Fate/zero another after 作:李夏さん
___焦げ臭い。
鼻につく、血肉の焼ける匂い。
肺を焦がさんばかりの熱気。
一言で言うならば、地獄だろうか。
先程まで私は何をしていたのだろうか。
少なくとも、こんな黒ずんで汚らしい街で生きていたつもりは無い。
…やけに身体が軽い。
ふと視線を下ろせば、握っていたはずの“剣”もなく、身にまとっていた衣服は無かった。
これは由々しき事態だ。
私は一人の王でも、根は女なのだから。
とはいえ、こんな荒地を素肌のまま練り歩くなど、自身を傷付けるようなものだ。
___魔力で服は編めるだろうか。
「………供給源が風前の灯か。これでは下着を見繕うので精一杯だな」
無いよりはマシなものの、生きている人に出逢えば、流石に常識を疑われるかもしれない。
「どうしたものか……ん?」
恥じらうこともなく、ふんぞり返る様に瓦礫に腰掛ければ、何者かの姿。
どこかで見たような気がするが、そんなことはどうでも良い。
今にも倒れてしまいそうな、虚ろな目の男が何かを求めて彷徨いていたのだ。
「アレならば剣が無くとも勝てるだろう…悪く思うな、人間」
できるだけ足音を立てない様に忍び寄り、その男を気絶させる。
この最中、身ぐるみを剥いでしまうのも僅かな良心が痛み、上着のみを奪って身を包んでは、半ば引きずるようにその男と__近くに埋まっていた子を引っ掴み、人影は陽炎の中へと消えていった。
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あれから、10年_____
よくよく考えれば、この肉体になってから雀の涙のような魔力供給で、よくこれだけの歳月を過ごせたものだ。
あの燃え盛る火の海は気が付けば緑の大地に。
緑の大地は少しずつ街並みへと息を吹き返していく。
今思えば、自力で瓦礫で作り上げたボロ屋で夜を越していた毎日が苦々しくも思い出になっていた。
「……さてと」
今日もまた、私は10年前の上着を羽織り、憎らしい程に青空の中に輝く太陽に照らされている道を歩いていると、見知った男が声を掛けてきた。
「おはようございます、“アルトリア”さん。 これから仕事ですか?」
「あぁ、その通りだ。今日も学校だったな、“シロウ”」
「この暑い中を徒歩で学校ですよ、学校着いたら汗が酷くて」
「それには同意だ。部屋から一歩も出たくはないものだ」
「大人でもそう思うんですね…」
「夏は誰でも思うだろう…まぁ、頑張るのだな」
軽く手を振り、蒸し暑い最中をお互い別々の方向へと歩いていく。
彼の名は遠坂士郎。
10年前のあの時に瓦礫から引っこ抜いた幼子が、今では一端の男子高校生とやらだ。
あの時から数年、無事だった市内の孤児院に預けられていたらしく、今は知人の家に引き取られ、近くの屋敷に住んでいるらしい。
こちらを覚えて居たようで、最初に会ったときは酷く泣かれたのを覚えている。
「さて、思い出に浸ってばかりでは仕事は出来ない。 気分は切り替えねばな」
冷えた水を喉に流し込み、蒸し暑さを少しの間スッキリとさせては、今日もくだらない雑務を延々と繰り返すオフィスの中へと、
私は踏み込んだのだった。