奇妙な味のドラクエ3   作:ケット

11 / 12
別れ、新たな一歩

 最終的な超音波診断で双子と判明したことも、また話を厄介にした。

 それまでに、瓜生も何度か経験して学んではいたが、それはやはり彼には辛いことだった。

「双子は共に育ててはならない、というのがおかしいんだよ。おまえもそれで親兄弟から離され、小さいころから旅暮らしで、辛かったんだろ?」瓜生がガブリエラに強く言った。

「ああ。でも、どうしようもないよ。あんたの世界で、何をどうすれば半年で実の親子兄妹の結婚を、法的にも世間の目もあたりまえにできる?同じく絶対のタブーなんだよ。できるもんならやってみな」

 瓜生は歯噛みをし、ダーマやルザミの予言者に相談して、はっきりと告げられた。一人は両親のもとで王位を継ぎ、一人はアレフガルドで勇者ロトの血筋をなすようにと……

 そして、そのために一度だけアレフガルドに行くことはできるが、それから間もなく瓜生が故郷に戻されることも。

 ともに予言を確かめたガブリエラが、悲しげに言った。

「あたしも、そのままアレフガルドに残る。その子を育てるよ」

 もう女王もかなり板につき、お腹も大きくなってきたミカエラの表情が、悲しみにゆがむ。

「ま、それも無事に出産できてからのことだ。今は学生を鍛えて、使える産婦人科医を一人でも多く急造する。いや、今は一人でも患者を助ける、それだけだ」

 瓜生はそれだけ言って悲しみを振り捨て、病院に戻った。

 

 瓜生はいつでもバックアップできるよう準備し、任せた弟子は自分より優秀だと自分に言い聞かせている。

 ラファエルは、妻の出産に夫ができる唯一のこと……病院の廊下を歩き回ることしかできていない。タバコはないが、それだけは瓜生は断じて出さなかった。ケシや大麻は迷いに迷い、結局ラファエルに種と、モルヒネの精製法まで含めた説明書を預けて後は知るか、と開き直った。

 瓜生に、むしろ患者たちと治験に育てられた医師の助けで、ミカエラが無事に双子の男児を出産した。

 コインで選ばれた子がそのまま王太子として国民に披露されるなか、もう一人は乳母とアリアハンに飛び、旅立つ支度をしていた。ミカエラが形見にと託した、オルテガのかぶとをゆりかごがわりに。

 兄がいることも知らされぬ赤子は、臣民の歓呼の中裸のままミカエラの手に差し上げられ、五体満足を見せつけて泣いていた。

 乳母はネクロゴンドに隠れ住んでいた、妊娠直後に夫が死んだ女性である。だからこそ別の世界で生涯を過ごすことを受け入れたのだ。他にもジパングやサマンオサなどから強い恩を感じ身寄り少ない数人の男女が、ミカエラの子とともに異界の土となることを志願した。

 医学生の一人もいる。一時仲間だった騎士ウィキネの弟でもある、死刑執行直前にサマンオサの牢から救われた武闘家もおり、ラファエルがわが子にとゾーマから学んだ失伝奥義を急いで伝授した。

 年老いたミカエラの祖父ボルヘスも、「カンダタにももう一度会いたいし」などと言い訳をしてついてきた。老いていても、幼い年月だけでも一人肉親がいるかいないかはかなり違うだろう。

 

「何百年後か知らないがアレフガルドにまた来る可能性はあるようだな……いくつか準備させてもらっていいか?」瓜生の言葉にミカエラがうなずく。

「しばらく待っててくれ」

 と、瓜生はレーベ・サマンオサ・ダーマと飛び回り、いろいろと集め始めた。家畜のひと群れや植物の種、苗。

 バハラタではジパング系の、もうかなり大きくなっていた村によって歓迎される。もうグプタ夫婦も貫禄がつき、立派に商業の町を運営し、ハイダーバーグやネクロゴンド、海峡の町とも広く交易していた。

 一つ一つの町で、たくさんの景色を目に焼きつけ、酒場で歌われる歌をできるだけ覚える。王族と会うときには遊び人の派手な服で貴族たちに笑われながら、さりげなく別れを告げる。

