艦これ-提督と艦娘の鎮守府物語-改   作:鶴雪 吹急

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第二章
第十話「作戦命令」


 初夏の陽気が窓から差し込む昼の執務室。

 今朝届いた扇風機が送る生暖かい風を受けながら、提督は執務机である物と睨めっこしていた。

 横では、吹雪がその様子を見ている。こちらはこちらで何かと戦いながら見ている。

 提督の顔は真剣で、チンピラから吹雪達を離そうとしたときと似た表情をしている。

 

「出来た...」

「やりましたね!」///

「ん?吹雪?顔が赤いぞ?熱でもあんのか?」

「え、あ、いや、何でもありません!」

「そうか。とりあえず、これはケースに入れてっと」

 

 提督は、出来たもの―――――1/1250スケールの洋上模型、「あきづき型護衛艦『あきづき』」をダ○ソーで買ってきたケースに仕舞い、机の端に置いてあるケースの上に置いた。

 

 ◇ ◆ ◇

 

「しかし、こんなものを提督が買ってきていたんですね」

 

 吹雪は、完成品をまじまじと見ながらつぶやいた。

 

「ああ、これは2ヶ月くらい前に俺だけで、ヨ○バシに行った時に、模型とかおもちゃが置いてあるコーナーの端っこに置いてあったの買ってきたんだ。シリーズがあって、これがシリーズ2だったな。シリーズ3も置いてあって、一つずつ買ってきたんだ」

「買ってきてから2ヶ月経っているってことは、もう一つも完成しているんですか?」

「いや、出来ていない」

「何故?」

「それは、そいつを作り始めたときに、それが無かったからだ」

 

 そう言って、俺は机に置かれた物の二つを指す。

 

「接着剤とピンセットですか?」

「ああ、それが作り始めには無くて、煙突のアンテナを無理に付けようとしたら、折れた」

「何やってんですか!!」ドアバン!

「「!?」」

 

 吹雪に自分の失敗談を話していると、いきなり明石が勢い良くドアを開けて入ってきた。

 

「うぉ!いきなり明石どうしたんだ!てか、ドアが...」

「そんなことより」机ドン!

 

 大破したドアをお構いなしに、明石は机を叩く。

 

「何で道具もなしで模型を作ったんですか!」

「いや、せちゃくz」

「いやじゃありません!模型を組み立てるんだったら、この二つは必要ですよ!」ドン!

「...はい」

 

 その後も、明石による説教が30分続いた。

 

「いいですか!」ドンpart4

「わ、分かったから。執務室に来た用件は何だ」

「おっと。すみません、模型で熱くなりすぎましたね。用件はこちらです」

 

 明石は一枚のカードを渡してきた。

 

「これは?」

「この前、提督に頼まれて作った紫電改の管理カードですよ!」

 

『管理カード』

 それは、艦娘の艦船やそれに装備する艦砲などを管理するカード。

 艦船についてのカードは、長方形で

 装備についてのカードは、正方形である。

 裏にIDが書かれてあり、それで管理している。

 艦娘カードの裏には、現在どの装備を付けているかも、記載されている。

 

「ああ、そういえば貰っていなかったな」

 

 そう言いながら、カードを専用のファイルに収める。

 

「カード、ありがとな、明石」

「いえ!では、これd」

「それとな、明石」

 

 明石の、足早に執務室を去ろうとしていた足を止めさせる。

 

「壊したドア、治せよ?」

「...はい」

 

 明石に壊れたドアを持って帰らせて、俺は机に戻った。

 

「はぁ~」

「お茶、飲みます?」

「頂こう」

 

 吹雪は給湯室に向かった。

 

 ◇ ◆ ◇

 

「どうぞ」

「ありがとう」

 

 応接用の机に移動して、まったりする。

 吹雪はまた、模型を見ている。

 

「現代艦...自衛艦ってすごいんですか?」

「すごいと思うぞ?俺もそんなに詳しいわけではないが、対潜・対空・対艦装備その他、艦砲も口径は小さいものの速射砲になっているからな」

「そうなんですね」

 

 その後、すぐに明石が戻って来てドアの取り付けをした。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ーーーー

 

 夜の静けさが包む執務室。

 吹雪はすでに自分の寮に戻っている。

 シリーズ3の組み立てに取り掛かろうとしている提督のもとに大淀がやってきた。

 

「提督、大本営と海軍から電報です」

「ん?なんて言っている?」

「こちらです」

「ふむふむ...ん?!」

 

