ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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遅くなってしまい、本当に申し訳ございません。


#85/ディスタント・ムーン ①

GW(ゴールデンウイーク)初日の5月3日、徐倫やネギたちは、雪広家の私有空港にまで来ていた。

 

「さあ、こちらですわよ♪」

 

あやかに案内されてリゾート島まで向かうジェット機まで向かう一同。歩きながら、ノーヴェが呟いた。

 

「しっかし……自家用ジェット機や空港に島まで持ってるなんて……アイツって本当に「オジョーサマ」なんだな……」

「まあ、私は慣れてるけどねー」

 

明日菜がノーヴェに苦笑しつつ答えた。すると既に頭にサングラスを乗せてウキウキ気分のウェンディが話しに入って来た。

 

「スクルージおじさんがバックに着いてるみたいなモンっスねー♪」

「あの人、あんま出資してくれそうにないけどなー」

「なんでアンタたち、『わんぱくダック』知ってるのよ………?」

 

何故か懐かしいアニメを知っている2人に呆れる明日菜。

一方、亜子やまき絵たちもジェット機に向かっていた。

 

「それにしても………初めて会う人も多いなぁ………」

「そういえばそうだねー」

「私は顔だけは知ってたけどねー」

 

まき絵と裕奈が話していると、リインフォースⅡがおはようございまーすと挨拶をしてきた。

 

「リインちゃん、おはよー♪」

「あ、スバルちゃんのとこの………?」

 

亜子はまき絵たちから話を聞いていた六課のメンバーだと気づいたが………リインが異様に小さく見えたことに、疑問を持った。

 

「………あー、リインちゃん、やったっけ?もう少し近くに来ても大丈夫やでー?」

「?はーい。」

 

リインは亜子に呼ばれて彼女の目の前にまでふよふよと来るが、距離が50㎝くらいの所で止まったのを、亜子は目を点にさせて見下ろした。

 

「?」

「………ホ、ホンマに小さかった!?」

「遠近法で小さく見えてると思ったの………?」

「私たちも最初はビックリしたよねー」

 

リインの大きさに驚く亜子に、まき絵は初めてリインに会った時のことを思い出しながら笑うのであった。

 

「あっ………」

「………」

 

一方、千雨とルーテシアは目が合ってしまうも、気まずくなったのかすぐに視線を逸らした。そして千雨は徐倫、ルーテシアはティアナの元に行ってしまった。

 

「………うーん、やっぱり気まずそうですね………」

「そーね………」

 

その様子を見ていたネギと明日菜は、少し心配そうにするのであった。

 

 

 

 

 

#85/ディスタント・ムーン ①

 

 

 

 

 

青い空と海の広がる、南国のとある島。

雪広グループの所有するこの島には、水上コテージ等の宿泊施設をはじめ、海のアクティビティを楽しむことができる。

 

「ひゃっほーーーッス♪」

「「「海だーーーっッ!!」」」

 

そんな島で今、徐倫たちは大いに遊んでいた。

 

ビーチチェアに寝そべるジョルノやトリッシュが見守る中、各々が水着に着替え、早速ウェンディはサーフボードを借りてサーフィンを楽しみ、木乃香や刹那は楓やハルナとビーチボールを打ち合い、セインや裕奈、まき絵らは泳ぎを楽しんでいた。

 

「うーん………もう少し高く………」

 

砂浜では、オットーとディード、亜子の3人がスコップと竹串を手にしてサンドアートの名古屋城づくりに勤しんでいた。しかしオットーは意外にも凝り性なのか、細部にまでこだわって作業をしていた。

 

「てか、今更やけどなんで名古屋城……?」

「オットー的に、作り甲斐のあるものらしくて……」

 

「……あいつら、楽しいのか?あーやって浮かんでいるだけで?ま、楽しみ方はそれぞれだろーけどよぉー………」

 

一方、ディエチと夕映が浮き輪に腰かけてぷかぷか漂っている(夕映はそれに加えて読書もしている)様子を見ていた仗助のもとに、チンク(どこで用意をしたのか胸に「ちんく」と書かれたスクール水着)とノーヴェがおずおずと近づいてきた。

 

「………あの………じょ、仗助さん………」

「ん?おお、お前らか………」

 

仗助は2人に気づくと挨拶をするが、3人は先日の『ピンク・アクアリウム』の事件があったためか、多少気まずい空気になる。

すると、ノーヴェが口を開く。

 

