せめて月一投稿は守りてえなぁ。
「俺かっ!!俺はなっ!!」
這いつくばる多くの不良たちの中央に、声高々に名乗りをあげる少年が一人。その少年の名はーー
「究極に弱きを助けっ!究極に強きを挫くっ!究極の保健委員っ!!九重 九十九(ここのえ つくも)とは俺の事だーーーっ!!!」
だそうだ。
「な、なんだぁテメェ!いきなり人の舎弟達を叩きのめしやがって!関係ねぇ奴はすっこんでろ!」
「ふんっ!!関係なら大いにあるぞっ!!」
鼻を鳴らし、篝の言葉を一蹴すると、九十九と名乗った少年は自身の腕に付けられた腕章を突きつけた。
「俺はそこの少年と同じ学校の保健委員っ!!生徒の健康を守るのは、保健委員として当然の仕事だっ!!そうだろうっ!!」
「...いや、だからってアプローチの仕方おかしくね?そもそもケガしちゃったヤツの対処をするのが保健委員の仕事であってーー」
九十九の提唱する前衛的過ぎる保健委員の在り方に対し至極丁寧に意を唱える篝だが
「うるさーーいっ!!」
しかし、篝が言い終わるのを待たずに、九十九の鉄拳が炸裂。
「ぎょぎょらすっ!!?」
変な悲鳴を上げ、後方に吹っ飛ばされた後、二、三回痙攣し完全にこと切れた。
「...細かいことは知らんっ!!」
「(...雑い!!)」
助けてくれた事には違いないのだが、そのあまりの脳筋っぷりに思わず不安を覚える鳥羽であった。
九十九は、篝やその舎弟たちが再起不能になったのを確認すると、今度は鳥羽の元に駆け寄ってきた。
「おい貴様っ!!ケガはないかっ!!」
「は、はい、お陰様で...」
困惑しながらも自身の無事を伝える鳥羽だが、そんな彼の言葉を無視して思いっきりシャツをめくり上げた。
「きゃあああああっ!!?何するんですかいきなり!?」
『反応がイチイチ女々しいッチ...』
「何が無事だ貴様っ!!...ここに立派なアザがあるじゃあないかっ!!」
「へ...?」
見ると、篝の舎弟達に抑えられた時についたのか、腹部や背中あたりに小さなアザが数箇所にわたって付いていた。
しかし、本人が付けられたのも気づかない程度のもので、正直痛みも何もない。
「だ、大丈夫ですよこれくらい。ほっとけば治...」
「ならーーーーんっ!!!」
治療するほどのものでもないので、遠慮がちにはお断りしようとするも、九十九の大ボリュームの否定によって遮断される。
「この究極の保健委員っ!!九重 九十九の前では、いかなる軽傷であろうと見逃すことは出来んっ!!さぁ着いてこいっ!!骨の髄まで治療してやるっ!!」
「え、ちょ、うわわっ!?」
有無を言わせぬ気迫で押し黙らせた後、そのまま鳥羽の華奢な身体を脇に抱え、どこぞへ向けて走り出した。
「あの、だから大丈夫ですってば...」
『あー、ムダムダ。こうなったアニキは、最早誰にも止められないっチュ〜。悪い様にはされないから、安心して欲しいっチュ〜』
「...え?」
『今の声、まさか...』
九十九に抱えられ狼狽したいた所、明らかに九十九のものでは無い、謎の声が聞こえてきた。
『やぁやぁ。こんにちはでチュ〜』
九十九のポケットから顔を出したのは、灰色の体毛をしたネズミの様な謎の生き物。
「ニューもふもふキタ!!」
『お、お前は!九極の侵略者《七極 Di》!!』
Diと呼ばれたその謎生物はどうやらクリーチャーらしい。
名前を呼ばれ、今度はドラッチを凝視するDi。
すると、何かを思い出したのかポンっと手のひらを打った。
『おお!そういうそっちは革命軍精鋭部隊がキャプテン、《ドラッケン》でチュね。ちっちゃくて気づかなかったでチュ』
『テメェが居るってことは、まさか...』
『そうでチュ!ここにおわす九重 九十九兄貴も《王位戦》の出場者...。そして、次のチミ達の対戦相手なのでチュ!』
「えぇええええええっ!!?」
※
「消毒よしっ!!冷却よしっ!!包帯よしっ!!究極的に治療完了だーっ!!」
『さっすがアニキ!究極的に極まってるっチュ〜!』
「......あはは」
抵抗虚しくに九十九に抱え込まれた先は、鳥羽らの母校、市立兎飼中学の保健室だった。
「あの、ほんとに何から何まで、ありがとうございます(やりすぎだと思うけど)」
「礼には及ばんっ!!これも保健委員としての使命だからなっ!!」
そう豪快に笑いながら、救急箱を慣れた手つきで整頓しながら棚へと収納する九十九。
そしてそのまま、戸棚の中からお茶とお茶菓子を取り出し机の上に差し出す。
「疲れたろうっ!!一服して行けっ!!」
「アフターケアまでバッチリ!?」
正直、学校の施設にお菓子が常備してあるのは如何なものだろうか。
