チキンハート・レボリューション   作:モクロウ

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日常回、のようなもの。


三章幕間 〜 幼なじみと転校生とぶっ飛びサイクリング 〜

「タイヨーサンサンおはようーさん!今日も一日頑張るぞいっ、てなもんで!張り切ってこーぜっ!!」

 

市立兎飼中学。朝の1-B組。

始業前の教室で盛大に声を張り上げるのは、当クラスのムードメーカーこと、並木太朗だ。

爽やかな黒い短髪を揺らしながら、親しみマシマシの陽気なスマイルを教室中にばらまいている。

朝っぱらからフルスロットルの彼の様子に、クラスメイト達は、また"いつもの"か、といった具合に呆れた視線を送っていた。

 

「ゔ〜〜...」

 

ただ一人を覗いて。

 

「うおぉっ!?お前なんつー顔してんだよ!?」

 

「ゔぅ〜〜...」

 

音の発信源は、太朗の隣の席。

上半身を投げ出し、無気力に机に突っ伏している顔色の悪い少年が一人いた。

 

...よく見たら鳥羽だった。

 

「どしたん?なんかいかにも死にかけ〜みたいな顔してんぜ?うおっ、すげぇクマ出来てる...」

 

「おはよう太朗くん...。ちょっと寝不足でさ...」

 

「寝不足?お前そんなガリ勉キャラだっけか?」

 

「違う違う...。昨日やってたのはコレ...」

 

そう言って鳥羽が懐から取り出したのは、掌に収まる程度のプラスチックのケースだ。

 

「新しいカードが手に入ったから、デッキ作り直してたんだ...」

 

鳥羽の取り出したものを見つめ、一瞬考え込むと、太朗は思い至ったように掌を打つ。

 

「...あぁアレなっ!遊〇王っ!!」

 

「違うわよおバカっ!」

 

見当はずれな納得に至った太朗に、渾身の手刀で制裁を加えたのは、太朗の後から教室に入ってきた一人の女子生徒だった。

 

「ってー!何すんだよメイ!?せっかく買ってきたのに」

 

「オマケに買っちゃったの!?自信満々な顔して何マヌケやってんのよ!幼なじみの私の顔に泥を塗る気!?」

 

「おはよう広井さん。今日も二人は仲いいね...」

 

「は、はぁ!?べ、別に仲なんて良くないわよっ!!コイツがバカだから、腐れ縁で、しかたなく、面倒見てやってるだけなんだからねっ!!」

 

と言いつつも、図星を付かれた動揺を隠しきれていない所に、彼女の嘘をつききれない優しい性分を感じ取ってしまう。

 

彼女の名は広井メイ。前述の通り、太朗の幼なじみにして鳥羽のクラスメイトだ。

 

瞳の大きなツリ目に、金髪のツーサイドアップなどなど、色々"揃っている"少女だ。

部活動は太朗と同じバスケ部のマネージャーをしている。

 

「女バスがあるのになんで男バスのマネージャーなの?」と聞いたら「べ、別に太朗の事なんて何とも思ってないんだからねっ!!」と返されてしまった。

 

「(こいつ、相変わらずめんどくせぇッチね...)」

 

鳥羽の懐で何か聞こえてきたような気がするが、聞かなかった事にする。

 

「ごめんなさいね鳥羽。コイツ、あなたと話を合わせたいからって買ってきたんだけど、ご覧の通りバカだから...」

 

「バカとはなんだよバカとは!カードゲームなんてやった事ねぇんだからしょうがねぇだろ!?」

 

「見ればフツー解るでしょ!?裏側が青いヤツよ!私だって間違えなかったんだから!」

 

言いつつメイがドヤ顔でカバンから取り出したのは、一束のカードだった。

 

「あれ?広井さんも買ったの、デュエマ?」

 

「ま、まぁね。太朗が買うって言ってたから仕方なく...。あ、べ、別に、新しく太朗と遊ぶ口実が出来る、とか思ってないんだからっ!!!」

 

「(何も聞いてないのに...)」

 

しかし、メイの持つデッキに何か違和感を覚える鳥羽。

確かに、裏側は青っぽい色合いをしているだが、どちらかと言えば緑の割合が多い。

...というか。

 

「これ、デジ〇ンカードダスじゃん...」

 

「ギャハハハっ!!お前こんなふっるいやつどっから見つけてきたんだよ!」

 

「え...?...な、なによもう!知らないわよ!!」

 

「あんれ〜?誰でも解るんじゃなかったっけか〜?ん〜?」

 

「〜〜っ!うっさいわねおバカ!!」

 

自分と同じ痴態を晒し赤面するメイをひたすらに煽りまくる太朗。

 

正直、目くそ鼻くその状態なのだが、鳥羽には二人がじゃれあってイチャイチャしてる様にしか見えなかった。

 

「...何を朝からイチャイチャしてるんですか〜?...それとも、独り身の先生への当てつけですか?」

 

最後の一言だけ、やたら真に迫っていた。

 

そんな二人の痴話喧嘩も、突如背後に現れた気配によって遮断される。

 

そこには、クラス担任の新田瞳が、腸で煮えくり返る溶岩を笑顔で無理矢理蓋をしたような、どす黒いオーラで佇んでいた。

 

「仲良しは結構ですが、学校で堂々とオモチャを広げているのは感心しませんね〜。......てかリア充爆発しろ」

 

「「ごめんなしゃい...」」

 

謝罪まで息ぴったりの二人だった。

 

 

放課後。帰りのホームルームも終わり帰り支度を済ませる生徒達。

鳥羽、太朗の二人も、他の生徒達同様教科書や筆記用具を鞄に詰め、帰り支度をしていた。

 

