ソロモン海域攻略から10日過ぎた、10/21。
連合海軍から独立し鎮守府は『青ヶ鳥鎮守府』という一つの国防機関としての役割を受け持つ事になった。
しかし、会議等に特に参加する必要は無く、深海棲艦に本土が侵攻されそうな時は、連合海軍と連携して敵を壊滅させる。連合海軍の発案の奪還作戦等の際は奪還の手助けを行うというものだった。
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「ふぅー。これでやっと、のんびり出来るな」
「ですねー」
昼間の執務室。
俺は吹雪と揃ってダラーっとしていた。
「執務はしないの?」
その横には何故か瑞鶴が居て、腰に手を当てて呆れた仕草を見せている。
「資材の残量、今日の建造結果、資材の入庫量の書類だけで今は執務が終わりなんだから、有ってない様なもんだぞ」ダラー
俺は机に突っ伏しながら言う。
大本営とのひと悶着から執務の内容はこれだけだったが、そんな事を瑞鶴が知るはずも無い。
「はぁ~」
瑞鶴はさらに呆れたのか深くため息をついた。
「・・・!」
ギィ~
弦を引く音にぱっと顔を上げると、瑞鶴が窓の外を睨みながら、弓をこちらに構えていた。
「お、おい!いきなりどうした!?」
「鶴さん!頭を下げて!」
咄嗟に頭を下げると、スッっと矢は頭上を通り過ぎ、窓を抜け、零戦五二型に姿を変え、視界に見えぬ敵を追い始めた。
「外に何か居たか?」
「哨戒に関係ない彩雲が居たから不審に思って...」
そう言われて、窓の外に目をやる。
外では彩雲が先ほどの零戦に追われていた。
残念ながら、零戦は彩雲のその速さに追いつけては行けなかったが、彩雲は零戦の20mmを避けながら、どんどん執務室を遠ざかってゆく。
「あの彩雲って加賀のじゃないのか?一瞬だけ赤の二本帯が見えたような...」
「い、いいのよ!そこを飛んでいるだけで不審なんだから!」
瑞鶴はフンッとそっぽを向きながら言った。
不思議に思いながらも机にまた突っ伏す。
トットットートー
その時、瑞鶴に無線が入る。
久し振りに聞いた、モールスの音に、緊張した空気が執務室内に張り詰める。
「鶴さん!さっき出て行った零戦から通信!『敷地内に不審人物を発見』だって」
瑞鶴は焦り気味に言う。
青ヶ鳥鎮守府は前の世界もこの世界でも、深海棲艦に対しては現在、太平洋側の最前線に位置しているのである。
そんなところに位置する鎮守府だけあり、警備は鎮守府よりも堅い警備体制になっている。
今まで触れてこなかったが警備兵の詰め所は他の1.5倍、配備されてるし、門の監視は昼夜変わらぬ人数で24時間体制のはずなんだが...。
「一応、今飛んでる零戦はペイント弾を積んでるけど・・・」
「侵入者の周辺に威嚇で撃ってくれ、けして侵入者本体を撃たないように」
「了解!」
ー一方、外ー
加賀の彩雲を追っていた零戦は瑞鶴の命で、侵入者へ目標を移していた。
眼下の鎮守府敷地内を優々に歩く侵入者の周辺に対し、7.7mm機銃からペイント弾を放つ。
放たれたペイント弾は侵入者の周辺に着弾するが、侵入者はそんな事気にしないかのように、ゆっくりと歩く。
「♪~♪~」
侵入者は、その長めの黒髪を揺らしながら、軽く口笛を吹きだす。
零戦はなおも続けて、ペイント弾を放つ。
しかし、侵入者は止まろうともせずに、そのまま鎮守府本庁舎に入っていった。
ー戻って、執務室内ー
「?!鶴さん、侵入者全然気にせずにこっち来てるって!」
「とりあえず、迎撃態勢!侵入者の特徴は?」
「・・・長めの黒髪...たぶん女性かもだって」
「なら、ほんの少しだけ手加減して、取り押さえろ!」
「「はい!」」
数分後、カタッカタッと執務室にゆったりとした足音が聞こえ、ピタッと執務室の前で消える。
執務室のドアの前では、吹雪と瑞鶴が、正面には俺が侵入者が入ってくる瞬間を待ち構える。
ガチャッ
「今!」
瑞鶴の号令の後、吹雪と瑞鶴は扉から入ってくるだろう侵入者へ飛び掛るべく、ドアへ向かって飛び掛る。
「「あ痛っ!」」
飛び掛った二人はガツンと頭を互いに頭ぶつけ、その場に蹲った。
「誰が扉を開けてすぐに入ると思ったのかしら?」
「ん~っ!!このっ!」
額を押さえながら、瑞鶴は悔しそうな顔で侵入者に再び飛び掛る。
「ひょいっ」
侵入者はぴょんっと軽く脇に避けて瑞鶴を避ける。
瑞鶴は勢い良く廊下に飛び出てしまった。
吹雪はそのまま「うぅ~」と蹲ってる。
「空母って物は近づくとそんなにか弱いものなのかしら?」
廊下でうつ伏せの状態で、抑えている瑞鶴を見ながら、侵入者はやれやれと手で仕草をする。
「当たり前だろ、だから直掩機ってのが居るんだろうが」
俺は侵入者――彼女に話しかける。
ドア前のひと悶着後、改めて彼女を見ると見たこと無い顔ではなかった。
日本人の特徴の黒髪を肩に掛かるぐらいに伸ばし、服装は軽快に動けるような軽装。
瑞鶴を避けるときの軽々とした身のこなし具合、零戦の掃射の中を平気で進めるその根性...。
「やっぱりあんたか...」
「あんたって何よ」
彼女はそのまま、執務室のソファーに何の遠慮も無く腰を掛ける。
「巫女さんがこんなところに何の用だ?」
俺は彼女を睨みながら言った。
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