ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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#84/学園に潜む魔

「………あーもー、サイアク………」

 

マンションに戻ったスバルたちの目の前では、机に肘をついて俯いていた。2時間ほど前に起きた事態は聞いてはいたし同情もできるため、スバルたちは同情的であった。

 

「だ、大丈夫だよティアナ、大事なところは『謎の光』が隠してたから………」

「それ、ソフト化したら消えるヤツじゃない!!」

 

ディエチがフォローのつもりで励ますも、ティアナは目を潤ませながらツッコむ。ティアナはゼイゼイと肩で息をするとふう、と息を吐いて落ち着かせた。

 

「いや、私としてはハダカ見られた以上に、あんなにカッコつけたのにカッコがつかなかった所見られたのが辛いのよ………」

「あ、うん………そっちね………」

 

スバルが顔を引きつらせていると、リビングにノーヴェとオットーが入って来た。

 

「あ、ノーヴェ、チンクとルーテシアは………?」

「2人とも寝てしまいました。今日は色々ありましたし、疲れてしまったのかと………」

「そっかー………」

 

オットーが答える横で、ノーヴェは何故か不機嫌そうな顔になっていた。

 

「あれ、どーかしたのノーヴェ?」

「ん?いや………さっき仗助さんに殴り込みかけたんだけど………後でティアナやルーお嬢の話聞いて、悪気はなかった上に助けてくれてたみたいで………なのに『アダ』で返しちゃったから、明日顔合わせるのが気まずい………」

「あー………」

 

バツが悪そうに言うノーヴェに苦笑する一同。すると、ティアナが疑問を口にした。

 

「っていうか、あの『蓮華』って、何で私たちに攻撃してきたの?ヴィオレッタ側のスタンド使いみたいだったし………」

「あ、うん………明日、承太郎さんたちからちゃんと話すと思うけど………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「え………えええええーーーー!?ルーテシアちゃんが千雨ちゃんの妹ーーーーー!?」

 

同じ頃、寮の徐倫たちの部屋に集まったネギやのどかやあやかたち(昼間に別行動を取っていた面子)は、徐倫たちから説明を受けて驚きの声を上げた。

 

「実際に、ヴィオレッタの差し向けたスタンド使いに命を狙われた………ルーテシアの周りには承太郎さんやフェイトさんがいるから、よほどのことがない限り命の危機にはならないだろうけど………」

「うーん……私たちがティアナさんたち探している間にそんな事が起こっていたとは………」

 

顔を引きつらせながらハルナが呟く。のどかがそういえば、と思い出した。

 

「前にルーテシアちゃん、「お父さんがこっちにいる」って言っていたけど………」

「それが千雨ちゃんのお父さん、ポルナレフさんやったんか………」

 

木乃香が納得したように頷くと、うーむ、と朝倉が呟く。

 

「これは……カッパにかまけてる場合じゃあなさそうね………」

 

カッパ?と徐倫が朝倉の発言に首を傾げていると、ネギがあ!と突然声を上げた。

 

「そういえば………あの時は立て続けに色々なことが起きて忘れていたけれど………京都で『千本鳥居』に閉じ込められた時、小太郎君の攻撃を受けたルーテシアさんが、『スタンド』を発現させていたんだった………!」

「なんだと!?」

 

ネギが思い出した事をきき返す千雨。ネギは小さく頷き、話を続けた

 

「あの時は一瞬だったし、ルーテシアさん自身も何が起こったのか分かっていなかったみたいでした………おそらくは、これまでの一連の事件で、スタンドが目覚めかけているんだと思います………」

「そういえば、ルーテシアもスタンドが見えていたな………ルーテシア自身も『スカリエッティ』とやらに何かされたらしいから、その影響と思っていたが………」

 

徐倫がそう言うと、一同はうーむ、と唸った。これからは千雨だけではなくルーテシアも護衛する必要があると結論がされ、今回は解散となった。

 

「うーん………(やはり、()()()()を実行すべきですわね………)」

 

自室に帰る道中、あやかはある事を考えていた………

 

 

 

 

 

#84/学園に潜む魔

 

 

 

 

 

翌朝

 

「―――じゃあ、私はこれで帰るけど………本当に危ない事はしないでよね?」

「うん、気を付けるよ………」

 

麻帆良駅前でロンドンに帰るアーニャを見送るネギと、明日菜や徐倫、千雨。

アーニャはいまいち信用していない様子であったが、ネギの周りを固めるスタンド使いや魔法使い、何よりネギの強い意志を知って、ここは麻帆良にいる者たちに任せた方がいいと判断し、自身はロンドンに帰る事にした。

