ワールドトリガー駄話   作:さるばと~れ

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特に好きな出水と米屋の駄話です。大規模侵攻後、ロドクル前くらいの時間軸です。
出水と米屋、空閑、木虎、佐鳥がでます。太刀川、三輪、迅、二宮が話題に上がります。


出水と米屋

「ちょっと休憩しようぜ」

「お?もうへばったかよ?天才シューター様が?」

「うるせー。天才の正確無比なトリオンコントロールには疲労がつきまとうんだよ。脳筋め。」

 A級1位部隊の片翼を担う出水公平はボーダー内部でも、指折りのトリオン量と本人も自画自賛(半分皮肉)する複雑なトリオンコントロールで入隊以来、天才シューターの栄誉をほしいままにする隊員である。

「こちとら脳筋上等だっつーの。食堂行くか?」

「行こうか。そんなに腹も減ってねーけど。」

その出水公平と物怖じせず、他画他賛(ほとんど皮肉)しつつも軽く受け答えをするのはこちらもA級部隊に所属する米屋公平である。

 二人はボーダー本部内の仮想訓練室で一対一での模擬戦闘を行っていた。

 本来、部隊内での役割が全く異なるアタッカーとシューターというそれぞれのポジションのため、訓練においても一対一での模擬戦闘を行うことはほとんど無い組合せの二人だが、先日の、近界「アフトクラトル」によるトリオン保有者の捕獲を目的とした大規模侵攻以後、時々だが、出水からの誘いによりこの二人による模擬戦闘が行われていた。

 出水の所属するA級1位太刀川隊の隊長太刀川は、先日の大規模進行においてボーダー本部長による配置で、単独での本部防衛と新型トリオン兵の迎撃に当たっていた。結果として出水は単独で他隊員と連携しながら戦闘を行うことになった。(太刀川隊にはもう一人優秀な戦闘員も所属しているが…)

 これからもそのように個人での戦闘を余儀なくされることを予想して、出水は様々なポジションの隊員と一対一での模擬戦闘を行うことにしたのだった。

 そして隊長である太刀川に続き、私的な交流も深い米屋にも声をかけたのであった。米屋も戦闘自体を楽しむ節があるためこの異種格闘技戦とも言える模擬戦闘も二つ返事で了解し、もう数回の模擬戦闘を行っている。

 

 食堂へと向かう途中

「なんかあれだよなー。やっぱこういうのも新鮮でいいなー。」

 米屋に対しては、いつもなら冗談と皮肉と適当だけで構成されたようなコミュニケーションが多い出水だが、自分からの頼みで模擬戦闘を行っていることもあってか、やけに素直にも思えることを言った。

