艦これ-提督と艦娘の鎮守府物語-改   作:鶴雪 吹急

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第三十一話「ゼロの天敵」

「何の用って・・・。久し振りに顔を見に来ただけよ」

 

 彼女はそう言って、軽く座っていたソファに深く座りなおした。

 

「あなたは、一体誰ですか?」

 

 立ち直った吹雪が俺の隣にやってきて、聞いた。

 

「そう言えば、艦娘さん達とは始めましてだったね。私は生駒 見里よ。さっき、宮島が言ってた通り、ここの島の神社、青ヶ鳥神社の巫女をやっているわ」

「青ヶ鳥神社?」

 

 瑞鶴も立ち直ったのか、頭を押さえながらも執務室に入ってきた。

 

「この前、お祭りがあった神社ですよ。私達駆逐で屋台を出した」

「あ~あそこの神社ね」

 

 瑞鶴は思い出したのか、手をポンっと叩いた。

 

「でも、あの時、そんな人見なかったよ?」

「当たり前じゃない、そのときは縁側でお茶飲んでたんだから」

 

 生駒は瑞鶴に面倒そうな表情で答えた。

 

「何で、お祭りなのに」

「だって、外にいれば変な男が寄って来るし、そいつらは大抵イラッて来るような言動なのよねぇ」

「その上、短気だからキレるて逆に寄ってk・・・」ペシッ

 

 生駒の悪いところを言おうとしたところに、彼女の右からのパンチが入る。

 俺はそれを右腕で迎撃し止める。

 

「そうそう、こうゆうとこだ」

「くっ!」

 

 ◇ ◆ ◇

 

 生駒は一旦離れ態勢を立て直し、不規則に動きながら、迫ってくる。

 それを宮島は身体全体で受け止める。

 しかし、受け止められずにそのまま執務室の窓から外へ投げ出されてしまう。

 

パリンッ

「うぉわ?!」

「・・・」

 

 外に出された宮島は空中で態勢を立て直して地面に着地する。

 そこへ生駒は降り立ち、すぐさま距離を詰める。

 

「ハッ!」

 

 生駒はすぐにパンチを加えようとするが、

 宮島はそれを受け止め、かわしながら後退する。

 

「あっ、そっちには海が...」

「鶴さん、後ろ!」

 

 吹雪と瑞鶴は声を上げるが宮島には届かず、埠頭端から海へ落ちてしまう。

 

「ふぅ。懲りたかしら?私は短気なんかじゃn」

 

ブーン

 

 勝ち誇っている生駒の前を紫電改二が通過する。

 紫電改二はそのまま上空へ向かいながら、生駒の気をひく。

 

「っ!また、ひこうき!」

 

 生駒の視線が紫電改二に向いている間に、宮島は陸に上がる。

 

「そっちに目を向かせてて、大丈夫か?」

「?!」

 

 宮島はその長い弓を振り回して、生駒へ向ける。

 生駒は避けながら宮島との距離をとる。

 

 距離が離れた事に気付いた生駒は周囲に中玉を展開させて個々を当てて煙を発生させる。

 

「何、あの玉っ!?」

「何処かで見たような?」

 

 生駒はそのまま煙に紛れて、相手のわきを狙おうとする。

 しかし、狙った先に宮島の姿は無かった。

 

「何処!」

「こんな煙は雲より探しやすいね、敵を」

 

 煙が充満する中、突如現れる青い中玉を生駒は寸前で避け、飛んできた方向に打ち返す。

 数回繰り返すうちに、煙は晴れて二人が姿を現す。

 

 宮島は全弾回避し、その上紫電改二を着艦させていた。

 生駒は回避はしているものの、何発かかすった様で、煤けている。

 

「さっきの言葉の続きだが、君は短気だから、男が寄り付かない」

「くっ、うるさいわね」

 

 「あ、あと」と宮島は続ける。

 

「もう一つ、そうやって短気になるから・・・」

「?・・・!?」

 

 宮島の言葉の間から、レシプロ機の音が聞こえ始める。

 生駒がその方向へ向くと彗星の爆撃隊が編成されて、今、爆弾を落とし始めた。

 

バン、バン

 

 爆弾は空中で炸裂すると、さっきと似た小玉が現れ、弾幕を張り、生駒の周辺へ落ち始める。

 

「っ!」

 

 生駒はそれを回避し始めるが、そこに宮島がさっきの言葉を続ける。

 

「視界が減って、劣勢になって弱点をつかれる」

「あ!」

 

 宮島は周囲に青い中玉を複数出現させると、生駒へ向かわせる。

 生駒に上空の小玉、目前の中玉が命中する。

 

 ◇ ◆ ◇

 

「あー、負けた負けた」

 

 生駒はやれやれ仕草を見せて、ソファに腰掛ける。

 

「すごいですね鶴さん!」

 

 吹雪や瑞鶴は勝利に嬉しい言葉を漏らす。

 

「いや、まだまだだな」

「...え?」

 

 それを俺は否定した。

 吹雪や瑞鶴は頭に?を浮かべる。

 

「なんで?圧倒的に勝ったじゃない」

「いや、窓から落とされた後に開いた距離を容易く縮めさせてしまった」

「まぁ、そうさせる為に誘導させたやり方だったんだけどね」

 

 生駒はここぞとばかりに胸を張る。

 その胸の張り方に、吹雪と瑞鶴は悔しいような嫉ましいような表情を浮かべる。

 

「まあ、そうやって意地の悪いのもお前の悪いところだが」

 

 その言葉に生駒はムスッとする。

 

「意地の悪い...あんたはまるで『ゼロの天敵』ね」

「・・・はっ?何それ?」

 

 瑞鶴の『ゼロの天敵』と言う言葉に今度は生駒が?を浮かべた。

 

「あー。なるほど」

「えっ。ちょっと宮島、どうゆう意味?!」

「まあ、いい渾名とでも思っておけ。あと、そろそろ帰ってくれないか?執務をしたい」

「・・・ふーん。まあ、いいわ。それじゃあ、そろそろお暇させてもらうわね」

 

 生駒は少し考えながらも鎮守府を後にして行った。

 

 ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇

 

 時間は過ぎて、

 俺は自分の部屋で、一人、窓の前の机に向かっていた。

 

「『ゼロの天敵』か...面白い渾名だな」

 

 俺は机に置いてある自分の愛機使用の零戦と、その好敵手たちを眺める。

 

「F4U、F4F、F6F...あのときは力不足だったな。今回はなかなかの戦いになっているが...」

 

 俺は窓の外の月に目を移す。

 

「そう言えば、あの世界のときも力不足だったな...」

 

 俺は月を眺めながら、昔を思い出していた。




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