 瓜生とともに旅した王女たちは、楽しそうに短い旅の思い出を笑い、遊び人に扮した瓜生が歌う異界の歌、語られる別世界での勇者ミカエルの冒険、広く知られる天空の勇者の語られぬ第六章、またロマリアで人気の『グイン・サーガ』や『ダイの大冒険』に胸を躍らせていた。

 イシス女王アスェテ二十七世は、あくまで美しかった。彼女自身は、新しい隣国ネグロゴンドの女王ミカエラに比べれば落ちると笑っているが、至高の美は比べられるものではない。

 イシスを外界に結ぶ道から、砂漠に大量の水が流れこんでいる。

 幸いその水は砂漠にろ過され、残留放射能は多くない。また、山脈を断ち割る谷と、その先の港候補も見てみる。

 ほんの二年で、なぎ倒され焼き払われた木々は次々と新しい芽を吹き、草花が焼け野を覆っていた。

「そろそろ最もゆるい基準なら」瓜生が苦慮しつつ喜ぶ。

 サマンオサを世界につなげたクレーターと、その近くの二つの大洋を結ぶ地峡も見て、もう一度放射能を測定する。

 立ち入り可能地域の地図にイパネマ王女が喜ぶ。彼女がサイモンJrとぶつからないようはからってくれて、再会はしなかった。

 

 ロマリアを訪れて植物や家畜を集めた。

「全て終わったようです。どうやら私も、異界に戻ることになるでしょう……ご健勝で。そしてご結婚おめでとうございます」

 と、カテリナ王女に静かに語る。イシスの辺境の砦で、彼女のそばにいた騎士隊長、それが婚約者だったのだ。

「こちら、せめてものご結婚のお祝いです」

 アッサラームからスエズ運河にあたる地域の詳細な測量データと精密な地図。

「次の、またその次の世代になるかもしれません。ですが、今後愚かなことがなければ大幅に人口が増え、これぐらいのことはできるでしょう。バハラタとハイダーバーグ、ネクロゴンドの炭田と鉄山を活用できさえすれば」と告げる。

 カテリナ王女が涙ながらにうなずいた。

「そしてこちらは、重荷になると思いますが。用いるかどうかはお任せします」と、こちらの文字に訳した説明書をつけて渡したのは人口を十倍にもできるトウモロコシの種やジャガイモとサツマイモの種芋、飼料・救荒にも価値あるオーツ麦・ライ麦・ソルガム、強力な空中窒素固定牧草アルファルファ・クローバー・ゲンゲ、そして寒冷地でも家畜の越冬を可能にし近代のきっかけともなった飼料カブ、同様に使えるし砂糖にも葉野菜にもなるテンサイの種。

 さらに近代に至る製鉄技術と、空気の窒素分子を窒素肥料とするハーバー・ボッシュ法の工学、さらに水文学や数学の教科書。そして瓜生の世界の歴史書。

 種も書物も、ミカエラとラファエルにも渡してある。

 互いに余計なことは言わなかったが、別れを告げる目で思いは通じていた。

 

 懐かしいハイダーバーグは、清教徒主義の反動でまた享楽が強まっていた。植物園および農学校もジパングの民たちも健在で、そこからもかなりの種苗を得る。ヤヨイたちがジパングならではの細やかな交情から別れを察し、泣き濡れていた。

 ロマリアとサマンオサの共同事業として再建されている、海峡都市ビスターグル。海峡をふさぎ橋となっていた廃墟の瓦礫は撤去され、新しく美しい浮き橋があり、浚渫された水路を多くの船が行き来している。両岸の、天然の要害を生かした町も、少しずつ広がっている。その事業を任されているハイダーは、前の経験も生かし、人材を招いていた。

 熱心な、経験で磨かれた仕事ぶりは相変わらずだ。町の清浄な上下水道、公共浴場と公衆便所。下水は大量の肥料を要する薬草園につながっている。山の木が伐採され焼畑として使われたあとは、この世界のクルミ・オリーブ・アッサラーム杉、沢沿いにはジパング由来の栃・桐・柳、そして瓜生がもたらしたニセアカシアやユーカリの苗が植えられ、複雑な新緑に輝いている。マメ科緑肥を加えて輪作され、森も切り残され多様な若木や薬草の花園も茂る農地。ジパング式の水田と味噌の匂い。排煙を浄化する水車がついた木炭・コークス炉。

