艦これ-提督と艦娘の鎮守府物語-改   作:鶴雪 吹急

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※報告※
 Twitterで確認した方もいらっしゃるかと思いますが、今作品は最終的に一人称として、お話を書いていくことにしました。色々計画の変更を行ってしまい申し訳ございません。


第三十五話「選択肢」

「……」

 

「……」

 

 吹雪を退室させた後、俺と生駒は互いに黙ったまま、目線だけを合わせていた。

 エスパーでもない俺は、そんなことで生駒の言いたい事は分からない。

 ただ、分かっている事は彼女は真剣だ――と言うこと。

 

「……っで、何の用だ」

 

 こんな事をしていても時間の無駄であるため、先に口を開いた。

 するとそれを皮切りに、生駒も口を開く。

 

「今回は、この転移について話に来たわ」

 

「転移、について?」

 

「そう、あなたが呉に向かう途中で先行的に転移し、その後にこの青ヶ鳥島が転移した今回の件について」

 

「アレはお前の仕業じゃなかったんじゃないのか?」

 

 最初、過去の事もあり、俺は今回の転移を青ヶ鳥島の俺の鎮守府の艦娘と俺を今の世界に転移させた『完全転移』とした。そんな事が出来るのは俺が知っている限り生駒のみで、そう仮説した上で生駒に事実を聞こうと思っていた。

 

「違うわ、確かにやろうと思えば、こんな島とあなたの呉観艦式参加艦隊をこの世界やはたまた別の世界に転移させる事も出来るわ」

 

「出来んのか」

 

「当たり前よ。私は一様『狭間』を扱う巫女よ?ただ――」

 

「ただ?」

 

「ただ、移動している艦隊を転移させたり、このぐらいの島を転移させるには、相当な時間か力が必要よ。移動するものは、未来位置をしっかり決定して範囲設定しないといけないし、島の場合は自分の範囲に収まらない場合は結界で延長点を作らないといけない。私の場合は、力が足りないわ」

 

「でも、時間を使えば出来るんだろ?」

 

「島を転移させるために必要な時間はあのくらいじゃ足りないわ。そもそも艦隊の航路を知らない私は、未来位置を知らないし」

 

 そうしてアメリカ人が困ったときにするような仕草を見せる。

 『狭間』に居た時に生駒のような『狭間』の管理者が扱う力というものを軽く聞いたが、それでもこのくらいの転移は難しいらしい。

 なら、この『完全転移』を可能にしたのは、なんなのか。

 

「今回の転移、これは『世界軸が勝手に捻じれた事による、転移』かもしれないわ」

 

 …?世界軸が勝手に捻じれた?

 世界軸を繋げ合わせることで、物や人を転移させる事ができる。それが『狭間』の原理だ。その繋ぎ合わせをするのが巫女や神様と呼ばれる管理者で、生駒がその管理をしている。

 

「最近はこっちの世界の青ヶ鳥神社に居て、ほっときっぱだったから気付かなかったのだけど、私の担当している『狭間』で捻じれが合ったみたいで、それがちょうどあなたの艦隊とこの島をこの世界の世界軸につなげて転移させちゃったみたい」

 

「ということは、この世界は来るべきしてきた世界ではないと?」

 

「まあ、そうなるわね。結果としてあなたのプライベートには、いい影響を与えたかもしれないけれどそれが全てとはいえない」

 

「悪い影響も有るという事か」

 

「えぇ。むしろそっちのほうが多いといえるわ。分かりやすいのがこの世界だと艦娘は水上を自身の身で往き、敵と戦う」

 

 俺らが居た世界は艦娘が艦長となって自分の在りし日の姿――艦船を操作して、深海棲艦と戦ってきた。もちろんこの世界と同じように水上を往くことも出来るが、それは移動手段に過ぎず。この鎮守府艦娘はそれでの戦闘は不慣れであり、錬度で見れば一の状態と言ってもよかった。

 

「先のソロモン奪還作戦は捻じれ方が幸いして敵も艦船状態のと戦ったけれど、これからは人サイズの敵が相手になるわ」

 

「そうなれば、機銃で攻撃できて当たるかどうか。しかも機銃が与えるダメージなど微々たる物だから、戦艦級下手をすれば巡洋艦級でも倒すのが難しい」

 

「そうね。つまり」

 

 敵が今までより小さくなり、艦船状態での戦闘は難しくなる。しかも鎮守府の艦娘は全て水上を往く戦闘は苦手。

 

 

「この世界じゃ、うちの鎮守府は横須賀や呉と同じぐらいの艦船数を誇っていても、新設の基地並の戦力だという事か」

 

 

 うちの鎮守府は130隻近く。前の世界で言えば、錬度はどの鎮守府・基地の中でも一位二位を争うほどの戦力を保持していた。しかし、今の世界ではそれが全て無くなる。艦娘は多いども、新設の基地並になる。

 