 大淀が渡してきた電報には、

 

『大本営並びに海軍より、青ヶ鳥鎮守府へ

 先日、こちらに向かって来る深海棲艦の艦隊を発見した。奴らの目標は、我が本土の東京だと思われる。

 青鎮はこれの迎撃にあたれ。

 なお、迎撃にはこちらからの必須出撃艦隊を基本に使うように』

 

 と、書かれていた。

 さらに、その下には、

 

『必須出撃艦隊

 南雲空母機動部隊

 赤城、加賀、飛龍、蒼龍

 主力部隊

 長門、陸奥、大和

 偵察部隊

 利根、筑摩

 護衛駆逐艦

 嵐、野分、萩風、舞風』

 

 そう書かれていた。

 

「提督、これって!」

 

 大淀の発する言葉には、大本営・海軍に向けられた怒りのような感情が込められていた。

 

「ああ、ほとんどがあの海戦でのキーポイントシップ(重要艦)だな」

 

 提督は電報の書かれた紙をくしゃくしゃにした。

 

「どうなさるんですか?」

「簡単だ。この部隊を主力に置き、迎撃しよう」

「しかし!それでは準備が急すぎます!それにっ!」

「準備なら、大丈夫だ。日々の哨戒出撃先を今まで以上に難易度の高いところにしている。それに、今の赤城達は慢心に負けるほど弱くは無い。それに、またそんな悲劇を俺は繰り返させない」

 

 提督の目には、慢心なしの自信に満ちた。光があった。

 

「そうですか...。だといいんですが。それより、こちらです」

 

 そう言って、大淀はくしゃくしゃの紙のあるところを指す。

 

「うちの鎮守府には、『大和』が居ません。こちらは、どうなさるんですか?」

「問題は、そっちだ。この作戦を実行するには、彼女が居るのと居ないのとでは、差が大きいな」

 

 提督と大淀はそれぞれ腕を組んで、考え始めた。

 

ガチャ!

「提督!鎮守府近海になぞの艦船が侵入!こちらに向かって来ております!」

 

 突然、明石が飛び込んできた。鎮守府近海への侵入艦を知らせに来たようだ。夜間の発見のため、結構近くに居るだろう。

 

「深海棲艦か?!」

「いえ、そのような感じはしません」

「他には何か?」

「島の明かりにうっすら照らされている様子を見ると、前方には巨大な三連装砲が二基、高角砲が後ろに一基、確認できました。おそらく...」

「おそらく?」

 

 明石は自分も半信半疑なところでその言葉を口にした。

 

「おそらく、大和型だと思います...」

「...了解。その艦船を入港させろ!大淀は、臨時の秘書艦で俺と一緒に来てくれ」

「分かりました」

 

 三人は執務室を飛び出した。

 

ー同時刻・鎮守府近海、海上ー

 

 その艦は完成したのが遅かった。

 その艦が出来た頃には、巨砲巨艦主義は無くなり、航空戦が重要だった。

 彼女の最初の出撃のときに、日本の主力空母は波間に消えた。

 彼女の一人だけになってしまった妹は、先に沈んだ。

 彼女の最期の出撃は、沈んで来いといっているようなものだった。

 彼女は他五隻と共に、その艦生を終えた。

 

はずだった。

 

 何年経ったか分からないが、ある時声が聞こえた。

 その声は、旧海軍上層部の奴らの声ではない。乗組員や艦長たちとも違う。

 しかし、それは信頼できそうな声だった。

 気付けば、身体(船体)は元通りになっている。

 私は、艦橋に立っていた。

 何故か艦娘になったと分かっている。知っている。

 私は、声がした方向へ、舵を取っていた。

 

 声の主は、今、埠頭に立っている、提督らしき人の声だとすぐに分かった。

 横に居るのは、大淀でしょう。

 

 ◇ ◆ ◇

 

 大和型らしき艦船は徐々に姿をくっきりさせた。

 それは、大和型そのものだった。

 

「君は?」

 

 艦船から降りてきた、きれいな女性――艦娘に聞いた。

 

「私は、大和型戦艦、一番艦、大和。推して参ります!」

 

 

 

 

 

 

「ヒゲキヘノ、ヤクシャハソロッタナ」

 

 東京への空襲成功のために、戦力を揃えた深海棲艦。

 その旗艦のヲ級エリートは、不敵な笑みを浮かべていた。




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