チキンハート・レボリューション   作:モクロウ

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VS.九極侵略

 

 「...なるほど、私がいない学校での間に、そのような事があったんですね」

 

 「そそそ。聞くも涙、語るも涙の恋物語やったやろ?」

 

 熱狂渦巻く《王位戦》会場。

 

 開戦と同時に大いな盛り上がりを見せる観客席の一角に、久郎と泉美の姿があった。

 

 「...最終的には別に結ばれてないじゃないですか...。大体、他人の恋愛事情なんて興味ありません」

 

 「なんやツレへん奴やなぁ...」

 

 久朗の問に素っ気なく答える泉美。どうやら少々ご機嫌ナナメなようだ。

 

 「さてはお前、蚊帳の外にされて拗ねてるんやろ!あら〜、ごめんあそばせ?俺に免じて許したってぇや〜?」

 

 「...別に拗ねてなどいません。...が、腹が立ったので一発殴らせてください」

 

 「ぐっほぉっ!?もう殴っとるやんけぇ......!」

 

 煽ってくる久朗の態度が尺に触ったのか、泉美の抉るようなボディが久朗に炸裂。

 

 うめき声を上げながらその場に撃沈する久朗を捨て置き、会場の鳥羽へと視線を移す。

 

 「...相手は侵略使い。強敵ではありますが、大丈夫です。...私たち二人で考えたデッキなら、きっと勝てますよ。アラタさん」

 

 

 「俺のっ!!ターンっ!!マナを溜め、何もしないっ!!」

 

 先攻二ターン目。マナチャージのみでターンを終え、鳥羽に移る。

 

 「マナをチャージ。...二マナで《斬斬人形 コダマンマ》を召喚するよ!」

 

 『おおっーと、これは!?鳥羽選手、今大会では初めて見せるカードですね!』

 

 鳥羽の召喚に応じ現れたのは、赤い体色のヌイグルミの様なクリーチャーだ。

 

 顔の半分を占めるほどの大きな口と、目を持たない面持ちがなんとも不気味でもある。

 

 「泉美ちゃんに貰った、エイリアンのカード、僕の新しいトモダチだよ。行くよ、コダマンマ!」

 

 「んまっ!」

  

 「コダマンマの出た時の能力で、シールドを一枚手札に戻すよ!」

 

 鳥羽の宣言と同時に自軍のシールドにかぶりつくコダマンマ。

 

 あれよあれよという間に、シールドを一枚食べ尽くしてしまった。

 

 『ななな!?』

 

 「んまんまっ♪...げぷっ」

 

 「わっ!きったないなぁもう...。タ、ターンエンド!」

 

 『おやおや、もう食べきってしまいましたねぇ。シールドって、そんなの美味しいのでしょうか。...ごくり。...いやいやしかし、鳥羽選手自らシールドを削るとはこれまた一体!?』

 

 「どういうつもりかは知らんが、遠慮なくやらせてもらうぞっ!!《コアクアンのおつかい》発動っ!!」

 

 「...!水文明のカード...!」

 

 続く九十九のターン。繰り出したのは、先日のデュエルでは使っていなかった水文明のカードだ。

 

 「山札の上三枚を公開し、光、闇のカードを手札に加えるっ!!三枚とも光だーーっ!!」

 

 『九十九選手!得意のドロー戦術で手札を大量確保!順当に準備を進めています!』

 

 「(九重先輩、順調そうだ。...よおし、僕だって!)」

 

 ターンは鳥羽に移り、一マナチャージ。

 

 「...マナをためて召喚、おいで!《百鬼ギャラガ》!」

 

 「またエイリアンかっ!!」

 

 『鳥羽選手!またまた初登場のカード!!前回までとは大幅にデッキを変えてきた様ですね...!』

 

 「お得意のファイアーバードやドラッケンは使わないのかっ?」

 

 「"ドラッケン"は使いますよ。...でも、前までとは少し違います」

 

 「なるほどっ!!その言葉、コケオドシで出なければいいのだがなっ!!」

  

 「僕はこれでターンエンドです。手札を与えたくないし、アタックはしません」

 

 九十九のターン。

 

 一見、クリーチャーを並べているだけのようにも見えるが、鳥羽の様子から何かの企みを察知する九十九。

 

 「よかろうっ!!」

 

