相変わらずのウスノロ更新は許してちょ...
「滅殺刃...」
『ゴー・トゥ・ヘルッ!』
久朗の繰り出した未知のカード、ドラグハートウエポン。
実体化する事はない通常のデュエルであっても、そのカードの放つ禍々しさをひしひしと感じる事が出来る。
ドラッケンの警戒具合からも、その驚異の程ははお察しだ。
「《ゴー・トゥ・ヘル》の効果...!出た時と装備したクリーチャーがアタックする時、墓地からコスト5以下のファンキー・ナイトメアをタダ出しや!」
勝利への確信を宿した瞳で、久朗が自らの墓地を漁る。
しかし、
「コスト5以下?タダでクリーチャーが増えるのは強力だとは思うけど、この局面で中型が一体増えたって...」
「まぁそやな。...ただ、ホンマに一体で済めばの話やけどな!」
墓地から一枚のクリーチャーを抜き出し、ウルボロフの上にそれが重ねられる。
『それじゃ、早速だけど後よろしく』
「進化や!《デュエにゃん皇帝》!」
能力によってバトルゾーンに現れたのは、王冠を被ったずんぐりとした巨体のネコ。
不遜で、こちらを見下すようなその目つきは、なるほど、中世の昔話なんかで出て来そうな悪役の皇帝のようだ。
「しまった...!あれ、進化クリーチャーも呼び出せたのか...!」
「そんでもって、《デュエにゃん皇帝》で《ドラッケン》にアタックや!」
「!?」
「《ゴー・トゥ・ヘル》の効果で墓地からもう1枚の《パックポック》を出すで。...んで、《ドラッケン》とバトル」
久朗が操る《デュエにゃん皇帝》はパワーが6000。
当然、パワー11000を誇るドラッケンを前になす術なく破壊される。
『なんだアイツ...。わざわざ死にに来るなんざ、何がしたかったん...』
ーーはずだった。
「...《デュエにゃん皇帝》の効果発動。...帰って来いや!」
効果の宣言と同時に、《デュエにゃん皇帝》とともに墓地に置かれた《ウルボロフ》を再びバトルゾーンに呼び出した。
『やあ、またあったね』
「そんな...!死んだはずのウルボロフが、また...!」
墓地から舞い戻って来た《ウルボロフ》は、なんならコンビニに行って返ってきたぐらいの気軽さで再会の挨拶を飛ばす。
「《デュエにゃん皇帝》は死んだ時に、進化元として下に重ねてたクリーチャーを場に蘇らせる能力があるんや。で、《ウルボロフ》が出たって事は......」
「......あっ」
《デュエにゃん皇帝》の破壊時、超次元へと帰っていった《ゴー・トゥ・ヘル》が、再び《ウルボロフ》の手に舞い戻る。
そんな一連の動作を見て、鳥羽の思考は一つの答えにたどり着き愕然とする。
「......ループだ」
『...あん?どういうこったよ?』
「わからない?...これであの"鎌のカード"の効果でまた《デュエにゃん皇帝》を呼び出してキミにアタックを仕掛ける。すると、アタックした時の効果でクリーチャーを復活させつつまた《デュエにゃん皇帝》を破壊する。...それを繰り返していけば...」
「......だぁああああああああ!!?」
鳥羽の説明を受け、ドラッケンが理解に至ったのか、一歩遅れて間抜けな叫び声を上げた。
「...ほうほう。初心者の癖にもう気づくたぁ、察しが良くて説明の手間が省けるわ!」
そんな二人の様子を見て、自らの戦略を自慢するようにケタケタと笑う久朗。
「こいつらの能力を駆使して破壊と再生を繰り返し、且つ途中に《パックポック》や《オタカラ》みたいな墓地肥やしを絡めれば...」
ループの説明を続けながらも、久朗の手は止まらない。
破壊と再生のループの中、バトルゾーンを悪夢の住人達が埋め尽くす。
「デッキの中のコスト5以下のファンキー・ナイトメアをほとんど出し尽くせるって寸法や!」
「......ウソでしょ」
あまりの展開に、思わず乾いた笑いが零れる。
ループが終わった時には、既に久朗のバトルゾーンは十数体を超えるクリーチャーで覆い尽くされていた。
「因みに、《龍覇 ニンジャリバン》と《龍魂城閣 レッドゥル》三枚の効果で、スピードアタッカーが三体おる。加えて、《デュエにゃん皇帝》も四体。...チェックメイトやな」
眼前に広がるのは、文字通り悪夢のような光景。
これが、もしクリーチャーが実体化されてしまう《王位争奪戦》だったらと思うと、正直ゾッとしない。
「なんべん死んでも、なんべんでも生き返って追い回す。相手の息の根を止めるまでな」
『こいつ、とんでもねぇ...』
「...ここまでされちゃ、革命ゼロトリガーも意味無いよ...」
「そのとーり!ほな、俺の勝ちでしまいやな!」
※
鳥羽と久朗のデュエルが終わり、集まっていた子供たちも散り各々のデュエルに精を出していた。