「そういやさー。デュエマ?で思い出したんだけど、昨日俺の二年の先輩のクラスに、めっちゃデュエマの強い奴が転校して来たんだってさ」

 

「へぇ。どんな人なんだろね」

 

「さあなぁ、俺も直接見たわけじゃないし。先輩ん話じゃ、口を開けば軽口ばっかの騒がしい関西人らしいぜ?」

 

「ふうん。...うん?」

 

思わずスルーしそうになるところで、ふと鳥羽は思い至る。

口を開けば軽口ばかりの関西人。

その特徴は、つい先日自分に初めての敗北の悔しさを思い知らせてくれた誰かさんのそれと合致する。

 

「邪魔するでぇ!このクラスに鳥羽っちゅうモヤシ野郎はおるかぁ?」

 

「そうそう丁度あんな感じの...。...およ?トバッチをご指名みたいだぜ?知り合い?」

 

入室一発目で鳥羽を大声で指名したのは、先日菖蒲を訪問した際突如現れ鳥羽をコテンパンにした、自称関西最強決闘者、大上久朗だった。

 

「んなぁぁぁ!?」

 

「お、なんやなんや!昨日の今日で俺に再会出来たんがそんなに嬉しいんか!」

 

「いや、え?...なんであなたがここに?」

 

「なんでて、俺、ここのガッコに転校してきたんやもん」

 

「うそぉおおおお!!?」

 

鳥羽の大仰なリアクションに満足そうに笑顔を浮かべ歩み寄ってくる久朗。

そんな久朗の様子に、密かにリベンジに燃えていた鳥羽は肩透かしを食らったような気分になる。

 

「嘘もへったくれもあるかいな。...おいそこの元気ボウズ。お前のお友達、もろてくで?」

 

「え、ちょ...」

 

そう言うと、鳥羽の腕をつかみ強引に連れ出そうとする久朗。

腕を振りほどこうと抵抗するが、その甲斐虚しく年上の腕力には逆らえず連行されてしまう。

 

「わー!太朗くん、助けて!」

 

「おー。トバッチ、達者でなー!」

 

「そんなぁぁぁ!!?」

 

 

「......」

 

一方、兎飼中学正門前にて。

 

一人の少女が正門に背を預け鳥羽の下校を待ち侘びていた。

 

「...アラタさん、遅いですね」

 

鳥羽の友人、温水泉美だ。

 

彼を待ちつつ、手に持った手鏡と睨めっこしながら、自身の髪に結んだ二色のリボンをしきりに気にしている。

整った顔立ちに、青白い透き通る様な美しく長い髪。

控えめに言っても美少女な泉美に、通り過ぎ様の男子生徒たちも思わず魅入ってしまうが、彼女の背負っている物が赤いランドセルである事に気づくと、皆自身のロリコンの気を疑ってしまうのだった。

 

「ひえぇぇ!降ろしてぇ!?」

 

そうこうしている間に、校庭から聞き覚えのある絶叫が聴こえてくる。

しかし、そのただならぬ様子に眉をしかめ振り向くと、

 

「...アラタさん?...どうしたんですーー」

 

振り向き様、超スピードで走行する自転車が泉美の隣を通り過ぎる。

 

瞬間、荷台に全身ぐるぐる巻きで拘束され涙で顔がぐしゃぐしゃになった鳥羽らしきものと目が合った。

 

「!!??」

 

「あぁぁぁぁぁ!!?泉美ちゃああああん!!!」

 

「ギャハハハ!ホンマええリアクションしおんな!」

 

いつ落ちるやも知れない恐怖感とスピード感のコラボレーションで、通いなれた通学路の風景が地獄と化す。

耐えきれず絶叫を上げてしまうが、それが返って久朗のテンションを高揚させてしまった様で、事態は悪化の一途を辿っていた。

 

「いいい一体どこに連れてくのぉ!?」

 

「あん?...さぁ、落ち着いて話せるとこやったらどこでも...」

 

「クソォっ!ノープランだぁぁぁぁ!!?」

 

しかし、鳥羽への回答に思考を巡らせた為か、久朗のペダルを漕ぐ足が止まる。

 

自転車は依然として慣性で前進を続けるが、徐々に減速し始めていた。そして、

 

「...隙あり、です」

 

脇道から不意に現れた泉美が、自転車を無情にも蹴飛ばす。

いくら勢いが出ていたとはいえ、突然の別ベクトルからの力でバランスを崩し揺れ始め、

 

「...うお、ちょ...、のわぁっ!!?」

 

結果、盛大に転倒。

 

荷台に積まれていた鳥羽は、転倒の衝撃で大きく跳ね宙を舞う。

 

「圧倒的浮遊感!!?」

 

日常ではおおよそ体験する事はないであろう感覚に、思わず鳥羽の男の子の部分がヒュンと干上がるような不快感に襲われる。

 

「助けてぇぇ!!」

 

近くなる地面と顔面との距離に思わず死を覚悟した次の瞬間。

 

「...はい」

 

鳥羽の落下地点で待機していた泉美がお姫様抱っこになる形でしっかりキャッチした。

 

「うひゃ!」

 

「...ここらは私の生まれ育った、私の庭みたいなもの。...先回りなどお手の物ですよ。...誰が来ようと、アラタさんにはケガ一つさせません...!」

 

思わずババーンッ!と効果音が聞こえてきそうな堂々とした立ち振る舞い。危機を回避し、泉美の腕の中でほっと一安心。

そして、少しずつ落ち着きを取り戻していく中、気づいた。

 

「(今の僕、なかなかにカッコわるいぞっ!!?)」

 

 

 

 

〜つづく〜




泉美の描写だけ気合が入っている様に見えるのはきっと気のせいです。

次回はまたまた説明回の予感。話を区切るタイミングが難しいです。
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