ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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#87/静寂の不気味

#87/静寂の不気味

 

 

 

 

 

伊賀の三羽鴉の3人を全員捕えてから数時間後。

 

美しい夕暮れの海を臨めるデッキで椅子に座りこんだネギが、大きくため息をついた。

 

「はぁーーー………なんだか、とんだバカンスになっちゃいましたねー………」

「せやなー………」

 

木乃香がネギに返事をすると、後ろの席に着いていた明日菜と徐倫、スバルたちが、千雨から萬蔵の事について聞いているところえあった。

 

「……つまりジェイド、いや、伐田 萬蔵さんは、千雨のママから手紙をもらってたのね?」

「ああ。この間の戦いの時、制服の内ポケットに母さんから萬蔵さん宛の手紙が入っていたんだ。一応、承太郎さんには伝えてあるよ。」

 

その手紙によれば、ここ数ヵ月の間に自分の命を狙う『刺客』が何人も現れており、いずれも返り討ちにしたらしい。

しかし、『現代最強の波紋使い』と呼ばれている自分に挑んでくる「武芸者」の類とは違う暗殺者が何人も襲ってくるのはおかしく、もしや娘に何かあったのではと考えたが、自分の仕事を放りだす訳にもいかなかったため、他流派とはいえ何度か交流のあった萬蔵に千雨の様子を見て来てほしいと頼むものであった。

 

「それで情報を集めていたら、千雨の命を狙ってる両右手の女(ヴィオレッタ)の情報を掴んでよぉ、俺の生業を活かして、あえて懐に潜り込んだわけよ。」

「そうだったのか………」

(承太郎さんの言う通り、百香さんには下手に手を出さずに動けないようにしていたのか………)

「けど、だからってこの間は手加減なさすぎじゃあなかった!?けっこー痛かったんだけど!」

 

説明する萬蔵に対して明日菜が文句を言う。しかし萬蔵は真面目な顔で明日菜に向きなおった。

 

「ま、怪しまれないためにも割と本気で襲い掛かったんでな。そいつについては悪かったぜ。」

「そういえば、ホル・ホースも同じことしてたな。」

「それに、お嬢さんの剣は『素人』丸出しだったしなぁ………話聞く限り巻き込まれただけにしても、剣の心得ある誰かに教えてもらった方がいいぜ?」

「そ、そうね………」

 

萬蔵のアドバイスを素直に聞き入れる明日菜。そこへ、仗助とジョルノ、トリッシュがため息をつきながらやって来た。

 

「あ、仗助さん。あの3人は?」

「縛り上げて、水上コテージの1室に押し込んである。ミスタが見張っているから、妙なことはしないと思うぜぇ。」

「三羽鴉と萬蔵さんの情報で、ヴィオレッタのことが分かればいいんだがな。」

 

徐倫がつぶやくと、萬蔵はふう、とため息をついた。

 

「………ショージキ言って、あのヴィオレッタって女は何を考えているか判らねえ………『ルミリオ』ってやつと何か企んでいるみてーだがな。」

 

萬蔵がそう言うと、スバルがそういえば、と口に出した。

 

「京都でヴィオレッタ側が『ロストロギア』を狙っていた………その情報を持ち込んだのがあのルミリオなら………」

「そのロストロギア………確かノーヴェに()()()()()()()んだったな?」

「さっき、何か『腕』のようなものが出てきたと言っていたが………見たのが本人だけだから確認のしようがないけど、かなり動揺しているようでしたね………」

 

仗助とネギが話すと、ディエチとチンクが話に入ってくる。

 

「ノーヴェ、今はウェンディたちが見ているけれど、結構ショックだったみたいだよ………」

「検査で見つからなかっただけに、余計に不安なようだ………」

「心配ね………」

 

ノーヴェを心配する徐倫たち。現状では対処法が分からないためネギたちに出来ることがないのが歯がゆかった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

それから数十分後、デッキの一角にあるベンチでスケッチブックを広げたハルナが周囲に『ハロウィン』を数体出している朝倉と話していると、のどかと夕映が歩いてきた。

 

