チキンハート・レボリューション   作:モクロウ

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これにて幕間終わり。

次回はいよいよ三回戦!(?)


三章幕間 〜それぞれの願い、それぞれの思い〜

「いでででっ!もうちょい優しくしてぇや...」

 

「...贅沢言わないでください」

 

自転車でものの見事にすっ転び、全身生傷だらけになってしまった久朗と、加害者としての責任を感じそれを治療する泉美。

 

「...にしても泉美がまたも男の、それも年上の友達を連れてくるなんてのう...。じいちゃんちょっと複雑...」

 

「えっと...。少なくともおじいさんが心配するような間柄ではないから大丈夫、だと思います...」

 

そしてそんな二人をテーブルから並んで見守る鳥羽と、泉美の祖父、湯治の姿があった。

 

そう、場所は湯治の運営する銭湯『温水銭湯』。

 

どこか落ちついて話せる場所を、という久郎の提案に対して、泉美が提案し連れてきたのだった。

 

「...ついでに来客ゲットです」

 

「全身スリキズだらけのニンゲンにいきなり風呂入らすなアホーー」

 

「...えい」

 

「ぎょえぇぇぇぇ!!?消毒液が染みるぅぅぅぅ!!!」

 

「あははは...」

 

 

「それで...、お話っていうのは何なんなの?」

 

久朗の治療も終了し、休憩用の座敷で卓を囲む鳥羽、久朗、そして泉美の三人。

一服した後、鳥羽が話の本題を切り出した。

 

「おー、せやったせやった。風呂上りの牛乳が美味すぎて本題話忘れとったわ!ええ仕事すんなお前のオジイやん」

 

「上から目線はやめて下さい、...何様のつもりですか?」

 

「目線冷たっ!?お前ホンマ敵に対しては容赦ないな!?」

 

関西人特有のお客様至上主義(関西人の作者談)に、絶対零度の眼差しで答える泉美。

その威圧感に、思わず年下であることも忘れ気圧されてしまう。

 

「ま、まぁそれも今日までや。俺が話したかったんは、俺は敵じゃあないって事をわかって欲しかったからやからな」

 

「えっと...?」

 

「...どういう事ですか?」

 

久朗の突然の発言に、つい先日まで火花を散らしていた相手だけあって、イマイチ事態が掴めない。

 

「...なぁトバッチ。ちょいと無粋な事聞いてもええか?」

 

「...えと、答えられることなら(いきなり渾名で呼んできたな...)」

 

「お前が優勝した時、新しい王に願うお前の願い。...聞かせてくれへんか?」

 

「...それは」

 

鳥羽が王、ドギラゴンに願う願いは、もちろん仙川菖蒲の病気を治すことだ。

しかしーー

 

「...大方、仙川の病気を治したい、とかそんなんやろ?」

 

「そ、それは...!」

 

「どうやら図星みたいやな。病院でのお前の態度見とったらピンと来たんや!」

 

突然図星を突かれ、動揺を顕にする鳥羽。

 

「まぁまぁ待てや。俺が敵やない、言うたんわその願いについてや。...その願い、俺にも乗らせてくれへんか?」

 

「え!?」

 

しかし、そんな鳥羽のリアクションすら折り込み済みだったのか、笑いながら鳥羽を制する久朗。

 

「...正味の話、俺とボロフは強い奴らとデュエマさえできりゃ良かったんや。言うてみりゃ、大会に出場出来た時点で俺の願いは叶っとる」

 

『僕としても、大会に出場したのは楽しい楽しい殺し合いがしたかっただけだしね。特に王位にこだわりはないんだ』

 

久朗の持つデッキから、彼のパートナーであるウルボロフの声が聞こえる。

 

「こっちは色んな願いを背負って戦ったいたというのに、...揃いも揃ってとんだ戦闘狂ですね」

 

「お褒めに預かり光栄やな。...ま、そこでや。因縁のライバルが病気でふさぎ込んでるって言うやないか。本人の話じゃ、退院の見込みもまだやっちゅう話しやし、ここはいっちょ俺が治してやろうっちゅわけや!」

 

自分の思惑をひけらかす様に笑い飛ばす久朗。

 

彼の様子を見るに、菖蒲が命の危険に晒されている、という事までは知らないようだ。

 

「(命がかかってるから、とかじゃない。彼は純粋に、"病気で困っている友人"を助けたいと思ってくれているんだ。...何でも願いが叶うチャンスをドブに捨ててまで...)」

 

例えば、の話だが。

 

自分の全財産を捧げる事で、友人の"命"が助かるのなら、その通りにする者は多いだろう。

 

しかし、ただ単純に"困っているだけ"の友人であれば、そこまで出来る者は決して多くはないのではないだろうか。

 

「(ちょっと乱暴で、突飛なことばかり言う人だけど、本当はいい人なのかな...?)」

 

少なくとも鳥羽は、そんな彼に純粋な善性を感じ取っていた。

 

「どや?お互い悪い話しやないと思うで?...それにな、俺はお前の事もそれなりに買ってるんや。せっかくやし、仲良うやろうや!」

 

「...よろこんで!」

 

久朗の差し出す手を取り、握手を交わす二人。

 

「でも、もし大会で当たったら...勝つのは僕だよ?」

 

しかし、急にジトっと視線を淀ませると、久朗に鈍い視線を送り返したのだった。

 

