こっからはペース落ちちゃうかも。
『デュエマ・スタート!!!』
開戦のゴングが鳴り、ふと我に帰る。
目の前にいるのはやはり泉美だ。
現状が受け入れられず我が目を疑うが、やはり紛れもない現実である。
「・・・キミは・・・。泉美ちゃんは知っていたの!?僕が大会に出ている事を!二回戦で、僕と当たる事を!?」
突然の連続で軽くパニクっている鳥羽を他所に、泉美は冷静どころか、普段よりもよほど冷たい表情をしている。
まるで、こうなる事を予期していた様に。
「答える必要はありません。・・・あなたが先攻ですよ。早くしてください」
「くっ・・・!」
取り付く島もない、と言った感じだ。
冷たく、敵意に満ちた視線を向けるその瞳には、会話に応じる気は微塵も感じられない。
「・・・・・・わかったよ」
躊躇いを振切るように、シールドを展開し、手札を五枚引く。
そして、彼女に向き合い、力強く答えた。
「・・・まずは勝つ!勝って、それから話しを聞く!!負けられないのは、僕も同じなんだっ!!」
「・・・そうこなくては。ですね・・・!」
※
1ターン目。
両者共に、マナチャージのみにとどまる。
そして続く鳥羽の2ターン目。
「(泉美ちゃんの置いたマナは・・・、水文明か。まだなんとも言えないな・・・)」
カードをドローし、マナをチャージ。
「・・・《ラブ・ドラッチ》を召喚!!」
「っしゃあ!!今度は事故ってねぇぞッチ!」
先に動いたの鳥羽だった。
マナを二枚タップし、《ラブ・ドラッチ》を召喚する。
「僕はこれでターンエンドだよ」
「・・・私のターン。ドローします」
ターンは泉美に移り、カードを1枚引く。
「・・・マナを一つ貯め、《霞妖精 ジャスミン》を召喚します」
「あれは、自然文明・・・?」
泉美のかざしたカードから、緑色の装いをした小さな妖精が現れる。
「《ジャスミン》の登場時効果で、《ジャスミン》自身を破壊」
しかし、現れた妖精は、音も無く光の中へ消えて行った。
「出したクリーチャーをすぐに破壊しちゃうの?」
「・・・本当に何も知らないんですね。《ジャスミン》は、自らの命をマナへと変えるんです。・・・効果で、山札の一番上のカードをマナへ。これでターンエンドです」
三度、鳥羽のターン。
「ドロー。マナを貯めて、《ゴーゴー・ジゴッチ》を召喚!」
「おまかせあれ!ッチ!」
カードから勢いよく飛び出してきたのは、今朝方知り合った爽やかインテリバード、ジゴッチだ。
すかさず、ジゴッチの効果を発動する。
「《ジゴッチ》の効果で、山札の上五枚を見るよ。・・・よし。《革命龍 ドラッケン》を手札に!!」
『おぉーっと!?あれは、一回戦で鳥羽選手が奇跡の逆転を果たした切り札、《革命龍 ドラッケン》だぁーーっ!!』
「(そして、これで場のファイヤー・バードが2体。前のターンに呼び出した《ドラッチ》の効果で、次のターンには《ドラッケン》に進化出来る。これが、仙川さんに教えて貰ったこのデッキの必勝パターンだ・・・!!)」
「まぁ、ワタクシがこの阿呆めと相性バツグンというのが、いかんせん解せませんがね。ッチ」
「んだとこのガリ勉ヤロー!!表出ろッチ!」
「ちょっと!本番中にケンカしないでよ!?」
絶好のスタートをきり、勢いに乗る鳥羽チーム。
しかし、そんな勢いを阻むように、泉美の冷たい視線が鳥羽を貫いた。
「・・・・・・掛かった」
「・・・えっ」
泉美の3ターン目。マナをチャージし、4マナすべてをタップする。
『ここに来て、温水選手が動いたーーっ!!!』
「呪文、《温泉 湯あたり地獄》。コスト3以下のクリーチャーを、すべて破壊です・・・!」
突如、激しい蒸気を放つ大量の熱湯が、《ドラッチ》と《ジゴッチ》を飲み込んだ。
「うぎゃーーーっ!!!!?」
「ドラッチ!ジゴッチ!」
「当然ですが、私はクリーチャーを出していないので被害はゼロ。序盤に弱いのはコントロールデッキの宿命ですからね。対策して、然るべきです」
泉美がターンエンドを宣告し、鳥羽の4ターン目。
「(ダメだ・・・。《ドラッケン》を出すには、マナも進化元も足りない・・・。取り敢えず・・・)」
手札から一枚マナチャージする。使用可能マナは4枚。
