チキンハート・レボリューション   作:モクロウ

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リアルが修羅場ってたので大分更新遅れました。

新キャラ出ます。


四章
ランデスなんです


「はぁ...はぁ...!」

 

腕を振り、足を上げ、なけなしのスタミナを全消費し、薄暗い路地を駆ける。

 

肺の中の空気は既に空っぽだ。流石にこの時ばかりは、自分の運動音痴っぷりを呪うばかり。

 

「おいっ!待てコラ!」

 

「お前裏手回れ!挟み撃ちだ!」

 

すぐ後ろからは、物騒なお兄さん達の物騒なやり取りが聞こえる。

 

先に見える道は曲がり角が一つあるだけの一本道だ。先程の言葉が本当ならこのままでは袋の中のネズミ一直線。

 

「こ、このままじゃつかまる...!?」

 

曲がり角を抜けた先の通路は左手側が用水路になっており、向かい側にもまた別の通路が広がっている。

 

目視のため用水路の幅は正確には解らないが、去年の立ち幅跳びの時の記録とそう変わらない、...様な気がする。

 

「......いける、...か!?」

 

如何せん、飛べるか飛べないかの微妙な距離なだけあってすぐに実行に移す踏ん切りがつかない。しかし...

 

「ヒャッハー!もう勘弁しなぁ!」

 

「テメェの罪を数えろォ!」

 

通路の遥か先にある曲がり角から、これまた物騒なお兄さん達が三名ほど追加で舞い込んでくるのが見える。

 

「うわぁん!!世紀末過ぎるっ!!」

 

『もう覚悟決めろッチ!飛ぶしかねぇッチよ!』

 

「そんな事言われても...、運動音痴の僕に出来ると思うの!?」

 

『イエス、ユー、キャァン(ねっとり)』

 

「絶対テキトーだろっ!?」

 

覚悟を決め、用水路と通路の間に挟まる膝上ほどの柵に足をかけ、めいっぱいの力を込め飛び出した。

 

「アーイ、キャーン...、フラァァァァイッ!!」

 

極度の緊張感のせいか、空中でスローモーションになったかのような錯覚に襲われる。

 

気色の悪い浮遊感の支配する中、宙を舞いながらふと鳥羽は思う。

 

ーー僕、なんでこんな事になってるんだっけ?

 

 

「っしゃあ、行くで!俺のターンや!」

 

「......」

 

時間はその日の午前に巻き戻る。

 

鳥羽達が訪れたのは、様々な店舗が複合された都内有数の大型ショッピングモールの一角。

ショーケースが並べられた店内は、少し奥に進むとマットが敷かれた長机がところ狭しと並べられている。

 

有り体に言えば、イオンのカーキンである。

 

「前ターンの《ボーンおどり》から繋いで《パックポック》を召喚、ターンエンドや!これで墓地のカードは十枚まで増えたで!」

 

「......」

 

その部屋の端の方にある席に、鳥羽 革(とば あらた)と、その隣で向かい合ってデュエマに興じる大上 久朗(おおがみ くろう)、温水 泉美(ぬくみず いずみ)の姿があった。

 

黙々と手札とにらめっこしている泉美とは対照的に、機嫌よくカードをプレイしていく久朗。

 

デッキが程よく回転し、気分を良くしたようだが...。

 

「フハハハ!お前には日頃蔑ろにされた恨みつらみが溜まっとるからな!次のターンで地獄に叩き落とし、『申し訳ありませんでした久朗様』と泣いて謝らせーー」

 

「あ、《オリーブオイル》召喚します。墓地戻して下さい」

 

「え...、あっはい」

 

返しのターン、泉美が召喚した《埋没のカルマ オリーブオイル》によって、無情にも墓地のカードは全て山札に送られてしまう。

 

「お、俺のターン。《ウルボロフ》召喚...」

 

「...するんですか?墓地のカードありませんけど」

 

「する...。《ゴー・トゥ・ヘル》装備...」

 

用意していた墓地を台無しにされすっかり意気消沈してしまう久朗。

 

勝ち筋を失い、先程までの元気はすっかりナリを潜めてしまっている。

 

そこからのゲーム展開は、それはまぁ淡々としたものだった。

 

「...《ガロウズホール》打ちます。《ウルボロフ》戻してください。効果で《オンセン》を場に」

 

「...!かかったな!《地獄門 デスゲート》で...」

 

「...あ、《アクア特攻兵 デコイ》いるので選べません。終了でいいですね?」

 

「...はい」

 

