チキンハート・レボリューション   作:モクロウ

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デュエマ回次回になっちった!すまんね!


"譲れないもの"

 「今日という今日は観念して貰うぞっ!!内藤真歩っ!!」

 

 「まったく、本当にしつこいヤツだな君は...」

 

 放課後。保健委員の活動を手伝って欲しいという九十九に導かれた先は二年A組。

 

 一見、何の変哲もない教室に見えたその一室にいたのは、変哲のあり過ぎる人物だった。

 

 「ボクはこれより城に帰還し、呪符(スペルカード)の調整をしなければならないんだ。来るべき決闘者達の饗宴に備えて、ね...」

 

 「ハイどう見ても頭おかしいですホンマにありがとうございますっ!!」

 

 そんな彼女の様子に腹の底からツッコミを張り上げる久朗。

 

 「病気のベクトルがちゃうやん!どっちかっていうと精神病やん!若気の至りやん!」

 

 「む、そうなのかっ!!このクラスの生徒に"内藤のチューニ病がイタい"と聞いていたので、度々足を運んでいたのだがなっ!!別にどこも痛そうではないし、どうしたものかと困っていたっ!!」

 

 「"イタい"の意味も履き違えとる!」

 

 『エキサイトしてるとこ悪いでチュが、あまりそいつをなめない方がいいっチュよ〜』

 

 久朗の魂のツッコミが炸裂するさなか、九十九の懐からDiがひょっこりと顔を覗かせる。

 

 『何せ彼女も《王位戦》出場者、しかも順等に三回戦までコマを進める実力者でチュからね〜』

 

 「はぁっ!?この邪気眼厨がか!?」

 

 「なにか今すごく失礼な事を言われた気がするぞ」

 

 久朗の不遜な態度に、鬱陶しそうに眉を潜める真歩。

 

 その場に立ち上がると羽織ったマントをはためかせ左手をかざし声高に叫ぶ。

 

 「あまりボクを怒らせない方がいい...。この闇色に輝く封じられし力、《邪眼王の右眼》の餌食になりたくなければね...」

 

 「信じられへん...。こんな絵に描いた様な中二病が《王位戦》の出場者やと...。てかこの学校に固まりすぎやろ」

 

 「本当に失礼だなキミは。大会で当たったら覚えておけよ...!」

 

 「ってかアラタ!お前さっきから何黙っとんねん!なんか言うたれや!」

 

 「.........」

 

 アホ×バカの相乗効果で最早手のつけられなくなった久朗が、そういえばさっきから黙りっぱなしの鳥羽に助けを求めるが...

 

 「...カッコイイ」

 

 「ふぁっ!?」

 

 以外にも、鳥羽が彼女に対して送っていたのは侮蔑や嘲笑でも無く、ピュアでキラキラした羨望の眼差しだった。

 

 「あの人左右で目の色が違う!こないだ太朗君に借りたマンガで見た奴だ!すごい!カッコイイ!」

 

 「アカーン!ウチの子が確実に悪い影響受けとる!?」

 

 鳥羽もまだまだ十三歳の男の子。まして、田舎暮らしが長く世間知らずな事も相まって、真歩の痛々しい言動はむしろ新鮮だったご様子。

 

 「フフフ。キミはまだ見込みがある様だ。どれ、もし良ければキミを我が眷属として迎え入れてやらなくもないよ?」

 

 「いいの!?」

 

 「いいわけあるかぁ!!」

 

 鳥羽の肯定的な態度に気を良くしたのか、無垢なる少年の心をダークサイドに招き入れようとする真歩。しかし...