「あの、……仗助さん………この間は、その、すいませんでした………」

「ん、………あー、そのことなら、もう気にしてねーぞ……オレにも非はあるしよぉー………」

 

3人は互いに頭を下げて、この件はこれにて一件落着となった。

 

「いやー、南国でバカンスなんて、いいんちょも太っ腹だねー♪」

「ホントですねー♪」

 

一方、ひと泳ぎ終えたネギと裕奈が徐倫や明日菜と共にビーチに上がりながら、あやかに話しかける。

 

「いえ、この島だってこの海域にいくつかある無人島の一つを買い取ったものですし、オープン前の施設も多いので、一般のお客様はまだ入っていませんのよ。」

「じゃあ、いわゆる「プレオープン」みたいなものか。」

 

あやかの説明に頷く裕奈。ふと、徐倫が思い出したようにそういえばと口を開いた。

 

「ルル・ベルもけっこーな『お嬢様』っぽいけど、どれほどのモンなんだろーな?」

「そーいえば……」

「確かに……」

 

徐倫の発言に頷く一同。すると、いつの間にかあやかの後ろにいたルル・ベル張本人が話に入って来た。

 

「そこまで「お金持ち」ってわけじゃあないわよ。」

「きゃッ!?」

「いつの間に………」

 

相変わらずの神出鬼没ぶりに呆れる徐倫たちだが、その身につけているのは黒い『ウエットスーツ』であり、左手をミトン型のグローブで隠していた。

 

(ウエットスーツ………)

(お嬢の手の事考えたら仕方ないけれど………)

(あれって、“水着”にカウントしていいのかなー?)

「お金があるって言っても、 お母様が()()()()()()()DIO(ディオ)の財産を元手に投資で儲けただけの「成金」よ。最も、稼いだお金の大半は「スタンド使い」の軍団を作る資金になったようだけどね。」

「そーか………」

 

ルル・ベルの明かしたヴィオレッタの資金繰り事情に苦笑する一同。泳ぎに行くのか、ルル・ベルはそのまま海に向かって行ってしまい、見送った徐倫がやれやれ、とため息をついた。

 

「アイツ……もしかしてあんまり人と話すの得意じゃあないのか………?」

「確かに………お嬢、いつも気丈に振舞ってるから気づきにくいよねー………」

 

明日菜と裕奈の言葉にうーん、と頷く。その一方で、徐倫はビーチパラソルの下、デッキチェアに寝そべる千雨を見た。千雨は寝そべりながらも、時折砂浜でアギトと遊ぶルーテシアの様子を見ているようだった。

 

「あっちもあっちで、話しづらそーにしてるし………」

「分かるんですか?」

「まーねー、千雨とは付き合い長いし。」

「せめて、今回のバカンスで距離が縮まるとよいのですが………」

 

質問するネギに徐倫が答えると、うーんとあやかが悩むように唸る。すると明日菜が話しかけた。

 

「ていうか、今回の旅行って()()が本当の目的なんでしょ?」

「え?!」

「あら、バレました?」

「当たり前でしょ……徐倫じゃあないけれど、付き合い長いんだから。」

 

明日菜が呆れた様子であやかに返す。ネギたちはあやかの気遣いに感心すると同時に、千雨とルーテシアの関係を心配した。

 

「ま、千雨のペースもあるし、無理やりにくっつける事せんでも―――」

「長谷川さーん、こっちで泳ごーよー!!」

「「「あ」」」

 

徐倫が話しているその時、満面の笑みを浮かべたスバルがまき絵やハルナと共に千雨を誘っていた。

千雨は「自分はいい」と拒否をするも、スバルに強引に引っ張られてそのまま海へ放り出さんばかりの勢いで連れ出されてしまった。

 

「………やれやれだわ。スバルには敵わないわねー………」

「スバルさんのあの強引さは、見習うべきなんですかね………?」

「荒療治もいいトコだけどねー………」

 

まき絵がルーテシアも放り投げるように海に連れ出すスバルを見ながら、徐倫たちは呆れるのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ったく、オメーは『遠慮』ってもんを知らねーのか……」

「いやー、ゴメンゴメン。」

 

一方、ギリギリ足が付く辺りまで連れ出された千雨はスバルとハルナに文句を言うが、当のスバルは笑って誤魔化すのみであった。自分から離れた位置でまき絵に海水をかけられて少し困惑しているルーテシアを見ながら、はぁ、とため息をついた。

