永遠の17歳。の後輩22歳   作:しおぽん

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働きねずみと優しい熊

目の前にいる三白眼の大男は武内プロデューサー。

その風貌は堅気の人間とは思わせないような威圧感があり尚且つ表情をまったく変化させない事がより一層それを色濃くさせた。

武内プロデューサーとの話は今も続いているが少し話を入室頃に戻そうと思う。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

「真壁さん、どうされましたか?」

名刺を差し出したまま静止している『先輩』。

懐から名刺をだす時に半歩下がった足を戻し、そして動揺した事に気づかれないように名刺を受け取った。

 

「武内と申します、来年4月からの活動開始を予定しているシンデレラプロジェクトの補助をお願いすることになると思います。企画統括が若輩者の私という事で不安かもしれませんがしっかり推敲し不備がないよう進めていくつもりです。もちろん真壁さんにとって成長の場であることも間違いはないのでこの企画に携わることで得られるものがあることを願っています。」

無表情な彼から紡がれる言葉は丁寧でこちらを気遣った言葉が目立った。

これだけでこの人の人柄が知れるのではないだろうか。

 

「武内先輩、ご迷惑をお掛けするとは思いますがこれからよろしくお願いします。」

名刺を受け取り、ソファーに誘導され互いに座る。

 

「あ、今すぐお茶用意しますね。」

デスクに向かっていた千川さんが給湯室に消え数分、両手にはお盆。すぐにテーブルへと運ばれ武内先輩と俺の前に配膳される。

 

「武内プロデューサーは初対面だと結構警戒とか誤解されたりするんですけど、真壁さんはどうでした?」

クスクスと口に手を当てて笑っている千川さん。

 

なかなか返答に困る内容だと感じたが誤魔化すのもおかしいと思い少し笑いながら正直に話す。

「あはは、なんというか風格?がすごかったです。」

すごかった、表現としてはきっと間違いない、決して誤魔化してなんかない。

うん、すごかった。

 

千川さんは笑いながら話を続ける。

「そうですね、実はプロデューサーが入社してから2回ほど警察に職務質問を受けて交番に連れていかれた事があったんですよ。」

話す言葉自体もすごく丁寧で腰も低いが、如何せん自分より3~4cm程高い背、肩幅も広くアメフトやラグビー選手かのような体格そしてこの三白眼。せめて口数や表情が柔らかであればといったところだろうか。

 

「名刺を見せても信用してもらえないってなかなかないですよね、交番でいつも通り首に手を当ててすっごく丁寧に弁明してるプロデューサーを見たときはなんというか笑っちゃいました。」

聞き上手なのか話下手なのか、視界に入った武内先輩は無表情だが困ったように首に手をあてていた。

 

「千川さんあの時はお手を煩わせてしまったすみませんでした。」

なんというか無愛想というより不器用な人なんだろうか。

 

千川さんは笑いながら本当に仕事に支障が無くてよかったです、と言ってまた自分のデスクへ向かっていった。

 

「それでは、真壁さんこれからについて詳しく話して行きましょうか。」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

「えぇ、その認識でかまいません。」

武内先輩が書類をテーブルへ置き一息つく、説明を受けたこれからの活動内容についてはこういうものだった。

 

現状として、シンデレラプロジェクトメンバーの選出、所属アイドルまたはスカウトそして応募を予定している状態であり現346所属アイドルに関しては一部目星は付けているらしい。

しかし現状は予定していた人数を割っており年末、年始にかけても継続して応募やスカウトを行っていくとの事。

 

 

また、1月に控えたライブ『川島瑞樹』『高垣楓』『城ヶ崎美嘉』『佐久間まゆ』『十時愛梨』『日野茜』『小日向美穂』『輿水幸子』『白坂小梅』通称シンデレラガールズを担当するプロデューサーの補佐も兼任しているようで現状かなり忙しいらしい。

 

今回俺がこの部門、部署に配属されたのは勿論、現場に入って下積みをするというだけでなく、来年四月の始動を予定しているシンデレラプロジェクトを進める為に武内先輩を助けるべく割り当てられたという事だ、戦力になるかどうかは別として。

 

 

「明日から早速一緒に行動して頂くのですが、まずはシンデレラガールズ、及びシンデレラガールズ担当の間島プロデューサーとの顔合わせをします。」

忙しい時間を使って作成してくれたのだろうこれから1週間のスケジュール表を手渡しされ目を通す。

16時以降まではスケジュールにお昼休憩(移動時間)以外の空きはなく言葉じりだけではない事を理解した。

 