「あ、ゆえー、ちょうどよかった。」

「パル。」

「どうかしたのー?」

 

ハルナに呼ばれた夕映が近寄ると、ハルナは夕映をこちらに招いた。夕映がハルナの元に行くと、ハルナは手にした青いレンズのゴーグルを差し出した。

 

「悪いんだけどさー、ちょっとこのゴーグル付けてくれない?」

「え?まあ、いいですけど………?」

 

夕映は少し怪訝な顔になるが、ハルナに手渡されたゴーグルを装着する。すると、夕映の目の前に今までいなかった直径が30㎝位はある『腕の生えたハロウィンのカボチャ(ジャックオーランタン)』が現れた。

 

「ッ!?え?な、なん………!?」

「どうしたの、ゆえー?」

「あ、のどかもちょっと『イノセント・スターター』出して?」

「?うんーーー」

 

言われるがままに『イノセント・スターター』を発現させるのどか。すると、夕映の視線の先にはのどかの後ろに『蒼いスタンド』が立っている事に気が付いた。

 

「!?な、………の、のどか………それは………!?」

「え?も、もしかしてゆえ………『イノセント・スターター』が………?」

 

夕映は困惑しながらも、ゴーグルを上げたり下げたりしてのどかの背後を見ていた。その様子を見て上手くいったと笑うハルナと朝倉を見たのどかがある事実に気づいた。

 

「こ、このゴーグルは………もしかして………」

「うん、『ドロウ・ザ・ライン』で描いたゴーグルだよ。デザインとカラーにちょっと悩んだ自信作だよ。」

 

のどかの質問に答えるハルナ。

 

「ほら、朝倉の『ハロウィン』って、スタンドを介しているから『スタンドを撮影できる』訳じゃない?それを聞いて、私のスタンドでも似たような事できるんじゃあないかなーって思ってさ。」

「そ、そういえば………」

「それで私と相談して、このゴーグルを描いたってワケ。私はカメラ壊されたらアウトだからねー。」

 

なるほど、とのどかと夕映が感心していると、ひと泳ぎしたらしいルル・ベルと裕奈が海からデッキに上がって来た。

 

「あら、スタンドのゴーグルね?ハルナが描いたのかしら?」

「え?」

「一目で見破るなんて………よくわかったわね………」

「ええ、自慢じゃあないけれど、スタンド使いとしては、誰よりも経歴が長いもの。」

 

なんてことないように答えるルル・ベル。夕映が外したゴーグルを手にしていると、朝倉がふと思ったらしい疑問を口にした。

 

「そういえばさー、ルル・ベルっていつごろ宮崎に惚れたのー?」

「え?」

「あ、それ私も気になってた。」

 

ハルナも賛同して聞くと、夕映とのどかも顔を赤くしながらも頷いた。ルル・ベルは少し困惑した様子になるが、裕奈がそれに乗っかった。

 

「あー、お嬢と私があったばかりの頃だねー」

「ちょ、ちょっと裕奈………!」

「「ほほう?」」

 

裕奈が話に加わると、ウワサ好き(パパラッチ)2人は目をきらーんと光らせた。

 

「それはそれは、とても気になりますなぁ~~~………」

「これは、徹底的に聞き出さねば~~~………」

「ちょ、ちょっと………!?」

「あー、諦めた方がいいですよルル・ベルさん。この2人に喰いつかれては………」

 

目を輝かせて手をわきわきと動かして迫る2人に怯えるルル・ベルに、夕映が呆れたように言う。すると、のどかもおずおずと手を上げた。

 

「あの………私も訳もわからず突然告白されたから、その辺気になっていて………」

「のどかも………はぁ、まあ、いいけれど………」

 

ルル・ベルは諦めたのか、ベンチに腰を掛けると話し始めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ルル・ベルが初めて麻帆良学園都市へと来たのは、ネギやスバルたちの来るひと月ほど前、1月の半ばであった。

