「「デュエマ・スタート!!」」
開戦のゴングが鳴り響き、歓声が巻き起こる。
「(...よしっ!!)」
ゴングは鳴った。恐らく、闘いはもう始まっている。
鳥羽がセットしたデッキに手を伸ばそうとしたその時ーー
「待ちなっ!!」
対戦相手の十文字 篝が、鳥羽に待ったをかける。
「対戦前にやっておく事があるだろう」
「...や、やっておく事...?」
「...あぁ。それは」
拳を鳴らしながら、十文字がゆっくりと鳥羽に歩み寄る。
にたりと、不敵に笑い拳を突き出して言った。
「ジャンケンだっ!!」
「ええぇぇぇぇぇぇ...」
殺伐としたコロシアムには似合わない、割合可愛らしい提案だった
「...あ、おまっ、なんだその顔は!」
「...え、だって、さっきまですごいシリアスだったのに。...ジャンケンって...。なんだかなぁ...」
「仕方ねえだろ!”先攻後攻はジャンケンで決める”ってのが、公式レギュレーションで定められた正式なルールなんだからよ!俺だって出来ればコイントスとかルーレットとかでカッコよく決めてぇよ!!」
「う〜ん...」
「あーもう!!いいからほら!じゃーんけーん...」
つい割とどうでもいい願望を漏らしてしまった十文字は、誤魔化すように半ば強引にジャンケンを開始した。
「ホイ」(チョキ)
「ポォン!!」(グー)
『ジャンケンを制したのは、十文字選手だぁーーー!!』
「うおおおおおおおぉぉっ!!」
ジャンケンに勝利した十文字が、会場全体に勝鬨をあげる。
それに答えるように、会場に歓声が湧き上がった。
「(ジャンケン一つにこの騒ぎ様って...)」
ひょっとしたら、わりかし頭の程度は低い大会なのかもしれないな、と鳥羽は思うばかりであった。
※
「まずは俺のターン!!...マナをチャージして終了だ」
十文字の先攻。マナゾーンにカードを1枚置き、終了を宣言する。
「マナに置いたのは青いカード...、水文明か...。確か先攻は、先に動ける代わりにドローは出来ないんだっけ...」
「あ?何ぶつくさ言ってんだ。お前のターンだぞ!早くしろ!」
「あ、う、うん...。ド、ドロー...。えぇっと、マナをチャージして、ターンエンド」
なれない手つきでマナゾーンにカードを置く。
先攻1ターン目は、お互いに動きはない様だ。
続いて2ターン目。
先に動きを見せたのは十文字だった。
「じゃあまずはオレから行かせてもらう!呪文、《エマージェンシー・タイフーン》」
呪文の効果で2枚ドローし、1枚捨てる。
「(捨てたカードは赤いカード...。って事は、火と水の混色デッキか...。うーん...)」
「俺はこれでターンエンドだ。...ほらどうした。まだデュエルは始まったばかりだぜ?」
「.........僕のターン。ドロー。マナを一枚置いて終了」
続く鳥羽のターン。
マナをチャージするのみで、これといった動きは特にない。
ターンは十文字へと移り、しばし思考する
「(相手のマナは...。《メガ・ブレード》に《バクアドルガン》、ドラゴンが多いな。ま、中坊の使いそうなデッキだぜ)」
カードをドローし、マナをチャージする。
「召喚!《フェイト・カーペンター》!」
十文字がカードをかざした瞬間、洋画で出てくるマーマンの様な風貌のモンスターが姿を現した。
「うわぁ!?クリーチャーがホントに出てきた!?」
「その効果で、2枚引いて2枚捨てる!」
「...また手札交換…?」
召喚したクリーチャーの効果で、また手札を入れ替える十文字。
「...これで"3枚"。ターンエンドだ」
「(...なんだろう。手札よりも、仕切りに墓地の方を気にしてる。墓地はただ、使えなくなったカードを置いておく場所ではないのかな...)」
ターンが鳥羽に移行し、デッキに手をかける。
「ていうか、そんな事言ってる場合じゃない...」
恐る恐るカードを捲り、ゆっくりと確認する。
「...また重いカードだぁぁ!!!」
引いたカードのコストは8。そう、現在鳥羽の手札には、召喚出来るカードが一枚もないのである。
「一枚マナを貯めて、終了...」
『おおーっと!!これは、鳥羽選手まさかの手札事故かー!!?』
ただマナを貯めるのみの鳥羽の状況を見て、十文字は大きな笑い声を上げた。
「ハハハ!!この局面で事故るとは、敵ながら同情するぜ!!」
余裕の表情のまま、ドロー、チャージとステップを踏み、カードをかざす。
「まぁこっちは、いたってかなり順調だがなぁ!」
十文字のカードから現れたのは、さっきのいかつい人魚とは打って変わって、黒い服に鎖鉄球を纏った可憐な少女だった。
「《日曜日よりの使者 メーテル》を召喚!...ターンエンドだ」
「うぅっ...!!」
置いて行かれていくプレッシャーから同様を隠せない。
そんな鳥羽に対して、余裕を崩さす十文字は挑発をかける。
「...前もって言っておくぜ。次の俺のターンで、お前は終わりだ」
「...な!?」
『十文字選手!!ここに来ての勝利宣告だー!!』
