第十七話「吹雪と提督-呉鎮守府へ-」
「行くぞ!吹雪!」
「はい!」
夕方の鎮守府にガタゴトと物を運ぶ音が響く。
埠頭には、吹雪、夕立、時雨、神通、金剛、赤城の艦が泊まっている。
「全員そろったな?」
『はい』
「それでは、これより呉での観艦式参加のために出撃する。ここから真っ直ぐに呉に向かい、それぞれの艦内で一泊し、翌朝に呉鎮守府に入港。俺と吹雪で向こうの提督に挨拶するために先に艦を降りる。挨拶が終ったら各自降りてきていいぞ。何か質問は?」
「はい」
赤城が手を挙げた。
「どうぞ」
「観艦式後の行動は?」
「観艦式後は、一日あっちに滞在する。その間は、食べたいもの食べたりしていいぞ」
赤城は静かにガッツポーズをしていた。何か食べたいものでもあるのだろう。
「よし、では出発しよう」
各自、艦に乗り始め、吹雪から順に埠頭を出発していった。
ー洋上ー
俺は吹雪の艦尾、第三砲塔付近で日向ぼっこをしていた。
「よう、宮島。空が飛べなくて暇か?」
「ああ、菅野か...。そうだな~」
俺は菅野の姿を見て再び日向ぼっこに戻る...が、あることに気付いた。
「って、空?」
「ああ、そうだよ空。お前、艦載機乗りだろう?」
「何で、知ってるんだよ」
「だって、お前があきづきに話している時、俺はお前の執務机にある模型の紫電改を磨いていたんだからな」
そう言って菅野は、俺の隣に寝転がった。
「まさか、お前が『瑞鶴』に乗って空を飛び回っていた艦載機乗りだったとはな...。『瑞鶴』ってことは、岩本さんと一緒だったんだろ?どうだったんだ?」
「岩本さんか?岩本さんはまさに『瑞鶴』の守護神に相応しい方だったな。体を動かすことが好きらしくて、よく体を動かしていたな。あ、でも、アリューシャンからは転属で『瑞鶴』から降りちゃったんだっけ」
「そうか。出来れば会ってみたいな...」
「呉に居たらいいけどな。そう言えば...」
「ん?どうした?」
「もう一人、すごい天才肌で旋転戦法やひねりをてきとうにやったで片付けるぐらいの奴がいたな。で、確かそいつは、まだ艦だった瑞鶴によく話しかけてたっけ」
「ふ~ん。なら、そいつがこの世界に居たら、今頃瑞鶴とイチャコラしてるだろうな」
「そうかもな」
そう言って、菅野と雑談を続けた。
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「はっくしょん!」
「大丈夫?要さん?」
「ああ、ちょっと風邪引いたのかな」あはは
「もう、気をつけてよ!」
吹雪の艦尾で菅野と雑談をしている提督とは違った世界にある、午後の呉鎮守府執務室。
そこでは、戦闘服に身を包んだ、サファイアブルーの瞳の男と、ツインテールが特徴の空母艦娘が恋人のように話していた。
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「司令官。そろそろ寝ましょうか」
「そうだな」
夜の駆逐艦吹雪の艦内。俺と吹雪は艦橋に当直の妖精を残し、艦長室へ向かった。
吹雪の艦長室は、端に畳が敷かれてそこに一枚の布団が敷かれてあった。近くにはぬいぐるみが置かれている。
「相変わらずだな。ここは」
「あはは」
「しかし、何で布団が一枚だけなんだ?」
「あ、もう一枚はこの前降ろしてしまって...」(嘘ですけど)
「そうか。なら、俺はソファーに座るから、吹雪は布団にn」
「一緒に寝ませんか?」///
「ふぁ?!」
吹雪の突然の誘いに驚いた。吹雪は顔を赤らめている。
「べ、べ、別に俺は良いが...」///
「そうですか。じゃあ、寝ましょう」///
「はい」///
そう言って、俺たちは布団に入る。布団は狭く、結構身体が密着する。
「だ、大丈夫か?吹雪」///
「はい」///
(保ってくれよ。俺の理性...)
布団に入って数分後、吹雪はすぐに寝てしまった。
吹雪の静かな寝息に耳をくすぐられながら、俺は眠りについた。
海上を輪形陣で進む青ヶ鳥鎮守府の艦隊。その艦隊は静かにスコールに突っ込んで行った。
◇ ◆ ◇
~翌朝~
「おはようございます。司令官」///
「ああ、おはよう吹雪」///
昨日のことを思い出し、顔が赤くなる(やましいことはありませんよ)。
妖精たちは甲板に出て、艦の掃除をし始めている。
「まもなく、呉鎮守府に到着しますよ!」
「了解。陣形を輪形陣から単縦陣に変更し、呉鎮守府に入港」
「了解」
艦隊は、徐々に一列に形を変えて、呉の島々を通っていく。
そして、呉鎮守府の港が見えてきた。
しかし、そんな呉港に違和感を覚えた。
見たこと無い現用艦艇があるのだ。
「あんな艦。日本にあったかな?」
「たぶん、新造艦なんですよ!」
「そうかな」
俺の疑問をよそに、6隻の艦船は埠頭に接岸する。
俺と吹雪は、呉の提督に挨拶をするために、吹雪の艦を降りる。
ー呉鎮守府・本庁舎・廊下ー
「司令官?」
「ん?何だ?」
「ここの司令官ってどんな方なんですか?」
「さあ。俺も知らないな」
吹雪とそんな会話をしていると、執務室の扉の前に着いた。
(んお?見ない顔だね。しかし、あいつと同じ匂いがするなこいつ)
コンコン
「どうぞ」
「失礼します。青ヶ鳥鎮守府から来ました」
「ん?青ヶ鳥?どこだそこ」
「いや、東京の先にある島ですけどって、あなたは!」
執務席には、戦闘服に身を包み、サファイアブルーの瞳を持った、かつての同僚が瑞鶴とパンフレットなどを広げながら話していた。
「司令官、知り合いなんですか?」
「ああ。この人は、鞍馬 要。通称、ゼロの撃墜王」
「そうだが...あんたは?」
「俺は、宮島 清鶴。真珠湾からエンガノ岬まで空母『瑞鶴』の艦載機乗りとして戦った者だ」
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