中には、先のデュエルで余程興奮したのか、「ストーカー強かったなー!」「ストーカーエグい!」、などの賛辞の声が少なからず響いていた。
「褒められてる気せえへんけど!?」
一方、デュエルをしていた鳥羽と久朗、その二人をねぎらう菖蒲と泉美の姿があった。
「二人ともお疲れ様。いいデュエルだったね」
「...後半はコテンパンにやられちゃったけど...」
「そ、そんなことありません...!一度はシールドをゼロにまで追い込みましたし、大健闘でしたよ!」
「まぁ結果的には俺の大勝利やったけどな。正直、奥の手の『龍解』を使うまでもなかったわ!」
「...『龍解』...?」
勝利を自慢する久朗の高慢な態度に、泉美がキッと鋭い視線で答える。
しかし久朗も「おー怖い怖い」と視線を泳がせるだけで特に詫びれる様子もない。
「......もう一回」
「...あ?」
「......だから、もう一回デュエルだよ...!」
気弱な鳥羽には似つかわしくない、睨むような視線。
その瞳は、自身を追い込むような焦燥の色に染まりきっていた。
「...アラタさん...?」
そんな鳥羽に対して、久朗は不敵な笑みでもって答える。
「...ええやろ。せやけど、なんべんやっても、結果は変わらんと思うで?」
※
その後、何度、デュエマをやっただろうか。
「《デュエにゃん皇帝》でダイレクトアタック!」
何度、頭を捻っても。
「《ラブ・ドラッチ》を破壊や!」
何度、戦い方を変えても。
「《龍覇 ウルボロフ》を召喚!」
本当に、結果は変わらなかった。
「ーー《オタカラ》で、ダイレクトアタックや!!」
「あー、しつこっ。なんべん負けりゃ気が済むんやっちゅーに」
「.........」
結果積み重なったのは、自分の黒星の数々。
面会時間ギリギリまでやって、ただの一度も勝利する事は叶わなかった。
「おかけで仙川とデュエマする時間なくなってもうたやないか。...もうちょいぐらいやったら、いてもバレへんかーー」
「僕、もう帰るね...」
「え、あの、...待って!」
手早く帰り支度を済ますと、泉美の静止を聞かずそのまま部屋を後にする鳥羽。
「アラタさん!...あの、えっと、私も失礼します...!」
鳥羽のただ事ではない様子に、泉美もまたそんな鳥羽を追いかけて部屋を飛び出して行こうとしたが。
「待って、泉美ちゃん」
急に呼び止められ、思わず足を止める泉美。
声の主は、菖蒲だった。
「ひとつ、おつかいを頼まれてくれないかな?」
※
『オイオイ!ちょっと待てッチ!』
ロビーを抜け、足早に病院を後にする。
正面入口を出たあたりで、ポケットに突っ込んだデッキからのドラッチの声に足を止める。
『どうしたッチ!一回目で負けてから、お前、なんか変だぞッチ!」
「...あの久朗って人、凄く強かった。目も当てられないくらいの惨敗だ」
ドラッチの問に対して帰ってきたのは、しかし、質問の内容とはかみ合わない先程のデュエルの顛末。
話の要領を得ない鳥羽の様子に、ドラッチは黙って言葉の続きを待つ。
「...それにあの人、『龍解』がどうとかって。まだ奥の手を、隠し持ってるみたいな言い方だった」
久朗の口から漏れでた、聞きなれない単語を思い出す。
つまり、彼は自分との度重なるデュエルに置いて、自身のデッキのすべてを持ってするまでもなく自分を打ち倒したという事に他ならない。
「...これから大会を勝ち進んでいく上で、あんな人たちと、もしかしたらもっと強い人たちと戦って行かなきゃならない...。今までは、ラッキーで何とかなってきたけど、今のままじゃ、ダメなんだ...!その為には、デッキ内容を見直して、対策を講じて、...とにかく、とにかく何か出来ることを...!!」
胸がざわつく。うまく言葉に出来ない感情が、鳥羽の胸をきつく締め上げた。
その味わったことのない痛みが、もどかしく、焦りを呼び、感情の行き場がわからず思わず歯を食いしばる。そして、
『あ"ーー!もう!!ゴチャゴチャうるせーッチ!!』
先程まで黙って言葉の続きを待っていたドラッチが、突如デッキから飛び出してきた。
突然の大声に目をパチクリさせる鳥羽に、ドラッチ一拍置いてため息を吐くと、正面から瞳を見据え語り掛ける。
「ゴタク並べて納得しようとすんな。...お前のその顔は、ただただ、"悔しい"って言ってるようにしか見えねーッチよ」
「..."悔しい"...?」
「コテンパンにやられて、しかも相手は全力出してなくて、そう思うのも仕方ねえッチ。...気づいてないのか?お前、歯ぎしり聞こえてくるくらい歯ぁ食いしばってるッチよ」