 

「ふー………湖の近くは、特に冷え込むわね………凍えてしまいそうだわ………」

 

ルル・ベルはその日、『図書館島』が見える湖畔のベンチに腰掛けていた。お気に入りの黒いケープコートだけでは少し寒いが、普段から包み込むように隠している「左手」が暖かいのが、幸いであった。

飲み物を買いに行ったサルシッチャはまだかと思いながら、右手で懐を探る。

 

(この街に、『ポルナレフの娘』がいることは確かなのよね………彼女の『護衛』と、お母様に対抗するための『戦力強化』のためにも、この街で『スタンド使い』を増やす必要がある………)

 

遂に動き出した『ヴィオレッタの軍勢』に対抗すべく、彼女から奪い去った『矢』を使う時が来た。最初は無関係の者を巻き込むことに躊躇いがあったが、そう言っていられる時ではなくなってしまった。

 

(幸いというか何というか、『ジョースター家』の人間もいるようだし………うまくいけば、この麻帆良に色々と()()()()()()()くるわ………あら?)

 

ふと、左袖の中に隠していた『矢』が、まるで、釣り針に魚が食いついた釣り糸のようにクン、クン、と動き出した。

 

「もう反応があったというの……!?い、いったい、誰が………!?」

 

ルル・ベルは一瞬慌てるも、不審に思われないように『矢』が求める者を探った。

 

「この『()()』の強さ……結構近いみたいね………どこかしら―――」

「ふぅー……体力ついてきたとはいえ、図書館島はやっぱり遠いなー………」

 

その時、前髪で目元が見えない少女が、本を多く抱えてルル・ベルの横を通りかかった。左手に隠してある矢は、真っすぐにその少女に反応を示していた。

 

どきん♡

 

「………ぇ?」

 

しかしルル・ベルは、その少女から目が離せなかった。心拍数が大きく早くなり、頬が赤くなった。

 

(な…何?彼女、あ…あたたかい輝きの中にいるようにみえる…あ…あれ?どうしたの私…急にドキドキしてきたわ…)

 

今まで抱いたことのない感情が、ルル・ベルの胸を埋め尽くしていた。

 

(な、何なのこの感情は!?よく見たらかわいい、じゃあなくって、矢はあの子を………あれ?顔が熱い?さっきまで寒かったのに………何なの!?)

「お待たせしました、お嬢さま。………お嬢さま?」

 

両手にホットココアの入った紙コップを手に戻って来たサルシッチャの呼びかけに気づかないほど、ルル・ベルは混乱していた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――とまあ、それが私とのどかのファーストコンタクトなのよ………」

「そ、そうなんだ………」

「本当に一目惚れだったとは……」

「気づかなかった………」

 

恥じらいながら語るルル・ベルの話を聞いて呟く、のどかたち。

 

「その時は、その「熱い胸の高鳴り」が何なのか理解をしていなかったの………それからはサルシッチャの能力で遠くから見守るだけだったわ………」

「普通にストーカー行為ね………」

「でもあの時、『マイク・O』から助けた時……直接あなたを見てから、どうしてもあなたの事が忘れられなくなって………その時に、その気持ちが『恋』だと気づいたの………」

 

冷静にツッコむ朝倉を気にせずに話すルル・ベル。それに、裕奈が補足する。

 

「恋って気づいてからも、お嬢大変だったもんねー」

「え?そうなの?」

「………ええ、自分が『同性愛者』であると気づいて、それを受け入れるまでに時間がかかったわ………それを打ち明けて、受け入れてくれるかって不安もあったし………」

「あー……今の話だと、完全に想定外の一目惚れみたいだしねー………」

 

ハルナが少し呆れたように言うと、話を聞いていたのどかがルル・ベルに近づいてきた。

 

「あ、あのー、ルル・ベルさんー………」

「のどか………」

「あの、あの時は突然キスされて告白されたから、ちゃんとしたお返事できなかったんですけれどー………」

「あぅ………」

 

のどかに言われて言いよどむルル・ベル。

 