 

 「ならーーーんっ!!」

 

 すんでのところで九十九が大声を張り上げ静止をかける。

 

 そのあまりの大ボリュームに思わず足を止めてしまう鳥羽。

 

 当の九十九はというと、今までに無いくらいの気迫の籠った面持ちで真歩を睨みつけている。

 

 「九重先輩...?」

 

 「...まさか、精神病だった上に感染力までこれほど高いとはな。チューニ病、やはり捨て置けん」

 

 懐からデッキを取り出し、真歩の前へと踏み出す九十九。

 

 「現在は俺の八連勝っ!!次が約束の九戦目だっ!!今日俺が勝てば、その妙な言動は辞めてもらうぞっ!!内藤真歩っ!!」

 

 「(...は、八連勝!?《王位戦》に選ばれて、勝ち上がっているような人相手に...!?)」

 

 「...フン」

 

 そんな九十九の真剣な眼差しを受けながらも、不敵な笑みを崩さない真歩。

 

 むしろ先程よりも嬉しそうに、九十九の前に一歩を踏み出し、そしてーー

 

 「悪いが今日は調子が悪いんだ!ではなーー!」

 

 逃げた。

 

 

 「っておぉぉぉいっ!!闘わんのかい!」

 

 久朗の叫びも虚しく、全速力で廊下を駆け出す真歩。

 

 後を追おうにも、曲がり角を曲がった先は階段。上に逃げたのか下に逃げたのか、完全に見失ってしまった。

 

 「あかん...。意外と逃げ足早いな...」

 

 「やむを得んっ!!二手に別れて追いかけるっ!!俺と鳥羽は下の階を探すっ!!貴様は四階を頼んだぞっ!!」

 

 「はぁっ!?何で俺もやらなあかんねん!?」

 

 「当たり前だっ!!人手は多い方がいいからなっ!!では行くぞっ!!鳥羽ぁっ!!」

 

 「わ、ちょま...。だから引っ張らないでえぇぇぇ!!」

 

 九十九は、そのまま鳥羽の手を掴み、そのまま階段を駆け下りていくのだった。

 

 「ええ...。ほんまにやらなあかんの?めんどくさっ...」

 

 『楽しそうな事してるね。どうするんだいクロ?』

 

 九十九に無茶を振られ辟易していた久朗のポケットから、ウルボロフが姿を現した。

 

 『...階段を駆け上がる音。弾む呼吸音。よかったね。彼女、上の階に上がって行ったみたいだよ?』

 

 「相変わらずの地獄耳やな...」

 

 ウルボロフに言われるまま、ゆっくり階段を登ってゆく久朗。

 

 『なんだ、結局手伝って上げるんじゃないか。...あ、そっち右だよ』

 

 「しゃーないやろ。あれなんとかせな、終わりそうにないし。てかアラタの奴が悪影響受けとったしな。病原体は早めに叩かな」

 

 『...ふーん。そんなに気に入ったのかい?彼の事が』

 

 「せやな」

 

 ウルボロフの探るような質間に、あっさりと肯定を返す久朗。

 

 「確にアイツはまだまだ弱い。けど、伸び代はある。だから俺が育てたるんや」

 

 ウルボロフの指示通りにゆっくりと歩を進めながらも、いつかのように目をギラつかせ不敵に微笑む。

 

 「そんでもって、最高に強ぉなったアイツをこの手で仕留める。...どや、想像するだけでゾクゾクするやろ?やから、それまでに負けてもらったら困る」

 

 『...いい性格してるね、キミも』

 

 「お互い様やろ」

 

 廊下を暫く進んだところで、使っていない空き教室の固まった校舎の最奥地に辿り着く。

 

 『俺の嗅覚が正しければ、あの子はこの先にいるよ』

 

 「よっしゃ!そうと決まれば、さくっと俺が引導を渡したるで!」

 

 すると、曲がり角を曲がった先から、ボソボソと少女の声が聞こえてくる。

 

 「お、この先やな...」

 

 足音を殺し、顔を覗き込んだ先にあった光景は...

