かなり古い作品です。
「現実世界からの、能力ありオリ主」を入れたドラクエ3小説。
寝ていたはずが、いきなり固い床に落ちる。現代社会ではめったにない強い匂いに顔をしかめる。
が彼はある意味慣れている、すぐ周囲を見回す。
「またあいつのいたずらか……今度はどこの世界で冒険させられるんだろうな」と小声で愚図った。
二十歳ほど、上体に脂肪がついているが下半身は鍛えられている。
四畳ほどの狭く天井も低い部屋、寝台といくつかの木箱だけ。彼には全く見覚えがない。
彼は身を起こして軽く全身をたたいた。薄暗い部屋で寝台に手をかざす。約十秒後、音も光もなくかなりの量の荷物が出現した。
パジャマを脱ぎ、清拭タオルで全身を拭い、下着と靴下を二重につけ、デザートパターンの迷彩服を着る。二本の手ぬぐいを出して一つは首に巻きもう一つははちまきにし、軽い合成素材ヘルメットをかぶる。
頑丈な鉄板入り革ブーツをはいて、膝や肘にパッドをつける。
迷彩服の腿や胸も含むポケットに、バンダナ数枚、アルコールウェットティッシュ、メモ用紙と鉛筆、ターボライター、絆創膏や消毒ガーゼ、メタルマッチ、ルーペ、薄いアルミとラップでできたエマージェンシーブランケット、コンパス、ワイヤーソーや針金、マルチビタミンミネラル剤や浄水剤などの小瓶、数メートルだけ平たく巻いたダクトテープ、針と糸・釣り針釣り糸その他、何種類かのビニール袋などをコンパクトに詰めこむ。
スパイダルコのソルト1、錆びず片手で開閉できる波刃ナイフを左ポケットに、クリップで留める。
多数のポウチ類をベストのようなのにまとめた代物を着て頑丈なナイロンベルトを絞める。ベルトには他にも防水布、まとめたロープ、水筒とつけていく。背中には1.5リットルのキャメルバッグ水筒があり、前に回したチューブから水を吸うことができる。ベルトにも約1リットルの水筒がついている。背の水筒にはミネラルウォーターのペットボトルから水を、腰の水筒にはスポーツドリンクを満たし、残りを飲み干して目を向けると、空のペットボトルが消えた。
ポウチの一つには、氷砂糖の小袋と百円ショップの小さなペットボトル入りサラダ油とチーズを入れる。
歩兵装備にはつきものの折りたたみシャベルではなく、固定柄の、小型シャベルと鉈と包丁のあいのこをつける。軽い特殊樹脂製の柄、プラスチック製の、刃を上にベルトに固定できる鞘。
刃渡り7cm程度の、尖った先端とかぎ状の峰でガットフックスキナーと呼ばれるナイフも右腰につけ、板金や針金も切れるハサミをチョッキのポウチにしまう。
ベルト左側にスイスツールをつけ、左肩にも刃渡り16cmほどのナイフを刃を上に固定した。
二つの大型トランクを開き、銃を取り出す。トランク自体は、触れれば消えた。
一つはブルパップ式で全長70cm弱とコンパクトな散弾銃。スリングを右肩にかけ、脇に下げる。
サイガ12、少数生産のセミカスタム。AK機関部で信頼性も高く、ボックスマガジンで再装填も早くフルオート射撃も可能。ダットサイトが上に、頑丈なフラッシュライトが銃身の下に一体化され、合成樹脂や軽合金が多用され弾倉抜きで3kg弱。
もう一つのAK-103を左肩から下げ、ぶらぶらしないようベルトにつけた器具で腰に固定した。名銃AK-47と弾も機構も同じ、合成樹脂で軽量化され銃床を折りたため、サプレッサーが銃声・反動・銃口炎を軽減する。
かなりの数の弾倉に、大量の銃弾を器具を使って装填しては空の缶や箱を消し、弾倉をチョッキのポウチに押しこんでいく。二つの銃に最初の弾倉をはめる。メンテナンスキットを銃床の穴にしまう。
いくつか手榴弾もすぐ出せるようポウチに入れ、皮手袋をつける。分厚く大きな、使い込まれた革ポンチョを全身にまきつけるようにし、軽く紐をしばってフードをかぶると、それは奇妙に太って見えるが変哲のない旅人だった。
肩に少し届かない長さの、太い木の杖を手に部屋を出る。非合法武装を咎められることがなく、仕込み杖だと解釈されるためなめられない。
ドアを開けると、そこには剣や槍を持ち鎧を着た人や、杖と複雑な服を着た人などが何人かたむろしていた。
「ここは?」
彼……瓜生がそっと聞く。
「ルイーダの酒場さ。冒険者の集まる」
言葉は通じる。