「あ、あの時はその………自分でも軽率かつ失礼なことをしてしまって………あの、ご、ごめんなさい………」

「あ、いえ、それはもういいので………あの、正直まだルル・ベルさんのこと知らないことがあるしー……今はまだ、『友達』からということでー………」

「………そ、そうね、そうよね………」

 

のどかの返答を聞いて、少し俯き気味で答えるルル・ベル。最初から受け入れてくれるとは思ってはいなかったが、少々残念そうではあった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その頃、コテージの一室でベッドから起きたノーヴェが、ディエチに付き添われながら出てくると、スバルと鉢合わせた。

 

「ノーヴェ、もう大丈夫なの?」

「あ、うん………まだちょっと整理はついてないけど………一回外の空気吸いたくて………」

 

まだ不安な様子ではあったが、スバルに返すノーヴェ。

 

「そっか……なんかあったら、言ってくれていいからね?」

「……うん、アンガト……」

 

ノーヴェは少し困惑しつつも返答をする。そうして立ち去ろうとすると、今度はジョルノが歩いて来た。

 

「あ、ジョル兄。」

「スバル、ノーヴェも、大丈夫ですか?」

「あ、うん………なんとか…」

 

ジョルノにも返事をすると、ノーヴェはその場から立ち去って行った。

 

「ノーヴェ、大丈夫かなぁ………」

「どうでしょうね…心配ではありますが、今は本人の気持ちの整理が付くのを待ちましょう………」

「………うん……」

「あの、スバル……」

「うん?」

 

ジョルノに小さく答えるスバル。2人はしばらくその様子を見ていたが、不意にジョルノが話しかけてきた。

 

「………君は、僕を「兄」と呼んでくれているけれど……知っての通り、僕は世間的には『あまり人に誇れる仕事』をしているワケじゃあないんだ………」

 

だから、とジョルノが続けようとすると、スバルはうーん、と首を傾げた。

 

「あのさー、私よくわからなくて……ギャングって『悪い人』ってイメージしか聞いてなくて………」

「え……?」

「ギャングっていうか、ジョル兄って「何」をしているの?」

 

スバルの素朴な疑問に呆気に取られるジョルノ。見た所、彼女は純粋に「疑問」に思ったから聞いたのだろう。ジョルノは戸惑いつつも、はあ、とため息をついた。

 

「……ええと、とりあえずは前ボスの残した『麻薬』の払拭ですね。自分の縄張りで勝手に『密売』をしている輩を発見次第、大元ごと壊滅させて『粛清』させていますね。麻薬以外にも、組織(パッショーネ)に許可なく密輸や賭博をする連中の取り締まりや、警察が聞いてくれないような小競合いの鎮静化もやっていますね………」

 

ジョルノの説明を聞いたスバルは「ふーん………」と頷いた。

 

「……じゃあ、言うほど『悪いこと』はしていないんだね。」

「え?」

「今の話だと、過程や方法はともかく、『困った人のため』にやっているんだよね?それなら、あまり気にするようなことじゃあないと思うけどなー」

「え、ええと………」

 

純粋な目で問いかけるスバルに戸惑うジョルノ。ジョルノとしては、表社会の時空管理局に勤めるスバルが、自分たち裏社会(ギャング)とあまり関わって欲しくないと思い遠ざけようと話しかけたのだが、スバルはさして気にしていない様子だった。

 

「あ、何か気を使ってくれてたみたいだけど、私は気にしてないから、普通に接してくれて大丈夫だよー?」

「そ、そうですか………(考えたら、ノーヴェたちも教育者のせいとは言え『テロリスト』だったそうだし………同じように考えているのだろうか………?)」

 

笑って話すスバルに呆気に取られるも、スバルと自分では考えが違うことをここで思い知た。その場を去っていくスバルの背中を見ながら肩を落としていると、ミスタがやって来た。

 

「ハハ、何つーか形無しだなぁ~ジョルノ。」

「ミスタ………」

「まあ、お前もあまり考えすぎねーで、あの娘のこと受け入れてやってもいいんじゃあないのか?」

「………まあ、そうなんですけどね………」

 

少し冗談交じりで話しかけてきたミスタに、ジョルノは苦笑を返した。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………」

 

同じ頃、ノーヴェはデッキの手すりに膝をつきながら、日が落ちて星の出始めた水平線をぼーっと眺めていた。ふと、ノーヴェは左手を―――先ほど、『ミイラの腕』のようなものが出てきた左手に目を落とした。

 

(さっきの腕………あの『ミイラの腕のようなもの』は一体………?)