 

 「はぁはぁ...、まさか本当に八連敗もしてしまうなんて。自信無くしちゃいますぅ...。それにしてもカラコン、鬱陶しいですね。マントも包帯も蒸れるし、もう取っちゃいましょう...」

 

 「...へ?」

 

 額に汗をかき、身につけていたマントや包帯やらを大雑把に投げ捨てる真歩の姿があった。

 

 手馴れた手つきでカラコンを外し、元の赤の色に戻った両目を物憂げに開く。

 

 「あぁ、恥ずかしかった...。出来ればこんな格好したくないんだけどなぁ......、え?」

 

 「.........」

 

 バッチリ目が合ってしまった。

 

 「い、いやぁぁぁぁっ!!」

 

 「え、ちょ、グーはあかんグーは!!おぎょぉおおおおっ!!?」

 

 

 「ぬぅおおおおおおおっ!!どこだっ!!どこにいる内藤真歩ぉっ!!」

 

 「ちょちょちょちょ!ちょっと止まってぇっ!?」

 

 「ぬっ!!?」

 

 鳥羽の静止をうけ、急ブレーキをかけ停止する九十九。

 

 引っ張っていた彼が急に止まってしまったために、慣性の法則で前方に派手にすっ飛び、廊下のロッカーに派手に突っ込んでしまった。

 

 「うぎゃぁぁぁっ!!?」

 

 『ア、アラターーーっ!!?』

 

 「ハッハッハッ!!随分気合が入っているようだな鳥羽革っ!!たしかに、どこに隠れているか分からんからなっ!!徹底的に調べ尽くすぞっ!!」

 

 突然叫ぶと、掃除用具入れや他の教室のロッカー、机の中などありとあらゆる所に首を突っ込んでは片っ端から捜索を始めた。

 

 「あのぁ、いくらなんでもそんな所にはいないと思いますけど...」

 

 「ぬぉおおおおおっ!!どこだっ!!内藤ーーっ!!」 

 

 「ダメだ...。聞いてない」

 

 怒涛の勢いで捜索を続ける九十九を、どうすることも出来ずボンヤリと眺めていると、

 

 「へい、トバッチ!何やってんだよっ!」

 

 「うげっ...!あの熱血保健委員もいるじゃない...」

 

 不意にこちらに声を掛けてきたのは、鳥羽の友人でクラスメイト、並木太朗と広井メイの二人だった。

 

 「お、ホントだ!...おーいつっくん先輩!なにやってんのーー!?」

 

 「むっ!!?おお、バスケ部の並木に広井じゃないかっ!!身体の調子はどうだっ!!?究極かっ!!?」

 

 「お陰様でっ!!究極的にアルティメットですっ!!!」

 

 「いや、意味分かんないから」

 

 九十九と親しそうに話す太朗に困惑する鳥羽。

 

 勝手に盛り上がる二人を指差し、隣のメイに話しかける。

 

 「あの、三人は知り合いなの?」

 

 「...前に太朗がケガした時に、ちょっとね。ほら、九重先輩って保健委員でしょ?バスケって結構動きが激しいから結構ケガ人も出るし、それなりにお世話になってるの」

 

 「え!太朗くんケガしたの!?」

 

 「とは言っても、お前が転校してくる前の話だがなっ!!」

 

 「いやー。その節はホントに世話んなりました」

 

 「二人が知り合いだったなんて、...何だか意外だな」

 

 にぱっと笑い、照れ臭そうに九十九に礼を言う太朗。

 

 彼の人懐っこい人柄故だろうか。意外なとこらでの人の繋がりに驚きを隠せない鳥羽だが。

 

 「あら、ていうか、この学校でその先輩の事知らない生徒なんて、来たばっかりの転校生くらいなんじゃない?」

 

 「???」

 

 「ほら、九重先輩って人を助けようっていう気概だけは半端じゃないでしょ?ケガしたり、困ったりした時はどこからとも無く現れるし」

 

 「そうなんだ...」

 

 二人でそうこうしている間にも、九十九はガムシャラに捜索を続けている。

 

 よく見れば、途中すれ違う生徒の殆どが、彼に挨拶やお礼を送っていた。

 

 「だから、みんな結構感謝してるのよ。ま、やることなす事全部無茶苦茶だけどね。...そのせいで他の保健委員みんな辞めちゃうし」

 

 「そういや、いつも先輩にくっついてた大人しそうな保健委員の女子もいたけど、あの娘も辞めちゃったのかなぁ。結構可愛かったのに...!」

 

 「なに?あんたそんな風にみてたの...」

 

 「イデデデっ!つねるな!なんで怒ってんだよ!?」

 