 瓜生はとても暖かな安心感を感じた。万の言葉よりも嬉しい感謝、ハイダーが瓜生の知識と経験から学んだ、持続可能で豊かな暮らしのための知恵が生かされていた。

 ガブリエラも、オルテガやカンダタとともに自分を育ててくれたハイダーに、笑い飛ばしながら胸潰れる思いで別れを惜しんでいた。

 

 そして、一年足らずだが全てを注いだ新ネクロゴンド王国。百年後も森が荒れ土が流され水路が埋まらないよう、できる限りのことはした。

 医学生だけでなく数百人の職員すべてに清潔な生活習慣から教えた病院に、異界の言葉の医学書を大量に残し、医者に患者を一人一人引き継がせ、あらためて自分ではなくプラシーボ対照二重盲険治験を信じるよう誓わせる。

「別れや感謝なんかどうだっていい、おれがいなくなって物資がなくなるから、自分たちで技術を高め、一人でも患者を助け続けろ」と。

 最後に世界樹とそこにとまる自由なラーミアを訪れ、四人と一本と一羽で長いこと歌い続けていた。

 

 ミカエラの祖父ボルヘスが、息子夫婦やアリアハンの、若き日は勇者として守り、老いても教え導いてきた王侯貴族から庶民まで多くの人々、そして王家を継ぐもう一人のひ孫に永遠の別れを告げた。

 天界を通じてアレフガルドへ……そのときには、大量の種や苗はもちろんたくさんの家畜すら連れていた。

 ゼニス王の予言どおりマイラの近く、ルビスの塔の島に行くと、あの塔は崩れ去り、小さいがしっかりした石造りの、無人の町となっていた。

「サービスいいね」ガブリエラが苦笑する。

 そこに、ガブリエラと乳母を中心に、故郷の世界に別れを告げた人々が住み着いた。

 マイラに住むジパング出身の夫婦とも連絡し、ムーンブルクで助けた女も加える。

 瓜生はなんの惜しみもなく、農作物の種や苗を与え、膨大な物資を倉庫に積み、金塊や宝石も渡し、火器弾薬を魔法で保存備蓄する。

 海路で行けばガライの町にも近く、それでいてラダトームからは充分に遠い。

「大灯台の島なら、ロトの民がいるのに」瓜生が言ったが、

「あの島は何か出たらアレフガルドと分断される。ロトの子孫を必要としているのはアレフガルドだからね」とガブリエラが否んだ。

 

 四人がアレフガルドの、復興に働き地震に怯える人々を避け、家畜たちを連れて向かったのは、裂け目と勇者の盾があった洞窟。

 封じられた部分とは別の壁に、剣で穴をうがつと爆薬を入れて発破するのを繰り返し、深いトンネルを強引に作った。

 そこに宝箱とは違う金庫を出し、そこに多数の種や苗を、それぞれ別々の瓶に入れ、瓶に直接、全てを断つメスで細かな文字を刻んでいく。

 その脇に、ガラス板に文字を刻んでおき、金庫のボルトを床に埋めて接着剤を流し込んだ。

 一通り終わると、ミカエラを呼んで家畜たちを指差し、必要な呪文を指示する……ミカエラが唱えた呪文により、家畜が一瞬で鉄の塊になる。その上からミカエラが、何か複雑な文字を掘った石板を張りつけてから割り、破片の一つを瓜生に渡した。

「協力してくれ」と、瓜生が複雑な呪文式を伝え、複雑な文様を壁といわず天井といわず床といわず描くと、文様の中心に吹雪の剣をつきたててまた呪文。ミカエラもガブリエラもラファエルも共に詠唱する。

 部屋全体がみるみるうちに低温になる。水分が露に、そして霜に固まり、さらに大気さえもきしんでいく。

「出るんだ」

 今度はさっき発破した破片の大きいのや、そこらにころがっていた大岩を集めてトンネルを産め、セメントを混ぜて板を張って塗り、ある程度固まったら板を除いていく。何日もかかる作業だ。

