さて、俺の言葉を聞いてか否か、目の前の泉理さんは体を緊張させている。まぁそりゃね、同い年の男が実は自分の息子……便宜上は……であるなんて聞かされたら驚かない方がおかしい。
「…………クロト、いや拓哉」
「クロトで良いぜ一夏、それに南沢拓哉は一度死んだ人間だ、その名前で呼ばれるのは癪に触る」
「ならクロト、お前がISを動かしてるのは、ディソードによるリアルブートのお陰なのか?」
「へぇ、察しが良いな。その通りだ」
「…………だとしたら、お前はあとどれ位生きられる」
その質問に、俺と泉理は驚く。そして俺はある意味感心した。
「なんだ……お前も知ってるのか」
「……ギガロマニアックスの能力を使い過ぎれば肉体を……自分の脳を壊す。たった一回でも深刻なダメージを受けかねないのに、お前は……」
「なに、その点なら問題ないさ。一夏、俺もお前と同じ
その言葉に、今度は一夏が驚いた。まぁ半分嘘なのだが信じてるみたいだな。
「……なんで、俺がそうだと知っている」
「そりゃ、お前が人払いのリアルブートを使ってるから」
もし一夏のディソードが正真正銘のやつでないなら、そんなことは絶対にできない。確実に、な。
「はっきり言えば、泉理のディソードは劣化版……模倣品だ。ギガロマニアックスの適正を後付けで手に入れたせいか、本来のリアルブートは一定の一つの事にしか発動できない」
「…………その通りよ。私のリアルブートは『他人から自分の姿を他人の姿へと誤認させる』こと、それ以外にリアルブートはできない」
泉理は俺の言葉に肯定し、こくりと小さく頷いた。
「しかも一夏、お前自分で言ってたよな『俺がISをリアルブートで動かしてるのか』って、それはつまり一夏、お前はそうじゃないと分かってるような口だ。その
事実、ディソードの副作用は本来ならば殆ど誰も知らない。ていうかギガロマニアックス自体が妄想の産物だから、医学的に証明されてもいない。
だからこの事を知ってるのは恐らく……組織を潰そうと躍起になってるあの嫌みったらしい黒髪ロングの研究者ぐらいだろうな……。
「本来ならばお前にも幻聴なり視覚の乱れなりの
「…………信じていいのか?それは」
「なら信用ついでに教えておいてやる。今この学校にいるギガロマニアックス……劣化版込みでディソードを顕現してるのは俺達以外には居ない。素養があるのは二人で、知識があるのも二人、どっちも俺の知り合いだから問題なしだ」
勿論素養持ちってのはそれは簪と本音だ。知識持ちってのも楯無さんと転生者の総士、春秋はどうかは知らないがなんとも言えないが、全員信頼に足る人物だということには違いない。
「……泉理は大丈夫か?」
「うん、私は別に……でも束さんになんて言えば……」
「そういやウサギも騙してるんだったな……はぁ、仕方ない、そっちはあとで策を考えとくよ」
それでもあのシスコンウサギが暴れない確率は万に一つの確率でも高い方だが。
「それじゃ俺はこれで、人が来る前に元の姿に戻っておけよ」
俺はそう言って二人から別れた。が、俺の心の中は結構イライラしている。それはもうぶつけようが無いくらいに……。
「…………」
屋上へやって来た俺は、誰も回りに居ないことを確認すると、携帯を取り出してあるアドレスを開く。そしてその人間の電話番号を押して耳に当てる。
「…………」
『…………私だ』
電話の相手は抑揚のない、まるで一本調子のような平坦な声で応じる。
「一年ぐらいぶりだな、…………
『貴様……南沢拓哉だな?』
「その通りだ、ついでに言えば今はクロト・D・ファブリエって名前だからその名で呼ぶな」
俺が苛つきを隠しながらそう言うと、尾上はため息をついている。
『貴様、自分からこちらには関わらないと言ってなかったか?』
「テメェが約束を守ってたならな。南沢泉理がIS学園に来ないようにしたんじゃ無かったのか?」
そう、俺はこいつに彼女をこの学校に来ないように頼んでいた。それなのに彼女は現にここにいる。
『私も、私の共犯者もそのつもりだった……が、別のセクターの人間に邪魔をされてな、どうしようも無かった』
「別のセクターだと?あの地震以来、ギガロマニアックス研究をしてるのは…………まさか」
俺は自分で言って一人だけ思い出した。そいつは恐らくオリジナルの
「和久井の野郎か……」
『そうだ。奴はディソード使いでありギガロマニアックスとしての素養を持つ大人だ。劣化版の私と模造品の協力者では太刀打ちなどできない』
「ち…………それで、そいつの目的は?」
俺は奴の目的を聞き出す。和久井は監視役といったがそれ以上に知識欲が高い。アイツが目的もなく地震の要因となった因子を持つ彼女をみすみす何処かへと送ろうなどと考える訳がない。
『奴曰く、ISとギガロマニアックスを組み合わせると何かしらが起こるからと言っていたが……詳しくは知らん』
「そうか……それで、お前はオリジナルの為に事件の下準備か?」
『…………私にとっては、アイツが面白いと感じればそれでいいからな』
まるで会話のドッジボールのようだが、尾上世莉架という少女の本質を知ってる俺からしたら納得の言葉だ。……かなり狂気を孕んでいるが。
「そうかよ。悪いが俺もその事を確認したかっただけだ。今回のはしょうがないと見過ごしておいてやる」
『そうか……『尾上!!取材に行くぞー!!』あ、待ってよタク~!!』
そう言って奴は電話を切った。最後の最後で俺のもう一人のオリジナルの声が聞こえて、打って変わって天然系少女の顔になる彼女を思い浮かべ苦笑する。
「…………ISとギガロマニアックスの組合わせ……か」
それが何を意味するのかは、俺には正直分からない。けど、
「テメェらの好き勝手にはさせねぇぜ……和久井修一、委員会のくそ野郎ども……」
――その時はまだ気づいていなかった。歯車は噛み合い始め、やがて動き出す時を待っていることを……。
――
オマケ二十八 その後
泉理(箒モード)「なぁ一夏、部屋に戻ったら少し良いか?」
一夏「お、おう…………」
泉理「む?どうしたのだ一夏?」
一夏「何て言うか……箒以上に箒らしいというか……」
泉理「……それはこれを取り出したりとかの事か?」
一夏「おま、どこから木刀取り出した!?ていうか危ないから向けるなって!!」
泉理「む、済まない……」
一夏「(そういや……箒の時は結構サイズが会ったけど……本当の姿の時は…………)……ま、がんばれ」
泉理「一夏ぁぁぁぁぁぁ///!?」
その後、木刀でしばかれた後、本当の姿に戻った泉理にジト目の冷たい視線を向けられたのは言うまでもない