……てる?」
なんで、私はそう思って一夏さんの機体の顔を見る。全身装甲で頭部も特殊な装甲で被われたその顔を
「セシリア……俺はお前を殺さない」
「!!なん……」
「お前が欲しかったものが、気づいたからだよ」
欲しかったもの?そんなものは…………
「お前は俺に、自分を殺してくれと言った。その理由も、それに至った訳も聞いて……その上で気づいたんだよ」
「なに……を」
「お前は
「そ、そんなこと……」
ない、と言いたい口が途中で強ばってしまいます。まるでその言葉を言わせないかのように、声が出なくなる……そんな感じに。
「けど、お前は頑張れば頑張るほど、誉めてもらうどころか、それを当然として受け止められたり、もしくは他人から利用されたりしたから……俺にあんな事を言った」
「……!!」
「オルコット家の当主として出来て当然……一緒にいるメイドにまでそんな風に言われたら、俺がお前の立場でも確かにそうなると思う、けど」
彼はそういった途端右腕だけを部分解除した。何を――そう思った瞬間に、彼はその掌を頭に乗せました。
「俺には、俺達兄弟には両親が居ないから……両親にどうされたいってのも少し分からない……けど、俺はお前が努力したことを、誉めてやりたいって思ったんだ」
「あ……!!」
その言葉は、いえ、その姿はまるで幼い頃に見て、そして憧れたお父様の影と、良く似ていました。
お父様はISが出てからも、その風潮に負けず会社を守り続け、お母様はそれを影から何時も支えていた。その事を幼い私に何度も教えてくれ、家で私の成長を一番喜んでくれたのもお父様でした。
それを彼は、私に教えてくださいました。たった数日の関係だった私に、自分が捕まるかもしれない状況になるかもしれなくても……彼は
「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そして私は崩れました。今まで背負ってきたものを下ろすかのように、彼に抱きつき、その胸のなかで嗚咽を漏らします。
千冬視点
「まったく、下手な茶番をしおって……」
管制室でそんなぼやきをしながら、私はため息を着きたくなった。なにかやらかすとは思ってはいたが、まさかあんな事をするとはな……
「さて、どう思うお前ら?」
私は振り返らずにそう聞くと、男三人衆は唖然とした表情でフィールドを見ていた。
「なんていうか……一夏って演技力ありますね?」
「藤原、恐らくアイツにそんなものは全くない。寧ろあそこまで演技に見えたのはただ単に全身装甲と機体特性との二つがあったからこそだ」
そうでないなら、いや、私の考えすぎだな。
「それで、一夏兄さんには罰はあるんですか?」
「いや、機体はモニタリングしていて正常値だったし、何よりオルコットによる自作自演だ、注意こそすれ罰するには値しないさ」
「そうっすか…………」
それだけ言うと、ファブリエはさっさと出ていってしまった。それを追うように、残り二人も退室していく。
それを確認すると、私は再びため息をはいた。
「……山田先生、オルコットの治療に行って貰えるか?」
「はい!!織斑先生、そういうの苦手ですも……「摩耶、あとで少し模擬戦をしようか?」ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィ!すみませんでしたぁぁぁぁ!!」
そういうと摩耶は逃げるように走っていく。その速度は普段の彼女の雰囲気からは考えられないほどに速かった。
「…………やれやれ」
私はそういうと今の試合の映像をディスプレイに表示する。
「…………」
改めて見直してみると、一夏の動きはおかしく感じた。
まず武器の動かし方、刀や似たような剣は元々アイツも篠ノ之流の剣術をかじる程度だが学んでいる。だが斧となると動きはかなり変わるはず……それを一夏はまるで手足のように自然に動かしていた……ブリュンヒルデなどと周りから云われている私でも不可能だろう。
そして口調、試合中の一夏の声は別人のようにトーンと勢いが低く、さらにアイツにはない鋭さが感じられた。
「(一夏……お前はいったい……)」
一夏視点
「…………」
廊下を歩いていた俺は、ひたすら無言で、背中から感じる刺すような視線に耐えていた。
「「…………」」ジー……
後の二人……恐らく箒とマドカからの視線は、多分じゃなくて確実に嫉妬なんだろうな……まぁ、でも、
「…………久しぶりに会いたいな……鈴」
俺は今は中国で頑張っているであろう友人……いや、それ以上の存在を思い出す。
もしも彼女がさっきの状況を見ていたら、多分嫉妬どころの話じゃなくなる。下手したら……
「」ゴクリ
まぁ、アイツも近々こっちに転入するって話らしいし、俺にとってアイツは必要な存在なんだ。……
「なあ……そうだろ、俺?」
そして俺は天に向かって手を伸ばし……それを、
「……何をやっているんだ?一夏?」
と、俺の行動に気づいた箒が声をかけてくる。そして、俺は少しだけ、唇を歪めた。
「……何でもない。それよりマドカは……さっきまで一緒にいたんだろ?」
「アイツなら御手洗いに行ったぞ……それで、いったい何をしている?」
「いや、別に……
その言葉を聞いた途端、箒は顔を歪め、一歩だけ後ろへ下がった。
「…………なんの事だ?」
「惚けなくていい、ここには今は誰もいないし監視カメラもない。安心していいぜ、なぁ……」
――
オマケ二十七 病室はお静かに
シャル「セシリア~お見舞いに来たよー」
セシ「あら、ありがとうございますわシャルロットさん」
シャル「良いって良いって、それでセシリアは一夏の事好きなの?」
セシ「な!?い、いいきなりなんですの!?」
シャル「アハハ照れちゃって~、スタジアムであんな風に抱きついてたんだから、脈の一つはあるんでしょ?」
セシ「そ、そんなことあああありえませんわ!!」
シャル「セシリアは可愛いな~」
山田先生「二人とも!!病室では静かにです!!」
セシシャル「はーい……」