「...《レッドライダーズ》召喚。《オンセン》の効果で出し入れして二マナ墓地に送ってください。《スパイラル・ゲート》で《レッドライダーズ》戻してまた召喚します。二マナ墓地送ってください。......何もできませんか?」

 

「あ、えっと...」

 

「...じゃあ私のターンでいいですね。《ボルメテウス・蒼炎・ドラゴン》召喚。シールドWブレイク。...解ってると思いますけど墓地送りですよ」

 

「ふぐっ、ひぎぃ...」

 

「...はい私のターンです。《焦土と開拓》打ちます。マナ墓地送って下さい。あ、《蒼炎》でWブレイクです。《レッドライダーズ》で最後のシールドもブレイクして、《オンセン》で止めです」

 

「あ"びぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」

 

マナを根こそぎ奪われ、なす術もなく敗北する久朗。

 

あまりの惨敗っぷりになんかプルプルしている彼を前にして、鳥羽は思わず一言。

 

「...僕のライバルいきなりボロ負けじゃん!!!」

 

 

「...やりましたアラタさん。チョロいもんです」

 

「いや、やりましたじゃないよ!開幕一番とんでもない殺戮ショーだったよ!!」

 

久朗を叩きのめしドヤ顔でサムズアップを決める泉美。

 

しかし、目下の目標でありライバル視していた久朗の、あまりの凄惨な負けっぷりに、少々納得がいかない様子。

 

「この間までの強キャラっぷりはどうなっちゃったの!?登場から数回で泣くまでボロ負けするライバルなんて見たことないよ!!」

 

見ると、久朗も机に突っ伏したまま微動だにしない。

 

周りの客達からも「可哀想に...」「エグイな...」「悲しい事件だったね...」などポロポロと感想が漏れていた。

 

「...私は、アラタさんより強い人がいるのが許せないだけです。アラタさんを脅かす存在は、アラタさんのお友達であるこの私が討ち滅ぼします」

 

「どこのNo.2だよ!!」

 

『正直ここまで依存されるとは思ってなかったッチね...』

 

鳥羽の肩の上からやれやれとため息を漏らすのは、鳥羽の相棒ラブ・ドラッチだ。

 

泉美の鳥羽への盲信っぷりに若干引きつつも、先ほどデュエルしていた両者の相棒、オンセン・ガロウズとウルボロフに同意を求め卓上に降りるが...

 

『そう言うなよ。恋する乙女は盲目って言うだろ?カワイイもんじャねェか?』

 

『そんなナリをしておいて、化け物(クリーチャー)の君に恋なんて解るのかい?』

 

『オイオイ、あ前だってその化け物だろ』

 

『ふふふ、ボクはね、"殺戮"に恋してるんだ☆』

 

『さらっと恐ろしい事言うんじゃねぇッチ...。コイツらといると、頭おかしくなりそうだッチよ...』

 

「...ってお前らぁ!ちょっとは俺を慰めんかい!?拗ねてまうぞゴラァ!!」

 

落ち込む自分を放置して談笑(?)している周りにブチギレたのか、声を大にして講義する久朗。

 

哀れなり、その瞳はまだ涙で少し濡れていた。

 

 

「ま、何が言いたいかってーと、デッキの相性いうのも勝敗を分ける大きな要因になり得るってワケや。それを身をもって教えてやったんやからな!感謝せぇ!」

 

しばらくして、先程までの事をまるで無かったかの様に自慢げに胸を張る久朗。

 

「...ほら、見て下さいアラタさん」

 

泉美は、そんな彼を人差し指で指しながら、冷めた目で見つめる。

 

「...あれこそが、中級者にアリがちな自分の至らなさを運やデッキ相性のせいにするデュエリストのクズですよ」

 

「なんやとコラァ!?ガッチガチの対人メタ使っといてどの口が言うんじゃぁぁぁ!!」

 

「...《オリーブオイル》はSTブロッカー枠だしLO対策にもなるし汎用性高いので対人メタではありません。ハイ論破」

 

「んがぁぁぁぁ!!」

 

言い負かされ、泉美に掴みかかる勢いで憤慨する久朗。

 

とはいえ、流石に年下の少女に手を出したとあっては真性のクズ認定は間違いないので、行き場のない怒りを机に叩きつけ唸っている。

 

「...もっとも、彼の言い分もあながち間違っていなませんがね。...勝敗を別けるのは、ぶっちゃけ、『運』による所が大きいです」

 

「身も蓋もないなぁ...」

 

泉美の言い放つ言葉に、思わずゲンナリしてしまうが...