 それでも尚、それを真正面から受けて立つように胸を張る九十九。

 

 「どんな策を弄そうと、俺のやる事は変わらんっ!!呪文、《スパーク・チャージャー》っ!!コダマンマをタップし、一枚ドローっ!!その後、これをマナに置くっ!!ターンエンドっ!!」

 

 「...ギャラガの能力で、ターンの始めにシールドを一枚手札に!」

 

 『鳥羽選手!また自らシールドを削った!?』

 

 「一枚引いてマナチャージ!おいで!《燃えるメラッチ》!」

 

 「応っ!出陣だッチ!!」

 

 続く鳥羽のターン。場に飛び出したのは、ドギラゴンの仮の姿、《燃えるメラッチ》だ。

 

 『鳥羽選手!ここに来て得意のファイアーバードを繰り出した!しかし盤面は今までの彼とはまるで違う!一体何をするつもりなんだ!?』

 

 「しかぁしっ!!少し遅かったようだなっ!!」

 

 先に動いたのは九十九だった。マナを溜め手札から一枚の呪文を繰り出す。

 

 「呪文!《ヘブンズ・ゲート》っ!!手札から光の進化ではないブロッカーを二体場に出すっ!!」

 

 九十九の頭上から神々しい光を放つ門が現れる。

 

 「何が出て来るんだっ!?」

 

 驚いていたのも束の間、眩い閃光を放ち二体のクリーチャーがバトルゾーンに躍り出る。

 

 「行けいっ!!《究極の精霊 マウリエル》っ!!それも二体だっ!!」

 

 「「チュッチュ〜っ!!」」

 

 意外や意外、厳かな天門を潜って現れたのは、マスコットの様に愛らしい二体のネズミ(の様な何か)。

 

 楽しそうに腕を組みながら、その場でクルクルと回ってじゃれあっている。

 

 「モフモフ!まさにモフモフ天国だっ!!天国(ヘブン)はここにあったんだっ!!」

 

 『たわけたこと言ってないで集中しろッチ!!』

 

 「ご、ごめん...」

 

 思わずもふリストとして覚醒し始めるところを、バトルゾーンのメラッチの叱責を受け我に返る。

 

 愛らしい容姿をしているが、パワー一万越えの大型ブロッカーが二体。少しの油断も許されない状況だ。

 

 「無論、こいつらもただデカイだけではないっ!!マウリエルがいる間、貴様のクリーチャーのブレイク枚数をひとつ下げることが出来るっ!!」

 

 「でも僕の今のクリーチャーはどれもWブレイカーは持ってないけど...」

 

 「誤解のない様に言っておくと、このマウリエルにブレイク数を下げられた時、0以下にもなり得るっ!!つまりっ!!貴様の攻撃はWブレイカー以下はシールドに触れる事すら出来ないという事だっ!!」

 

 「えっ!?」

 

 二体のマウリエルが互いの大槌を交差させ行く手を阻む様に立ち塞がる。

 

 そのプレッシャーから、鳥羽の場にいる三体も怯んでしまって力を発揮できない。

 

 「いくらドラッケンで援軍のドラゴンを増やそうが、攻撃が通らなければ意味はあるまいっ!!さぁっ!!この究極的戦況っ!!貴様に覆せるかっ!!」

 

 「.........」

 

 立ちはだかる巨大なブロッカー、更に、中途半端な攻撃では触れる事すら許されないこの状況。

 

 目を伏せ静かに瞑目する。

 

 『おやおや鳥羽選手、顔を伏せてしまった!怒涛の快進撃も、ここでストップかぁ!?』

 

 「おいおい泉美!大丈夫なんかいなこれっ!」

 

 観客席から見守っていた久朗にも動揺が走る。

 

 しかし、隣に座る泉美は、至って冷静な面持ちで鳥羽を見つめていた。

 

 「...大丈夫ですよ」

 

 狼狽える久朗を窘めるように、力強く、そして信頼に満ちた眼差しで。

 

 「そうだね。確にこの状況じゃ、いくら強力なドラゴンを呼んでも、どうにもならないかも」

 

 伏せていた目をゆっくりと開き、傾いていた顔を上げる。

 

 その戦力差に、彼の表情は曇りきっている、と思われた。

 

 「ちょっと前の僕なら」

 

 「っ!!?」

 