「おそらく。今この世界の深海棲艦に攻撃を受けたら、壊滅してもおかしくないわ」

 

「一様、あきづきやきりしまが居るが大量に戦力を向けられたら。壊滅するのが明確だな」

 

「そこで二つ提案なんだけど」

 

 ここまで来て生駒は俺が話しの途中で用意したお茶を口に含んだ。ゆっくり飲み込み、言葉の続きを話し始める。

 

「一つは、もと居た世界に戻るという案。二つ目は、艦娘の数から大幅に減らして、この世界若しくはこの世界に似た別の世界に移転するか」

 

 

 生駒の話を聞くところによると、二つの案の内容はこうだった。

 一つ目のもと居た世界に戻るという案は、今から俺も力を貸して延長点と世界軸を繋ぐ準備をして、目処としては十日以内にこの島を移転させて、もとの世界に戻るという事。

 二つ目の艦娘の数を大幅に減らして、この世界若しくはこの世界に似た別の世界に転移するという案。こちらは少し複雑になっており、この世界に残るというならば、解体などで艦娘の数を減らして基地の練度を急速に上げられるようにする体制を整える。似た別の世界に転移するならば、この島は世界軸の中で消滅させ、それとともに艦娘の数をある程度減らす、そして新たな世界で新たな基地で体制を立て直すというものだった。

 

 そして、一つ目の案のデメリットとして『元の世界に戻っても鎮守府が壊滅せずに済むという保障は無い』というのがあげられた。

 

「…それはどう言うことだ?」

 

「元の世界は日本の本土から300海里約556kmをなめるように重要防衛線として、伊豆諸島付近は青ヶ鳥が飛び出すように最前線を張っていたのは長なんだから知ってるわよね」

 

「あぁ、九六が往復して少し戦闘に参加できるほどに最初は防衛線は狭かったけど、そこまで広げたのには俺も関わったからな」

 

「そして北方からの攻勢は単冠湾泊地と大湊警備府が、南方は沖縄警備府と佐世保、呉が、日本海方面は舞鶴が、太平洋などの東方は青ヶ鳥と横須賀が担当してたのも知ってるはずよ」

 

「ああ」

 

「青ヶ鳥が()()()()()()()()してたときはそれで一先ずどうにかなってたんだけど、青ヶ鳥が捻じれで移転してしまったときに東方の戦線が崩れたわ。今まで西之島付近まで防衛できていたところが、青ヶ鳥島までなった」

 

「あぁ、なるほど」

 

 生駒の話をそこまで聞いて、元の世界の状況として考えられる事として生駒が言わんとしているとことが分かった。

 

「深海棲艦は青ヶ鳥まで戦線を延ばすために攻勢に出ていて、横須賀もそれの対応に追われている。もし敵に落ちでもすれば、北方、南方の戦線にも影響が出る。そんな敵の目の前に戻ってきたところで、そこに何処まで対応できるかってことか」

 

「その通り。そんなデメリットもあるから、一様の案として二つ目の案も出したのよ」

 

「そしてその二つ目の案のデメリットが、艦娘数が減る事による艦娘のメンタル面への影響」

 

 船魂を宿した女性の形としてこの世に存在するのが艦娘とされているが、内面は人間と変わらず、喜怒哀楽がある。別れがあれば泣くだろうし、その後の生活にも大きく影響を与えるだろう。

 

「これは影響が大きすぎるかしら」

 

「そうだな。うちの鎮守府は艦種の壁を越えて、其々の仲がいいからな……」

 

 うちは鎮守府としてこの島で戦い始めてから今まで一隻も轟沈艦を出すことなく、この島を本土を守ってきた。始めは吹雪と二人で四苦八苦しながらの歩みだったが、徐々に仲間が増え、近海の敵を掃討し、絆を深め、和やかな日常を送れる日が出来るほどにまで、海域を安定させてきた。

 その絆は艦種の壁を越え、上下関係を超えたものにまでなっていた。

 

 ……いまさらそれをぶち壊す事は出来ない。

 

 

「生駒」

 

「はい?」

 

「130の艦娘をどのくらい時間を掛ければ転移できる?」

 

「え?多分、一回に四艦隊分ならいけるかしら、全てを転移させるには一時間必要よ。もちろん未来位置を予測しないとだけどね」

 

「元の世界の現在の様子とかは分かるか?」

 

「向こうの世界の『狭間』の管理者だからいつでも見れるわ」

 

「生駒」

 

「はい?」

 

「一に近い案でいく」

 

「あなたならそう言うと思ってたわ」

 

 生駒は最初から分かっていたのか、俺の回答に満足そうな返事を返した。

 

「それで頼みだが、生駒には元の世界の敵勢力の分布図を作ってくれ、敵の特徴表は後で渡す。あと作戦結構当日には、転移させるのに協力してくれ」

 

「分かったわ」

 

 艦娘を減らす事は先ず考えない。なら、一人残らず元の世界に戻るだけだ。




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