IS 月は出ているか?   作:ドロイデン

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Episode52 火にガソリン……

 修羅場というのを知っているだろうか?よく昼ドラやらラノベ業界ではもはやテンプレ、お約束となったそれの起こる理由は大抵が男を巡る女同士と相場が決まっている。それは今回も同じだったが、その規模が違う。

 

「「…………」」ゴゴゴッ

 

((どうしてこうなった?))

 

 俺と一夏は目の前で起こっている剣撃に、たまらずそう言いたくなった。

 

 

 

 事の始まりはパーティの翌日の放課後だった。概ね学校時には原作通りの展開だった。そこまでは別段変わったことはなかったし、至って平穏だった。

 

 が、放課後に鈴が一夏が部屋一人部屋なのか聞いてきて、一夏はそれを否定し、それにより奴は……弾けた。

 

 部屋に戻った一夏と箒の元に再びやって来た鈴が、なんと箒……泉理に部屋替えを要求してきたのだ。当然泉理は反発しあしらうのだが、

 

「へぇ、姿を偽ってるヘタレの癖に」

 

 と、鈴が泉理を挑発したのだ。これには仏のように心の広い泉理の琴線に触れてしまったのだ。

 

 さて、読者の皆さん、カオスチャイルドを知ってる方は分かっているだろうが、泉理……もとい彼女が変化してた少女は大分キレやすい。それはもう、義弟の友人の下世話な発言に絶対零度の微笑みを向けるくらいにキレやすい。

 

 さらには今現在、姿を変えている箒もかなり血が昇りやすい質で、彼女になりきる演技のために性格もそちらに寄っているため、そのキレやすさに拍車が掛かっている。つまり何が言いたいのかというと

 

「自分勝手に一夏の意見も聞かないで……それで一夏の理解者なんて言えるね、あ、そっか、一夏の理解者(笑)なんだね」

 

 と、火に油……いやガソリンをぶちまけたのだ。これは酷い、いくらなんでも酷すぎる。そして二人とも睨み合うとディソードを一瞬で抜いて現在に至るというわけだ。

 

「……おい、一夏、これお前が原因だろ?何とかして止めろよ」

 

「冗談だろ!?あんな人外染みた切り合いの中に突っ込んだら確実に巻き添え食らってミンチだろ!!それにそっちの方がリアル戦闘の経験あるだろうが!!」

 

「俺だって死にたくねぇよ!!」

 

 いやだってよ、まだ二人の剣撃が始まって二分と経ってないが、既に部屋は傷だらけ、机は真っ二つで窓ガラスも粉々。もし俺が人払いのリアルブート掛けて無かったら千冬さんのお説教じゃあ済まないから。

 

「……というより、寮管が織斑先生だから素直に言えば良いのか?」

 

「あぁ多分それ無理だぞ」

 

「それはどういう?」

 

 俺の提案に、一夏はガックリと肩を下げながら答える。

 

「鈴のディソード……お前が言うところの劣化版なんだけどさ、その能力があるから」

 

「…………聞きたくないけど、内容は?」

 

「思考強制、鈴が言葉にして言ったことを相手はしなければならないと強制させる。多分千冬姉でも引っ掛かるな」

 

「orz」

 

 そりゃ確かに無理だな。ていうか尾上の思考盗撮より有能で、うきさんの思考誘導の上位互換とかチートだろおい。

 

「……これを止める手ってあるのかな?」

 

「……多分本人達が納得するまで止まらないかな?」

 

「「……はぁ」」

 

 もうどうにでもなれと自棄になった俺達は再びため息を吐いた。

 

「あれ?どうしたのいっちーにクロ君」

 

「ん?本音か、あーいやな」

 

「女同士の修羅場を傍観してるっていうかなんというか……」

 

「ふーん?」

 

 と、声をかけてきた本音に状況を伝えると、彼女は面白そうに笑っていて……ってあれ?

