チキンハート・レボリューション   作:モクロウ

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VS.ロマノフサインⅡ

「行け、我が切り札!!《邪眼王 ロマノフⅠ世》っ!!」

 

 「......なにっ!!?」

 

 怒涛の呪文の連鎖により、あっという間にバトルゾーンにクリーチャーを揃えた真歩。

 

 連鎖の果てにバトルゾーンに舞い降りたのは、凄まじい威圧感を放つ一体のダークロード。

 

 「召喚の命に応じ、馳せ参じた。...ようやっと我輩を呼び出せたか、童め」

 

 マントを翻し、九十九の正面へ向き直るロマノフⅠ世。

 

 その身から溢れるただならぬ圧力に、鳥羽も足がすくみそうになるのを堪える。

 

 「ひえ...!」

 

 「...実体化もしてないのに、このプレッシャー。噂以上にヤバいやつだッチ」

 

 「知ってるの?あのおっかない奴...」

 

 「《ロマノフⅠ世》...。長く続く名門ナイト一族の原点にして頂点。闇の重鎮だッチ。この大会に出てるとは聞いてたけど、まさかこんな近所にいるなんて...!」

 

 旋律する鳥羽をよそに、真歩は高揚した表情のまま、眼前に立ち塞がるの頼もしい背中に語りかける。

 

 「遅くなって済まなかったね」

 

 「まったくだ。あまり我を退屈させてくれるなよ」

 

 「でも、今はデュエルの最中。感銘に浸っている余裕はないよ...!」

 

 「...ふん。言いよるわ」

 

 毅然とした態度で言葉を返す真歩に素っ気なく応対するロマノフ。

 

 ...しかし、その内心は。

 

 「(ぬおぉぉぉぉ!!真歩め、やっと我を呼び出せたかっ!しかも思いを伝えるため、あの究極男をここまで追い詰めるとは...!なんて健気なのだぁ!!さすが我の天使っ!!ラブリーマイエンジェッ!!YEAH!!嗚呼、全力で頭をいいこいいこしてやりたいぞぉ!!)」

 

 「...?なんか今寒気が...。まぁいい!《ロマノフⅠ世》の効果!山札から《インフェルノ・サイン》を墓地に落とす!......行くぞ!Wブレイクだ!」

 

 《煉獄と魔弾の印》により墓地から呼び出されたクリーチャーはスピードアタッカーを得ている。

 

 真歩の呼びかけに応じ、《ロマノフⅠ世》が銃口を九十九へと向け引き金を引く。その時。

 

 「ロマノフの効果!墓地から《インフェルノ・サイン》を発動する!墓地から呼び出すのは...《百万超邪 クロスファイア》!!」

 

 「うそ!?まだ増えるの!?」

 

 「これでアタック出来るクリーチャーが四体!一気に決めたれやぁ!!」

 

 ロマノフの銃口から放たれた魔弾が、九十九のシールドを二枚吹き飛ばす。シールドトリガーはない。

 

 「続いて、《ロマノフⅡ世》でWブレイク!」

 

 Ⅱ世のアタックで、更に二枚のシールドが吹き飛ぶ。それらも、トリガーはない。九十九の残すシールドは、一枚。

 

 「なるほどっ!!確に今までのお前とは気迫が違うっ!!余程の思いがあるのだろうっ!!」

 

 「行け!《アツト》で、最後のシールドをブレイクだ!」

 

 そして、九十九の最後のシールドが破られた。...次の瞬間。

 

 「だがっ!!しかしっ!!いかなる戦略、いかなる覚悟を持ってしてもっ!!俺の究極の信念を折る事などっ!!出来はしないのだーっ!!」

 

 破られた最後のシールドが、より集まって門を形作る。

 

 「シールドトリガー《究極ゲート》っ!!貴様の《クロスファイア》をタップするっ!!」

 

 「そんな!?」 

 

 「それだけではないっ!!《究極ゲート》のもう一つの能力を発動っ!!山札をシャッフルし、トップを公開っ!!」

 

 山札をシャッフルした後、一番上のカードを引く。

 

 「公開したカードが、"コスト9の光の侵略者"であれば、バトルゾーンに出せるっ!!来いっ!!《七極 Di》っ!!」

 

 「チュ〜〜!」

 

 《究極ゲート》を通ってバトルゾーンに現れたのは、先ほど九十九や鳥羽と行動を共にしていたクリーチャー、《七極Di》。

 

 「いや、しかし危なかったっ!!トリガーが無ければ負けていたのだからなっ!!」

 