ラインナップが上品な香りの紅茶にふわっとサクッとおいしいマカロンと言った具合が、九十九の暑苦しい印象と対照的過ぎてなんともカオスな感じに仕上がっている。
「なに、ここは女子が運ばれる事もままあるからなっ!!なるべく大衆にウケそうなものを置いているだけだっ!!」
「(いい人だ...!)」
「俺個人としては、プロテインなどを置いておきたいのだがなっ!!養護教論の先生に止められたのだっ!!残念だっ!!」
「(いい人か...?)」
鳥羽が脳内でツッコんでいると、先程から九十九をヨイショしているネズミの様なクリーチャー、Diが軽く咳払いをした。
『さてと、雑談はこれ位にして。アニキ!そろそろ本題に入った方がいいっチュ〜!』
「うむっ!!そうだな助手1号っ!!」
「(...きた!)」
目の前でクリーチャーと会話をしたいる所を見せられては最早疑いようもない。
九十九が《王位戦》の出場者というのは、事実だろう。しかも、Diの話が本当なら彼こそが次の対戦相手、《999999999》という事になる。
「(これまでの経験上、対戦相手が事前にコンタクトを取ってくるのも別におかしくない...。あまり考えたくないけど、これまでの親切も恩を売るためだったって事も...)」
「鳥羽 革っ!!貴様に折行って頼みがあるっ!!」
「(...ゴクリッ)」
だんっ!!と、強く机を叩き身を乗り出す九十九。
少しの緊張感が張り詰めるなか、九十九は口を開き、そして。
「貴様っ!!保健委員会に入ってくれないかっ!!」
「『...は?』」
※
「ほーん。それで放課後いきなり保健室に向かってるっちゅうワケやな?」
「まあね...」
翌日の放課後、授業を終えた鳥羽と久朗の二人は兎飼中学内の廊下を並んで歩いていた。
「んにしても、まさか俺が呼びに行った助っ人がそんなけったいな奴やったとはなぁ...。つかなんでお前がスカウトされんねん」
「いやぁ、実はね...」
〜以下回想〜
『鳥羽 革っ!!貴様、入院しているクラスメイトの仙川 菖蒲という女子生徒に、頻繁に見舞いに行ったり、書類を届けているそうではないかっ!!』
『え!?それは、その...はい』
『その献身的な精神っ!!お前からは究極的な保健委員魂を感じるっ!!お前こそ、俺の後任に相応しい男だっ!!後はその弱腰な根性を叩き直せば、まさに究極だーーっ!!!!』
〜回想終了〜
「...なにそれめんどくさ」
回想からもヒシヒシと伝わる九十九の暑苦しさに、思わず顔をしかめる久朗。
「んなもんソッコー断ればええやん...。なんでわざわざ行くねん...」
「えへへ...。どんな形であれ、人に必要とされるのって嬉しいもんだからさ。ちよっとは悪くないかなって...」
「お前チョロすぎやろ...」
暫く歩いていくと、一階廊下の突き当たり、保健室の前へたどり着いた。
「失礼しまー...」
そして、扉を開いた先に広がっていたのは。
「ぐわー!!包帯グルグル巻で身動きが取れねぇー!!」
「ええいっ!!大人しくしろっ!!貴様のケガはまだ治っとらんっ!!」
「なんで軽く捻挫しただけでこんな大げさなギプス巻かれなきゃ行けないんだー!」
「うるさーいっ!!軽傷を笑う者軽傷に泣くっ!!貴様らっ!!完治するまでこの保健室から出られん事と思えーーっ!!」
「「ヒィーーーッ!!」」
「「............」」
黙ってその場を後にした。
「おおっ!!鳥羽 革っ!!来たか、...ってどこに行くっ!?おい待てっ!!無視するんじゃないっ!!」
※
「ふむっ!!凄惨たる医療現場に怖気付いてしまったかっ!!まぁ仕方あるまいっ!!すぐに慣れるぞっ!!ハーッハッハッハッ!!」
「いや、どっちかっつーと、お前にビビっとるんやと思うんやけど...」
去り際に九十九の包帯捕縛術によって捕えられ、強制的に連れたこられた久朗と鳥羽の二人。
スカウトを受けた当の鳥羽も、久朗の後ろに隠れ警戒気味に様子を伺っている。
「なに、究極的な治療の為には多少の荒療治はつきものだっ!!気にするなっ!!」
「だからってやりすぎや!!どこもかしこもミイラ男だらけやんけ!!季節外れのハロウィンパーティかここは!!」
「なんだ貴様っ!!呼んでもいないのに勝手について来て、俺の究極的治療に文句を付ける気かっ!!治療するぞっ!!」
「治療は脅しに使うことやないやろっ!!お前さては自覚アリやな!!」
「もぉ!二人とも落ち着いてよぉ!」
鳥羽の仲裁が入り、一旦腰を下ろす二人。
二人の仲は未だに険悪だが、いい加減話が進まないので、鳥羽が九十九に問いかける。