「《コッコ・ルピア》を召喚!・・・ターンエンド」
苦悶の表情を浮べながら、《コッコ・ルピア》を召喚する。
このクリーチャーもまた、ドラゴンの召喚コストを2下げる効果を持っている。
ドラゴンを召喚するチャンスはまだ残っているが・・・。
「(まだだ・・・!まだ・・・)」
続く泉の4ターン目。
「・・・・・・ヌル過ぎます」
マナチャージ、使用可能マナは5枚。
「・・・ヌル過ぎて。・・・湯冷めしちゃいそうですよ」
2ターン目の《ジャスミン》の効果により、鳥羽よりも、マナを一枚アドバンテージを得ている。
5マナをタップし、呪文を発動する。
「呪文、《超次元 ボルシャック・ホール》。パワー3000以下の、《コッコ・ルピア》を破壊です」
「あぁ!くそっ!」
「・・・これだけではありませんよ」
直後、周りの空気に違和感を感じ始める。見ると周囲の空気が泉美の頭上に収束し始めていた。
瞬く稲妻をまき散らしながら、空間に亀裂が入り、そこから風穴が広がっていく。
「うわわわ!?あれ、物理的にどうなってんのぉ!?」
『異世界に来といて今更何言ってんだッチ!』
今は姿が見えないドラッチからツッコミを受けた気がするが、今の鳥羽は吸い込まれないように踏ん張るのが精一杯で相手にしている余裕は無い。
「超次元ゾーンから、コスト7以下のサイキック・クリーチャーを一体場へ・・・!」
次の瞬間、凄まじい蒸気を身にまとい、一体の怪物がバトルゾーンに躍り出る。
「さぁてと・・・。真打ち登場と行こうかねェ」
体中にちりばめられた多くの目玉。胸部にはあらゆるものを食らいつくすと言わんばかりの大きな顎。
可憐で華奢な泉美にはに到底似つかわしくない、そのクリーチャーの名は・・・。
「これが私の切り札、《激沸騰!オンセン・ガロウズ》です・・・っ!!」
※
「あぅ・・・」
泉美の呼び出した切り札の、その禍々しい姿に思わず気圧されてしまう。
バトルゾーンに現れた《オンセン》は、そんな鳥羽を楽しそうに見下ろしながら笑っている。
「おいおい、そんなにビビらなくてもいいだろう?可愛いワンちゃんでも出てくるかと思ったかい?」
「・・・無駄話はよして下さいオンセン。本番中ですよ」
「はいはい。つれないねぇ、嬢ちゃんは」
余裕綽々のオンセンをたしなめる泉美。
ふざけるオンセンとは対照的に、その表情は冷ややかなままだ。
「私はこれでターンエンドです。・・・どうぞ」
「どうぞって言われても・・・。ドロー・・・」
引いたカードを見て愕然とする。そう、手札には召喚出来るクリーチャーも、唱えられる呪文も一枚もない。
「マナを貯めてターンエンド・・・」
「・・・終わりですか?拍子抜けです」
続く泉美のターン。
「せっかく出てきたってのに、破壊するクリーチャーがいないんじゃあお披露目になりゃしないぜ」
「・・・奪うのは、クリーチャーだけではないでしょう」
「ヒャハハ!違いねぇ!やっぱ嬢ちゃん、最高にアツいねぇ・・・!!」
淡々とカードをドローし、マナチャージへと進む。
「《パクリオ》を召喚します」
泉美のカードから出てきたのは、胎児を思わせる頭でっかちなクリーチャーだ。
鍵の様なものを携え、不気味に笑いながらこちらを見つめている。
「・・・《パクリオ》の登場時効果発動」
泉美が能力の発動を宣言した直後、鳥羽の手札が弾かれ、泉美の目の前まで引き寄せられていく。
「な、何を・・・!?」
「・・・《革命龍 ドラッケン》に、・・・なるほど、《デュアル・ショック・ドラゴン》ですか。いいカードですね」
まるで品定めでもするかの様に、鳥羽の手札をじっくりと見回す。
「では、《デュアル・ショック・ドラゴン》にしましょう」
直後、パクリオが持っていた鍵の先から一筋の青白い光が放たれる。
光が当たったカードはみるみる内にシールドへと変わっていき、鳥羽のシールドゾーンへと送られる。
「手札がシールドに!?」
「おっと。坊ちゃん、あまり油断しない方がいいぜぇ?」
次の瞬間、パクリオは蒸気を放つ熱湯の渦に巻き込まれ、バトルゾーンから消滅。
したかと思うと、地面から湧き上がる熱湯から再び姿を表した。