 「パワー15000って...。あのクリーチャーそんなに強かったの!?」

 

 「クソっ!届かんかったか!でも次のターンで...」

 

 「いや、...もう手遅れだ」

 

 渾身のワンショットを防ぎ切られ、悔しそうに歯噛みする真歩。

 

 「九十九先輩に、クリーチャーの登場を許してしまった。この時点で、ボクにもう勝ち目はない...。ターンエンドだ」

 

 「ど、どういうこと...?」

 

 消沈する真歩の発言に耳を疑う鳥羽。しかし次の瞬間にはその言葉の意味を思い知る事になる。

 

 「俺のターンっ!!《Di》から進化だっ!!《七極 Gio》っ!!」

 

 九十九がカードをDiに重ね、進化させる。現れたのは、大槌を振るう一体の天使。しかし、驚くべきはそのコスト。

 

 「コスト...九!?九十九先輩のマナは、たったの四枚しかないよ!?」

 

 「《Gio》の能力や!あいつは、手札のコスト九のカードの数だけ召喚コストが下がる...!」

 

 「でも、ブロッカーとWブレイクしか能力はないし、そんな驚異にはならないんじゃ...」

 

 「...あいつの厄介な所はな、"コスト九の光の進化コマンド"って所にあるんや」

 

 「え?」

 

 「行くぞ、《七極 Gio》でシールドをブレイクっ!!...そしてっ!!」

 

 九十九がGioでブレイクを宣言。

 

 すると、九十九の手札にある一枚のカードが、眩い光を放つ。

 

 「侵略っ!!!発動っ!!!!」

 

 「はぁああああ!!」

 

 煌めく翼を羽ばたかせ、一直線に真歩のシールドへと飛びかかる。

 

 その時、神々しい光がGioの全身を包み、更なる究極の域へと高める。

 

 「うわ...!?」

 

 あまりの眩しさに、思わず瞼を閉じてしまう鳥羽。ゆっくりと目を開いた、次の瞬間。

 

 「......っ!?」

 

 一枚も割られていなかった真歩の五枚のシールドが全て弾け飛び、真歩を無防備に晒す。

 

 あまりの急展開に理解が追いつかず、再びバトルゾーンに目を移す。

 

 眩い光を放つ一体のクリーチャーを中心に、その者に付き従うかのように現われる幾多の軍勢。

 

「あの一瞬で、一体何が...!?」

 

 「俺の場には一切の呪文を封じる《ナンバーナイン》がいるっ!!もう逆転は不可能だっ!!」

 

 「くそ...!くそっ!!」

 

 九十九の言う通り、もはや手も足も出ないのだろう。

 

 目を伏せ、悔しそうに強く拳を握る真歩。

 

 「(これが、次の対戦相手の、九重先輩の実力...!こんな人相手に、僕は...っ!!)」

 

 一部始終を見ていた鳥羽の頭を支配したのは、次に対峙する相手への不安。それ程までに、この戦況において九十九の勝利は揺るがない。

 

 「内藤...」

 

 「すまない。けど、出来ることはすべてやったつもりだ。...手伝ってくれて、ありがとうございました」

 

 ぺこりと、久朗に頭を下げる真歩。

 

 笑顔だが、その表情には隠しきれない哀しみがにじみ出ていた。

 

 「二体目の《Gio》でっ!!ダイレクトアタックだっ!!!!」

 

 天使の振るう大槌が、真歩の眼前に振るわれる。

 

 「(九十九先輩...。真歩は...、真歩は...)」

 

 流れる涙が、真歩の頬を伝って落ちる。

 

 そして、決着が着いた。 

 

 

 「究極的にっ!!治療完了っ!!」

 

 激闘を制し、勝利を収めた九十九がデッキを収める。

 

 「約束だぞ内藤よっ!!周囲を惑わすその妙な言動、本日をもって改めてもらうっ!!さぁ、そのマントや腕の包帯も没収だっ!!」

 

 「ちょ、ちょい待ちーや!」

 

 真歩が身につける中二グッズを没収しようと詰め寄る九十九。

 

 そんな彼を制したのは、彼女の傍らで勝敗を見守っていた久朗だった。

 

 「そいつがそんなんなってもうたんは、お前にも原因があるんやぞ!ちょっとくらい話し聞いてやっても...!」

 

 「大上くん。...もういいんです」

 

 しかし、そんな彼を真歩は止めた。

 

 九十九へと伸ばされた久朗の腕へそっと手を置き、静かに首を横に降る。

 

 「こんなに近づいても、先輩は、まだ真歩の事にいづいていない。...もともと、叶いっこない憧れでした」

 

 「......」

 

 「没収なんかされなくても、自分で外せます。...それでは、ご迷惑お掛けしました」

 

 羽織ったマントを丁寧に畳み、力の封印の為に巻かれた(設定)包帯をゆっくりとほどいていく。が...