念のためにSPW財団のエージェントがロンドンまで付き添い、しばらくの間は秘密裏に護衛される予定である。

 

「ま、無茶したり危ないことするよーなら、私らが殴ってでも止めるから、安心しなって。」

「ビミョーに安心できない気もするけど………まあ、頼んだわよ。」

 

アーニャは徐倫に微妙な顔で返すと、手を振りながら改札の向こうに去って行った。見送ったネギたちは学校へ向かうべく歩き出した。

 

「ところでさー千雨ちゃん?」

「んー?」

 

歩きながら、明日菜は千雨に話しかけた。

 

「昨日、あれからルーテシアちゃんと話したの?」

「ゔっ………いや、話せるわけないだろ………何て話せばいいんだよ………」

「いや、そーだけどさー………」

 

微妙な表情で答える千雨に明日菜は聞く。突然姉妹である事を告げられた2人はまだ戸惑っているのだろうが、いつまでもこのままでいいとは思えない。

何かきっかけはないだろうか、と徐倫が考えてふと、ある事に気が付いた。

 

(そー言えば明日菜も前からスタンドが『見えていた』な………けれど、ティアナやルーテシアと違って、今のところスタンドに目覚める様子はないわね………)

 

明日菜の横顔を見ながら考える徐倫。これまで明日菜もスタンド使い同士の戦いを間近で見て来てはいるが、2人のように目覚める様子は見られない。明日菜の精神的な成長が必要なのだろうかと、徐倫は考えた。

 

(だとしたら、何か『キッカケ』が必要なのかもな………まあ、それは個人差もあるか………)

 

徐倫は急ぐこともないだろうと思い、今回はこれ以上考えるのを終えた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その日の昼休み、A組では2日後から始まる『ゴールデンウィーク』でどこに行くかの話題で持ち切りであった。

 

そんな中、あやかに誘われたA組のスタンド使い&魔法使いメンバーは、屋上へ来ていた。

 

「………え、南の島?」

 

そこであやかから告げられたのは、ゴールデンウィークに雪広グループの所有する南国のリゾート(アイランド)へ、親睦会を兼ねた旅行へ行こうという事であった。

 

「ほら、ここの所戦い続きだったでしょう?ずっとピリピリしていては滅入ってしまいますし、連休を利用してリフレッシュをしようと思いまして。」

「わー!楽しそうですねー♪」

「いいじゃん!さんせー!」「私もー♪」

 

あやかの発案にネギやまき絵、スバル達は無邪気に賛同するが、徐倫や千雨は怪訝そうであった。

 

「けど、こんな時にノン気にバカンスなんて………」

「あら、たまには息抜きも必要ですわよ?それに、この計画には承太郎さんやフェイトさんも賛同してくださいましたし。」

「……やれやれだわ、既に根回し済みなのね………」

「そこまでされちゃあ、断りづらいなー………けど、多分『飛行機』で行くんだろーなー………」

 

あやかが準備万端であったために、諦め半分楽しさ半分でため息をつく徐倫。しかし、千雨はまだ何か不安そうであった。

 

「あれ、長谷川さんって飛行機怖いの?」

 

いつもあんなにびゅんびゅん飛んでるのに、と不思議そうに首を傾げるスバル。千雨はいや、と頬を掻きながら説明した。

 

「飛行機に乗る分はいいんだけど………「徐倫と一緒に飛行機に乗る」のがちょっと………」

「へ?」

「ちょっと千雨、まだあの事気にしてたの?」

 

徐倫は千雨に抗議すると、まき絵や楓が「あー…」と納得したようにつぶやいた。明日菜が何かあるのかと聞いた。

 

「いや、徐倫ってさ………『2回』くらい『()()()()()』経験してるんだよ………」

「「「「「え?」」」」」

「い、いや!けど、うち1回はジョセフじいちゃんも一緒だったし………後のはヘリだったじゃん!?」

「墜落は否定しないの!?」

「それに、ジョースター家って「飛行機墜落経験して一人前」みたいな所あるし………」

「嫌な一族ね!?」

 

徐倫の弁解になっているようでなっていない弁解にツッコむ明日菜。しかし、まき絵と楓がそれに続けた。

 

「いやー、徐倫っていうか、『ジョースター家』ってかなり『乗り物運』がないって聞いたよー?」

「飛行機どころか自動車に船……」

「ラクダや潜水艦もダメにしたと聞きましたわよ?」

「………徐倫さんのご先祖様、昔乗り物に恨まれるような事でもしたんですか?」

 