「シンデレラガールズの皆さん全員にはスケジュール状会う事ができませんので、346社内のレッスンルームを利用している『佐久間まゆ』さん、『十時愛梨』さん、『小日向美穂』さんに挨拶をします。その後レッスンルームにて間島プロデューサーと合流、1月に控えたシンデレラガールズのライブに関する会議に参加していただきます。今回は見学という事になります。」

スケジュール表に目を通し、時折武内プロデューサーへの言葉に理解を示すよう目配せをしつつ相槌を打つ。

 

「その後なんですが間島プロデューサー、私、真壁さんで『城ヶ崎美嘉』さん主催のイベントの見学と顔合わせ、『川島瑞樹』さんも近くのTV局で番組撮影を行っておりますので同じく挨拶を済ませます。」

名前がでなかったアイドル達に関してスケジュール状、後日顔合わせになるとの事。

その後会社に戻りシンデレラプロジェクトの選考に関する日程の調整や面接会場等の候補絞り込みと確保。

 

「申し訳ありません、配属二日目からこのような過密日程で。」

この部門自体が創設からの期間が短いためか、運営に関する人材の不足が現在でも問題視されているらしく、他の芸能部門からヘルプとして一時的な移動が行われるも『アイドル』という区画はそれまでの部門とは大きく違っているらしく芸能部門に長く所属する社員でも手こずっているとの事。

 

「いえ、先輩が悪い訳ではないので、それに私自身も体力には自信があるのでちょっとやそっとじゃヘコタレませんよ。」

むしろ望むところだ、と言いたい。高校卒業後1年間は何もせずただ抜け殻のようにボーっとしていただけの何もない毎日、考える事だけが先行して不安に押しつぶされそうな日々だった。

しかし、体を動かし疲れていると案外ネガティブは来ないものだとわかった。

そしてそれはきっと仕事でも同じことだろう。

 

そう言って頂けると私も助かります、先輩は言って視線を書類へと戻した。

「先ほどのスケジュールの続きですが、現在346所属の私が絞り込んだシンデレラプロジェクト候補生の方と面談をして頂き真壁さんが感じた率直な意見を頂けたらと考えております。」

 

「彼女達の『アイドル』を目指す姿を、夢見る姿をしっかりと見てきてください。私自身も感じ入る事があったように真壁さんも何か得られるものがあるはずです。」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

ミーティング?を終えた後、配属初日という事で定時帰宅を許された。

先輩は専用のデスクから何かを取り出すと社用車を使い、間島プロデューサーと合流後翌日に控えた会議内容をさらに詰める予定らしい。

 

俺は事務所を出るとエレベーターでカフェがある階を選択する、大層な目的はなくただ一言挨拶をしてから帰るつもりだ。

エレベーターが開き足を進めてすぐにカフェテリアに着く。

 

「いらっしゃいませー」

そこには朝、対応してくれた店員さんがおり俺を一瞥してからニヤリと笑う。

すぐに表情を正して席に案内しようとする店員さんを手で制して声をかける。

 

「安部さん、居られますか?」

その言葉を聞いて店員さんは、ちょっとまっててねーと言ってからバックヤードに消えていく、すぐに戻ってきた店員さんの手にはウサギ型のクッキーがありそれを手渡される。

 

「菜々さんはお仕事のイベントでいないよ、このクッキーは菜々さんから君へだって!」

昔馴染みなんだって聞いたよ、あんなに可愛い菜々さん初めて見たわ!といいながら肩を叩く店員さん。

ひとしきり肩を叩き終えると颯爽と仕事に戻っていった。

 

カフェに居る本来の理由も無くなったので明日の為に早い帰宅の途に着く事にする。

そこで手に持ったクッキーを手にカバンへと収めようとすると朝配られたクッキーとは違う所があることに気付く、そこには二つ折りのメッセージカードがリボンと包装紙の間に挟まれていた。

 

「なんだこれ?あぁ・・・これは」

某有名メッセージアプリと彼女のID番号が書かれていた、つまりはこれで連絡をとろうという誘いだろう。

お互い話足りない事もあったし、もちろん俺としては大歓迎というか歓喜である。

すぐにIDを登録するとメッセージを打ち込む。

 

『菜々姉ちゃん、明日からもよろしくお願いします。』

送られたメッセージ対する返信はすぐに返ってきた。

 

『こちらこそお願いします、草太君。』

メッセージの後にはニコニコ顔のウサギのスタンプが何回か続いた。

このやり取りは菜々姉ちゃんのイベント開始までの待機時間中ずっと行われていた。

それが理由か、家まで歩く俺の歩調は今の気分を表すかのよう軽快に足を運んでいくのだった。




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あざーっす。

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寝ます。
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