チキンハート・レボリューション   作:モクロウ

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ルビの振り方わかんねぇ。


VS.青赤墓地ソⅡ

「.........」

 

都内のとある病室。

長く、艶やかな髪を一つに束ねた、凛々しさと優しさを併せ持ったような少女が一人。仙川 菖蒲だ。

時間は夕暮れ時。ベッド横の机にカードを並べ、愛おしそうに眺めていた。

 

「何やってんの?ねーちゃん?」

 

そんな彼女の元に現れたのは、同じ病院の入院患者、アツシだ。

 

「またデッキ作ってんの?」

「ううん。ただ、デッキのカード達を並べて、なんとなく見てただけ。...なんだかこうしていると、カードの声が聞こえてきそうじゃない?」

「...ねーちゃんって結構ロマンチストだよな...」

 

アツシはそう言って、彼女のカードを一枚拾い上げる。

 

「ほんと好きだよな。《ボルシャック・ドラゴン》。こんな準バニラ同然のクリーチャー、まだデッキに入れてるのなんてねーちゃんぐらいだぜ?」

「...大切なカードなの。とても大切な、思い出のね。...流石に大会の時は、外しちゃうんだけど」

 

拾い上げたカードを元の位置に戻すアツシ。

そこで、ふと思い出したように、仙川に質問する。

 

「それよりさ、ほんとにあげちゃってよかったの?あのデッキ」

「うん。前にも言ったけど、次の大会はもう出られそうにないし、何よりあの子が、デュエマに興味深々だったから。きっかけを、作ってあげたいなって思って」

「いや、それもそうだけど、”あのデッキ”でよかったのかって事だよ。だってその次の大会ってたしか、革命編ブロックの.........」

 

アツシがそこまで言ったところで、廊下から騒がしいやり取りが聞こえてきた。

 

「街中で前触れなく倒れ込んだようです。傍目には、眠っているようにしか見えませんが...」

「とにかく、しばらく絶対安静だ。空いている病室で寝かせて様子を見よう」

 

仙川が入っている病室の外を、数人の医者に囲まれた担架が駆け足に過ぎ去っていった。

 

「.........」

「どうしたの?ねーちゃん?」

「今運ばれて来た人って、まさか...」

 

 

「...次の僕のターンで、あなたは終わりだ!」

 

『なんとなんと!!鳥羽選手、ここでまさかの勝利宣言返しだぁーーっ!!』

 

鳥羽の勝利宣言に、実況が、観客が、大きく沸き立つ。

一方、当の宣言を受けた対戦相手の十文字は、内心腸が煮えくり返る思いであった。

 

「あまり調子に乗るなよ...!!」

 

大口を叩いたにも関わらず、敗北を防がれ、今は逆に宣言し返される始末。

気に入らないのは当たり前だろう。

 

「使えるマナもたった5枚!場にいるのも、出ちまえばクソの役にも立たない鳥公一匹!何が出来るってんだっ!!」

「...あなたに勝つことが出来ます」

「図に乗るなクソガキがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

格下に見ていた鳥羽の毅然とした態度に、十文字は怒りの声を上げた。

 

『おい』

 

今まさにドローせんとする鳥羽に、”声”が話しかけてきた。

 

『えらくカッコイイ事言うじゃねぇかよ!...で、どんな秘策があるんだ?』

「...ううん。正直、今の手札じゃ、どのみち勝てないんだ…」

『でええぇ!!?あれだけカッコつけといてそりゃねぇだろ!?どうすんだよ!』

「ど、どうしよう...」

『しかもノープランンンン!?』

 

まさかの爆弾発言に、激しく動揺する”声”。

 

「...でもね。昔、大好きだったおじいちゃんが言ってたんだ。”流れがこっちに来てる時は、一見不利に見えても、不思議と負ける気がしないもんだ”って」

 

そっと、山札の一番上のカードに指をかける。

 

「……不思議だよね」

 

そして、迷いなく、勢いよく、カードを引いた。

 

「なんだか僕、まったく負ける気がしないんだ!!」

 

鳥羽が捲ったそのカードはーー

 

『お前って奴は~~…!』

 

文字通り、彼の”切り札”だった。

 

『まじでサイッコーだッチ!!』

 

鳥羽にターンが移行し、マナをチャージする。

これで、使えるマナは5マナ。

 

「来て!!《ラブ・ドラッチ》!!」

 

鳥羽のかざしたカードから現れたのは、1匹のファイアー・バード。

ゴーグルにサイリウム、『DR♡GON』と書かれたハチマキと、なんとも珍妙な姿をした鳥だった。

 

「よぉ相棒!やっと会えたッチ!!」

「...ねぇ、なんかさっきまでと口調変わってない?声も高くなってない?」

「え!?それはほら...、ネタバレ防止だッチ...」

「ええぇぇぇぇ......」

「うるせーッチ!口調変えて喋んの大変だったんだぞッチ!!ちょっとはねぎらえッチ!!」

「めっちゃチッチ言うね...」

 

