艦これ-提督と艦娘の鎮守府物語-改   作:鶴雪 吹急

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第九話「提督の一番機妖精-ワレ、一番-」

「司令官、明石さんから伝言です」

 

 工廠から戻ってきた吹雪は、明石から預かって来たであろう伝言の書かれた紙を渡してきた。

 

「ありがとう。どれどれ」

 

 吹雪にお礼を言って紙に目を通す。手紙には、『頼まれていた新装備が完成しました。提督に最初に見ていただきたいので、工廠に来てください』と書かれていた。

 俺は、吹雪に『工廠へ行ってくる』と伝えて執務室を出て行った。

 

ー工廠ー

 

「おーい、明石」

「はーい!」

 

 明石は工廠の奥から現れた。

 

「完成したものを見に来たぞ」

「待ってました!」

 

 明石は俺の袖を引きながら工廠内の開発スペースへ連れて行った。

 

 ◇ ◆ ◇

 

「こちらです」

 

 そう言って明石は、開発スペースにどっしり構えた新装備を指した。

 指された装備は戦闘機で、20mm機関砲を左右2門装備し、濃緑色を機体上面に塗装され、胴体部と主翼には日の丸がつけられていた。

 

「ついに出来たか...」

「はい。どうなさいますか?」

「とりあえず。あと、七機用意してくれ。それと、着艦フックを付けてくれないか?」

「分かりました!」

「あと、この機体なんだが...」

 

 そう言って、俺は明石に耳打ちした。

 

「分かりました。そうしますね」

「頼む」

 

 明石は、『では、早速作ります』と言って作業スペースに行ってしまった。

 

 ◇ ◆ ◇

 

「よう、提督。集まったぞ」

 

 執務室の机の上に、部下7人を引きつれ、菅野が上がってきた。

 

「集まったか。じゃあ、工廠に行くぞ」

「おうよ」

 

 俺は、集まった菅野たちをそこらへんにあった空き箱の中に乗せて工廠に向かった。

 

「提督」

「ん?」

 

 箱に揺られながら菅野はこちらに目線を向けてきた。

 

「いきなり呼んでどうしたんだ?工廠に行って何するんだ?」

「それは、工廠に行ってからの楽しみだ」

 

 菅野はわくわくしたような、疑問を持ったような顔をして前を向いた。

 

ー工廠ー

 

「いらっしゃい、提督」

「やあ、明石。出来たか?」

「はい、パパッと作りましたが、安全ですよ!」

「じゃあ、早速」

 

 そう言って、明石は新装備にスポットライトを照らした。

 

「これは...」

 

 菅野は箱のふちに手をかけてそれを見た。

 そこには、着艦フックが付いた紫電改が八機止まっていた。そのうちの一機は、胴体に黄色い二本のラインが引かれ、胴体の日の丸には15の文字、垂直尾翼には『A 343-15』と書かれていた。

 

「それは紫電改、菅野機。お前の最期の愛機で、これからの愛機さ」

「・・・」

 

 菅野はじっと紫電改を見つめていた。

 

「この機体で、これからも戦ってくれるか?」

「おう!」

 

 菅野はこちらに振り向き、力強く言った。

 

 ◇ ◆ ◇

 

 よく晴れた、海上を進む、空母「赤城」の飛行板の上から濃緑色を輝かせた、紫電改八機が飛び立つ。

 上空には零戦が十六機、紫電改一機に対して、二機ずつで戦えるように展開している。

 

「よーい。始めっ!」

 

 「吹雪」の甲板からその様子を見ていた俺は、紫電改の準備が整ったを確かめて、無線で演習の開始を告げる。

 上空で零戦と紫電改の戦闘が始まった。

 

 

 

 格闘性能では零戦に劣る紫電改だが、自動空戦フラップを駆使し、一機で零戦二機に対して互角に戦っている。

 

「すごいですね。あの零戦二機に互角に戦うなんて」

「まあ、零戦の後継機として開発されていた「烈風」に変わって、主力戦闘機とされたぐらいだからな」

「特に、あの紫電改はすごい強そうです」

 

 そう言って吹雪が指した先には、胴体に黄色の二本線を輝かせ、ペイント弾を零戦に塗りつけていく、紫電改の姿があった。

 

 

 

 今回の演習の結果は、紫電改が二機撃墜判定を受け、零戦が十機撃墜判定を受ける結果になった。

 紫電改から降り、俺のもとに菅野がやってきた。

 

「どうだったか?」

「良い感じだ。これなら零戦よりもっと戦える」

「そうか。壊すなよ?」

「壊すかよ。これは、俺の愛機だぜ?」

「過去に、何十機と機体を壊したやつに言われても説得力無いな」

「んだと!」

「ははっ。冗談だよ。これからは紫電改で戦ってくれるな?」

「おうよ!それにしても」

 

 菅野は気合いのこもった返事をした。

 

 ◇ ◆ ◇

 

「にしても」ニヤニヤ

 

 菅野は紫電改から目線をこちらに向けてきた。

 

「お前は、こういうことがあるとほとんど吹雪の艦船に乗って見に来るよな。もしかして好きなのかぁ?」

 

 反撃と言う感じでその言葉を放った。

 

「っ!そ、それは、秘書艦だからであってすk」

「そう言えば、ずっと秘書艦だったな、吹雪は」

 

 続けて出された言葉に、返す言葉が無くなった。吹雪のほうを見ると顔が真っ赤になって俯いている。

 

「ほらほら、どうした?」ニヤニヤ

「っ!このやろう!」

 

 捕まえようと出した手を、簡単にかわし、菅野は紫電改に乗って上空へ逃げていった。

 

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―――――「ワレ、菅野一番 空母天城デ、紫電改トトモニ奮闘ス」

 

 菅野の前愛機、零戦二一型のコックピット内に残された、紫電改と菅野が共に写る写真の裏には、そう書かれていた。

 




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