「これこそがオンセンの効果です。自分のターン中に召喚した、火、あるい水のクリーチャーを山札の上に置き、再びバトルゾーンに出す・・・」
「つまり、出た時の効果が二回使えるって訳だ」
「・・・そんな!?」
再び場に現れたパクリオの効果で、鳥羽の最後の手札がシールドゾーンへと送られていく。
「私はこれで、ターンエンド。・・・良かったですね。シールドが、沢山ありますよ」
『・・・なんと、なんということだぁああああ!!鳥羽選手!クリーチャーどころか手札すら失ってしまったぁああああ!!』
「なんとかしなきゃ・・・!なんとか・・・!」
鳥羽のターン。
ドローしたカードは、《メガ・ブレード・ドラゴン》。
召喚するにはコストも足りず、戦況を覆すような決定打にはなり得ない。
「・・・マナを貯めて、終了」
『あぁっと!?鳥羽選手、温水選手の容赦のない妨害に手も足もでない!!これこそが、火の熱さと水の冷たさを併せ持った女!!《
煽る実況に、沸き立つ観客の熱狂。
しかし、負けるかもしれないというプレッシャーで、鳥羽の耳には全く入ってこない。
「(まずい・・・!まずいまずいまずい!!・・・負ける・・・!このままじゃ・・・)」
敗北の二文字が、鳥羽の脳裏をよぎった。
「あああああああああぁぁっ!!!?」
自分の敗北で、菖蒲のあの笑顔が失われる。
堪らなくなって、鳥羽は叫び声を上げた。
「・・・・・・私のターン、マナをチャージ。悪いとは思いますが、そろそろ仕上げに掛かります」
キッと目つきが鋭くなり、泉美は7マナすべてをタップする。
「《激流 アパッチ・リザード》を召喚!」
真っ赤な肌の大男が飛び出して来たかと思うと、その大男の頭上から、また超次元の穴が広がっていく。
「《激天下!シャチホコ・カイザー》を場へ!」
そこから現れたのは、一匹のドラゴン。しかし、その顔には眼がなく、背中が仰け反ったフォルムはどこなく鯱像を連想させる。
「更に、オンセンの効果を発動・・・!アパッチを山札の上に置き、再び場へ・・・!!超次元ゾーンから、《激相撲!ツッパリキシ》を呼びます・・・っ!!」
オンセンの効果により、次々と現れるサイキック・クリーチャー。
今度現れたのは、溶岩のような、文字通り岩肌
の巨人だ。
「ターンエンド。・・・これで、すべて準備が整いました」
『・・・おい!あいつらはやべぇッチ!!どいつでもいい!一体でも除去するんだッチ!!!』
相手のクリーチャーから何かを感じ取ったのか、ドラッチは必死に鳥羽に呼びかける。
「(どうしよう・・・!どうしようどうしようどうしようどうしよう!!!?)」
しかし、極度の緊張状態に陥った鳥羽に、声は届いていなかった。
「く、くそぉ・・・っ!!《ストライク・アメッチ》を召喚!効果でシールド二枚を手札に戻す!!!」
ファイアー・バード炎特有の、戦闘機を模した武装を纏う鳥龍が、バトルゾーンを駆け回る。
その巻き起こす暴風が、先程シールドに封じられた二枚のカードを鳥羽の手元へと吹き飛ばした。
「・・・これでターンエンド・・・っ!」
「・・・残念です」
鳥羽がターンエンドを宣言した次の瞬間、会場全体の空気が張り詰める。
「(なんだ・・・!?何か来る・・・!!)」
鳥羽が違和感を感じ始めた頃には、既に変化が始まっていた。
「いいねぇ・・・!!この感じ、堪んねぇ・・・!!最高に煮えたぎってきたぜぇえええ!!!!」
オンセンと、先程呼び出した二体のサイキック・クリーチャーが禍々しい光に包まれたかと思うと、一箇所へと集まり、光の渦へと溶け込まれていく。
「《
泉美の言葉とともに、激しい光を放ったかと思うと、とてつもない殺気を放ったソレが、バトルゾーンへと這い出てきた。
あまりにも大き過ぎるソレは、会場の天井を突き破り、バトルゾーンに君臨する。
地獄そのものの様な圧倒的なスケールに、鳥羽は死の恐怖すら感じた。
「・・・あ・・・うぁ・・・っ」
「ーー《絶対絶命 ガロウズ・ゴクドラゴン》!!!」
絶対絶命、最凶最悪。地獄のドラゴンが今、咆哮する。
~END~
沸騰コンは、作者も良く使う思い入れのあるデッキですので、描いていてとても楽しかったです(*´ω`*)
鳥羽くんを怯えさせるの超楽しい。