 

「(でもよく考えたら、僕が今までで勝ってこれたのも、ほとんど運が良かったからなんだよなぁ...)」

 

一回戦。奇跡とも言える確率で引き当てた《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》。

 

二回戦。山札残り二枚という窮地で呼び込んだ《燃える革命 ドギラゴン》。

 

「うーん、思い返せば、ホントに運に依存してる気がする...」

 

『オイオイ、もしかして今まで勝ってこれたのも運がよかっただけ、なんてネガってる訳じゃねぇだろうなッチ』

 

思わず肩を落とす鳥羽だったが、肩の上のドラッチが羽で軽く頬をはたいてため息をかき消した。

 

『お前の"ここぞって時の引きの良さ"には光るものがある。オイラはもちろん、うちの王様だって認めてる事だッチ。もっとシャンとしやがれッチ!』

 

「う、うん...」

 

ドラッチの思いがけない励ましに、思わず頬を緩める鳥羽。しかし...

 

『もっとも、ホントにキ〇タマ付いてんのかってくらいチキンだけどなッチ』

 

「ほっとけ!」

 

それでもすぐに意地の悪いニヤケ顔を浮かべながら鳥羽をイジるドラッチ。

 

ちなみに、単に素直になりきれていないだけの照れ隠しなのは、鳥羽は知る由もない。

 

 

「(...そういえば)」

 

過去の戦歴に思いを馳せる内、ふと、鳥羽は思い出す。

 

「僕が一回戦で戦った人って、とんな人だっけ...?」

 

二回戦にて激闘を演じた泉美。

 

大会外で大敗を喫した、久朗。

 

この数日間で出会った決闘者とは何かしら交友関係を気づけているが、一回戦で戦った相手に関しては全くと言っていいほど音沙汰なしだ。

 

『あぁ、あの無駄に態度も身体もデカイ奴だッチね』

 

「...いましたねそんな人。私も客席から見てましたが、よく覚えてません」

 

「かまへんかまへん!あんな噛ませ犬の事なんかとっとと忘れてまえ!そもそも初回で戦う態度のでかい大男は総じてかませやって相場が決まっとるやろ」

 

「...一応リアルではランカーの様でしたが、中途半端に実績があるって所もいかにもな感じですね。捨て置いて問題ないでしょう」

 

「辛辣...」

 

自分の届き知らないところで誹謗中傷の嵐を受ける、もはや顔も思い出せない一回戦の人。

 

良心が少し痛い様な気がするが、顔も思い出せないので思いを馳せ様もない。

 

「...ていうかなんて名前だったっけ?」

 

刹那。

 

「十文字 篝じゃぁぁぁぁ!!!」

 

「ひぃっ!?」

 

なんと、居た。

 

本人が隣りの席に。

 

それも、凄く怒っていた。

 

『「「あー、コイツだコイツだ」」』

 

「息を揃えて今思い出しましたみたいに納得してんじゃねぇぇぇ!!なんかうるせえ奴らがいるなと思ったら人の事ボロクソ言いやがって!!基本的人権の尊重守れやゴラァ!!」

 

「なんやなんや、久しぶりの出番やからってよう喋るなぁ。めんどくさ」

 

「...必死というか、哀れですね」

 

「何なんだよお前のツレはぁ!?いちいち人をディスる事しか出来ねぇのかよぉ!?」

 

「ひぃっ!?ごめんなさい後でキツく言っておきますのでぇ!!」

 

久朗、泉美の不遜な態度にマジギレする篝。

 

あまりの威圧感に思わず謝罪するが、当の二人はどこ吹く風と言った態度だ。

 

「...まぁいい。鳥羽だったな。ずっと探してたんだ。テメェにどうしても見せたいものがあってよぉ...」

 

「僕に見せたいもの...?」

 

そう言って、鞄をまさぐりながら笑顔でこちらに近づいてくる篝。

 

彼が取り出したのは...

 

「テメェに血をみせてやらぁぁぁ!」

 

明らかに物理法則を無視したサイズの釘バット。

 

鬼の様な形相で振り抜くそれを、鳥羽はすんでのところで回避する。

 

「うわぁぁ!!?いきなりなにするのぉ!?」

 

「うるせぇ!よくもオレの野望を邪魔しやがって!!むしゃくしゃするからぶっ飛ばす!!」

 

「めっちゃ逆恨みじゃん!!」

 

いつそ清々しい程の理不尽さに思わずツッコミを入れる鳥羽。

 

しかしその叫びも虚しく、篝の怒りは留まる事を知らない。

 

「任せとけやアラタ!!」

 

「...!久朗くん!」

 

鳥羽のピンチに名乗りをあげる久朗。声のする方に振り向くと...