ゲーム中にも関わらずてんやわんやしている鳥羽とドラッチ。

さらに、鳥羽はマナを2枚タップする。

 

「残った2マナで《ラブ・ドラッチ》をもう一体!!」

 

鳥羽のバトルゾーンには、2体の《ラブ・ドラッチ》に、《ピアラ・ハート》1体。

そして、残ったマナは1マナ。

 

「な...!?」

「《ラブ・ドラッチ》は場にいる自分のファイアーバードの数だけ、進化革命軍のコストを下げられるんだ!」

 

残り1マナをタップし、”重ねる”。

 

「《ラブ・ドラッチ》を進化!!」

 

直後、一匹の炎鳥が全身に爆炎を纏い、天高く舞い上がる。

 

「ドゥオラァァァァァァァッッ!!!!」

 

燃え盛る炎の中、木霊する激しいシャウト。

瞬く星の如く爆発する炎から一対の光剣を振りかざし、その真の姿を現す。

 

「これが!”俺様”の真の姿っ!!」

 

「「《革命龍 ドラッケン》ッ!!!!」」

 

「さぁ...。一生一台の大博打だ...!」

 

 

「...ふんっ」

 

自身の切り札を呼び寄せ、勢い付く鳥羽に対し、対戦相手の十文字は再び余裕を取り戻していた。

 

「何をしてくるかと思えば...、タダの運ゲーカードかよ!ビビらせやがって!」

 

しかし、そんな十文字に対しても、鳥羽の態度は変わらない。

 

「まずは、《ドラッケン》で、シールドをW・ブレイク!!」

 

攻撃を宣言し、《ドラッケン》をタップする。

 

「っしゃあ!こっからが本領発揮だぜ!!」

 

ここぞとばかりに意気込み、敵陣に突っ込むドラッケン。

両手に携えた光剣を振りかざし、彼はーー

 

「せいせいせいせいせいせいせいィィ!!!」

 

踊った。

 

「ざっけんなーーーーッ!!!」

 

十文字はキレた。

 

「...ふざけてないよ(多分)。《ドラッケン》の舞は、新たな龍を呼ぶんだ!」

 

ドラッケンの激しく熱かりし舞(?)が巻き起こす爆風が、山札の上2枚を飛ばす。

 

「革命2 発動!山札の上2枚を捲り、火のドラゴンがあれば場に出せる!」

 

鳥羽が捲ったカードはーー

 

「……!」

「...《ゴーゴー・ジゴッチ》に《燃えるメラッチ》...!?ギャハハハハァ!!この場に来て運に見放されたみてぇだなぁ!!」

 

カードは2枚ともファイアーバード。能力は不発に終わり、山札の底に送られる。

 

「まだだ!《ドラッケン》のもう一つの能力!山札の上1枚を捲り、火のドラゴンなら場に出せる!!」

 

しかし、決して諦めることなくカードを捲る。

 

「(助けるんだ...!僕を救ってくれた彼女を、今度は、僕が...!)」

 

最後の最後まで、勝利を信じて。

 

「絶対!絶対に!!助けるんだぁぁぁ!!!」

 

直後、眩い青の閃光が、会場内を激しく照らす。

 

「行っけぇえええええ!!!《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》ッ!!!」

 

圧倒的なまでの威圧感を放ち、最凶の龍がバトルゾーンを蹂躙する。

 

 

「な...なんだとぉ!!?」

 

《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》。

その強力無比なまでの圧倒的力で、つい昨年まで使用する事自体を禁止されていた殿堂入りカード。

デッキに1枚しか入れる事を許されない切り札中の切り札が、このタイミングで現れる。

目の前の信じられない状況に、十文字は思わず我が目を疑った。

 

『なんと!なんと!!なんとぉ!!!ここで鳥羽選手、《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》を引いたーーっ!!なんという奇跡!!なんという豪運の持ち主なんだ鳥羽選手ーー!!』

 

逆転に次ぐ逆転、奇跡に次ぐ奇跡の展開に、観客は最高頂に盛り上がる。

 

「ドォラァァ!!シールド2枚!頂きだぜぇ!!」

 

《ドラッケン》の攻撃で、十文字のシールドが2枚ブレイクされる。

 

「トリガーは...、トリガーは......っ!!??」

 

現実は非情である。

 

「チキショーーッ!!」

「《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》で、シールドをT・ブレイク!!」

 

《サファイア》の放つ、青く、美しいまでに理不尽な炎が、十文字のシールドを、S・トリガーごと焼き尽くす。

 

「(...デッキレシピに、戦術、文明、...間違いねぇ!!あのデッキ...!!)」

 

「《ピアラ・ハート》でーー」

 

「革命編限定構築だと!?ふざけやがって!!」

 

「とどめぇっ!!!」

 