「だなー。実際、人型とがっつり戦闘してみると色々危機感あるしなー。」

 出水の素直な発言に普段なら茶化しそうな米屋だが、「アフトクラトル」のトリガーホーンと新型トリガーによる戦力を身をもって体験した米屋にも思うところはあるらしい。

「お?米屋先輩と出水、、、師匠?」

「玉狛のブラックトリガー」あるいは「白チビ」こと空閑遊真が食堂より出てきたところに出くわした。

「いやいや。メガネ君の師匠は引き受けたが空閑の師匠じゃあねーよ。」

 出水の言いを静止するように手のひらを出水に向け、

「いや。うちの隊長の師匠ということは俺の師匠とも言える。これからも弟子としてよろしくおねがいします。」

と空閑。

「良かったじゃねーか弟子が増えて。」

 他人事のようににやにやしながら米屋が言う。実際、他人事ではあるのでこの無責任な態度である。

「米屋うるせー。まぁ別に良いけどよ。そのかわり弟子だっつーんなら俺直々の修行には付き合えよ。」

基本的には誰に対しても、ナチュラルかつ親善的で寛容な出水である。

「出水師匠に修行をつけて貰えるなら俺もありがたい。よろしくおねがいします。」

「おう。まぁまた声かけるわ。じゃあな。」

「では失礼します。師匠。」

空閑はその場を去っていく。

空閑の背中に向かって、

「俺との模擬戦も忘れんなよー!」

と米屋。

少し男前な顔でグッと親指を立てて無言の返事をする空閑を見送った。

「良かったな体よく良い練習相手が見つかって。」

「あ。ほんとだな。全然気づかなかった。まぁ、さすが俺?というか、あいつ本部でなにしてんの?」

「なんかまだこっちの物が珍しいみたいで良く散策してるみたいだぜ。まぁこっちの物っつーか、こっちの食い物か?」

「ははは。三輪が見つけたらまた機嫌悪くなるぞ。」

米屋の所属する部隊の隊長三輪は過去の経験から近界民に嫌悪的なため空閑に対しても攻撃的な場面が過去に多かった。

「いやー…どうだろうなー。最近は色々思うところもあるみたいだぜ。まぁそのせいでキレが悪いっつーかなんつーか。」

三輪も空閑と出会い大規模進行を乗り越え葛藤や成長をしている最中であろうが、それはまた別の話だ。私的なことであるため、米屋もあまり深くまで立ち入ることはない。

「ふーん。まぁ色々あるわな。」

その天才肌のため不躾な印象持たれることも多い出水だが、他人の地雷を踏むようなことはしない。決してただのバカではない。あえて言うなら弾のバカ?

「そーそー。色々あんのよ。」

と槍のバカ。

「空閑には是非ブラックトリガー使って貰いたいとこだけど、まぁ無理かな。」

 対近界民を想定すると、ボーダー内でのレギュレーションで作られたトリガー以外でも模擬戦闘を行いたい出水であったが、現在、空閑のブラックトリガーは原則使用禁止の為恐らく訓練においても使用は許可されないであろう。

「だろうな。まぁもしかしたらもあるかもだし、太刀川さんに言ってみたら?」

最強かつ変人という2つの称号を持つ太刀川は、ボーダー内でも少し浮いた存在だが、現役隊員の中では比較的上層部への影響力も強く、なにより対ブラックトリガーの訓練のような面白そうなことには協力的であろう。出水は折りを見て太刀川にも相談してみることにした。

 

食堂にて、

注文を済ましそれぞれの頼んだメニューが乗った机を挟んで座る出水と米屋。

「いやいや。腹減って無いんじゃなかったのかよ。」

「育ち盛り舐めんなってことだよ。」

出水はほんの少し前に「腹は空いてない」といっていたはずだが、出水の前にはハンバーグ+鳥の唐揚げ+エビフライ+サラダ+ごはん(大盛り)が並んでいる。「すぺしゃるハンバーグセット」なるものを頼んでいた。

「腹減っても無いのにそんなに食ったら太るぞ。」

 決して本気で心配しているわけでなく茶化すように言う米屋。

「お前に言われたくねー。」

 と返す出水。米屋の前にはカツカレーとカツ丼という槍バカならぬただのバカにも見えるメニューが並んでいる。

「朝飯食ってなかったんだよ。これくらい食わせろ。」

ボーダーはトリオン能力と年令との関係から10代、20代の若い隊員が多く、食堂のメニューも、若い隊員の胃袋向けに調整されたストロングかつパワフルなメニューが揃っている。

 「いただきます。」

 既に米屋は箸をつけてしまっているが、出水は行儀良く両手を合わせて食事の挨拶をした。

 二人とももくもくと箸を進め、食べている最中の会話はあまり無かった。もうお互いほとんど食べ終えかけたところで、出水から話しかけ始めた。

「お前なら空閑のブラックトリガーとどう戦うよ?勝てる?」

「いやいや。俺達4人纏めて言い様にされちゃってるからな?一対一は無理だよ。時間稼ぎが出来たら合格点じゃね?」

米屋たち三輪隊は当初「外敵」であった空閑に対して攻撃を仕掛けている。その際、三雲修の立場も慮った空閑の控えめな応戦にも関わらず、なにも出来なかったというのが結果である。

「あのブラックトリガーは対応出来ないんだよ。能力が多くて、しかも使うのが白チビだともう何も読めない。風刃だったら対策を練ったら勝てるかもって思うじゃん?」

「そうだな。あれは便利だけど制約もあるしな。まぁ何本かは取れそう。まぁ条件はあるけどな。」

お互いブラックトリガーに対して不遜とも取れることを言う。しかし戦闘に関してはかなりクレバーで、策を弄することも多いこの二人が言うのだ。根拠が無いわけではないのだろう。

「条件ってのは迅さん?」

「そーそー。迅さんがあれを持ってたら勝てない。」

「やっぱやべーよな。予知と風刃。」

元々、風刃の所有者であった迅悠一は未来予知のサイドエフェクトを持っておりサイドエフェクトと風刃を使いこなす迅悠一は、局所的にも大局的にもボーダーにおいて最重要なパーソンであった。