 

「マッハで助太刀呼んで来たるからなぁ!!」

 

店の外に向けて、全力で走り去った後だった。

 

「全力で見捨てられたァァァ!!?」

 

「そろそろ観念して貰おうか。言っとくが、店外には俺の舎弟十人がいつでもスタンバってるぜ?」

 

見ると、店の外では見るからにガラの悪そうな学生達が泉美を取り囲んでいた。

 

「おい!泉美ちゃんは関係ないだろ!あの娘になにかしたら承知しないぞ!」

 

「へっ、威勢がいいな!たが安心しな。女、子供には手は出さねぇ。送迎付きで安心安全に自宅まで送り届けといてやるよ!...おいテメェら!ちゃんと丁寧に扱え!あと怖がらせない様に、飴ちゃんとかあげろよ!」

 

「「ウス!!」」

 

「謎に紳士!!」

 

思いの外の好対応に思わずツッコむ鳥羽。その優しさのほんのちょっとでも自分に向けてくれればいいものを。

 

しかしここで鳥羽は気付く。

 

包囲していた舎弟全員が、泉美に対応に当たっている事に。

 

「包囲網ガバガバじゃないか!!」

 

一瞬の隙をつき、全速力で駆け出す。

 

意外な程に簡単に突破できてしまった。

 

「何やってんだテメェら!さっさと追えぇ!!」

 

「「ウスッ!!」」

 

 

そして冒頭へ。

 

「回想なっが!!」

 

『お前日増しにツッコミ体質になってんなッチ』

 

用水路を跳躍し、反対側の通路に着地する鳥羽。

 

振り返らず、そのまま逃亡を続けると、

 

「うそぉん...」

 

行き止まりだった。

 

「やれやれ、やぁっと追いついたぜ」

 

後方からの声に振り向くと、そこには十文字と数名の舎弟達の姿がいた。

 

「(詰んだーー!!)」

 

「オラ!大人しくしやがれ!」

 

「うわっ!!?」

 

舎弟の二人に取り押さえられ、地面に伏せられる鳥羽。

 

背中にのしかかられている為、身動きひとつ出来ない。

 

そうこうしている間にも、釘バットを携えた篝が一歩ずつこちらに近づいてくる。

 

「終わったな、コイツ。アニキのバット裁きは常人のそれじゃねえぜ」

 

「アニキはな、バットの柄を使った正確なツボ押し攻撃からくるあまりのイタ気持ちよさから、《地獄バットの十文字》と恐れられるハンパねぇ人なんだぞ!凄いんだぞ!」

 

「あれ、今の話聞いてたらあんまり怖くないような...。ああでも待ってやっぱり痛いのはムリムリムリ待って勘弁して、っていうかーー」

 

 

「ダレカタスケテーーー!!」

 

 

なす術もなく助けを求める鳥羽。

 

だがその声に答えるものはなく、ただ空気を震わすだけに終わる、と思われたが。

 

「俺に任せろーーっ!!」

 

突如頭上から声がしたかと思うと、隣の家屋の屋上から一人の男が飛び降りてきた。

 

色は黒く、ツンツンに尖らせた髪。額に巻かれたハチマキには、《健康第一》の四文字。

 

その十文字を睨みつける視線は鋭く、しかし熱い決意に満ち溢れている。

 

肩からは鳥羽と同じ兎飼中学の制服を羽織り、袖には『保健委員』の文字が刺繍された腕章が付いている。

 

「貴様かーーっ!!我が校の生徒に害を成そうという輩はーーっ!!」

 

「な、なんだてめ...」

 

「うるさーーいっ!!」

 

「ふぐっ!?」

 

群がる舎弟たちの質問に答える間もなく、次々と腕力でねじ伏せていく『保健委員』の男。

 

みるみる相手を蹴散らし、立っているのは十文字一人となった。

 

「な、何なんだよてめぇは!?」

 

「俺かっ!!俺はなっ!!」

 

十文字の問いかけに対し正面に向き直り、声高々に名乗りをあげる。

 

「究極に弱きを助けっ!究極に強きを挫くっ!究極の保健委員っ!!九重 九十九(ここのえ つくも)とは俺の事だーーーっ!!!」

 

訳の分からない名乗り文句に口を開けたまま硬直している十文字。

 

そんな彼を他所に、鳥羽は心中で叫んだ。

 

「(なんかまた濃いのが出たァァァァ!!)」

 

 

 

 

〜つづく〜

 




メイン4人が出揃ったのでようやく本調子。
シリアス以外はギャグ多めです?

ある意味ここからが本当のスタートかなといったところです。
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