「転移した...ってどう言うことですか?」
あきづきは疑問をそのままぶつけた。
「転移したってのは、そのままだ。もといた世界からこの世界に来たというだけのこと」
「そのもといた世界ってのはどこなんですか?」
「んー。話すと長くなるが良いか?」
「はい。構いません」
「そうか。では、話そう」
俺は、ソファに座りなおして話し始めた。
「俺は、この世界に来る前にまた別の世界に居た。そこは不思議なところで、科学的なんて言葉はありえない様なところだったな」
「そうなんですか」
「ああ、おそらく俺が艤装を纏えたりする特典はそこから来たからだろう。そして、あきづきを艦娘化させた何かしらの力もそこから来たからだと、俺は思う」
「それは如何してですか?」
「その世界は、不思議な力がごろごろと転がっているようなところだったからだ。魔法が使える奴が居たりしたからな」
「なるほど」
俺はいったん、お茶を飲んだ。
「まあ、その世界にも転移して行ったんだけどな」
「と言う事は、その世界の前にも居た世界があると?」
「そうだ。そこが俺が
「その世界とは?」
「大東亜戦争。後に太平洋戦争とも呼ばれる大戦中の日本だ」
「えっ?」
あかづきはコップを置く動きを止めた。
「太平洋戦って...どう言うこと?」
「ここからが難しいのだが...ついてこれるか?」
「はい」
「じゃあ、先ず...太平洋戦争はこの世界で起こったものでは無い」
「はい?」
あきづきは思わず聞き返してしまった。
「簡単に言うと、この世界に平行にある世界での太平洋戦争に参加していた」
「と言うことは、この世界であった太平洋戦には...」
「俺は参加して無い」
「じゃあ、その平行世界の太平洋戦争では、提督どんな事をしていたんですか?」
俺は無言でソファから立ち艤装を展開させる。
「俺のこの艤装から連想できるものは?」
「んー。空母の艤装ですよね...。艦載機のパイロットがすぐに思い浮かびますが」
「そうそれ」
「えっ?」
「俺は、その戦争では艦載機乗りとして、ずっと最前線で戦っていた。そして、死んだ」
「死んだ?!」
「ああ」
俺は艤装を仕舞い、またソファに座った。
「俺は、『瑞鶴』艦載機乗りとしてずっと最前で戦った。真珠湾にも行ったし、その後の海戦も『瑞鶴』と共にいろいろ行ったな。岩本さんと一緒に直掩をしたこともあったかな。まあ、それも『瑞鶴』が囮としてエンガノ岬に行ったときまでだったがな」
脳裏に昔の光景が浮かんできた。
「俺は、あいつから軍艦旗が降ろされるのを見た。あの光景は今でも忘れられないよ。その後、他の乗組員が降りていく中、俺は格納庫に仕舞われた俺の愛機の横に行ったんだ。そして、最期はその横で沈んだんだ」
「・・・」
あきづきは静かにそれを聴いていた。
「まあ、そこから何故か転移を繰り返して、今に至るんだがな。すこし重かったかな?」
「あ、いいえ大丈夫です。ありがとうございました」
あきづきは俺に一礼して執務室を出て行った。
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あきづきの出て行った執務室。
提督は、執務机引き出しから二枚の写真を取り出した。
一枚は、提督が家族と写っている写真。
もう一枚は、ある軍艦を写した写真。
どちらも古びて焼けている。
提督は、その写真を少し眺めた後、仕舞った。
そして、机の上に置いてある。製作途中の模型の最後の部品を取り付け、展示ケースに仕舞い、執務室から出て行った。
執務室から見える空は赤く染まり、海には夕日が沈みかけていた。
◇ ◆ ◇
ー???????ー
夜に静まり返った港から一隻の船が動き出した。
当直で居たはずの乗組員は全員、埠頭へ降ろされている。
船内は、小さな人らしきものがうろちょろと動き回り、艦橋の中心では一人の少女が指示を飛ばしている。
「両舷最微速!目標!青ヶ鳥鎮守府!」
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