 別れの挨拶を交わし、二人はそのまま体育館へと向かっていった。

 

 「女の子...か」

 

 

 暫くすると、息を切らした九十九が全身に滝の様に汗をかきながらこちらへと歩いてきた。

 

 「むっ!!?あの二人は帰ってしまったかっ!!まぁいいっ!!自分が治療した生徒が元気に部活に励んでいるのだっ!!こんなに嬉しいことはないっ!!...この階は大方探したし、次の階へ行くぞっ!!」

 

 「え、こんな探したのにまだ探すんですかっ!?」

 

 「当たり前だっ!!まだ一階も残っているし、グラウンドも、もしかしたら学校の外もっ!!考えられるところはすべて探すぞっ!!」

 

 額の汗を袖で拭うと、顔を上げ、ズンズンと廊下を進んでいく。諦める様子は微塵も感じられなかった。

 

 「あの、先輩は、どうしてそんなに頑張れるんですか?...どうしてそんなに、強いんですか」

 

 そんな一所懸命な九十九を見て、鳥羽はどうしても九十九に聞いてみたくなった。

 

 どんな無茶にも立ち向かうその強さが何なのか。

 

 だってそれは。臆病で、今まで逃げてばかりだった自分にはない、確かな強さだったから。

 

 「ふむ、一つ言っておくが、俺は強くなどはないっ!!どれだけ身体を鍛え、知識を蓄えても、力が及ばす助けられなかった事もあるっ!!」

 

 そんな鳥羽の視線を真正面から見据え、力強く答える。

 

 「だが、もしお前から見て俺が強く見えたというのならっ!!それは、この胸に燃える揺るぎない"信念"のお陰だっ!!」

 

 九十九は、自身の胸を強く叩く。

 

 「何があっても曲げないっ!!何があっても成し遂げるっ!!己の中の"絶対に譲れないもの"っ!!それが信念だっ!!かくいうお前にも、そんなものがあるんじゃないかっ!!」

 

 「僕にとっての、"譲れないもの"...」

 

 胸に手を当て、目を閉じる。

 

 瞼の裏に映るのは、孤独と不安に怯えていた自分に優しく手を差し伸べてくれた、一人の少女の笑顔だった。

 

 「はい。確かに、あります...。僕にも」

 

 「そうかっ!!ならそれを究極に大事にしろっ!!それがきっと、お前を究極に強くしてくれるっ!!ハッハッハッ!!」

 

 豪快に笑うと、鳥羽の頭をくしゃくしゃっと撫で回した。

 

 『大した人間だッチね。思わずオイラも身が引き締まったッチよ』

 

 『当たり前だっチュ〜。何せ、ボクが認めたニンゲンでチュからね』

 

 「うん。みんながこの人を慕う理由が、よくわかった気がするな」

 

 

 「...さてとっ!!」

 

 その場で屈伸し、自身のコンディションを確認すると、またも鳥羽の手を掴み全力出かけだした。

 

 「さぁっ!!究極的に捜索再開だっ!!!!」

 

 「でももうちょっと周りをみて〜!!?」 

 

 階段を駆け下り、昇降口へと降り立ったその時...

 

 

 「その必要はないよ!」

 

 

 九十九と鳥羽の行方を正面から立ち向かう二人の影。それは...

 

 「内藤先輩に、...久朗くん!?」

 

 両腕を組み、ドヤ顔で仁王立ちしている内藤真歩の姿があった。

 

 その傍らには、その内藤を追いかけたはずの久朗が、同じく仁王立ちで立ちふさがっている。

 

 「悪いなアラタ。ちょいと事情が変わってな。こっちに着かせてもらうわ」

 

 「え!?」

 

 「フフフ。今のボクなら逃げるまでもない。《悪夢よりの追跡者》(ナイトメア・ストーカー)との契約により、更なる力を手に入れた今なら!...さぁ決闘だ!《999999999》(カウンター・ストップ)!!」

 

 

 

 「か...」

 

 

 

 『感染したッチ...』

 

 

 

 

 

〜つづく〜




キャラ増えてきたしそろそろ設定公開とかした方がええんか...。
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