異世界に呼ばれる運命の、三つのサービス。言葉、故郷の商品・軍品なら何でも「出」せる、病気に感染しないさせない。
「なら仕事にはありつけそうだな。ありがとうよ」瓜生はそう言って、(聞いたことがあるような……忘れさせられてるようだな)と苦笑しながらカウンターに向かった。ゲームや小説の世界に放り込まれるとき、その作品についての知識だけはきれいに忘れさせられるのだ。
片目と片足のない、ただし昔は相当強かったと思える老いた男がぐっと見上げる。
「冒険者かい?今ちょうど仲間を集めてるやつがいるんだ。いや、先に登録してもらおうかい」
「助かるよ。瓜生」
「ウ……リエル?職業は?」
瓜生はちらりとその手元のリストを見て、少し考えてから、
「一応戦士だ。地図作りや医者も少しならできる」
軽い罪悪感がある。彼の生まれた世界では、無資格での地図作りや医療行為は重罪だ。
だが、近代以前の世界でなら、他学部受講で建築学部の講義を聞いたり、図書館で医学書を何十冊か借りて読み問題演習もこなしているだけの彼でも嘘とはいえないだろう。
実際、以前の冒険では気球からの空撮写真とレーザーレンジファインダーなどでサソリ沼の地図を作ったこともあり、また衛生・栄養指導や簡単な手術で多くの人命を救っているのだから。
「そうかい、地図とかはないねえ。済んだよ、仕事があるだろうから」と、親指で階段の下を指す。
階下は雑然とした、酒と香辛料、魚醤と香油の匂いが濃く漂う酒場だった。古びてはいるが全体に清潔で、ネズミや虫は見られない。
ゆでた豆と穀物と魚のスープの大鍋が真ん中に沸いており、それを客が好きによそっていく。何人かは魚の塩焼きにかぶりついていた。
客がジョッキを傾けると、ひげにエールの泡がつく。
吟遊詩人のギターに似た楽器が単調に響き、客の一人が机を叩いて調子を合わせている。
奥と入り口、二つのカウンターがある。奥のカウンターに顔を出すと、小学校の頃にPTAで見るぐらいの、崩れかけだがそれが美しい女が彼に話しかけた。
「ここはルイーダの店。旅人たちが仲間を求めて集まる、出会いと別れの酒場よ。何をお望みかしら?」
しなは含まれておらず、かすかに酒と香料が匂う。
「仕事」彼はそれだけ言う。
「そう、おーい!四人目だよ、戦士だってさ。でもどっからきたのかわからないけどね。オルテガの坊や!」
そう呼ばれた先に、一人の……子供が立っていた。使い込まれた、体に比べ大きすぎる頑丈な革鎧。幼さを無理に殺した、はっとするほどの美しさ。
眼光は強烈で、瓜生は一瞬圧されるのを感じるが、ぐっとこらえる。
「勇者オルテガの」
「本当の名前はミカエラだけど、ミカエルって呼んでやんな。男として育てられたんだ」ルイーダが口を挟むのに、
「ルイーダ!」その子が壁を叩く。
「仲間にするんなら、隠し事は禁物だよ。いざというときにそれが命に関わる」
「ああ……あんたは、戦士には見えないな、鎧も着ていないし」
彼女の目線がさらに鋭さを増す。
そこに、店の奥から声。
「四人そろったんですか?やっと出発できるんでしょうか」
「なんか変な感じね、太ってるし」
鉄帯を鉄輪で留めた木の棒を杖がわりにしただぶだぶ僧服の男の子と、奇妙な杖を持つ三十がらみの美女。
「ああ、こいつが戦士ならな」ミカエルがそちらを向く。
「この二人も仲間なのか、紹介してくれるか?」瓜生が聞く。
「ガブリエラとラファエル。魔法使いと僧侶だ」
「瓜生、ウリエルってこっちじゃ発音するか?戦士だ……率直に言えば、異界から来た」
三人が少し目を見開く。
「ルイーダさんのお言葉だからな。まあこんなものがある世界だよ」と、瓜生は言ってポケットから氷砂糖の小袋を出し、数個ずつそれぞれの手に押しつけた。「そうそう、あと……これでわかるやつがいれば。角の三等分・立方体の体積を二倍・円と同じ面積の正方形を作図することは不可能だととっくに証明されてるし、345直角三角形みたいなのを、立方以上でできる整数三つの組みは存在しないと最近証明したやつがいるって」
一瞬ガブリエラの目が大きく見開かれるが、何も言わない。
「食べてみろよ」まず瓜生自身が食べる。
怪しんだように、三人が口に入れ……なんともいえない表情がたまらない幸福感になる。