 

 「あれ、取れない...。やっぱり、包帯を巻くのは苦手です...」

 

 「はて...。そのデタラメな巻き方...何処かで...」

 

 

 『ふぇぇ...。またひっくり返しちゃいましたぁ...』

 

 『馬鹿者ーっ!!包帯も満足に負けないのかっ!!こう...、位置を固定して、表面を転がす様に巻くのだっ!!やってみろっ!!』

 

 『転がすように、転がす、ように...。あぁ!落としちゃいましたぁ!待ってー!』

 

 『こらーっ!!まったく、今日は出来るようになるまで特訓だーっ!!』

 

 『ふぇぇ...!?』

 

 

 「......っ!!」

 

 「それでは、今度こそ。...さようなら」

 

 身につけていた装飾品もすべて外し、"ただの内藤"に戻った真歩。

 

 その場を去ろうと、踵を返したその時。

 

 「...待てぃっ!!!」

 

 「ひゃあっ!?」

 

 ひっくり返りそうになるほどの大声で真歩を呼び止めたのは、九十九だった。

 

 「"相も変わらず"拙い巻き方だなっ!!そんな事では、いざと言う時に人を救う事など出来ないぞっ!!」

 

 「...え?先輩、私の事...」

 

 「俺は昔から、やり方が無茶苦茶だとよく言われてなっ!!俺に付いてこれず、途中で離れていくものも何人もいたっ!!故に、無理に引き戻す必要はないと思っていたっ!!」

 

 「違います...!真歩は、むしろ先輩の事尊敬して...!」

 

 「しかしっ!!もし、お前が道を間違えた理由が俺にあるというのならっ!!...済まなかったっ!!もう一度っ!!戻ってきてはくれないだろうかっ!!斎藤よっ!!」

 

 九十九の呼びかけに振り向き、呆れ気味に答える真歩。

 

 「...また名前間違えてるじゃないですか。それに、自分の何が悪かったと思ってるんですか?」

 

 「わからんっ!!」

 

 「...なんですか、それ」

 

 しかし、その後すぐ、涙を浮かべながら満面の笑みを浮かべ答えた。

 

 「でも、なんだか先輩らしいですね...。真歩、今度はちゃんと覚えて貰えるように、頑張りますね...っ!」

  

 

 「へぇ。二人の間に、そんな事があったんだぁ」

 

 「まぁな。俺らしくもなく、つい節介焼いてもうたわ」

 

 その後、なんだか邪魔をしづらい雰囲気になったので、九十九と真歩を残し、校舎を後にした鳥羽と久朗。

 

 「結局、俺らっていらんかったんちゃうやろか?」

 

 「それは、多分違うよ。久朗くんがいたから、内藤さんは勇気が出せたんだと思う」

 

 「...せやったら、よかったんやけどな」

 

 そういいながら久朗は、小さく、優しく微笑む。

 

 日頃人を茶化したり、馬鹿にしたりしている彼とは少し雰囲気が違う気がして、鳥羽は久朗に問いかけた。

 

 「そう言えばさ、久朗くんはなんで、内藤さんに協力してあげたの?」

 

 「あー、それはな...」

 

 ニッと頬を上げると、照れ臭そうに答えた。

 

 「自分が憧れた、好きになった奴が、自分じゃない何かに夢中になってる。その悲しさっちゅうか、寂しさに、ちょっとシンパシー感じてもうたんかもな」

 

 「久朗くんも、好きな人がいるの?」

 

 「それは、トップシークレットや!」

 

 

 「おねぇちゃん!またね〜!」

 

 「うん、またね?」

 

 場所は変わって、都立兎飼病院。

 

 病室から立ち去る少女に別れの挨拶を送るのは、この病院に入院している鳥羽のクラスメイト、仙川菖蒲だ。

 

 窓からは既に夕日が差し込んでおり、面会時間もそろそろ終わろうとしている。

 

 「さてと、そろそろおやすみしようかな?」

 

 「菖蒲ちゃん。面会よ」

 

 「え?」

 