ネギが呆れて聞くと、徐倫は頬を掻きながら苦笑いをした。スバルは自身がそんな一族である事に、若干不安を感じた。

けど、と徐倫は続けた。

 

「ていうか、千雨が気にしてるのは6年前にインド洋に墜落して、インドのレストランに行った時ブタに―――」

「!?や、やめろッ!!インドの話はマジでやめろってーーーッ!?」

 

徐倫が話す前に大声で遮る涙目で真っ赤な顔の千雨。

明日菜やネギたちは(インドで何があったんだろう?)と思ったが、千雨の様子を見て聞かないでおく事にした………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「けど、ええんかなー?うち昨日合流したばかりやのに………」

「まーいいんじゃあない?そのための『親睦会』なんだし♪」

 

教室に戻る途中、亜子は少し申し訳ないように言うが、裕奈が気にしないように言う。すると、明日菜が思い出したかのように聞いた。

 

「そー言えば、ゆーなも亜子ちゃんも、スタンド使いだったのね。」

「うん、いまさらだけどねー」「ウチは気づかないままやったし………」

 

裕奈と亜子が返答をすると、ルル・ベルがやれやれとため息をついた。

 

「まったく、………まだ正体を明かす時ではなかったのだけれど………今回は緊急事態だったし、大目に見ておくわね。」

「うん、ゴメンね、お嬢………」

 

ルル・ベルに謝る裕奈を見て、明日菜とネギは疑問に思った。

 

「あれ、ゆーなってそんなにルル・ベルと親しかったの?」

「うん、田中 かなた、てか、篤緒 奏汰の後、順番で言えば3番目(パルもいるから4番目?)に刺されてねー」

「この子には驚いたわ………『スーパー・スナイプ』が自我のあるスタンドだったとはいえ直ぐに使いこなして、私たちに直接接触してきたのよ………」

「それでそんなに………」

 

2人の関係に納得する一同。

 

「まあ、何はともあれ………これで『6人』(5人と1羽)全員の所在が分かったわね。」

 

☆ルル・ベルの生み出したスタンド使い達

・ネギ・スプリングフィールド

 スタンド名:(タスク)

・宮崎 のどか

 スタンド名:イノセント・スターター

・篤緒 奏汰

 スタンド名:ハイ・ステッパー

・早乙女 ハルナ

 スタンド名:ドロウ・ザ・ライン

・シルバークロス(カラス)

 スタンド名:ラン・イントゥ・ザ・ライト

・明石 祐奈

 スタンド名:スーパー・スナイプ

 

「裕奈さんの話だと、のどかさん、パルさん、奏汰さん、裕奈さん、シルバークロス、最後に僕っていう順番ですかね?」

「そうね。ハルナは完全に想定外だったけれど………」

 

ネギに次いでルル・ベルが肯定する。

 

「それに、お母様側は『ヴァナゴン』と『蓮華』の2人が再起不能になっているとはいえ、まだ4人以上もスタンド使いがいるわ………」

 

★ヴィオレッタの生み出した11人のスタンド使い

・オエコモバ(死亡・再起不能)

 スタンド名:ヘルズ・マリア

・ランボ・ルギニー(捕縛・再起可能)

 スタンド名:アルティメット・クライシス

・夜叉丸 雪子(離反)

 スタンド名:スペースマン

・ヴィヴァーノ・ウエストウッド(重症・再起不能)

スタンド名:プラネット・ウェイブス

・富良野 鏡史郎(捕縛・再起可能)

 スタンド名:リード・マイ・マインド

・ヴァナゴン(捕縛・再起不能)

 スタンド名:ディアボリック・シークエンス

・波羅蜜 蓮華(捕縛・再起不能)

 スタンド名:ピンク・アクアリウム

・???

・???

・???

・???

 

「あと4人………今はそれ以上増やされているかもしれないわね………」

「仮に増えていないとしたら………何か目的があるのか?」

 

ヴィオレッタ側の動きの読めなさを不振に思う一同。

 

「ねえねえ、帰りに水着見に行かない?」

「あ、そーだねー♪私持ってきてないし。」

 

そんな空気を察知してか、まき絵が明るく提案をするとスバルがそれに乗る。徐倫はやれやれと肩をすくめた。

 

「あ、そー言えばお嬢は水着どうするの?」

「ああ、ちゃんと用意するから心配ないわ。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

放課後、近くで水着を売っている店に入ったスバルとまき絵、亜子たちは、既に店内にいたナンバーズの面々と鉢合せした。

 

「あ………」

「あ………」

 