「甘いです……固まった蜂蜜みたい」とラファエル。
「ううん、北に樹液を固めた甘いものがあって、一度修行中に食べたことがあるけど」とガブリエラ。
「なんだよ、これ」ミカエルがつぶやく。
「この世界は初めてなんだ、みんなのうまい物を少しずつ教えてくれ。あと、もし仲間にしてくれるなら」少し寂しげになる。「攻撃してくる敵は殺す。だが非戦闘員の虐殺・拷問・強姦は絶対にお断りだ」そのときだけ、目が少し強まる。
「当たり前だ、そんなことをする勇者なんていない!」ミカエルが低く怒鳴る。その迫力に一瞬はっとする。
「ならいい。よかったら行こう、おれの戦法にも慣れてもらわないと」
「さ、早速いくんですか?」とラファエルが頼りなげに左右を見る。
「無理にとは言わないさ、ついていくって言ったのはお前だろ」とミカエルが、甘い残酷さを含んだ声で言う。ガブリエラが苦笑した。
「ルイーダ、昨日の部屋代は?」瓜生がカウンターを振り返る。
「サービスだよ、オルテガの忘れ形見についていこうってんだ」ルイーダの懐かしげな目に、なんとなく昔のロマンスが見える気がした。
「ありがとな。よければこれ」と、ポンチョの下を探って氷砂糖の大袋を奥カウンターに置き、店を出るミカエルについていった。
経験上、蛇口をひねって水が出る文明レベルでなければ一夜の支払いに充分なる。塩で払うこともあるが、客の一人が食べていたのが新鮮な青魚の塩焼きだったため、海が近いと判断してやめていた。
おそらく、異界からもたらされた万能薬として一粒一粒高価に売られ、プラシーボ効果で何人も救うし、また何人もそれがなくても死ぬ人は死ぬだろう。そのなりゆきも見えているが、全員を救うことは無理だし、近代医療体制を築くことも自分の仕事ではないと彼はわかっていた。
少なくとも、コウモリの糞と王の小便と水銀鉱物を混ぜた丸薬より氷砂糖のほうが、死なない人数は多いだろう。前近代では最高の処方は「何もしないこと」なのだ。
「王様から、武器と防具をもらってるけど」ラファエルが言うが、瓜生は首を振った。
「あるよ」
入り口の預かり所で、荷物を背負った二頭の、体つきはラバ、顔はラクダに似て尾が太り蹄が三つのバロと呼ばれる役畜をラファエルが引き取り、余分になった旅人の服を嬉しげに着た。
ミカエルが、地面から胸まである長方形の木盾を腕にはめる。
「戦士というより魔法使いだねえ」というルイーダの声、そして「あんな若いのに」「とんでもない旅に、よくいくもんだ。勇者の子供ってのもかわいそうだね」などの声を後ろに聞きながら、店を出た。
「じゃあいこうか。まず北の、レーベの街へ。アリアハンから船は出せないようだから、なんとか大陸への道を探す」ミカエルが城を振り返り、そのまま城下町を出る門に向かう。ラファエルが軽く袖を引くのを乱暴に振り払った。ガブリエラがふっと、右に目をやる。
「ご家族?」
瓜生の言葉に小さくうなずく。門の脇に、老人とミカエルによく似た若い母親、そしてその脇にはラファエルの家族と思える僧服の男性と主婦、小さな弟や妹がいた。
みな涙に濡れているが、ミカエルは振り返ろうともしない。ラファエルも必死で目をそらす。
瓜生は軽く会釈し、その後について門を出た。それ以上聞かない、ただ右手の散弾銃の薬室に初弾を装填する。
門を出るとすぐ近くに海があり、その対岸に煙るようにレンガ造りの塔がそびえていた。
「広いな」海と山脈に囲まれた森と平原、ところどころに人家と果樹園、囲われた放牧地がある。
「魔物が暴れだす前は、もっと豊かな畑だったそうですよ」ラファエルが軽く指を振る。
瓜生は適当な盛り土に目を留め、
「先に言っとくよ。おれが来た世界での武器は」と、ポンチョの下から散弾銃を出し、構える。「小さいが重い塊を、矢よりずっと速く撃ち出す飛び道具だ。吹き矢の極端なのと思ってくれ」
「飛び道具?むしろ魔法使いに近いんだな、ちょうど来たみたいだから試してみてくれ」と、ミカエルが空の一点を指差す。そこからは、恐ろしい勢いで巨大な鳥が襲いかかってきた。
「うわあっ!」ラファエルの悲鳴、ガブリエラがミカエルをかばうようにし、ミカエルが剣を抜く。
瓜生は平然と箱形弾倉を替え、鳥用散弾を連射した。轟音が平原に響き、無煙火薬の匂いがつんと漂う。