 その途中で、これまた複雑な文様を描いたガラス片を産めた。

「これなら探知呪文でも気づかれないはずだ」

 とつぶやく。

 そこに宝箱を運びいれ、金貨と銀貨を流しこんで、少し空間を空けて再開する……ダミーの宝部屋となったわけだ。

 元のところに壁を作ってから、その壁にイオラを浴びせた……もう周囲との違いは見えない。

 それから岩山の洞窟まで飛ぶと、そこの奥にあった宝箱に少し金をいれ、蓋にさっきの石板のかたわれを埋め込んだ。

「あの金庫の脇に置いたガラス片は?」ラファエルが聞いたのに肩をすくめ、

「誰でも、ふさわしい学問水準があれば開けられるようにしたんだ。円周率の二兆番目から二兆四番目、そして自然対数の底の十億番目から十億四番目を入れれば開く。十進級数の定義も書いといたからわかる水準の人にはわかるよ」

「まったくあんたときたら……」ガブリエラがあきれた。

 

 ミカエラとラファエルは、二度と会えぬ子と祖父を抱きしめ、別れを惜しみ続けていた。

 大きな犠牲を払ってくれた人々に、愛する肉親に別れを告げ、四人飛行艇で世界樹に向かう。

 途中、デルコンダルにも寄って、統一のため戦い続けるカンダタ夫婦にもさりげなく別れを告げる。父ボルヘスが来たことを知って、かなり焦っていたカンダタをガブリエラが笑い飛ばした。妻はぜひ舅と甥にも会いたいと言っていたが、覇業が優先、いずれ折を見て……

 鬼ヶ島にも寄り、あらためてロトの民にも別れを告げた。

 そして、十年近い月日をともに過ごした四人が、世界樹の島に上陸した。

 豊かに茂る若木の下、花見のようにシートで酒を酌み交わす。

「あたしたちは、もう上の世界に帰らなくては」

 ミカエラがそういって、言葉にならない。感謝してるとか何とか、到底口にできない。

 泣きながら、ガブリエラに抱きついて泣きむせぶ。

「子孫代々、剣や魔法も伝えて、武人として育てなければ。魔法の武器は残さないほうがいい、頼ってしまうから」

 瓜生があえて実際的に言う。

「剣は、折を見てカンダタに学ばせるとするよ。それよりあたしは、さっさといい男捜すか、何人か遊び人や商人を誘ってまたこの世界中旅するか」

「それもいいかな」ミカエラが、ガブリエラの顔をじっと見て、また涙をぬぐう。

「二人とも、いい王様だよ。だいじょうぶ」

 泣き出すのを、瓜生が涙ぐみつつあえて冷静な声を作り、

「それに、ゾーマが言ってた通り悪いのが出てきたら、まずロトの子孫を絶やそうとするかもしれない。子孫が増えたら分家して、一箇所に固まらないほうがいいな」

「伝染病と同じ、か」ミカエラが呆れた。

 そう話している中、静かに世界樹の葉音が変わる。

「これで……瓜生は故郷へ、あたしたちは上の世界へ、ガブリエラはこのまま」

 ミカエラが、あえて言い、立った。美しい女王の笑顔。

「そうだ、ね。何年こうしてたって、足りるはずがない。あっさり、別れようよ」

 ガブリエラが涙ながらに笑った。

「ミカエラ……真の勇者、上の世界のみんなのことも、よろしく頼む。ラファエル、ミカエラを頼む。最初に信じてくれてありがとう。ガブリエラ……」瓜生が絶句し、泣き咽ぶのをミカエラが強く抱きしめた。

「瓜生、どんなに助けて、ともにいて、どんな……ガブリエラ……」ミカエラが瓜生とガブリエラにキスの雨を降らせる。

「このアホ、そっちでもしっかりやりなよ。諦めちゃだめだよ、だれかいい人に、余計な考えは任せて突っ走りな。あんたを活かして使ってくれる人に、出会って」

 ガブリエラが言葉にならず、涙ながらに四人抱き合い、泣きじゃくる。

「お二人とも……大切な家族、仲間。きっと、また会えますよ、神の許しさえあれば」ラファエルが笑う。

「ああ、そうだね。また、どこかで冒険できるよ。子はあたしがちゃんと育てる」ガブリエラも笑った。

「きっと」瓜生が笑う。

 ミカエラが何か叫んだ。

 光が満ちる。瓜生の目に最後に残った、三人の涙の笑顔……

 