《ピアラ・ハート》の嘴が、十文字の屈強な身体を吹き飛ばした。

 

『決まったぁぁぁ!!!まさかの大番狂わせ!一回戦50試合目を制したのは、鳥羽 革選手だぁーーっ!!』

 

「……っしゃぁああ!!!」

 

直後、ゲームの終了を告げるブザーが鳴り響いた。

 

 

「やったじゃねぇかッチ!相棒!」

 

赤い龍人の姿から再び小鳥の姿に戻ったドラッチ。

他のクリーチャーがゲーム終了後に姿を消して行くなか、ドラッチだけは鳥羽の元に残り、こちらに話しかけてきた。

 

「正直最初にオイラの持ち主が変わっちまった時はどうなるかと思ったッチけど、やはりオイラの目に狂いはなかったッチ!」

「...そ、それはどういたしまして。......って!なんでクリーチャーが喋ってるのー!ていうかココドコー!?周り人間ほとんどいないよー!!?」

「えぇ!?今更かッチ!!?」

 

必死の思いでデュエマをしていたということもあり、現在自分が置かれているあまりにもおかしな状況を、改めて認識する。

 

「見ての通り、お前は一回戦に勝ったんだッチ。この調子で優勝すれば、晴れて『王様』になれるんだッチ」

「『王様』...?どういう事?仙川さんの病気を治してくれるんじゃないの!?『王様』がどうとか言ってるけど、それでどうやって彼女の病気が治るの!?」

「ふふん!それはッチね...」

 

ドラッチか得意気に語り出そうとしたその時、会場全体を、突如鐘の音が鳴り響く。

 

『さぁ!これにて、本日の対戦カードは終了だ!!次のゲームが決まり次第追って連絡するから、各自準備の方、よろしくぅ!!それでは皆さん!また次回〜!!』

 

実況が終了を告げ、観客達も次々と会場を後にする。

そんな様子を見て、ドラッチはふと気づいた様に言った。

 

「お、もうこんな時間かッチ。...続きは”向こう”に戻ってからしてやるッチ。お前、突然倒れた事になってるッチから、早く戻らないと色々めんどくさいッチよ」

「え、でも...。僕の質問は......」

 

不安から焦る鳥羽に対し、ドラッチは毅然とした態度でサムズアップした。

 

「ダイジョーッブ!!オイラを信じろッチ!」

「.........う、うん…!」

 

そんなドラッチを見て、彼を信用しようと一度落ち着きを取り戻す鳥羽。

しかし、ここで一つの疑問が生まれた。

 

「...ところで。どうやったら帰れるの?」

「あぁ、それは...」

 

言いながら、ドラッチは腰に下げたサイリウムを手に取ると...。

 

「.........こうするんだッチィ!!!」

 

全力で鳥羽の頬をぶっ叩いた。

 

 

 

 

「......ぃでえっ!!!?」

 

激しい痛みが走り、一瞬意識が吹っ飛んだと思うと、気が付けば病室にベッドに横たわっていた。

 

「...あれは、夢......じゃない!!ほっぺめっちゃ痛い!!」

 

特に外傷はないが、どういう訳か痛みだけははっきりと残っていた。

痛む頬をさすりながら辺りを見渡すと、日はすっかり暮れていたが、窓の外の風景に見覚えがあった。

 

「あれ...。この病院って......」

「......鳥羽くん?」

 

声の聞こえた先に振り向くと、病室の入口に菖蒲の姿があった。

見覚えがあったのもその筈。ここは菖蒲が入院している病院だったのだ。

 

「あれ...仙川さん。こんばん...」

 

鳥羽が呆けた挨拶を返すより先に、菖蒲がこちらに駆け寄ってきた。

 

「鳥羽くん!よかった...!急に倒れたって聞いて、凄く心配したんだよ...!大丈夫!?どこも痛くない!?」

 

捲し立てる菖蒲に、思わず押されてしまう鳥羽。

よほど心配していたのだろうか。目の下には涙の後が伝っている。

 

「(仙川さん、僕の事心配してくれてたんだ...。ついこの間知り合ったばかりの、こんな僕の事を...)」

 

「.........?鳥羽くん?どうしたの...?」

 

そんな仙川を見て、鳥羽は改めて、己の中に誓うのだった。

目に一杯の涙を溜めて。

 

「大丈夫、大丈夫だよ...!!僕が絶対、君のこと、助けてみせるから...!!」

 

「鳥羽くん!?大丈夫!?どこか痛いの!?」

「えへへ...。そう言えば、ちょっとほっぺが痛いや…」

「先生!先生ぇ!!鳥羽くんが!!鳥羽くんがぁ!!」

「えぇ!?仙川さん、ちょっ、大丈夫だってばぁ!」

 

こうして、一人の臆病な少年の、大切な人を守る為の闘いが始まったのであった。

 

 

 

 

 

〜つづくったらつづく〜

 

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