「うわあっ!」誰の悲鳴だったか。
「終ったよ」瓜生が銃を降ろし、排莢口カバーを兼ねた安全装置をかけ、弾倉を交換する。
三羽の鳥がゆっくりと落ちてくる。巨大に見えたのは錯覚で、せいぜい翼幅1.4m程度だった。ただ眼をつつかれたり幼児をさらわれたりしたら充分脅威だっただろう。
「剣を持っているな?なら左側は任せてくれ。おれの前に出るな。あと、どんな状態でも伏せろと叫んだら伏せてくれ。何か投げたらそっちから離れて目を覆い口をあけて伏せろ。ハンドサインはおいおいやっていこう」
そういって、銃を半ば構えたまま大股に鳥の死体が落ちた藪に歩み寄る。
「剣は使わないのか?」ミカエルの、少しバカにしたような言葉に瓜生は苦笑し、
「こっちのほうが強力だからね。接近戦用のナイフならあるよ」と答えた。
「まだだよっ!」ガブリエラが叫んで杖を振りかざし、軽く踊るようにしながら何か唱えると、火の玉が地面からあふれようとしたスライムを包む。プラスチックが焦げるような匂いが漂う。
「ちっ!」ミカエルが剣を叩きつけ、踏み潰す。
「助かったよ」そうガブリエラに言うと近くの木陰にもう一発。
「一角ウサギか、危なかったな」ミカエルがもう驚かない、という表情で、突進しようとして倒れる獣を見る。
「解体します」とラファエルが大ガラスを回収に向かった。
「食えるのか?」瓜生の言葉に、ガブリエラがうなずく。
「おれの故郷の人間は、多分こんなこと想像できないだろうな。おれだって今までの冒険がなかったら失神してるよ。いやおれの故郷といっても、六十億の中には家畜を自分で解体する人も何十億もいるだろ」瓜生はそうぶつぶつ言いつつ、一角ウサギのところまでいくと、その大型犬並みの両膝に、ポウチの一つにわがねてあるロープを縛りつけ、枝に引っ掛けて逆さ吊りに引き上げた。
「どこまでやるんだ?」瓜生の問いに、
「内臓を出して、皮をはいで肉を食べられるように切り取ってください」とラファエルが返す。
「毒があったりする内臓は?」
「大丈夫ですよ。角は薬になるので傷つけないで、後で任せてください」
うなずいた瓜生は皮手袋からビニール手袋につけかえ、ビニール袋を用意してナイフを抜き、首近くに切りつける。暖かい血が袋にたまっていく。
すぐ一番小さいナイフに持ち替え、峰側の鉤状部の内側の刃……ガットフックを用いて喉から丁寧に、肉を切らぬよう皮だけを切り裂いていく。そのまま股間からY字に切れ目を進め、膝のあたりで、今度は鋭利な刃の側で皮をぐるっと切って、そのまま上から皮だけを服を脱がせるようにむいていく。抵抗があるところではナイフを器用に使いながら。さらに前脚も別に切りつけて、胴体の皮だけをむいた。
それから、胸の下から刃を、さっきと同じように慎重に切りあげ、内臓があふれ出てくるのをビニール袋に受け止める。少し寒い風に、熱い湯気が立つ。
その心臓に、奇妙な輝くものを見かけた。結石ではないようだ。
「心臓に何かあるんだが!普通の獣にこれはない」
「それは魔物である証、価値がある石ですのでとっておいてください」
「わかった」
それからシャベルと山刀のあいのこを抜き、柄の一番後ろを握る。長い柄と刃が手斧のようになり、やすやすと胸骨を切断する。
柄の刃に近いところを握ると出刃包丁の使い勝手、背中から大きな肉を取るのも楽にできる。
頑丈なハサミも強靭な腱やぬるつく血管、細い骨、気管や食道を切ったりと活躍する。
「終ったか?」ミカエルの声。
「ちょっと待って、鉛汚染は悪いからな」と、瓜生は小さいナイフで銃創をえぐり、弾を取り出して別にしまった。皮に塩を振って、肉を包んでそのままバロに載せる。
「さっそく肝臓は食べてしまいましょう」ラファエルが呼んだ、少し離れた岩場にはもう焚火の準備ができている。
削った木串に刺し、塩と近くにあった香り草の汁を塗ってあぶった肝臓は何よりのご馳走だ。
「うまいな」瓜生の言葉にラファエルがうなずき、
「これも神のみ恵みと思いましょう。魔王の力で不自然にゆがめられてはいても」と祈った。
レーベの街までの道を、崩れかけた橋をこえて進む。
会話の多くはガブリエラとラファエル、他二人はほぼ無言。時々敵が出て、ほとんどは瓜生が撃ち殺し、ラファエルと解体して傷みやすい内臓を食う。