 否、顔を上げた彼の表情は力強く、そして笑っていた。瞳は真っ直ぐに九十九を捉えて離さない。

 

 「よおし!ギャラガの能力でシールドを一枚手札に!これでシールドは残り二枚!」

 

 「またシールドを...っ!!?」

 

 「いくよみんな!進化だっ!!」

 

 マナを一枚チャージし、手札から一枚のカードを抜き出し、フィールドに投げ入れる。

 

 「第一陣っ!!メラッチの効果でコストを二下げて、コダマンマを進化!」

 

 「んままーっ!!」

 

 投げ入れたカードにコダマンマがかぶりつくと、突如爆炎がコダマンマを包み込む。

 

 すると、けたたましいガトリングの発砲音を撒き散らしながら、炎を弾き一体の激龍がバトルゾーンに躍り出た。

 

 「《革命龍 アサルト》!出陣だ!」

 

 全体的に機械的なデザイン。

 

 背中にある大きなプロペラや、搭載された大きなガトリングから、強襲用の戦闘ヘリを思わせる。

 

 「OKボス。イツデモ行ケマス」

 

 「アサルトの効果発動っ!!出た時、山札から進化革命軍を一体手札に呼び込む!」

 

 アサルトのプロペラが巻き起こす強風が鳥羽のデッキを吹き飛ばした。

 

 空中に舞う大量のカード。その中から、アサルトの放つ弾丸がたった一枚のカードを撃ち抜く。

 

 「手札に加え、そのまま"一マナ"で進化っ!!第二陣の《革命龍 アサルト》っ!!」

 

 「なにっ!!?」

 

 アサルトから受け取ったカードを、今度はギャラガへとパスする。

 

 受け取ったギャラガを進化の輝きが包み、二体目のアサルトへと姿を変える。

 

 「アサルトの革命能力さ!シールドが二枚以下の時、進化革命軍のコストを三下げてくれる!」

 

 「ひたすらシールドを削り続けていたのもその為だったという事かっ!!なるほど恐れ入ったっ!!しかしどうするっ!!?」

 

 鳥羽の展開する進化の連鎖を前にしても、九十九の毅然とした態度は変わらない。

 

 バトルゾーンにいる二体のマウリエルをと共に、試す様に問う。

 

 「言ったはずだっ!!俺の場には二体のマウリエルがいるっ!!Wブレイク以下の攻撃は通らん!!この壁は突破出来んぞっ!!」

 

 「そんな壁、ぶっ飛ばしてやるさ!この一枚で!」

 

 二体目のアサルトが呼び込んだカードが、鳥羽の手へと渡る。

 

 「アサルト達の効果でコストを六下げ、進化だっ!!」

 

 『待っっっってましたぁぁぁぁぁっ!!!!』

 

 突如、バトルゾーンのメラッチを燃え盛る業火が包み込んだ。

 

 炎を纏ったまま頭上に飛び立つと、炎の勢いは最高潮に達する。

 

 すると、会場全体をチリチリと焦がす様な猛烈な高熱が覆った。

 

 『ぬわぁあああ!!なんという熱量!一体何が起こっているんだぁっ!!?』

 

 「さあ燃え上がれ!行く手を阻む困難も、爆ぜるハートで打ち砕け!!」

 

 凄まじい熱量を放つと、天上で煌めき、爆ぜた。

 

恐怖も、絶望すらもバネにして、立ち塞がる全てを吹き飛ばさんとばかりに。

 

 「ドカンと起こすぜ!超絶ビッグな大革命っ!!」

 

 「「《爆ぜる革命 ドラッケンA》っっ!!!」」

 

 今、友を救わんとする熱い信念が、臆病者に勇気の革命を巻き起こす。

 

 

 『出たぁぁぁっ!!鳥羽選手の切り札、ドラッケン!しかし、今までとは少し違う様です!』

 

 「それが貴様の新しい切り札かっ!!」

 

 「はい!行くよドラッケン!」

 

 ドラッケンがバトルゾーンに登場すると同時に、ドラッケンの頭上に革命軍のシンボルが浮かび上がった。

 

 「なにっ!!?」

 

 直後、ドラッケンの構える砲台に凄まじいエネルギーが収束。

 

 地につけた四足に力を込め、銃口をマウリエルへと向ける。

 