 

 目覚めたのは、川沿いのアパートだった。

 日の光と喧騒。時計を見る……数年ぶりに、正確に日数を数えてはいないが。

 体が動くことを確かめる、それと同じように自分の「力」がすべてあることもわかっている。商品や軍需品を出す能力、免疫、それに賢者の呪文全て。アレフガルドで手に入れた合成魔剣や衣。

 激しい感情に、全身を震わせる。三つの、他にも幾つも名を呼ぶ。これまでの「冒険」とは違う、期間も長かったし、多くの人と深く関わってしまった。

 呼吸で心を落ち着ける。光の泉が助けてくれた。

 入浴し、膨大な垢に笑って、新しい下着と衣類を着る。鏡を見ると、知らない人がいた。十年分の加齢が失せ、ただ頬はこけ日焼けし、過剰なまでに鍛え上げられていた。夏休みが終わったら、どう見られるだろうか。ダイエットしてガテン系バイト、そんなもんだろう。

 一部だけ投函されていた新聞を抜き、まず日付を見る。最後にこのベッドで寝た夜の翌日……夏休みの中盤の、普通の一日の日付だった。確かめるまでもなく、魔力の編み目を読めばわかってはいたが。

 それから、これまた数年ぶりに新聞を読み、テレビを見る。着ていた服とシーツを洗濯機に入れ、つけ置きにセットし漂白剤も入れる。

 レトルトカレーとソーセージを鍋で暖め、炊飯器で保温されていた米飯で食事し、レムオルを唱えてから、大学のトイレをイメージしてルーラで飛んだ。ついてからふと反省する、普通に魔法を使う習慣が間違ってる、こちらでは緊急時以外原則使用禁止だ、と。

 ただ、ちょっと確かめたいことはやっておこうか、と運動場に、透明人間のまま歩く。

 陸上部が百メートル走を走っていた。

 空きレーンに、普通のチノパンとTシャツ、適当なバッシュで立つ。スタンディングスタートで号砲を待ち、走った。

 誰よりも早く、テープをハードルのように軽く飛び越えながら横目で大きなデジタル時計を確認し、隠れた。

 六秒、いくつかは見なかった。ちゃんとしたウェアとシューズ、機材やフォームなら五秒切れるかもしれない。それでも四人では、いちばん身体能力は低かった……ミカエラが星降る腕輪をつけたままピオリムをかけ、天才でフォームもすぐ習得すれば、一秒台とかになりかねない。

 散々食った、不思議な種。魔物たちから吸った力。さらに解錠や死者蘇生も含む魔法、前からだが何でも出せる。

 超人。

 アメコミヒーローでは、誰と同等だろうか?デアデビルやパニッシャーよりは上だろう。X-MENの上位メンバーやファンタスティック4には……付随被害を考えず核兵器も使えば、善戦はできそうだ。バットマンやアイアンマンの政治力はない……

 これまでは考える必要もなかった。無制限の物資があっても、官憲の眼を逃れて紛争地帯を助けるには足りないと、何度か今から思えば逮捕されずCIAに消されていないのも不思議な目にあって、学んではいた。

 だが、これからは……そう、スパイダーマンのジレンマにつきまとわれるだろう。

 それより、これまでの忙しく充実し、栄光と冒険に満ちた日々と、こちらでの平凡な学生としての時間のギャップに、強い恐怖すら感じる。

 そう思いつつ隠れてレムオルを解除し、(ずっと無免許医やってきたんだし)と医学部に転部できないか聞いてみよう、と学生課に向かい、歩いてみて……ふと気がついた。普通の人間の、歩行者交通ルールも半ば忘れている。周囲の人をまねながら、ゆっくり慎重に歩いてみる。変に見られないように。いつでも周囲にマヌーサをかけて消えられるように。

 とりあえず、今できること……交通ルールを思いだして正しく歩き、周囲に溶け込むことに、集中して一歩を踏む。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。