男女混合パーティではトイレに少し苦労する。地面に空いている、何か動物の掘った穴を見かけては、近くで木の棒を調達し、荷物にある天幕布で小さな幕を作ってやるしかない。
瓜生がポケットから小さな壜を三つ出した。普通のビタミンドリンクと、氷砂糖と塩。
「一さじずつでも口にしておくといい」
と、まず自分で少し口に垂らした。皆口にしてうげえ、とそれぞれ面白いリアクションをした。氷砂糖と塩は普通に歓迎されたが。
他の三人が平気で流れている水を飲もうとするのを瓜生が必死で止め、荷物にあった鍋で沸かして、ラファエルが見つけたそこらの木の葉を茶代わりに飲んだりもした。
歩いているうちに夜が来る。夜になっても魔物がいるのでまともな野宿はできず、二人が見張る間に二人が木にもたれて一休みする程度だ。そんなときでも瓜生は、AK-103で警戒しつつ、普段使うショットガンを丁寧に分解清掃するのを欠かさない。
次の日が傾く頃、村の炊煙が見える。着いたときには野は赤く染まり始めていた。
レーベの村に着き、まず宿屋にモンスターの肉・皮・血・角、そして例の不思議な輝石を持ち込み、ラファエルが言い値で済まそうとしたのをガブリエラが怒った。
「相場の半分以下じゃないか、なにやってんの!いいからあたしにおまかせ」
それから小一時間のバトルの後、なんとか値段を決める。瓜生はただ、しゃがんで植物や虫を観察していた。
「楽しいか?」とミカエルが聞くのに黙ってうなずく。
それからあちこち店を回る。武器屋から、気に入らないような顔で出た皆の様子を見た瓜生が「どんな武器が使えるんだ?」と聞いた。
「どんな武器でも」とミカエル。
「長い刀剣は戒律上無理なのですが、棍棒の類なら使えます」とラファエル。
「師匠にもらった杖があるからいいわよ」とガブリエラが妖艶に微笑む。
どこかから瓜生が、鋼の剣……コールドスチール社Viking swordと、腰まであり断面が太い正八角形、一端が平刃でもう一端が鉛筆状に尖ったバールを取り出した。
「使えるか?」と渡され、二人が驚いた表情で持ち上げてうなずく。
「ありがたい」と、ミカエルが軽く振る。その重量を知っている瓜生は、彼女の力に驚いていた。
「これはむしろ岩を動かしたりするためでは?でもありがとうございます、こんな高価な品を。これならば折れることはなく、どんな相手にも通用します」ラファエルが両手だが軽く振って見せ、深く頭を下げる。これまたとんでもない重さを、驚かされるほどの力と腕だ。
二人がこれまでの武器を売り、ラファエルが肩から垂らすような革楯を手に入れ、皮でバールの握りを巻かせた。
それから何人かの村人と話し、気になったのがドアを閉ざしている魔法使いの老人の話だった。
「マスターキーはあるけどな」と瓜生がショットガンを構えたが、ラファエルが必死で止めた。
「ナジミの塔に行く」とミカエルが言い、そのまま宿に泊まる。二日の旅だがほぼ徹夜だったので、眠くて仕方がない。
男女で分かれた二つの部屋。
「この村は小さくて、あいにく楽しめるようなところはないようです」
「飲む打つ買うには興味ないんだ」といって、外に出ようとした。
ラファエルは一瞬ためらって呼びとめる。
「わたしたちを、警戒しないでください」
「あいにく、人の心を読めない」
「わたしたちもそうです」
ラファエルは言うと、短剣を出して瓜生に渡し、寝台に横たわった。
「こちらから、生命を委ねます。仲間なのですから」
そこまでされて、瓜生も最低限のアラームで眠るしかなかった。どのみち徹夜は限界だ。
翌朝、我慢できず村のかなり外まで行って、貴重品である石鹸を惜しげなく使って水浴びをする瓜生に他の三人は驚いていた。
食事は海から少し離れるため塩魚と、ここで多く食べられる粒の細かい穀物に、クルミに似た木の実と根菜を入れた汁になる。久々のまともな食事に、四人ともため息をついた。
レーベを出て三日、徹夜が限界になったので岩場に天幕を張って一度休む。それからしばらく進んで岬を回り、深い洞窟に着いた。
瓜生がヘッドランプをつけるまでもなく、当然のように光の呪文が洞窟内を照らし出す。この世界の人間にとっては常識らしい。