そこで亜子とオットーの目が合ってしまう。互いにぎこちなくどうも、と頭を下げるが、2人の間に気まずい空気が流れた。

それに見かねたのか、セインとウェンディが目を合わせると、亜子に話しかけた。

 

「あー、イズミン!オットーの水着、選ぶの手伝って欲しいッス!」

「え?!」

「いやー、オットーてばこういうの選ぶの苦手みたいでさー!」

「え?あ、あの………!?」

 

困惑する亜子とオットーを余所にぐいぐいと押すセインとウェンディ。そこにディードも加わって来た。

 

「いえ姉さまがた、オットーの水着は私が選びますので。」

「ディード………」

 

何故か亜子に対抗意識を燃やしているのか、水着を片手にオットーの手を引くディード。そのまま試着室に連れていくと持ってきた水着を手渡して着替えさせた。

 

シャッ

「どうでしょうか?」

「おおー」

 

ディードが持ってきたのは紺色で上がタンクトップ風になったセパレートタイプで、下がホットパンツのような形状で、ボーイッシュなオットーには似合うタイプだった。

オットーは少し恥ずかし気であったが、しかし裕奈とまき絵がうーん、と唸った。

 

「うーん、確かに似合うけど………」

「なんつーか、『無難』、って感じが………」

「え……?」

 

ディードは『オットーに似合う』と思い選んだ水着があまり好評ではない事に軽くショックを受けた。すると亜子がそれならばと、水着を1着持ってきてオットーに手渡した。

 

「ほんなら、次はこれに。」

「え、イズミさん……」

 

オットーは亜子がノリノリで手渡してきた水着に戸惑いながらも、受け取ったそれを試着することにした。

 

シャッ

「!?」

「なっ………!?」

 

カーテンが開くと、その姿に衝撃を受けるナンバーズと裕奈たち!

 

「あ、あの……ボクにはこういう水着は……」

 

亜子の選んだ水着は、フリルが多めについた白いチューブトップのビキニであった。

ボーイッシュなオットーにはあまり似合わないと思われていたが、しかし、()()()()()()()()()

 

「ボ、ボーイッシュなオットーに、女の子らしいフリルのビキニ………!」

「真逆のチョイス……だが、それが『ギャップ』を生み、可愛らしさを演出している………!!」

 

あまりの衝撃に何故か解説者のような口調になるウェンディとセイン。あまり着慣れていない装いに恥ずかしがるオットーだが、一方のディードはオットーの『新境地』に衝撃を受けたが、冷や汗を手の甲で拭った。

 

「………ふ、やりますね、イズミさん………!」

「そちらこそ………!」

「あ、あの………?」

 

何故かバチバチと火花を散らす両者に戸惑うオットー。しかし2人は新しい水着を探し出し、オットーに押し付け始めた!

 

「さあオットーさん、次はこっちを!」

「オットー、次はこれを!」

「え!?ええ!?」

 

異様な熱気の2人に押され困惑するオットー。そのまま次々に水着を着せ替えられてしまう…

 

「あー、なんつーか………」

「ご愁傷さまッス………」

 

そんなオットーの様子を見て、ウェンディと裕奈は苦笑しながら合掌をするのであった。

 

 

 

 

 

10分後

 

 

 

 

 

「「……………」」

「ひーん………」

 

涙目で黒いマイクロビキニ姿でへたり込むオットーを目の前に、亜子とディードはしばし沈黙する。

 

「………ふっ」

「ふっ」

 

2人はやり切った顔で不敵に笑うと、腕を上げて肘でガシィッ、と組み、遠い目で一言。

 

 

 

 

 

「………やり過ぎましたかね?」

「せやね………」

「ちょっとーーーーッ!?」

 

 

 

 

 

この後、オットーは亜子が最初に選んだフリルの水着を購入することにした。

 

「……まあ、イズミンとディードが仲良くなったみたいでよかったッスね。」

「無理やりいい感じっぽく締めるなよ………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「え?承太郎さん来れないの?」

「うん、東京にある実家に帰るんだと。」

 

同じ頃、女子寮に帰る徐倫と千雨に合流した明日菜と木乃香、刹那が話していた。

 

「『ホリィおばあちゃん』が、4月からずっとうるさかったらしいからねー………日本に帰って来てるのに会いに来ないって………」

「ホリィ……?」

「徐倫のおばあちゃんで、承太郎さんのお母さん。リサリサ先生ほどじゃあないけど、年齢感じさせないくらい若い人だよ………」

 

徐倫と千雨の説明になるほどと頷く明日菜。

 