 

「そんな無理やり連れ出されてもよー、気まずいだけだっつーの………」

「そーだけどさー………」

「つーか、お前こそジョルノさんとはどーなってるんだよ?」

 

千雨は逆に聞き返すと、スバルはへ?と首を傾げる。

 

「ノーヴェから聞いたけど、ジョルノさん、結構悩んでいたみたいだし、お前みたいにグイグイくるタイプ苦手みたいだし。」

「そ、そーかなー………?」

 

千雨の指摘に、スバルは苦笑しながら頬を掻く。あれ以降、スバルはジョルノに話しかけるようにしていたのだが、当のジョルノは何か思う所があるのか、浮かない顔をしていた。

 

「あー、分かるよそれ。アタイもよくグイグイ行っちゃうんだけどさー、最初は警戒されちゃうんだよねー、最初は。」

「うん、私もそれやっちゃう………」

 

だろうなあ、と千雨は思った。

 

「なんて言うかさー、人付き合いって距離感が大事だよねー、距離感が。つかず離れずっていうの?それ見極めないといけないよねー。」

「あー確かに。」

「スバルは近すぎだけど、千雨ちゃんは遠すぎるよねー」

「うっ、………まあ、否定はしないけど………ん?」

 

ハルナにも言われた千雨は言いよどむが、その時、自分たち3人の他に、いつの間にか「もう1人」いる事に気づいた。

 

「「あれ?」」

「チョリーッス♪」

 

スバル達もようやく気付いて振り向いてみれば、そこには一人の女性がいた。

薄いグレーに染めた髪は腰まで伸び先端がカールして、額には翼が描かれたゴーグル、金色の鋭い釣り目で迷彩柄のビキニを着た女性であった。

 

「………え、誰?」

「………はッ!?お、お前は………!!」

「やっほー、久しぶりだね長谷川千雨、久しぶり♪」

 

千雨がその女性の姿を確認した瞬間、臨戦態勢になり飛びあがると「波紋」で海面に()()()女性を睨みつけた。

 

「長谷川さん?」

「離れろお前ら!コイツは『伊賀の三羽鴉』のひとり、『漣の帝』だ!!」

「「ええ!?」」

 

女性・帝の素性を聞いた2人は、慌てて距離を取るが、海上なのでやや速度は遅かった。

 

「い、伊賀の三羽鴉って……京都で私たちを襲ってきたあの!?」

「あ、そっちのメガネの()はすずめたちと会ってるんだっけ?そーだよ、アタイが三羽鴉最後の一人だよ、アタイが。」

 

ハルナが思わず口にした言葉を、ケラケラと笑いながら肯定する帝。スバルは『ウィングロード』を展開してその上に上がると、ハルナを引き上げた。

 

「本当は空条承太郎と戦いたかったんだけどさー、いないんなら仕方ないね、いないんなら。依頼された任務(おしごと)を遂行するだけだよ。」

 

帝は笑ったまま割と物騒な事を言う。千雨は呆れた顔で悪態をついた。

 

「ったく、休暇(バカンス)中くらいゆっくりさせてくれよな………」

「千雨ちゃん、この人の能力ってどんなのよ!?」

 

ハルナは、2年前に交戦経験のある千雨に帝の情報を聞いた。

 

「ああ、アイツの能力(スタンド)は………ん………あれ?………?」

 

ハルナに聞かれて、目の前でニヤニヤと笑う帝のスタンドを思い出そうとした。しかし、冷静に考えてみたら、ある事に気が付いてあれ?と首を傾げた。

 

「………そういえばコイツのスタンド知らねーーーッ!!?」

「「ええーーーーー!?」」

 

よくよく思い出してみれば帝のスタンドを知らない事に気づいた千雨と、衝撃を受けるスバルたち2人。

 

「ちょ、長谷川さん、2年前に会ってるんじゃあなかったの!?」

「い、いや………よく思い出したら、コイツって徐倫や私らに敗けた綺初とすずめ回収して撤退したから、直接戦ってなかった………」

「あははー♪つまりアタイは「未知の敵」ってワケだねー、つまり。」

(てか私、ペンないからスタンド使えないじゃん!?ヤバッ………)

 

スバルにツッコまれる千雨を笑う帝。ハルナはハルナで紙とペンがないと『ドロウ・ザ・ライン』が使えないので焦っていた。

 

ドンッ

「きゃッ……」

「え?」

 

その時、千雨の足に何かが当たり、短い悲鳴を上げた。見下ろしてみれば、そこにいたのは自分たちとは離れた場所にいたはずのルーテシアであった。

 

「え!?な、なんで………」

「あぷっ………きゅ、急に波にさらわれて………ここまで流されちゃって………」

 

困惑する千雨に対して、状況を説明するルーテシア。千雨はスバルを呼んでルーテシアを避難させようとするが―――

 

 

 

ザバッ

「何!?」

 

 

 

突然、足元の海水がさながら「蛇」か、あるいは「蔦植物」のようになって千雨の足に絡みついてきた!