「閉じられたところでは音が大きいから」と、瓜生が他の三人にもヘッドホンのような耳あてを配り、自分もつけた。
海の匂いが強く、海水が滴り奇妙な藻類が腐っていやな匂いがする。
新しく見かけるフロッガーはあっさりとOOバックショットで倒れるが、次に出くわした人面蝶がいきなり唱えた呪文に、瓜生は焦った。
「幻覚!」銃を脇にしまい、シャベル山刀と左肩のナイフを二刀に抜く。「味方かもしれないから撃たない、あと襲う者は切る!」
ミカエルとラファエルも何人もいるように見え幻と戦っており、ガブリエラひとりが平然と呪文を連発して敵を葬った。
「助かった……ありがとう」瓜生が恐怖のあまり肩で息をする。「あまりにも致命的な武器だからな。幻覚にやられたらどうしようか」
その瓜生を、いきなりミカエルが殴り飛ばした。壁に激しく叩きつけられ、条件反射で「ありがとうございましたっ!」と叫んでしまう。
「ウリエル」ミカエルが厳しい目で睨む。「同士討ちを恐れるのも臆病だ、たとえ仲間を殺すことになっても、攻撃を止めるな」
瓜生が目を見ひらく。
「いいんだな?本当に死ぬぞ。鎧なんか役に立たないんだ」
「かまわない、臆病な仲間よりはましだ」
「……わかった。まあ、殺さないですむ方法も考えてみる」と、彼は非致死性ゴム弾の弾倉を用意し、血をぬぐいなおして、「あと、暴力はやめてくれ。暴力だけならおれは誰だって殺せるんだ、そして言葉で命令すれば服従するから、棍棒で犬をしつけるみたいに上下関係を確立し支配する必要はない」
「そんなつもりはない」
ミカエルは平然としたものだ。
塔の一階に上がる頃、また人面蝶に襲われた。
瓜生はまずフラッシュライトで目を照らして反応しない相手は実体がないと判断した。
そして弾を入れ替え、非致死性弾を連射すると脆弱な人面蝶はあっさり死んだ。ミカエルも背中に一発くらったが。
塔の地下になぜかあった宿屋でゆっくり休むと、少しずつ塔攻略にも慣れてきた。
まず瓜生がショットガンについているフラッシュライトを利用して、体をドアにさらさぬよう室内を照らし、飛びこんで銃で狙いながら照らして安全を確認する。待ち構えていた敵は突然の光に混乱し、無防備に銃口に身をさらして襲いかかる。
「反応があったらすぐ手榴弾を放り込めば楽なんだが、普通の人がいる可能性もゼロじゃないってんだろ」とぼやく。わざわざ初弾を非致死性弾にするのがわずらわしい。
ラファエルが飛びちらせたバブルスライムの飛沫を目にくらってのたうちまわり、瓜生が全員に、「人里が近づいたら取ればいい」と安全ゴーグルをつけさせたりもした。
二日ほどかけて最上階の、老人から簡単な鍵なら開けられるピッキングセットを受け取るとレーベに引き返し、それで鍵を開けて魔法の玉をもらった。
それからわざわざ探索した地下道から、レーベのそばの茂みやアリアハン城の地下に出たときには悪態をついたものだ。
レーベから東へ、あまり人の住まない地域へ。そしてもし情報通りなら、はるか別の大陸へ。
レーベを拠点に旅支度をしながら、「あいさつはいいのか?」と瓜生が聞く。
「もう出るとき済ませた」と、ミカエル。ラファエルも目を伏せ、合わせてうなずく。
「無理しちゃって、ゆっくり甘えてきたら?」ガブリエラが楽しげにからかうが、ミカエルは聞かない。
「アリーナとクリフト」とふと瓜生がつぶやいたのをガブリエラが聞きとがめてささやく。
「アリーナ姫と神官クリフト?あんたが好きそうな話だけど、この二人は全然違うわよ」
「知ってるのか?」
「そりゃそうよ、知らない人なんていない、おむつの頃から聞き飽きた定番の歌。天空の勇者と七人の導かれし者たち、強く寡黙な王宮戦士ライアン、サントハイムのおてんば姫アリーナ、老いてますます盛んな宮廷魔術師ブライ、忠実な神官クリフト、腹も心も大きな大商人トルネコ、神秘の占い師ミネア、炎の踊り子マーニャ」
「そして世界樹の花で復活したロザリーの、ルビーの涙に触れて心を取り戻した美しき魔王ピサロが加わり裏切り者のエビルプリーストを成敗」
「え、それ聞いたことないわ、それはそれで面白そうじゃない。でも今この世界でむやみにそんな話しちゃまずいわよ。こっそり聞かせて……ほんとに異世界の人間なんだねえ」
「そろそろ寝ておけ、明日は早いぞ!」ミカエルの金属質の声が響いた。