「オヤジも、なんだかんだ言ってホリィおばあちゃんには弱いからな〜……」

「なるほどねー………」

 

あきれて笑う徐倫に明日菜も頷く。『無敵のスタープラチナ』を持つ承太郎をもってしても、実の母親にはかなわないとは、意外にも可愛らしい「弱点」だなと思った。

 

「うーん、お母さん、かぁ………」

「お嬢様?」

 

ふと、木乃香が呟いた。

 

「いやなー、ルル・ベルちゃん、(つら)ないかなー思うて………お母さんと戦うことになって………」

「あ………」

 

木乃香に言われて、明日菜たちは気づいた。普段ルル・ベルは気丈に振舞ってはいるが、自身の親と対立し、命のやり取りをすることを決断するとなれば、辛いわけがなかった。

 

「あいつ、何考えているかわからないけど………」

「案外、色々抱えこんじゃうタイプなのかもねー………」

 

よく考えてみれば、自分たちがルル・ベルについてほとんど知らないことばかりであることに今更ながら気づいた(最初のインパクトから若干距離を置いていたとはいえ)。

 

「こーいうのって、こっちから話題振ったりするの、ちょっと気が引けるわよね………」

「たしかに………」

 

はたして、ルル・ベルが心を開き、自分たちに打ち明けてくれる日は来るのであろうか?

ルル・ベルが少し心配になった明日菜達は、寮に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

「ふぅーん……南の島でバカンスねぇー………」

 

同じ頃、ヴィオレッタは千雨たちの動向を聞いていた。ソファーの背もたれに寄りかかっていたリゾットが、口を開いた。

 

「ずいぶんとノン気………というか、中学生じゃあずっと警戒するのは流石にキツイか………」

「お休み中に襲うのは少々気が引けるけれど、一番気が緩んでいる時だし、チャンスではあるわね。偶然にも、『ミスターX』のいる辺りに近いようだし………」

 

スタンド使い同士はひかれあうとはこのことね、とヴィオレッタ不敵に笑うと、部屋の隅から明るい声が響いた。

 

「はっはーッ!!それじゃあ、ようやくアタイの出番だね、ようやく!!」

「む?」

 

部屋の丁度影になった辺りには『伊賀の三羽鴉』の綺初とすずめ、そしてもう一人の19歳くらいの女性がいた。声を出したのは、そのもう一人であった。

 

「南の島か………我ら3人の本領を発揮するには、もってこいの場所だな………」

「地の利はあたしたちにある……今度は負けない……!」

 

綺初とすずめが自信満々に言うと、ヴィオレッタはへぇ、と感心したように告げた。

 

「そこまで言うのなら、ミスターXの方はホルマジオにでも任せて、長谷川千雨はあなたたちに任せるわ。」

「感謝するよ、感謝♪」

 

もう一人が感謝をすると部屋を後にし、綺初たちもそれに続いた。

廊下を歩きながら、女は少し残念そうな顔になった。

 

「まあ、空条承太郎がいないのは、ちょっと残念だけどねー、ちょっと………」

「いや、承太郎がいないのは好都合なんじゃあ…?」

 

すずめが女に言うが、綺初はその理由を察した。

 

「そういえば、空条承太郎はお前の父の………」

「うん、(かたき)だよ、敵………でも、いないなら仕方ないよ………」

「え………?」

 

驚いて息を呑むすずめに対して、女は苦笑しつつ「気にしないでくれ」と手を振った。

 

「………ま、あのおばさんじゃあないけれど、アタイも徐倫ブチのめすだけだよ、アタイも………」

 

『伊賀の三羽鴉』・(さざなみ)(みかど)こと岩飛(いわとび) (みかど)(19歳)

スタンドは『ディスタント・ムーン』

 

 

 

 

 

←to be continued…




84話です。
・サブタイトルは『機中にひそむ魔』から。
 今回は小休止&おさらい、所謂『総集編』的な話。

・アーニャ帰国。割と賑やかしや情報提供にはなったかと思います。

・ルル・ベルとヴィオレッタ親子の生み出したスタンド使いのおさらい。自分でも忘れてる所あったのでw

・実はルル・ベルと既に接触していた裕奈。読み返すと分かると思いますが、何気に#75でルル・ベルを気遣っている様子があります。

・オットーの着せ替え。ちなみに亜子とディードの腕の組み方はツェペリさんとダイアーさんが元ネタ。

・伊賀の三羽鴉最後の1人帝、いよいよ登場。にじファン時代は顔見せだけでしたが、ようやく出せます。

では、また次回!

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