ドラッチの発言に、鳥羽は少し戸惑った様に俯く。
「...負けて悔しいなんて思ったの、いつ振りだろう...」
思えば、彼の今までの人生は、常に負けっぱなしだった。
運動も出来なければ、取り分け頭がいいワケでもない。
才能も取り柄もなく、何をやっても人並み以下。
かけっこをすればいつもビリで、幼稚園のお遊戯のパズルは、いつも一番解くのが遅く、なんなら解けずに泣き出す日さえあった。
鳥羽 革という少年にとって、"敗北"は当たり前となり、いつしか、負けても何も感じなくなってしまっていた。
「...でも、なんで今更...」
「...んなもん。考えるまでもないッチ!」
いいながら、ドラッチは鳥羽の頭に飛び乗り、脚で乱暴に頭をなで回しながら答えた。
「お前、デュエマが好きなんだッチよ。菖蒲の命が掛かってるってのもあるんだろうけど、それ以前に、お前はもう立派にデュエマを楽しんでるんだッチ」
「...人の命が掛かってんだよ...?楽しむだなんて、不謹慎だよ...」
「だったら、なんでなんてこともない野良デュエルでそんな悔しがってんだッチ」
「...僕は、お気楽で、お遊びでデュエマやってるわけじゃない!僕にはそんな暇ないんだ!好きか嫌いかなんて、そんなのどうでも......!!」
「オイラは、お前とのデュエマ、好きだッチよ」
ドラッチの発言に目を見開き、それ以上何も言えなくなってしまう。
「"好きこそものの上手なれ"って言うだろッチ!知ってるか?デュエマで勝つのに一番大事なのは、どんな状況でも、デュエマそのものを楽しむ事なんだッチよ!」
「デュエマそのものを...」
「そ!どんなカードを使って、どんな行動を取れば自分にとって一番楽しいデュエマになるか。そう考えることが、自分にとっての最高のプレイングの道筋になるんだッチ!」
いいながら、ドラッチは手を、もとい翼をこちらに差し出した。
「お互い楽しんで、...強くなってこーぜ!ッチ!」
「......うん!」
目を腫らしながら、鳥羽はグータッチでそれに答える。
もっとも、ドラッチが差し出したのは拳ではなく翼だったが、それでも、お互いの心を確かめ合うには充分だった。
「(思えば、こいつが背負い込んでんのは友達一人の命。年端もいかねえガキには、ちと重すぎか...。...オイラ達が、しっかりサポートしてやらねぇと...)」
「...急に置いていくなんて、ひどいです。アラタさん」
「...え?」
不意に聞こえた声にドラッチの思考が中断される。
鳥羽の視線の先に目を送ると、そこには少し息を切らした泉美の姿があった。
「あ、そーいや置き去りにしてたッチね」
「ご、ごめん!急に帰っちゃって...!その...!」
「別にいいです。色々、思うところもあるでしょうし。...その様子ですと、もう大丈夫そうですね」
「...うん。なんか、ごめんなさい」
置き去りにした事もあるだろうが、どうやら心配も掛けてしまっていたようだ。申し訳なくなり、思わず謝罪する。
「...アラタさんもおおきな"何か"を抱えているんですよね。私にも相談してください。微力ですが、力になります。...私もアラタさんのお友達ですから」
そんな彼の様子に、泉美は優しく微笑みながら歩み寄った。
「ありがとう...」
「...それはそうと、"おつかい"を頼まれました。菖蒲さんから、これを」
泉美から差し出されたのは、いくつかのカード。
一枚は、見たことのないカードだ。赤い輝きを放つ、雄々しき龍の姿がそこにあった。
そして、もう一枚はーー
「...!!こいつァ...」
「見たことない。...新しい、《ドラッケン》...?」
※
「なぁ仙川、ホンマにこれでよかったんか?アイツ、結構なことショック受けてもうてたみたいやけど」
鳥羽が去った後の多目的室にて。
病室の窓から鳥羽を見下ろしていたのは、久朗だ。
そんな久朗の問いかけに、菖蒲はいつもと変わらぬ笑顔で答える。
「うん、これでよかったんだよ。鳥羽くんには、強くなる為に絶対必要な要素が欠落してた。今回のデュエルで、きっとその事にも気づいてくれたはずだよ」
「ほんで、わざわざ俺を吹っかけたって訳か。なんや?獅子は我が子を谷底に突き落とす〜的なあれかいな?」
「失礼しちゃうなぁ。こう見えても、アメとムチは使い分ける主義なんだけど」
菖蒲もまた、椅子から立ち上がり窓から鳥羽の背中を見つめる。
敗北の悔しさを噛み締め、再び歩きだそうとするその背中を。
「...頑張ったね、鳥羽くん。泉美ちゃんに渡した"アメ"、君ならきっと、上手く使いこなせる筈だよ」
〜終わり〜
文書力が足りない。ウゴゴ...
次回はちょっとした説明回と日常回の予定です。