日が昇る前の早朝、大量の薬草を抱え、聖水で身を清めてレーベを発つ。
さそりばちの群れ、バブルスライムの毒に脅えつつ、鋭く重いシャベル山刀で蔓草を切り払いながら進む旅は焦りながらも遅くなりがちだった。
もはや大ありくいの皮を丁寧にはぐこともなく、心臓の輝石を取りすぐ食べられる肝臓を焼き、腿肉と簡単にとれる脂肪だけに塩をして他は打ち捨てる。
あるとき瓜生の右手の銃がフロッガーの舌に絡め取られ、右腕自体もう一匹に引き倒された。が、彼は左手を背中に伸ばすと、AK-103を抜き、一発ずつで終らせた。工夫された固定具で、どちらの手でも抜けるし、抜いた時には安全装置はセミオート、初弾も装填されるようにしてあるのだ。
「右手を封じられても左手も、というわけですか」別の敵をやっと殴り倒したラファエルが呆れた。
「リボルバーやグロックのほうが手軽だろうが、右腕を負傷した状態で頑丈な敵多数に襲われたことがある。小口径は敵が止まらないことがある」瓜生が苦笑して起き上がる。
清らかな水が湧く泉にたどり着くと、そこには何もなかった。
「ここ、だよな」
「せっかくだから、水浴びするわね」とガブリエラが服を脱ぎだしたのを、瓜生が素早く目をそらす。ラファエルもあわてて後ろを向いた。
「ミカエルもいらっしゃいな」という声に、ラファエルがますます慌ててどちらを向いていいかわからなくなる。それで地面をいじくって、やぶを探ったりしていると、いきなり穴に落ちた。
「ここ入れますよ」と這いだしたラファエルを、ガブリエラが投げた石が直撃する。
穴に入ると、そこは他と違う色の積み石の壁で仕切られている部屋だった。
一人の老人が住んでいて、「ここはいざないの洞窟じゃ。じゃが階段は石壁で封じられておる」と告げた。
ミカエルが魔法の玉を見せると、
「では魔法の玉をその窪みに置き、離れるのだ」
老人の言葉に、四人とも引いていった。
「爆弾だったら持ってるんだけど、塔に行ったのが無駄だったかな」瓜生がつぶやいて伏せ、耳を軽く覆って口を開けた。
すさまじい轟音と震動、風圧に体が歪む。
戻ってみると、壁が崩れて人工の洞窟が続いていた。空気のにおいは前の洞窟ほどひどくない。
階段の下に小石を放り、降りて四人揃った、ちょうどそこで影が人の形を取る。
瓜生が素早くショットガンの安全装置を下ろし、呪文を唱え始めた人影に二発たたきこんで叫んだ、「言葉がわかるなら引け!」
応えず影の一人が、手に炎を宿す。その胸と頭にまた二発、スラッグとOOバックがぶちこまれる。
その脇に、火球が一発当たる……革ポンチョとゴーグルでほぼ防がれたが、顔がかなり焼かれる。それを放った敵の首をはねたミカエルが、すぐにホイミで傷を治した。
「ありがと。便利な回復呪文があるもんだな」
ミカエルは死体から、隠し持っていた薬だけを探り出して先を急ぎながら、
「魔物は全て敵だ。人間の姿をしていても容赦なく殺すしかないんだ」
そう半ば諦めたように言った。
「だったらいいんだがね、そう言って信仰が違うだけの同じ人間を二百万人殺した連中だって生まれた世界にいる、いやおれもその一員なんだ」と、瓜生がつぶやく。「責めてるんじゃないんだ。現にこいつらはおれたちを攻撃してきた。くそっ、殺した瞬間砂になって消えるとかならまだいいんだがな」
「見て」と、ガブリエラがその、燃え崩れていく服をめくる。
そこにあったのは、人の肌に似て人ではない、ぬめぬめとした、簡単には形容できない何かだった。
「魔の力に食われたるもの人たることならじ。それは魔に他ならぬ身」ラファエルが脅えながら、暗記したものを復唱する口調で言う。
「ああ……でも変わらないよ。姿形がなんであれ、おれはおれに牙を向けた者は殺すし、〈違う〉というだけで殺したくはない、それだけでいいよな」
ミカエルがうなずき、ラファエルがそっと祈って例の輝石をえぐりとった。
あちこちの道が崩れた穴で隔たれ、探索ははかがいかない。
角や曲がり道のたびに瓜生がポウチの一つの方眼紙に地図を書き綴る。多少の金貨が手に入ることもあり、一つの宝箱からは銀を清めた聖なるナイフも見つかった。それはミカエルが添え差す。
中には奇妙な、何か植物の種の表面に細かな文様を刻んだようなものがある。口にしただけで力や素早さが高まるらしく、多くはミカエルが口にする。