千雨が状況を把握するよりも早く、海水は足だけではなく胴体にも絡みつき、千雨の口を塞いでしまった!

 

「がぼッ………!!(し、しまったッ、こ…呼吸が………!!)」バッシャァアン

「千雨ちゃん!?」

 

『波紋』の呼吸を封じられて海に落ちる千雨!帝は不敵に笑っていた。

 

「悪いけど、アタイの狙いは長谷川千雨とルーテシア・アルピーノの2人なんだよね………邪魔されないように、アタイの土俵(フィールド)に連れていくよ、土俵(フィールド)に!!」

 

言うや否や、千雨とルーテシアは海に引きずり込まれ、帝も追うように潜っていった!!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「お、オイ!誰だあの女は!?」

 

その頃、徐倫たちも千雨たちが海上で臨戦態勢に入ったのを見て、異変に気づき騒ぎ始めていた。混乱する間もなく、千雨とルーテシアが海に沈んだのを見て、ネギが悲鳴に似た声で叫んだ。

 

「ああ!!ふ、2人が海に沈んだぁあーー!?」

「何、海に!?」

 

徐倫が聞き返すと、口に手を当てて青ざめた。

 

「ま、マズいわ!()()()()()()!!」

「どういうこと!?」

「千雨の『アニバーサリー・オブ・エンゼル』は、『ストーン・フリー』等と違って身にまとうタイプのスタンド………つまり、『スタンドのパワー』(イコール)『千雨自身のパワー』となる!そして千雨の身体能力(パワー)は、『()()()()()』によってもたらされている!!」

 

そこまで聞いて、明日菜も気づいた。海中で『呼吸』は出来ないため、波紋の呼吸による身体能力向上が出来ない以上、千雨は通常通りの戦いが出来ないことになる!

 

「た、大変!!早く助けないと………!!」

 

明日菜やティアナが慌てて向かおうとするが、その時、

 

ズドドドドドドドッ

「「「!?」」」

「ええッ!?」

 

その瞬間、一同の行く手を阻むように『レンガの壁』が地面から出現し、一同を囲い込んでしまった!

 

「こ、このレンガは!?」

「悪いが、帝の邪魔はさせん。」

 

声に気づいて見上げてみれば、そこには綺初と、いつの間にか周囲を戦闘ヘリやステルス戦闘機の模型が飛び交っていた!

 

「綺初とすずめ!!」

「『アンチェイン・ワールド』で転移させたのか………しかも、『帝』だと?まさか3人全員来ていたとは………!!」

 

綺初とすずめ、そして帝の襲撃に歯噛みする徐倫。

 

「すでにこの周囲は『エナジー・フロゥ』の編隊で包囲している。長谷川千雨の救助には向かえぬぞ。」

「用意周到ね………」

「今の話からすると、その『ミカド』って言う人は、『水』に関係した能力のようですね………」

「『地の利』は向こうにあるワケね………」

 

徐倫がため息をつくと、変形した『エナジー・フロゥ』の兵隊が迫ってくる!

 

バギンッ

「やれやれだわ………休暇中くらい休ませてよねッ!!」

 

迫って来た先頭の1体を『ストーン・フリー』で殴り飛ばしながら、徐倫は叫んだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

海中に引きずり込まれた千雨は、呼吸ができないながらもルーテシアに怪我をさせまいと『アニバーサリー・オブ・エンゼル』をまとって抱きかかえて翼をたたみ、防御姿勢を取った。

 

(呼吸は出来ないが………『エンゼル』の防御甲冑なら攻撃には耐えられる筈………それにしてもアイツ、いつの間に私らに近づいたんだ………?)

