IS 月は出ているか?   作:ドロイデン

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Episode5 それでも俺は

 デュノア社長が来てから二、三日経って、俺とシャルは久し振りに学校へ来ていた。

 

「……であるからして――」

 

 が、俺もシャルも授業はどうしても上の空になってしまう。

 

――養子にならないか。

 

 その言葉に俺はどう返事していいのかサッパリ分からなかった。

 

 実際シャルの事も考えればあの人の話を聞くのが一番なのだろう。だが、だからといってそんな大切な決断を簡単に決めていいのか、そう思うと何も言えなかった。

 

「――じゃあ今日の授業はここまでだから、あまり教室に居残るなよ」

 

 と、いつのまにか授業が終わってしまったようで、回りは少しざわざわしてる。

 

「……帰るか、シャル」

 

「……うん、そうだね」

 

 俺達はそれだけの言葉で教室を後にするのだった。

 

 

 

「…………シャルは、どうするのがいいと思う?」

 

 帰り道、重苦しい雰囲気に耐えられなくなって俺はそんなことを口にした。

 

「どうするって、養子のこと?」

 

「あぁ……」

 

「……私は、クロト兄がいれば……どっちでもいいよ」

 

「そうは言うけどな……、実際養子になるって簡単なことじゃないんだぜ」

 

 俺はそういいながらシャルの表情を伺い見る。顔こそ笑ってはいたが、それでも何処か無理をしてるのは見え見えだった。

 

「…………シャル、アイスでも食べに行くか」

 

「え、ホント?」

 

「……都合の良いところは現金なんだからな、シャルは」

 

 俺がそういうと恥ずかしいのか、かなり赤くなって俯いている。そんな姿も愛らしいと思った。

 

「じゃ、早速行くか」

 

「うん!!」

 

 俺達は近くのアイスショップに向けて進路を返る。だが、それは起きた。

 

 突如として目の前に黒い高級車らしきものが止まったかと思うと、中から大勢の女達が降りてきてこちらを囲んできた。

 

「な、なんだよ!!お前らは!!」

 

「ふん、アンタみたいな坊やには用はないのよ、私達はそこの女の子に用があるの」

 

「シャルにだと!!てめぇら、いったいなんのつもりだ!!」

 

「煩い坊やだこと、やっちまいな!!」

 

 女のリーダーらしき奴がそういうと、それぞれが金属バットやら鈍器やらを取り出して、一気に襲い掛かってくる。こんな場所では自慢のISも使えるわけがなく、ごく普通の一般人の俺は後頭部に喰らってしまい昏倒する。

 

「ガハッ!!」

 

「クロト兄!!」

 

「シャ……ル…………」

 

 俺は妹の名前を呼ぶが、朦朧とした意識がプツリと途切れた。

 

 

 

「…………ん、…………くん、クロト君!!」

 

「んぐ……」

 

 気がついて目を開いた俺の前には、どういうわけかカルロスさんとウサギがいた。

 

「俺は…………いったい…………」

 

「目が覚めたようだな、クロトくん」

 

「ここは……確か俺は……シャルと」

 

「今はこのカルくんの付き人が運転する車の中だよ、漸く私があのネットやらトリモチやらから出てきて追ってみれば、くーくん、道の真ん中でボロボロに倒れてたんだから」

 

「…………シャル……シャルが!!ッ!!」

 

「シャルロット?シャルロットに何があったんだい?」

 

 ウサギから状況を聞いた俺は、シャルが何者かに連れ去られたことを二人に話す。

 

「そんな…………く、まさかあの女が既に手を回していたとは!!」

 

「あの女……もしかして現妻の」

 

「そうだ。恐らくシャルロットの存在を知って、自分の思い通りになる駒にするつもりだ!!」

 

「しかも、今調べてみたらその女、かなりイケないことに手を出してたみたいだよ」

 

 カルロスさんの言葉に、ウサギは自分のパソコンからそんなことを口にした。

 

「イケないこと?」

 

「精神制御、いわゆる人体実験だよ。ISは脳の神経操作によってまるで手足のように動かすことができるんだけど、あの女、束さんのISのシステムを使って人の脳を人工的に操作しようとしてるんだ」

 

「な!!それって犯罪行為じゃ!!」

 

「普通ならね、けど、あの女は女性権利団体のトップクラスの重鎮でもある、奴等は世界政府にまで侵食してるから、こういうことも揉み消したりなんか普通にあるのさ」

 

 ウサギはイライラしながらそういう。いつものウサミミは怒りの模様でかなりピシッと立ってる。

 

「それで、今は何時ですか!!」

 

「今はフランス時間で午後七時だよ」

 

「な!!四時間以上も気を失ってたのか、俺は!!」

 

 まさかの事態に、俺は愕然とした。四時間なんて研究所に持っていって精神操作するなんていうのはやってお釣りが出る程の時間だ。

 

「くそ!!アイツらが何処に行ったのかさえ分かれば!!」

 

「分かったら、君はどうするの?」

 

 ウサギは真剣な顔で聞いてくる。

 

「君は男の子なんだよ?ISなんて乗れないし、相手は少なからずISを持ってる。それにもしかしたら、君は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その妹と戦うことになるかもしれないんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 その言葉に、俺は何も言い返せなかった。

 

「…………」

 

「私はあの『月下銃士』の姿を見ることができればそれでいい。私にとっては他人事だし、助ける義理もない」

 

「…………」

 

「そもそも私は今や国際指名手配犯だからね。自分のやりたいように動くし、やりたいようにやる、それだけなんだよ」

 

 ウサギの容赦のない言葉が、俺の心に突き刺さる。

 

「…………それでも」

 

「?」

 

「それでも、俺はシャルの兄貴なんだ。兄貴が妹を助けないで、どうするってんだよ!!」

 

 俺は無理矢理走行中の車の扉を開けると、転がるように飛び降りた。

 

「な!!クロトくん!!」

 

 カルロスさんが驚いてこちらを見るが関係ない、俺は自らの機体を、『ルナーク』を解放した。

 

「な!!『月下銃士』!!」

 

『すみません、()()()()、俺はシャルを連れ戻してきます』

 

 既に『魔王パック』へと換装した俺は、駆け抜けるように空へ上がる。失うのは、もうこりごりだった。

 

 

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