「他のみんなは将来転職するかもしれないからね」とガブリエラが説明したが、瓜生には意味がわからなかった。
時々ミカエルが地図を見てルートを潰し、なんとか下へ向かう階段にたどり着き、階段を下りる前に瓜生が警戒にあたって小休止した。
下は三又に分かれた道。
まず中央を進むが、その先の扉をあけても何もなかった。もう一つも外れ。
そのすごすご引き返す道に、巨大なイモムシが丸まって襲いかかる。
「キャタピラー!」ガブリエラが叫び、呪文を唱え始めるが遅い。
瓜生がフルオートで12ゲージのOOバックとスラッグを交互に叩きこみ、腰から何かを投げる、
「伏せろ!」
叫んで壁に身を寄せる。さっきの魔法の玉のような爆圧とともに三つに千切れたキャタピラーの残骸が飛んで、ラファエルをなぎ倒した。
「大丈夫か?」
「い、一体何を」
「爆風手榴弾。だから、伏せろといったら伏せてもらわないと危ないんだ」
と、弾倉を別の、市販最強スラッグばかり十発入ったものに交換し、レギュレーターをひねった。
次のキャタピラーはスラッグ三連発で確実に止め、細い通路の先の、神秘的に囲まれた岩には不思議な気配が濃厚に広がっていた。
ひたすらに青い風のようなものが乱舞し、光が次々にきらめく。
「行くぞ」瓜生を押しのけたミカエルが、ためらいを見せず飛び込んだ。
三人が次々に続く。その方向感覚が一瞬失われ、わけのわからない感覚入力に惑い……
この設定を考えてから、主人公の武器は延々と悩みました。
瞬時に装填済みを出せる設定なら苦労はありません。
この設定で、角を曲がったらドラゴンかもしれないし、怒り狂った暴徒かもしれません。
「小口径高速弾を信用しない」「信頼性最優先」「拳銃は嫌い」この三つはかなり初期から決めていました。
数メートル以内の至近距離、多人数かもしれないし頑丈かもしれない。
弾数が多く、貫通力とストッピングパワーが両方高くなければならない。
最初に撃つのは散弾、または.50BMG、460ウェザビー、338ラプアマグナムなど大威力の弾が望ましいです。
様々な弾を選べるし、散弾とスラッグを交互に連射できることからフルオートのあるショットガン。信頼性優先でAK。
XM25も考えましたが、信頼性に不安がありました。
メインはそれとして、サイドアーム。
そりゃもう、.50BMGを100発ほしいに決まってます。でもそんなことしたら腰を痛めますし隠し持つのは絶対無理。
小口径高速弾でよければ、MP7、P90、マイクロカービンにC-MAGとありますが、信頼しないと決めてます。
グロック20(10ミリオート)とS&W-M460リボルバーの組み合わせ、グロックならストックとロングマガジンも考えました。
巨大な敵には、背中または杖に偽装した単発軽量の.50ライフルという手もありますし。
ただ、複雑にしてもよくない、と考えてAK-103に。
FN-SCAR-HやガリルACEの7.62mmNATOでもいいかなとは思います。
レシーバー左側に、中折れ上下二連でストックを落としたフルサイズの散弾銃、またはイサカフェザーウェイトを固定すればそちらがメインでもいいかとも思いました。
338ラプアマグナムのセミオートは、どれも7キロ以上と重すぎます。
ペイロードライフルも大きすぎ、またかさばりすぎました。
50ベオウルフは弾数が少ない、9×39は運動エネルギーが少ないです。
PP-2000(9パラ強装弾)も威力があり大口径で弾数が多く、非常にコンパクト。
バトルプルーフされていない、という問題だけです。
理想を言えば、P90の形で50AEかせめて10ミリオートなんてあればよかったんですけどね。
タボール7(7.62ミリNATOの信用できるブルパップ)は2017年末。この作品を書いていた時期よりはるか先の事です。
別の装備体系の候補
1メイン:サイガ12ブルパップカスタム、サブ:PP-2000、背中に単発.50
2メイン:FN-SCAR-H(ストックたたんだまま)+40ミリグレネードの散弾、サブ:M870
3メイン:サイガ12ブルパップカスタム、サブ:左腰グロック20ロングマガジンストックつき+右腰S&W-M460