 

「ほ、本音!?なんでここに!?」

 

「ほえ~普通に来ただけだよ~?」

 

「いや、確かにそうなんだけどさ!?そうなんだけれどもよ!!」

 

 俺と一夏はあり得ないと驚いた。俺達は人払い……生徒が現状に誰も来ないようにリアルブートしてるのだ。当然今ここに居るはずのない本音にも同様に掛かってる筈なのに、彼女は平然と歩いてやってきたのだ。

 

「ねぇ、二人を止めなくて良いの?」

 

「そりゃ止めなきゃだけどさ……どうやって?」

 

 今も二人はまるで互いに仇を見る目で切りあってるため、もうつい数分前まで綺麗だったのに今ではボロボロの廃部屋みたいになってる。

 

「大丈夫大丈夫……ちょっとこれを読んでくれればクロ君といっちーは部屋からすぐ出るだけで済むから」

 

「お、おう……えっと……本音のお姉さんって凄いよな~、家事とか色々できて、流石メイドって感…………じ?」

 

 何となく読んだそれの途中、とてつもない悪寒が背筋を走った。たまらず本音の方を向くと、どこか黒いオーラを出しながら右手にとてつもない巨大な灰色の大斧のようなものを持ってる本音の姿が……ってちょっと待てこれって!?

 

「い、一夏!!全力退避!!」

 

「お、おう!!なんか分からんけど了解!!」

 

 たまらず俺と一夏は逃げ出した。以前、簪が話していたアレが本当なら間違いなく巻き込まれる!!

 

 幸いまだドアの近くに居たおかげで部屋から出た俺達は扉を開けたまま窓際の壁にもたれ掛かる。

 

「な、なぁ?なんか本音の雰囲気おかしくなってなかったか?」

 

「お、俺も友人から聞いた話なんだがな、本音はお姉さんに酷いコンプレックスを持っててな……話題にした途端雰囲気がダークネスになってな、周りにいる人間を恐怖のどん底に叩き込むとかなんとか……」

 

「よ、良く逃げ出さないな巻き込まれた人間……」

 

 一夏がドン引きしながら聞き返してくる。

 

「…………そうなったら近くのドアも窓もいっさいがっさいしまって、鍵を掛けてないのに絶対に開かなくなるらしい」

 

「…………」

 

 俺の遠い目に一夏はまたドン引きしながら出てきた部屋の扉を見ると、まるで見えない手に引っ張られるようにゆっくり動いていき……そして完全にしまった。

 

「」ガタガタ…………シーン

 

((あ、沈んだ))

 

「そ、それで、大体どれくらいで元に戻るんだ?」

 

「さ、さあ?少なくとも最低で30分は戻らないとか言ってたな……」

 

「……食堂行くか?」

 

「…………そうだな、そうしよう」

 

 俺達は逃げた。もしこの場にいれば間違いなく巻き込まれる可能性があったのだ、当然の行動だった。

 

 一時間後、一夏の部屋に戻った俺達が見たのはガタガタと震えながら床にへたりこんで号泣してる少女二人と、いつも通りののほほんとした俺の彼女がいた。

 

 この日以降、二人が本音に頭が上がらなくなる姿が良く見られるようになったのだが、事実を知らない生徒からは不思議がられ、知ってる人間達からは哀れみを向けられたという。




オマケ三十一 その時

簪「!?なんだろ……背中に冷たいものが」

シャル「あれ?簪も?」

マド「ほう?ということはシャルロットもか……」

簪「二人も?……でもなんだろう、私達三人が恐怖することって?」

マド「今いるのが食堂だから黒くてカサカサするのはあり得ないし、明るいからオバケでも無いしな……」

シャル「となるといったい………………あ」

簪マド「「あ」」

簪シマ「「「まさか…………」」」


~~~~~~~~~

泉鈴「「喧嘩してご免なさい…………暴れてご免なさい…………迷惑掛けてご免なさい……」」((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

本音「あは、アハハ、アハハハハハハハハ…………」

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