「それじゃあ、お世話になりました」
そう言って、鞍馬に礼をする。
「おう。なんかあったらよろしくな」
鞍馬と軽く握手を交わし、吹雪のタラップに足をかける。
「へぇ~これが、あきづきちゃんの艦なんだ~」
「はい」
瑞鶴はあきづきの艦を見上げている。
「ほんと、現用艦だね」
「そう言えば、何で舷側に名前が大きく書かれてんだ?」
鞍馬はあきづきに質問をした。
確かに、普通の現用艦艇だと船首部分に艦番号、艦名は船尾に書かれるはずである。
「それは、呉に向かうとき、塗装がそのままだと間違えられる可能性もあるからと、工廠で軽く変更してきたんです」
「なるほど」
あきづきもタラップを上り、甲板へ向かう。
「全艦、出航!」
吹雪の指令後、埠頭に泊まっている、青ヶ鳥の艦隊全艦が動き出す。
「では!」
俺は埠頭の鞍馬達に向けて敬礼をする。
鞍馬達も敬礼を返し、その後こちらへ手を振る。
艦隊は呉を離れていった。
ー呉→青ヶ鳥 洋上ー
呉をお昼に出航した艦隊は洋上で一泊を過ごし、明日の昼に青ヶ鳥に戻る。
現在は夜の20:00当直を残した就寝時間まで後一時間だ。
甲板で夜の風に当たっていると吹雪がやって来た。
「お疲れ、吹雪」
「鶴さんこそ、お疲れ様です!」
吹雪は俺が座っている横に座り、一緒に風に当たり始めた。
「風が気持ちいですね」
「ああ」
しばしの沈黙が流れる。
「あのっ!」
「ん?」
それを破ったのは吹雪だった。
「どうして、私なんかを好きになったんですか?」
それは、吹雪にとっての疑問だった。
「艦載機乗りなら、戦闘機を好きになるか、艦艇でも空母のほうが好きになるのでは何ですか?」
「いや、違うな」
俺は、それを否定した。
「確かに、空母も好きだが、それよりその空母や戦艦の周りで護衛する駆逐艦が俺は好きだった。何か、縁の下の力持ちみたいな感じがしたんだ」
それを聞いて少し照れる表情を吹雪は見せた。
「で、吹雪を好きになった理由だが、あれは確か...」
あれは、1940年10月11日の事。
その日は、紀元二千六百年特別観艦式の日だった。
俺はその観艦式で小沢さんの指揮する航空隊の一機として参加した。
会場上空を飛行していたその時、俺の目に吹雪が映った。
第二列の最後尾を進む姿は今でも覚えている。
「その時、一瞬、『こいつを見るのはこれが最後になるかもしれない』『こいつの上空を飛ぶのは最後かもしれない』っと思ったんだ」
「・・・」
吹雪は静かに聴いている。
「だから、いろいろな手を使って、こいつを手に入れたんだ」
そう言って、吹雪の写真を見せる。
「俺が瑞鶴に配属されたとき、一緒に吹雪がいる第十一駆逐隊と一航戦を組むなんて話を聞いたときには喜んだな...結局戦争のおかげで叶わなかったが」
それからは俺は太平洋戦争を「瑞鶴」直掩機として真珠湾、ラバウル攻略、セイロン海と駆けまわった。
始めはしっかりと急所を狙ってたんだが、鞍馬のやり方に感銘を受けて、できるったけ脱出時間を作る撃墜方法をやり始めた。まあ、鞍馬には敵わなかったが
そして、あの日が来た。
「1942年10月11日。その日はソロモン海に向けてトラックを出撃した日だった」
吹雪もその日付を聞いて顔を強張らせる。
「ソロモンに行くと聞いて、もしかしたら会えるかな?と思ったが、入ってきた話は吹雪の沈没だった」
吹雪は静かに俯いた。
「俺は、吹雪を守れなかった。二年もお前を守って見せると誓い続けたのに...」
心なしか涙が出てくる。
「でもっ!」
吹雪は勢い良く顔を上げた。
目には涙が溜まっている。
「この前、街に行ったとき、私を守ってくれました!」
「!?」
吹雪はやわらかく微笑みながら続けた。
「確かにあの戦争では、守れなかったのかも知れません。でも、それならこれから守っていけば良いじゃないですか!私も、私の艦もここにあります。それに鶴さんの愛機の零戦二一型だってあります。だから」
吹雪はこちらに身体ごと向いた。
「今度は、しっかり守ってください!」
「おう!分かった!今度こそお前を沈めやさせない!」
心のもやもやが晴れた気がした。
「さっ。もうすぐ就寝時間だ。寝ようか」
「はい!」
艦内に入る二人の後姿は何処か、晴れ晴れとしていた。
これにて、ニューヨーク様とのコラボは終了となります。
この場をお借りしてニューヨーク様にはお礼申し上げます。
ありがとうございました。
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