「あー暇だ」
お昼過ぎ、書類仕事が一通り終わり、俺は身体を預けだらけていた。吹雪は夕立や睦月たちと間宮のところでパフェでも食べながら話しに花咲かしているだろう。そんな時、ドアをノックする音がした。
「ん?どなた?」
「翔鶴です」
「どうぞー」
翔鶴は静かに入ってきた。俺は身体を起こして、翔鶴をソファーへ促す。
「失礼します」
「いらっしゃい。どうしたの?」
「暇だったので提督とお話がしたくて...」
「そうか」
艦娘が暇な時間に執務室に来ることは珍しくない。翔鶴も暇を持て余して執務室に来たのだろう。
俺は翔鶴と雑談することにした。最近あったことを思い出しながら話す。話は翔鶴の妹、瑞鶴のことに。
「この前のアレ、提督大変でしたね」
「ああ、アレは男としては喜ぶ?ことなんだろうけどだけど、喜んでいたらもっとひどい目に遭っていたな」
「そうですね」
アレというのは、二日ほど前のこと
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俺は朝に暇だったので、執務室を出て散歩をしていた。
「今日も良い天気だな~。最近暑くなってきたし、夏も近いな~」
俺はそんな独り言を言いながら、空母寮の横を桟橋に向けて歩いていた。そんな時、空母寮の入り口から二人走る音が聞こえてくる。こっちに向かってきていた。
「ん?」
ゴツン!
音の方向を向いた瞬間、誰かとぶつかり俺はその誰かに抱き付かれる形で押し倒された。
「いたた...。ん?瑞鶴か?!大丈夫か?」
「うん。提督さん大丈夫だよ。っ!それより...」
瑞鶴は起きたばかりなのか、まだ寝巻――浴衣のままだった。瑞鶴は途中で起き上がるのやめて固まっている。
「ん?どうした?」
「その...手が」
「手?」
瑞鶴に指摘され、俺は自分が置かれている状況を確認する。右手にに何か軟らかい感触が伝わる。状況がつかめてきたとき、
「ふぁ!!」
「ひゃ!///」
俺は咄嗟に手をグーにしようとしてしまった。それがいけなかった。
「て、て、提督さん!」
瑞鶴は飛び上がり距離を取る、そしてどこから出したのか弓に矢を構えこちらに向ける。
「お、お、落ち着け!!その、たまたま当たっただけであって、気付いたときには触っていたと言うか...」
「問答無用!この変態!」
瑞鶴はそのまま矢をこちらに放つ。矢はたちまち零戦に変わり、こちらに向かって来る。
「や、や、やめろ!!」
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「あの後、咄嗟に艤装を展開して飛行板を盾にしたから中破状態になるだけで済んだものの、艤装を出していなかったら病院行きだったな」
「うちの妹がすみません」
翔鶴は頭を下げた。
「いいや、いいんだよ。瑞鶴も誤解が解けた後謝ってくれたし。それより...」
「それより?」
翔鶴は頭を上げ、首をかしげる。
「瑞鶴が言うには『加賀と喧嘩した』とか言っていたんだけど、どんな喧嘩だったの?」
「えっと..ですね」
「遠慮しないでどうぞ」
「それでは」
翔鶴は少し困った様子で喧嘩の原因を教えてくれた。
「おやつを取られた?!」
「はい...」
翔鶴が言うには、『先にやったのは加賀さんで、私たちの部屋の瑞鶴の机においてあった瑞鶴のおやつを加賀さんが窓から艦載機を一機忍び込ませて着艦フックで器用に持ち去っていったのです。しかも、その後もう一機忍ばせて挑発文を置いていきました。それに怒った瑞鶴は自分の艦載機妖精にそれを練習させて、そっくりそのままお返しした』という事らしい。
「つまり、それに加賀が切れて瑞鶴を追い回して、あんなことになったと...」
「はい、その通りです」
「まあ、いつものことだし、気にしなくてもいいか」
「そうですね」
俺と翔鶴は笑いあった。
◇ ◆ ◇
「楽しかったかい?」
「はい」
執務室前の廊下で翔鶴は頭を下げる。
「そんなにペコペコ頭を下げなくてもいいよ」
「そうですか?」
「そうさ」
「そうですか。それでは」
翔鶴は頭を下げる代わりに手を振った。俺も振り返す。
翔鶴は微笑廊下を歩いていった。
(ふー。楽しかったな)
俺は執務室に戻ろうとドアノブに手を掛ける。が、ドアを開けようとしなかった。否、出来なかった。
耳には二人ほどが走っている音がする。しかも、どんどん迫ってきている。俺は音のするほうへ向く。
「あ...」
俺は、また誰かに押し倒された。
数分後、鎮守府執務室前の廊下に艦載機の銃撃音と提督の『やめろーー!!』と言う声が響いていた。
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