相手が言っている事がハッタリでなければ、ここで引かなければ負ける。
その事実が、先にも増してプレッシャーを感じさせる。
「お願い...!!」
勢いよく引いたそのカードは。
「...来た!マナを貯めて、《コッコ・ルピア》を召喚!!」
鳥羽のカードから現れたのは、以前菖蒲も使用していた《コッコ・ルピア》。
場に留まる限り、ドラゴンの召喚コストを2つ下げるクリーチャーだ。
「(...これで次のターンにはドラゴンを出していける!まだチャンスは...)」
「…次で終わりだっつったろ」
次の瞬間、鳥羽のバトルゾーンに居た《コッコ》が、突如現れた渦に巻き込まれ手札に弾き返される。
「なんだ!?何が起きたの!?」
「《メーテル》の効果発動。こいつがいる限り、俺はカードを一枚引く時代わりに二枚引き、一枚捨てる。...俺が捨てたカードはーー」
墓地から一枚のカードを取り出し、ひらひらと弄びながら鳥羽に見せつける。
「《疾風怒涛 キューブリック》。こいつが墓地に置かれた時、水のカードがマナに3枚あれば、クリーチャーを一体手札に戻せんだよ!」
「そ、そんな...!!」
「大体、このターンで終わるお前に、んなもん関係ねぇんだよぉ!!!」
叩き付けるようにマナゾーンにカードを起き、手札から一枚の呪文を唱えた。
「《スクランブル・タイフーン》発動!!カードを5枚引き、3枚捨てる呪文だ!」
突如、巨大な竜巻が会場内を覆い、十文字の山札から大量のカードが舞う。
「更にここから《メーテル》の効果を発動!!つまり!!カードを10枚引き、8枚捨てる!!」
「そ、そんなに...!?」
「...これにより、G・ゼロォッ!!!」
巻き起こる巨大な竜巻から二つの火柱が上がる。
蒸発した水の中から、豪炎を撒き散らし二体のドラゴンが姿を現した。
「《百万超邪 クロスファイア》!!《天災超邪 クロスファイア2nd》!!」
「そんな!?使えるマナはもう残ってないはずなのに...!?」
「はぁ!?G・ゼロも知らねえのかよ。こいつらはそれぞれ、墓地にクリーチャーが6体以上いる時と、カードを6枚以上引いた時に、タダで場に出るんだよ!!」
獰猛な笑みを浮かべながら、2枚のカードを鳥羽に見せびらかす。
「更にこいつらはスピード・アタッカーのW・ブレイカー!無知なてめえにわかり易く言やぁ、出たターンにはアタック出来んのさ!分かったらとっととくらいな!!」
十文字がカードをタップした次の瞬間、相手のドラゴンがこっちらに向かって猛スピードで突っ込んできた。
「《百万超邪》でW・ブレイク!!」
「...そんな...」
「《天災超邪》でW・ブレイク!!」
「たった1ターンで...」
「《フェイト・カーペンター》でーー」
「僕のシールドが...!!」
「最後のシールドをブレイクだっ!!!」
最後のシールドが、無情にも破られた。
※
「...そんな、こんな事って...」
シールド0、クリーチャー0、圧倒的な絶望感が鳥羽を苛む。
「結局守れなかった...。何一つ出来ず...このまま負けてしまうの...!?...ちくしょう...!ちくしょうっ!!!!」
自分が情けなくて、悔しくて、堪らなかった。
何も出来ない自分が許せなかった。
『なんだ?ここで諦めんのか?』
堪らず涙を流す鳥羽に、先程の声が問いかける。
「だって、どうしようもないじゃないか!!クリーチャーもいない!シールドもない!今まさに止めを刺されるところなんだよ!?僕にどうしろって言うんだよ!!」
『...おまえ、ほんとしょうがねぇやつだなぁ...』
『何もないって?仲間(クリーチャー)なら、そこにいるじゃねぇか!』
そして、”奇跡”が起こった。
かち割られたシールドがより集まり、1匹の炎鳥と化す。
《ピアラ・ハート》。
逆転を呼ぶ奇跡の力、S・トリガーだ。
しかし、このクリーチャーの効果では、現状を打開する事は出来ない。
「《メーテル》でダイレクトアタックだあああああ!!」
『諦めんなよ』
しかし、ここに来てなお、”声”は少年に諦めない事を示し続ける。
『シールドゼロ?...上等だぜ!』
むしろ、勝利を確信した様な声で。
『テメェが諦めない限り、オイラ達は何度だって、力貸してやるぜ!!』
「…あ、ありがとう…………っ!!」
先程の鳥羽からは一変。不安な顔色はなりを潜めている。
瞳にめいっぱいの涙を貯め、しかし、彼は笑っていた。
「革命0・トリガー!!《革命の鉄拳》ッ!!」
直後、会場の天井を突き破り、炎を纏った巨大な鉄拳が《メーテル》を打ち砕いた。
「この...っ!!無駄な足掻きをぉぉぉっ!!」
『鳥羽選手まさかの革命0・トリガー!!十文字選手の勝利宣告を、見事に防ぎきりました!!』
「クソがっ!!よくも俺の顔に泥を塗ってくれたな、この死に損ないがぁ!!」
しかし、大声で騒ぎ立てる十文字に、迷いのない瞳で返す。
「...前もって言っておくよ」
もはや恐怖も、絶望も感じない。
確かな自信と、仲間を持ってして、宣言する。
「次の僕のターンで、あなたは終わりだっ!!」
〜つづく~