IS x 龍騎〜インフィニットストラトス:鏡の戦士達 作:i-pod男
対抗戦から暫く経ち、一組のクラスの前に、二人の生徒が立っていた。一人は背は低めで銀髪、そして眼帯を付けている。その雰囲気は、常人とは一線を超えた物であり、『絶対零度』を体現していた。もう一人は表す言葉があるならば、『貴公士』に尽きる。優しそうな顔立ちは、どこか安心感を与えてくれるあたたかな感じだった。
「えー、今日は転校生が二人このクラスにやって来ました。自己紹介をお願いします。」
「フランスから来ました、シャルル・デュノアです。日本の事は多少不慣れかもしれませんが、よろしくお願いします。」
「え?・・・・・お、男・・・・?!」
「はい、こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて転入を」
「「「「「キャアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!」」」」」
文字通り、部屋が爆発した。恐らく窓に幾つか罅が入ってもおかしくないだろう。一夏、司狼、マドカの三人は事前に耳栓を突っ込んだので鼓膜を粉砕されずに済んだ。
「男子!三人目!!!」
「今度は守ってあげたくなる系!」
「地球に生まれて良かったー!!!」
ドゥン!
空砲だが、マグナムの銃弾である為、音がでかい。発砲したのは、一夏だった。耳栓を使っても効果は今一つの様だ。
「朝っぱらからうるさいぞ。」
銃口の硝煙を吹き消し、ホルスターに納める。殆ど全員が耳を押さえたが、一人だけ直立不動の姿勢を保ち、何も言わなかった。言わずもがな、銀髪の眼帯少女である。
「織斑、一々教室で銃を発砲するな。ボーデヴィッヒ、挨拶をしろ。」
「はい、教官。」
絵に描いた様な敬礼をする。
(教官?千冬姉のドイツ時代の・・・・?)
「私はもう教官ではない。ここでは織斑先生と呼べ。」
「了解しました。ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」
ただ名前だけ。それっきり口を噤んだ。
「い、以上・・・・ですか?」
「以上だ。」
山田先生が『もっと何か喋って下さい』と訴えかける目を有無を言わせぬ語気で封殺した。だが、目の前にいた一夏に目をつけて顔色が変わる。
「貴様が・・・!!」
手を振り上げたが、一夏の篭手の甲の部分から伸びたレーザーブレードが喉元に迫ったのを見て手が止まる。その後ろからも司狼のショットガンが顔面に突き付けられていた。
「くっ・・・・」
「俺に喧嘩を売るなら、それなりの覚悟してるんだろうな?死んでも文句は言わせないぞ?いや、死んでいたら言えないか。」
再び何かを言われる前に二人は直ぐに武器を納めた。
「今日は二組と合同で実技を行う。ISスーツを忘れない様に。忘れた者は学校指定の水着を着て来い。それも無い奴は、まあ下着でも構わんだろう。」
「「それは流石にやめて欲しいです。」」
司狼と一夏が見事にシンクロした。女子率が98%のIS学園で下着姿でウロウロされては目の毒だ。
「御鏡、織斑、男同士だろう?デュノアの面倒を見てやれ。では、グラウンドで待っている。なお、遅れた者は私が直々にノルマをくれてやる。」
それを聞いて全員が動き出した。一夏もシャルルの手を掴んで走り出した。
「シャルル、こんな所で女子に掴まったらシャレにならない。ついて行ってやるから走れ。転ぶなよ?」
「う、うん・・・」
「それなら大丈夫だ。斉藤さんや森次、後はスコールが足止めをしてくれてる。」
妨害を一切受けずに更衣室に到着すると、司狼は先に一夏を行かせた。
「あの・・・・」
「ん?」
「着替え、ないの?」
「俺のISはその必要が無い。ところで・・・・お前、本当に男か?」
「え?な、何言ってるの?」
だが、司狼は一瞬目が泳いだのを見て確信した。ハイパーセンサーを部分展開していた為、僅かな顔筋や目の動き、心拍数、そして汗の量等から動揺が走ったのが見て取れる。
「冗談だ。早く着替えろよ?先生の恐い鉄槌が頭に降って来るからな。」
グラウンドでは全員がクラスごとに分かれて千冬の前に立っていた。
「鳳、オルコット、前に出ろ。専用機持ちは直ぐに始められるからな。手本を見せてやれ。」
「何で私が・・・・」
「やる気あんまり出ないのよね・・・」
(あいつに良い所を見せられるぞ?)