「お前、以外と負けず嫌いやな...」

 

「僕自身も、最近気づいたんだ」

 

そして、手を取り合う少年二人の笑い声が、休憩室に響き渡った。

 

 

「...私は大会にはもう敗退してしまっているので、二人のお役に立つことは出来ません。...なんだか悔しいです」

 

先程までの二人のやり取りを眺めていた泉美から、落胆の声が聞こえてくる。

同じ目的の元手を取り合うふたりを見て、力になれない今の自分にもどかしさを感じてしまう。

 

「そ、そんな事ないよ!デュエマのアドバイスとか、デッキ作りのコツとか、君にはまだまだ手伝って欲しいことが沢山あるし!...それに、僕ってまだまだ臆病だからさ、泉美ちゃんみたいなしっかりした子が居てくれると、とっても安心できるっていうか...」

 

「お前、年上としてそれでええんかい...」

 

そんな鳥羽の若干情けないフォローに、ため息交じりにツッコミを入れる久朗。

しかしーー

 

「えへ、えへへ...♪そう言ってくれると嬉しいです...!」

 

どうやら泉美には効果てきめんだったようだ。

先程の落ち込みはどこへやら、頬を朱色に染め上げ嬉しそうにニヤけている。

 

「納得いかへん...!この扱いの差...っ!!」

 

「そうですよね!大会に出られなくとも裏方としてサポートすることは出来ますし!むしろ試合に出られなくなった分、直接アラタさんの試合に応援に行けますしね!」

 

「...まぁトーナメントやし、試合は一部同時進行やからな。自分の試合出とったら他の試合は見れへんわな」

 

「ははは...。...あれ?ちょっと待って」

 

何気ない会話の中、久朗の発言に違和感を覚える鳥羽。

ご丁寧に挙手してから、おずおずと久朗に尋ねる。

 

「...試合はみんな同時進行なら、なんで泉美ちゃんは二回戦の対戦相手が僕だって知ってたの?」

 

思い起こせば、泉美と初めて出会った際、試合前から既に鳥羽の事を知っているようだった。

今の話だと、対戦相手が誰なのか確かめられないのではないだろうか。

 

「あー...、それな」

 

そんな鳥羽の質問に対して、若干気まづそうに後ろ頭を掻く久朗。

何か聞いづらい事でもあるのだろうか。

 

「...お前一回戦のエントリー滑り込みのギリギリやったやろ」

 

「うん...。そう言えば、実況の人がそんな事を言ってた様な...」

 

「そのせいで、お前の試合だけ開始が一時間ズレとってな、お前の試合が始まった時、他の試合は全部終わっとったんや。つまり...」

 

「早々に一回戦を片付けた他の選手みんなが、アラタさんな試合を客席から傍観できた。...つまり、アラタさんだけが、他の選手全員に顔とデッキが割れていたんですよ」

 

「えぇ!?」

 

衝撃的な事実を告げられ、思わず驚きの声を上げる鳥羽。

言われてみれば、二回戦でも泉美は鳥羽のファイアーバードを警戒した小型除去を使用してきた。

こちらのデッキ内容がバレていたというのならば合点も行く。

 

「知ってか知らずか、もうデッキも変えたみたいやし、ちょうど良かったけどな。ま、人数も減った事もあってこっから先は集客の為に日程ずらすみたいやし、ぶっちゃけ関係あらへんけど」

 

「...それに、対戦相手の名前もトーナメント表を見れば分かりますしね。...オンセン?」

 

『あいよォ』

 

泉美のデッキからオンセンが上半身だけ乗り出すと、机いっぱいに大きな紙を広げた。

 

「ってかこんなんあったの...?」

 

『おや?坊ちゃんは見たのは初めてかい?出場者には全員配られてる筈だけどなァ』

 

「またドラッチの職務怠慢じゃないか!?」

 

『てへぺろっ☆』

 

おどけて誤魔化すドラッチにゲンコツ制裁を加えてからトーナメント表に向き合う。

 

「全部で七回戦、優勝まで後五勝か。...長いなぁ」

 

全百名による膨大なトーナメントだ。

ここに名を刻む皆それぞれが、思惑があり、願いがあり、本気で優勝を競っている。

 

そんな中を、今後も勝ち進んでいかなくてはならない。

 

「(でも、もう怖くない。...僕にだって同じ方を向いてくれている、仲間が出来た)」

 

まだ見ぬ強敵に思いを馳せながら、しかし改めて気持ちを強く持つ。

 

自分に手を差し伸べてくれた者。自分をいつも支えてくれる者。そんな二人を見つめながら。

 

「(だから絶対大丈夫。弱音吐きながらでも、頑張って、楽しんで、...絶対優勝して、彼女を救ってみせる!)」

 

泣いて、悩んで、躓いて、色んなものに揉まれながらここまで来た。それでもまだまだ始まったばかり。

 

ちっぽけな臆病者の"本当"の革命は、これから始まるのだ。

 

 

 

 

〜つづく〜

 

 

 

 

 

 

「...それで、次の対戦相手はどんな人なんですか?」

 

「お、あったで!...って、なんかけったいなリングネームやなぁ...」

 

 

そしてまた、次の闘いが始まる。

 

 

「ーー《999999999 (カウンター・ストップ)》、か」

 




はい!という訳で説明回終わりです。

さて、次の相手は何ですかね(すっとぼけ)。
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