 「この一撃は覚悟の一撃よ!仲間に頼るだけじゃねぇ!!自分自身の力で道を切り開くっていう、俺様とアラタの二人の覚悟!!」

 

 「ドラッケンAの革命2発動!相手のパワー13000以下のクリーチャーを、全部破壊だぁぁぁ!」 

 

 直後、視界が真っ赤に染まり、極熱の爆発が放たれた。

 

 「ぶっ飛びやがれぇぇ!!」

 

 「「チュッチュチュ〜!!!」」

 

 ドラッケンの一撃により、二体のマウリエルはあえなく墓地に葬られる。

 

 九十九を守る壁は、完全に崩壊した。

 

 「ぐぅ...っ!!?」

 

 『なんという事でしょうっ!!九十九選手の圧倒的有利にも見えた戦況が、あっという間に覆された!これが《小心の革命児》、鳥羽選手の実力か!!』

 

 「まだまだぁ!アサルトでシールドをWブレイク!」

 

 一体目のアサルトの放つじゅうだんが九十九のシールドを打ち砕く。シールドトリガーはない。

 

 「ドラッケンAで、残りの三枚も全部ブレイクだ!」

 

 「くらいやがれクソ熱血野郎!!」

 

 ドラッケンの砲台から放たれた火球が九十九を守るシールドをひとつ残らず吹き飛ばした。

 

 「二体目のアサルトで、止めぇ!!」

 

 怒涛の連撃に、観客一同が会場を揺るがす歓声を撒き散らす。

 

 無防備を晒す九十九に、アサルトの攻撃が襲いかかる、...かのように見えたが。

 

 「ーーアホか。あの究極野郎相手に、そんな上手く行く訳ないやろ」

 

 ただ一人、そんな戦況を静かに見守っていた者がいた。

 

 鳥羽と動揺、九十九のデュエルを間近で見て知っていた者、久朗だ。

 

 「あいつのデュエルで本当に恐ろしいんは、むしろこっからやろ...!」

 

 直後、砕かれた最後のシールドが強い輝きを放つ。

 

 『ななな、なんだぁぁぁ!!?眩しい!眩しすぎて何も見えない!!』

 

 目を開ける事すら敵わない程の強い閃光がアサルトを襲う。

 

 勢いを消失したアサルトは、その場で地面へと落下してしまった。

 

 「シールドトリガー《究極ゲート》っ!!アサルトをタップするっ!!」

 

 「...しまった!?」

 

 「素晴らしい猛攻だったぞ鳥羽革っ!!貴様の信念、震えるほどに感じるぞっ!!...しかし言った筈だっ!!」

 

 展開された《究極ゲート》が開き、バトルゾーンに現れたのは、九十九の相棒、《七極 Di》。

 

 「俺のこの信念っ!!全ての者達を救いたい思う俺のこの信念はっ!!何人も止めることは出来んのだっ!!!!」

 

 『九十九選手!!土壇場でシールドトリガー発動ー!!まさかまさかの逆転返しだーーっ!!これは益々先が解らなくなってきたぞー!!』

 

 「手札のコスト九のカードの数だけコストを下げるっ!!進化だ、《七極 Gio》っ!!」

 

 「チュチュ〜...、...はぁぁっ!!」

 

 九十九が繰り出したカードによって、天使へと姿を変える。

 

 愛らしかった先ほどとは打って変わって、厳格な声色で語りかける。

 

 「...九十九は、私のパートナーは、あんな性格をしているはいるが、人を救いたいという意思は本物。救われぬ者達の為に力を振るい、自分の全てを投げ打てる、ある種、天使の様な人間さ」

 

 手に持つ大槌を振るい、鳥羽へと飛びかかる。

 

 「そんな彼を超えるに相応しい存在か、見極めさせてもらおう!」

 

 神々しい光を纏い、天空へと舞い雲を突き抜ける。

 

 「侵略っ!!発動っ!!」

 

 九十九の叫びと共に、遥か天上で激しい光が降り注ぐ。

 

 全てを包む様に優しく、そして全てをかき消す程に恐ろしく。

 

 "神"の域へと極まりし究極の存在が、バトルゾーンに降臨する。

 

 「「《極まる侵略 G.O.D》っ!!」」

 

 

 

 

〜つづく〜




イズミンわーい!
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