「よォー、大丈夫かノーヴェ?」

 

ノーヴェが落ち込んでいると、そこに仗助が話しかけてきた。

 

「………ああ、仗助さんにチンク姉………って…!?」

「あ、どうもノーヴェさん………」

 

ノーヴェが振り返った先には仗助とチンク、そしてその隣には短パンにアロハ姿の篤尾 奏汰の姿があった。初対面があのようなあんまりな事もあり、京都では互いに距離を取っていたため、顔をちゃんと合わせていなかった。

 

「あ、えーと………何でココに?」

「実は、GW(ゴールデンウィーク)開けからまた麻帆良に通うことになりまして………ボクがスタンド使いになったって聞いて、母さんが学園長に『レアスキル持ち』って事で木乃香さんの婚約者候補として売り込む気らしくて………」

「懲りねーな、オメーのおふくろ………」

 

奏汰の説明を聞いて呆れる仗助。奏汰自身も大分まいっている様子だった。

 

「あの、ボク……色々あってノーヴェさんにちゃんと謝れていなくて………あの時は、ウチの()()()()」に巻き込んでしまって、すいませんでした!」

「あ、いや、………私の方こそ、あの時はゴメン………」

 

頭を下げる奏汰に対して、ノーヴェも後頭部を掻きながら謝罪を口にする。仗助とチンクは顔を合わせると、その様子を見てやれやれ、とため息をついた。

 

「ん?」

 

ふと、チンクは足元にあるデッキの下の海面から、何かが出てきた事に気づいた。仗助もそれに気づいて見てみれば、それはプカプカと浮かぶ魚の死骸であった。

 

「何だ、死んだ魚か………プレオープン中なのに、ちょっと汚いのはな………」

 

仗助が呟いていると、ノーヴェたちも魚の死骸に気づいた。すると、その死骸に続くようにもう1匹流れてきた。

 

「………」

 

更に1匹、また1匹と、大小の魚の死骸が流れてくる。

 

「………?」

 

流石に不振に思う4人。仗助は『クレイジー・ダイヤモンド』を発現させるとデッキの下の海面を覗かせた。

その瞬間、仗助は顔を強張らせ、弾かれたように叫んだ!

 

「ジョルノたちを呼べぇえーーーッ!!周囲を警戒させるんだーーーッ!!」

「「「!?」」」

 

冷や汗をどっと流した仗助の叫びに驚く3人。

 

 

 

 

 

デッキの下には、『おびただしい量の魚の死骸』が浮かんでいた………!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「どうだアギト、ルーテシアの様子は?」

「あ、チサメ。ジョリーンも………」

 

同じ頃、ルーテシアの休んでいた部屋に千雨たちが入って来た。診ていたアギトは千雨たちの顔を見て安心したような笑みを浮かべた。

 

「今は寝てるよ………今日は色々あったからな………」

「そうか………」

 

千雨もホッと胸をなでおろす。徐倫はそんな千雨の様子を見てニヤリと笑った。

 

「何だよぉ、千雨もすっかり『お姉ちゃん』だなぁ~?」

「なッ!?あ、いや、ってか、チャカすなよ………!?」

 

徐倫に揶揄(からか)われて、焦って否定する千雨。思わず大きな声を出しそうになったが、小声で反論することができた。

 

「べ、別に…あんな目にあったから心配なだけで………」

 

と千雨はなんとか言い訳をしようとあれこれ考えを巡らせた。

 

