さて、あんな一夏とセシリアの対戦から一日が経った昼休み、俺は屋上で昼寝と洒落こんでいた。
「えへへ……クロ君の寝顔可愛いね……」
と、こんなことを言ってるのはクラスメイト兼恋人の本音だ。ちなみに今の俺の状況は、本音の脚に膝枕させてもらってるという、新党のほほんの奴等に異端審問会を開かれてもおかしくないが、はっきり言って恋人権限だバカ野郎と言ってやる。
「ん、本音の笑顔よりは劣るよ」
「もうクロ君ってば~///」
「……本音は一回地獄に堕ちればいい」
なんか物騒な事を呟いてるのは本音の幼馴染み兼ご主人様(間違いにあらず)の簪である。どうやら今は眼鏡じゃなくて裸眼らしく、何時もより瞳が細い為に睨んでるようにも見える。
「え~かんちゃんヒドイ~!!」
「食事中に隣でイチャイチャされてたら誰でもそう思う。むしろ思わない方が少ない」
バッサリと切り捨てる簪に、本音はシュンと頭を下げる。まぁ別にそれはいいんだが顔にふくよかな感触が気持ちいい具合に当たってるわけで、それなりに幸福である。うん。
「…………本音、あとで模擬戦ね」
「なんでさ!?」
それは正義の味方の口癖だぞ?
さてそんなこんなで放課後になった訳なんだが、なんかちみっこいのが校門の近くでうろうろしてる。
「えっと……ああもう!!事務局ってどこよ!!ホント無駄に広いわね!!」
…………なんか聞いたことのある声だよ。しかもツインテールにちみっこい体に凹凸のない肉体……うん、原作ヒロインの一人だった。
「えっと……君誰?」
「へ?あぁ丁度良かったわ、実はちょっと道に迷ってね、事務局ってどこにあるか分かる?」
「事務局は校舎の東側の教職員入り口の近くだ。なんなら案内しようか?」
そう言うと彼女は任せた、と言って俺のあとを着いてくる。そして数分ぐらい歩いて到着すると彼女は感慨深そうにため息をついた。
「こんな近くなんて……敷地広すぎよ」
「それに関しては全くもって同感だな。人工島を丸々一つ敷地にしてるくらいだし」
「どんだけよ……それより、アンタ日本語上手すぎない?」
と、彼女は不思議そうに聞いてくる。まぁそりゃ今はフランス人の容姿だし、髪も顔も日本人とは全く違うからな。
「実家がISの生産会社だからな。俺もそれの技術者だし」
「なるほどね、つまりアンタが
少女の発言に少しだけムッとしたが、とりあえず営業スマイルは崩さない。
「そういう貴女の事も知ってますよ、中国の代表候補生の凰鈴音さん?」
「へぇ、私もそれなりに有名ってことね」
「ええ、なんでも本国では対戦相手を尽く蹂躙して、その中華剣術は眼を見張るに値するとか。暴れ始めたら容赦の一切の無いことから、ついた二つ名が『
「蹂躙ってそこまではやってないわよ!!ただアイツらがチビだの鉄板だの言ってきたからO★HA★NA★SHIしただけよ!!」
フシュー、と行き荒くしていて、もし猫耳と尻尾があればピンッ、と立ってること請け合いだろう。
「それで、そちらは自分のことを知ってるんですか?」
「あー、とりあえず敬語は良いわよ同い年だし、アンタのことは一夏から昨日メールがあってね、言ってたわよ…………
その言葉を聞いた瞬間、俺は思わずディソードを抜いて構えようとした。が、その前に彼女の
外見だけ見れば青竜刀のそれと良く似ているが、その刃は波のようにうねっていて、柄頭には鎖のような物に繋がれた左手の対照的なもう一本と繋がってる。…………明らかにディソードのそれだった。
「お前…………」
「そうね、改めて自己紹介するわ、私の名前は凰鈴音、中国から来た転校生であり、
彼女のその言葉に、俺は少しだけ納得した。
「なるほど、ね……つまるところあの腹黒然少女と似たような存在……ってわけか」
「ふーん、なんだ、聞いても驚かないのね」
「ある程度は予想していたからな。ていうか、一夏がギガロマニアックスだって分かったときから、可能性は感じてた」
そう、俺はこの少女の事をある意味で感付いていた。
「……どういうこと?」
「この世界には尾上世莉架が存在していた……そしてあの地震も、つまりこのIS世界の中でもアイツらの存在は確認できてたし、彼らのストーリーも現存する」
だとすれば、おかしなことが二つある。
「ならなぜ南沢泉理が篠ノ之箒に化けていたのか……本来なら彼女は一夏とは知り合わず、別の人間に化けているはず、なのに彼女は箒という少女に化け、一夏とも知り合ってる」
詰まる所物語のキャラクターの破綻、本来居るはずの人間が存在せず、別の人間と交わる……これを破綻と呼ばずに何とするか。そして
「そもそもの話、お前が一夏の学校に転校してくるってのもおかしいと思った。別に中国から日本に移住するってのは良く聞く話だし、疑うつもりはないが、余りにもタイミングが良すぎる。何せ
そう、あのウサギがISを発表したのは丁度六年くらい前、そして地震が起こったのもそれから半年ぐらい、当時は地震の影響で本国に戻る外国人が多く、逆に移住する外国人なんて0に近いはずだ。
それなのに彼女は一夏に出会った……となれば考えられるのは二つ、本当に中国から来たのかだが、これは彼女のさっきの言葉から違うと判断できる。つまり残るは――
「
俺の導きだした答えに、彼女はフッと笑うとその手の剣を引いてしまった。
「そうね……それだけなら良かったのにね」
「それだけなら?どういうことだ?」
「…………そうね、どうせなら誰かには話しておくべきかしらね、アイツには絶対に言えないし」
そう言うと彼女は俺に向き直る。
「確かに私はアイツの……ギガロマニアックスとしてのリアルブートによってこの世界に存在してる……けど、それももう時間がないのよ」
「……時間がない?」
どういうことだ?そう思った瞬間に彼女の次の言葉に思わず眼を見開いてしまった。
「
「なん…………だと?」
その言葉は衝撃的過ぎた。存在が消滅?残り半年から三年?意味が分からなかった。
「リアルブートで存在してる私は、一夏のギガロマニアックスが無くなっても、多分生きていられる。けど、それでもアイツが……一夏が私を産み出す存在理由が無くなれば、私はこの世から消滅しちゃう」
「な!!」
存在理由……宮代拓留にとっての尾上世莉架の存在理由が『宮代拓留に面白い事を与える』だったが、彼女は再来によって彼をヒーローにすることで、自分が捕まることで再来事件を幕引きにするつもりだった……。そして彼女はその後に消滅するはずだったらしい。恐らく鈴にもそれと同じような現象に陥ってるのだ。
「……お前の……お前の存在理由は……」
「私?私はね――――」
彼女はそれを告げると、さっさと事務局へと行ってしまった……。
「鈴……お前……」
彼女の言葉が本物だとしたら、彼女が真の意味で消滅してしまうのは恐らく…………。
「俺は……どうすれば良いんだ」
その呟きだけが、夕焼けに染まる空に冷たく響いた。
オマケ二十九 買い物
本音「あれ?かんちゃん買い物行くの?」
簪「ん、なんだか行きたくなって」
本音「でも~今日ってかんちゃんが欲しそうなのの発売日じゃないよね~珍しい~」
簪「じゃあそういうことだから……あでぃおすぐらっしあ~」
本音「なにその不思議言語!?」
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つい最近簪とカオチャの雛絵の中の人が同じだと気づいてやらなければと思いましたw