「えっと...。今日は結局何をするんでしたっけ?」
「うむっ!!鳥羽 革っ!!今日から貴様にはこの俺に同行し、真の保健委員の何たるかを学んでもらうっ!!つまりは俺の手伝いをしてもらいたいのだっ!!」
そういうと九十九は、机の上に保健委員の腕章を叩きつける。
「善は急げだっ!!早速俺に付いてこいっ!!」
「え!?いくら何でも急過ぎるんじゃ...」
「馬鹿者ーーっ!!」
九十九に急に手を引かれ、思わず狼狽えたしまう鳥羽。
そんな彼の態度が九十九の琴線に触れたのか、九十九の鉄拳制裁が炸裂した。
...久朗に。
「なんで俺ぇ!?」
「俺達がこうしてのんびりしている間にもっ!!この学園で誰かがケガをし助けを求めているのかも知らんのだぞっ!!」
「ここぉ!!たった今ケガした人ここぉ!!」
九十九からのあんまりな扱いに、抗議の念を込めて主張するも、九十九は何事もなかったかのように話を続ける。
「よしっ!!では早速出発だっ!!」
「わかりましたからぁ!とりあえず引っ張らないでぇ!」
「無視すなやぁ!ほらここ!舌切った!血ぃ出てる!ホラ!」
思い思いにバタバタ騒ぐ人間達を遠巻きに、クリーチャー達はため息混じりにボヤいていた。
『...人間達は今日も騒がしいっチュ〜』
『キミも苦労してるみたいだね』
『ほれほれ。ぼーっとしてると、人間様に置いてかれるッチよ』
※
「よぉしっ!!では早速、本日の現場に向かうぞっ!!」
九十九に連れられやって来たのは、主に二年生の教室がある三階だった。
「つうか、保健委員の仕事なんて週に一人おるかおらんかのケガ人を、せいぜい保健室に連れてくだけとちゃうんか?」
久朗の見解は至極真っ当だ。
本来保健委員の仕事は、授業で手を離せない教師の代わりに具合を悪くした生徒を保健室まで連れていくなど、あくまで関節的なものだ。
しかし、そこいく九十九の保健委員の在り方は、明らかにその域を脱している。
彼の過剰な活動は、むしろ本来の養護教論の仕事を奪ってしまっている迄ある。
「...そんなものは関係ない。俺はただ、目の前でケガや病に苦しむ人を放って置けないだけだ」
「.........」
そう語る彼の瞳には、いつもの様な暑苦しさはなく、静かな決意の色に燃えていた。
「(今のが、九重先輩の願い...?)」
彼の小さな呟きに、鳥羽が思いを巡らせていると、ふととある教室で九十九の足が止まった。
「ここは、二年A組やな。うちの隣のクラスや」
「そうだっ!!ここに"とある病"に侵された生徒がいてなっ!!前々から手を焼いていたのだっ!!」
九十九がやって来たのは、なんの変哲もないただの教室の様に見えた。
否、そう"見えただけ"だった。
教室の端。本来ならばあまり目立たないその位置に、否応にも目を引く一人の少女がいた。
「三年C組っ!!保健委員長の九重 九十九だっ!!内藤 真歩(ないとう まほ)はいるかっ!!」
「やれやれ...。またキミか?」
九十九に名指しで呼び出され、立ち上がったのはその女子生徒。
室内だというのに背中に羽織った黒い大きなマントが目を引く。そして、腕や太股には何故か包帯が巻かれている。
髪は濃い紫のロングヘア。瞳の色は赤と黒で左右に分かれていた。
ハッキリ言って、異常だった。
「何度言わせれば解るつもりだい?我が真名は《†暗黒の魔導騎士†》(ダークネス・ナイト・ウィザード)!...内藤などという凡庸な名前で呼ばないで!」
「「............」」
加えて、意味不明だった。
「まだそんな訳の解らない事を言っているのかーっ!!いい加減目を覚ませーっ!!」
「ふんっ。高尚なるボクの言葉が理解出来ないなんて、可哀想な人だ...」
目の前で繰り広げられる意味不明なワールドに、正直置いてけぼりな鳥羽と久朗。
理解の追いつかない脳をフル稼働させ、ようやく一つの質問を絞り出した。
「なぁ、九重先輩?...その"とある病"ってのは、ちなみになんなんや?」
「うむっ!!聞いた話では、《チューニ病》という病気だそうだっ!!なぁにっ!!病気であるなら、きっと治せる筈だっ!!ハーハッハッハッ!!」
「それお前の思とる病気と多分ちゃうからぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
〜つづく〜
次回はVS中二病。
誤字脱字は、...まぁあるだろうから見つけたら指摘くだちい。
メリークリスマス!(ヤケクソ)
※さっそく、新キャラのフリガナが間違ってました。内藤(ないとう)さんをどうぞよろしく。