 看護師の案内で、一人の少年が病室へと訪れる。

 

 「こんな時間にごめんね」

 

 「鳥羽くん。ううん、来てくれてうれしいよ?でも、どうして急に?」

 

 「...うん。ちょっとね」

 

 ベッドの傍らに置かれた椅子に腰掛ける鳥羽。

 

 菖蒲は、彼の表情から何となく落ち込んだ感情を読み取った。

 

 「なにかあった?」

 

 「...僕が今、大会に出てるって言ったよね」

 

 「うん。なんでも"絶対負けられない"大会何だって言ってたね?」

 

 「次に闘う相手がね、すっごく強い人なんだ。今の僕じゃ、もしかしたら太刀打ち出来ないかもしれない、すっごく強い人」

 

 不安を吐き出しながらゆっくりと目を閉じる鳥羽。

 

 瞼の裏には、今でも九十九の圧倒的なデュエルが焼きついている。

 

 「仙川さんはさ、もし相手が自分よりもよっぽど強い相手だったとしたら、どんな風にデュエルするかな?」

 

 「うーん、そうだね」

 

 菖蒲は小さく微笑むと、鳥羽の手にそっと自分の手を重ね優しく語りかける。

 

 「大切なのは、相手がどんな人であろうと楽しんでデュエマをする事だよ。自分にとって、最も楽しいと思うデュエマを貫く事が出来れば、きっとカード達は応えてくれるから」

 

 「...そうだよね。ありがとう」

 

 菖蒲の言葉を受け、気が晴れたように立ち上がる鳥羽。

 

 その表情に、もう弱々しさはない。

 

 「本当は、私に聞いたりしなくても答えはもう出てたんじゃないかな?」

 

 「うん。同じような事、他の誰かさんにも言われたしね。...ただ、戦う前に仙川さんにあっておきたかったんだ」

 

 「ふふっ。意外と甘えたさんなんだね?」

 

 「そ、そんなんじゃないよ...っ!」 

 

 「ふふ...、あはははっ!照れてるの?」

 

 「もう、ちがうってば!!」

 

 

 『さーあさあさあ!!やって参りました!!《ランド大陸王位争奪戦》第三回戦っ!!今回もとびきりの実況をお届けするのはこの俺っ!!DJ ショーだ!よろしくなっ!!それではっ!本日の対戦カードを紹介するぞ〜!!!』

 

 轟く歓声と凄まじい熱気が木霊する王位戦会場。

 

 今日も今日とて、陽気な実況が観客わ盛り上げる。

 

 『青コー↑ナー↓!!究極に九極を極めし究極の男っ!!そのあまりの気迫はもはや測定不能っ!!《999999999(カウンター・ストップ)》!!九重九十九選手ーー!!!』

 

 入場口にスポットライトが当たり、堂々たる態度で会場に躍り出る九十九。

 

 「いよいよ貴様との対決だなっ!!心躍るぞっ!!鳥羽革っ!!」

 

 続いて、反対の入場口にスポットライトが当たる。

 

 『赤~コー↑ナー↓!!一回戦、二回戦と奇跡の逆転劇を披露した今大会屈指のダークホース!!期待してるぜ《小心の革命児(チキンハート・レボリューション)》!!鳥羽 革 選手ーーっ!!!!』

 

 一件頼りなさげにも見える足取りで、鳥羽がゆっくりと現われる。

 

 「ひぃっ!?やっぱり何度来ても、この観客の量はキンチョーするなぁ...」

 

 「はっはっはっ!!いちいち締まらんやつだなっ!!そんなメンタルで大丈夫かっ!!?」

 

 「うう...。だ、大丈夫、ですよ」

 

 弱々しくもブレない視線。

 

 真っ直ぐに九十九に向き合い、答える。

 

 「僕はただ、楽しんでデュエルするだけですから!」

 

 「その意義やよしっ!!貴様の"信念"の程、試させてもらうぞっ!!」

 

 『おぉ!!両者とも、気合いは充分のようだねっ!!それでは早速、飛ばして行くぞおっ!!』

 

 相対する二人が、互いの信念をかけてぶつかり合う。

 

 そして、開戦のゴングが鳴った。

  

 「「デュエマ・スタートォっ!!!!」」

 

 

 

 

〜つづく〜




そうこうしている間に勝太編終わってしまいましたね。
次が楽しみですがそれ以上に寂しくもあります...。

この場を借りて、愛すべき我らがぐう畜主人公 切札勝太に!敬礼!(`; ω;´)ゝ
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