『………』

 

そんな3人のやり取りをしている背後で、誰にも悟られずに現れたもの(スタンド)があった。

枯れ木を思わせるミイラのような身体に何本もの細い紫色のコードが腕や足、首に繋がっている。顔には血が付いた指で描いたような赤黒い一つ目模様が描かれたボロボロの薄汚れた布が垂れ下がっていた。

 

『………』

 

スタンドは爪が大きく変形した右手を掲げると、力強く振り下ろし―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………やれやれだわ。」

『オラァアッ!!』

ドグシャアッ

『………!?』

 

しかし、振り下ろしきる前に『ストーン・フリー』の拳が顔面に叩きこまれて吹き飛ぶ!

 

「やろー………空気くらい読めよな………」

「このタイミングって事は………『三羽鴉』が失敗した時の保険か?」

「だろうな。とにかく、ここじゃあルーテシアに被害が行くかもしれねーからなぁー………」

 

吹き飛んで倒れたスタンドを見ながら口々に言う3人。スタンドはフラフラと立ち上がると、剥がれた顔の布の下からくぼんだ小さな目と歯並びの悪い歯を持った不気味な素顔を見せた。

 

Fuuuuuuuuuuu(フウウウウウウウウウウウ)………』

「うわ、キッショ………」

Fuoooooaaaaaaaa(フオアアアアアアアアアア)!!』

 

徐倫がその見た目に引いていると、スタンドは唸り声を上げて襲い掛かって来た!

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラァアッ!!」

 

徐倫がそのボディーを殴りつけると、スタンドはドアの方に吹き飛ぶ!そのまま千雨が『アニバーサリー・オブ・エンゼル』を見に纏って飛び蹴りを叩き込み、ドアを突き破って外へ飛び出た!

 

ドガンッ

「うわ!?」

「ち、千雨ちゃん……!!」

 

飛び出した先にいたネギと明日菜が驚いて声を上げる。吹き飛ばされたスタンドは悲鳴と共に消滅すると、徐倫も突き破られたドアから顔を出した。

 

「おうネギ、スタンドが襲ってきたけど何とか―――!?」

 

ネギの方を見た徐倫は笑いかけるが、その顔は直ぐに強張った。

 

Fuuuuuuuuuuu(フウウウウウウウウウウウ)………』

Fuoooooaaaaaaaa(フオアアアアアアアアアア)!!』

 

何故ならば、ネギたちはたった今倒したばかりのスタンドと同型のスタンドと戦っていたのだからだ!

 

「ま、まさか………」

「このスタンドは………『群勢型』だと!?」

 

このスタンドが群勢型と知って驚きを隠せない徐倫と千雨。その時、唸り声を上げていたスタンドが、口を開いた。

 

『Fuoooo………『ミリオン………モンスターズ………アタック!』………』

「何?」

『『ミリオン・モンスターズ・アタック!』………』

『我らの、名………『百万の軍勢』………』

『『ミリオン・モンスターズ・アタック!』………』

「!?」

 

スタンド『ミリオン・モンスターズ・アタック!』が名乗った時、その背後からも声が聞こえた。振り返ってみれば、そこにも3体の『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の姿があった!

 

「『ミリオン・モンスターズ・アタック!』………!」

 

不気味にユラユラと迫る『ミリオン・モンスターズ・アタック!』たちに、徐倫は戦慄した。

 

 

 

 

 

←to be continued…




87話です。
・サブタイトルは『エシディシの不気味』から。

・萬蔵は百香と交流がありました。波紋使いも生き残りに必死なので、他流派とも以外に交流があるようです。

・ルル・ベルとのどか、スバルとジョルノは一応のひと段落。

・奏汰再登場、したと思ったら事件発生。魚のシーンはジョジョっぽい演出を目指して入れてみました。

・謎のスタンド『ミリオン・モンスターズ・アタック!』登場。ジョジョらしい不気味さとホラーっぽさを出そうと色々考えています。

では、また次回!

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