 

手足が動くのを確認しながら、帝がどうやって接近したのかを考える千雨。先ほどの現象―――ルーテシアを連れ去った波と自分にまとわりついた海水から、帝のスタンドが『水』に関係していると思った。しかし、それでは気づかれずに接近された事と結びつかないと思っていると、

 

『よお~~こそ我がスタンドの独壇場―――海中へ、よお~~こそ♪』

「「!?」」

 

同じく潜って来た帝が、腕組みをして笑いながら話しかけてきた。千雨は警戒してキッ、と睨みつけるが、帝は余裕の表情を崩さない。

 

『おーこわ。いくら『身にまとう』タイプでもさー、海中でも「スタンド」同士の会話は可能だよ、可能。』

『………お前のスタンド、成程、この状況じゃあないと使えないのか。だから2年前は『撤退』に専念したわけなんだな………』

 

千雨の質問に帝は『まーねー』と軽く返答した。

 

『アタイの『ディスタント・ムーン』は専用の場所じゃないと戦えないからねー。おたくらにはここでお披露目だよ、ここで♪』

 

そう言いながら、帝は両手を広げるポーズを取ると、その身に『スタンド』をまとわせた。

 

首から下を青い鱗状のウエットスーツで包み、その上から銀色のプロテクターを装着した外見で、手足には水かき、背中には2枚の背びれを持っており、『半魚人』を思わせるダイバースーツのようなデザインだ。頭部には、頭頂に4つのライトらしきものがついた平たいヘルメットを付けていた。

 

『あれが(ヤツ)の………』

『海中じゃあ、ご自慢の『飛行殺法』も使えないでしょ?アタイの『ディスタント・ムーン』は、海中において『無敵』だよ、『無敵』!!』

 

そう宣言すると、帝の周囲が一瞬キラキラと光って………瞬間、帝はまるで煙のように姿を消してしまった………!?

 

『何!?』

 

千雨は驚くも、海中が帝のホームグラウンドならば、身体が動かせる今のうちに逃げるべきと判断し、翼を広げて海面に上がろうとする。

 

『おっと、ドコに行く気だい、ドコに!?』

ザシュッ

「がッ………!?」ガボッ

「!?」

 

しかしその瞬間、『アニバーサリー・オブ・エンゼル』の背中を刃物らしきもので切り裂かれ、千雨は思わず息を吐き出してしまう!

何事かと思い振り返れば、姿を消した帝がそこにおり、手の水かきに血が付いていた。相当シャープな刃物になっているようだ。

千雨が痛みに顔を歪める間も無く、帝が両腕を前に伸ばすと両手から「()()」が発生し、2人を呑み込んでしまった!!

 

「ぐぼっ…!!」

「が………ばッ……」

『アタイの『ディスタント・ムーン』は『海水を操る』!言ったでしょ?ここはアタイの独壇場だよ、独壇場!!』

 

海流に呑まれ吹き飛ばされながら、千雨は納得していた。

 

(海水を操る………さっき姿が消えたのは、周囲の海水を操って『光を屈折』させたからか………そうやって私らにも近づいた………!!)

 

千雨が帝のスタンドの謎に気づいたその時、『エンゼル』の装甲に何か小さいものが刺さった事に気づいた。見てみれば、それは青く光る「ウロコ」だった。

 

『!?アイツのスタンドに付いていたウロコ……!?』

『無駄だよ、無駄!海中に引きずり込まれた時点で、お前らに勝ち目はないんだよ!!』

 

勝ち誇る帝が鋭い目つきで言い放つ。見てみれば、腕から剥がれたらしいウロコが、再度生成されていた。

 

『本当はアタイのお父ちゃん………岩飛 皇十郎(こうじゅうろう)を殺した、承太郎と戦いたかったよ、承太郎と………けど、お仕事だからね、これも………』

『!?(承太郎さんに父親を………!?)』

『さっさと終わらせるよ、さっさと!!』

 

 

 

 

 

←to be continued…

 




85話です。
・それぞれの海の楽しみ方。仗助とノーヴェたちはあまり引っ張らない方がいいと思ってここで仲直りさせました。

・ルル・ベルの水着は、色々考えてウエットスーツにしました。袖鎧的な特注品も考えたけど、あまり奇抜じゃないほうがいいかな、と。

・帝登場。能力の関係上、実は徐倫たちと交戦していませんでした。2回繰り返す口癖はお気に入り。

・『アニバーサリー・オブ・エンゼル』の意外な、というかよく考えたら当たり前の弱点。

・帝の父親の正体は実は意外な人物だったりします。一応ヒントは出してますので。


では、また次回!

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