千冬が渋る二人にぼそりとそう言った途端、たちまちやる気を出した。
「で、相手は誰?私は別にアンタでも構わないけど。」
挑戦的な視線をセシリアに向ける鈴音。
「慌てるな、小娘共。お前の相手は・・・・」
「うわああああああああ!!ど、どいて下さーーーーーい!!」
空からラファール・リヴァイブを纏った山田先生が突撃して来た。だが、一夏は顔色一つ変えずに右腕だけを部分展開し、彼女を受け止めた。
「気を付けて下さい、先生。ISが激突して死亡なんて面白くないですよ。」
「あうう・・・・・すいません・・・・気持ちだけが先走ってしまって・・・」
こんなドジっぷりで本当に教師かとそろそろ本気で疑い始めた一夏である。
「えと・・・・二対一ですか・・・?」
「流石にそれは・・・・」
「安心しろ、今のお前らならすぐ負ける。」
遠慮がちな二人に断言した千冬。そして千冬の言葉通り、数分後に二人はグレネードで止めを刺されて撃墜された。
「うう・・・・あんたねえ・・・・何で面白い様に回避先読まれてるのよ?!」
「鈴さんこそ衝撃砲をバカスカと撃ち過ぎですわ!」
「どっちも悪い。」
不毛な争いが長引かないうちに司狼が早々に切り上げさせた。
「この場合セシリアはビットを使わない方が良い。一対多向きのISで誰かとチームを組んでるなら、出来るだけビットは使うな。最悪フレンドリーファイアがオチだ。使うとしても一瞬だけ、そして使ったら戻せ。鈴も確かに衝撃砲を使い過ぎてる。あくまで牽制用に使って、近接で勝負をつけろ。」
「御鏡の言う通りだ。後、言い忘れていたが、山田先生はこれでも日本の代表候補まで登り詰めた。教師達には以後、敬意を持って接する様に。」
「む、昔の話ですよ、代表候補止まりでしたし。」
「ではこれからISの基本動作を行う。グループリーダーは専用機持ちが勤める。」
殆どの生徒が一夏、司狼、デュノアの周りに集まろうとしたが、一夏が再びホルスターのマグナムに手を掛けようとしたので千冬の鶴の一声無しで直ぐに収拾がついた。
「さてと、起動、装着、歩行までをやってみようか。後、降りる時は必ずしゃがむ様に。次の人がコクピットに届く様にしなきゃ行けないから。」
基本的にスムーズに進んではいたが、ラウラの班は完全に通夜の様に静まっていた。見かねた司狼は一旦自分のグループを離れる。
「おいおい、教官様の御前で仕事さぼっちゃって良いのかな?」
「ふん、分かっていないコイツらが悪い。」
グループの生徒達を侮蔑的な目で見て鼻を鳴らす。
「ま、良いか。じゃあ、俺が面倒見るから後ろにいる鬼神様の怒りを静めてみたら?」
後ろに立っている千冬を指差して、司狼はニヤリと口角を吊り上げる。その日は出席簿が頭に接触する音が景気良くグラウンドで響いた。
授業が終わって昼休み。一夏は屋上で司狼と話をしていた。
「まさか、彼・・・・いや彼女が・・・・?」
「ああ。それが原因で近い内にあの企業を潰す事になるだろう。まあ、俺達も必要になるから、彼女はあわよくば」
「「「一夏(さん)!」」」
「探したわよ、ここにいたの?デュノア連れて来たわよ、一人でほったらかしにして・・・・」
「掴まるなよって言ったのに・・・・」
「一夏さん、ランチタイムは人数が多い程会話が弾みますわよ?」
セシリアの言葉に一夏はこめかみを押さえてげんなりした。
(重要な話をしている所で会話の腰を折られた俺らの身にもなれ!)
「ごめんね・・・・」
「まあ、べつに良いけどさ。」
「どこをほっつき歩いていた?!探したぞ。」
「悪いな。司狼と仕事の話があった。新しい第三世代の開発があって、テストパイロットも探さなきゃならない。」
「へー・・・じゃなくて!はい。」
「あ、酢豚だ。後これは・・・・餃子か。」
「今朝たまたま目が早めに覚めたから、ちょっと多目に作っちゃってさ。」
「そっか。じゃ、皆にも少し分けてくれるか?出来れば司狼にも。」
「まあ、良いけど・・・」
「一夏、私も偶然朝早くに目が覚めてな。(せめて一夏の胃袋を掴めれば・・・!!)どうせ時折食生活が不摂生なのは分かっている。」
鈴音に負けじと包みを差し出された。その中は手の込んだ色取り取りの料理が詰め込まれた弁当箱だった。
「おお、すげー手の込みよう。ありがとな。」
早速料理に手をつけ始めた。
「一夏さん、私も少々早めに目が覚めてしまいましてサンドイッチを作って来ましたの。よろしければお一つ如何でしょうか?御鏡さんも。」
「おお、ありがと。」
「悪いな、セシリア。」
「ねえ、良いのかな、僕がここにいて。」
箒や鈴音、そしてセシリアが一夏や司狼と親しく話している所で自分が会話に入り込む事を躊躇したシャルルはそう訪ねた。
「構わない。これでようやく男子が三人目になったから、肩身の狭さがいくらかマシになった。寧ろ大歓迎だよ。ほら、お前も食え。」
ベンチに座って弁当を摘みながら適当に話し、場が和んだ。昼休み終了のチャイムが鳴るとそれぞれの教室に戻って行った。
(嫌な予感がするな・・・・・・一荒れ来そうだ。)
この司狼の考えは嫌と言う程的中する事となる。蛇足だが、セシリアのサンドイッチ(と言う名の毒)を食べた二人は遅発効果により暫く胃薬を手放せなくなった。
評価、指摘、感想、お待ちしております。ちなみに、専用機持ちの何人かは主人公達の味方につく予定です。