 現在は風刃は迅悠一の手を離れ、大規模侵攻において一度は三輪の手に渡り、そして現在は本部で保管されている。実際に使用した三輪からの進言もあったため、今後は特定の使用者を決めないまま、状況に応じて誰かが使っていくことになるそうだ。

「あのまま秀次が持っててくれたら、風刃攻略も簡単だったんだけどなー。」

 自身の隊長に対して失礼過ぎる米屋である。米屋と三輪は同じ学校に通う同期ということもありその辺りの礼儀に関してはルーズでも構わないのだろう。

「なんで返したんだろな。三輪もやっぱ風刃は荷が重かった?」

 出水には「他人に厳しく、自分に厳しく、近界民にもっと厳しい」三輪が強力な武器を手放す理由が想像しにくいように思えた。

 すると米屋が姿勢を正してキメ顔で。

「いや違う。秀次は俺と同じ隊でいたかっただけじゃん?」

 キメ顔米屋の間の抜けた答えに出水は爆笑してしまう。

「あはははっ!みっ、三輪がっ、寂しくなっちゃって...はははっ!...……ふぅふぅ。。。っぶふっ」

 普段の三輪の仏頂面を想像すると笑いが止まらない出水。

「冗談は置いといてだけど、多分、迅さんに借りを作りたくなかったんじゃん?」

「ふっ...あー...なるほどね…ぶっ!ふっふー。ふー。」

「笑い過ぎじゃん。ラマーズ法みたいになってるぞ。」

 自分で笑わせておいてそんなことをいう米屋。

 出水は「ラマーズ法」もつぼにはまり更に笑っている。

「あなたたち騒がしいわよ。」

怒られたと思ってビクッと声のした方を二人が見ると、横から冷静な叱咤を浴びせたのは木虎藍だった。

「あなたたちは隊員の規範となるべきA級隊員でしょう?公然と騒ぐのは遠慮しなさい。」

年上かつ先輩の出水と米屋に対しても堂々とした木虎である。その後輩の木虎から指導を受けた二人は、先輩ではなかったためか「なんだ木虎か。」という安心した顔をしている。

「そーよそーよ。ボーダーとしての意識を持ちなさい!この金髪不良少年先輩!」

 木虎の後を追うように茶化したのは木虎の後ろに居た佐鳥賢だ。茶化された出水より、木虎の方がうんざりした顔をしているのは気のせいであろう。

「へーへー。気を付けますよー。」

と出水。木虎や佐鳥ら嵐山隊とは対立し戦闘を行ったこともあるが、今となっては二人は全く気にしていない。この適当な返事は対立する以前よりこんな感じである。

 「はぁ。」とため息をついてその場を立ち去ろうとした木虎は、声をかけられてから何故かにやにやしている米屋に気付いた。

「そして、あなたは何故にやにやして私を見ているんですか?」

「別に。木虎と佐鳥は二人きりで仲良く食堂に来る仲なんだなと思って。」

とにやにや米屋。

「そーなんです。木虎と俺はいつもよく二人きりで、……」

「違います。佐鳥先輩が私に付いてきただけです。」

米屋は真っ赤になる木虎を見たくて、からかったつもりだが、からかわれた木虎は意外な反応で、全くの真顔で冷静なツッコミである。

「そうなんだ。……なんかごめんな。佐鳥。」

 米屋は何故か佐鳥に申し訳なくなってしまった。そのまま挨拶もせず、カツカツと踵を鳴らしながらその場を去る木虎。今日の木虎にデレはなかった。そして佐鳥は取り残されてしまった。すこし悲しそうな顔をしている。「ドンマイっ」と出水が佐鳥の肩を叩いた。

「お二人はなんの話で盛り上がってたんですか?」

と、気を取り直して二人の会話に混ざろうとする佐鳥。

「なんだっけ?」

笑い疲れた出水はすぐ思い出せない。

「空閑のはなし、迅さんのはなし、秀次のはなし、で秀次の話で出水が爆笑してたとこ。」

「そーそー米屋と模擬戦やっててさー。ブラックトリガーとどう戦うか話そうとしたら脱線してった。」

「ん。お二人が一対一で模擬戦を?」

やはりこの組み合わせは佐鳥も珍しいと感じた。

「そーそー。やってみた。」

「それはさすがに出水先輩が不利なのでは?」

「まーな。でも2割くらいは勝ったか?」

「前半2割、後半3割くらいじゃん?」

規格外のシューターである出水だが、されどシューターである。基本的にはシューターは一対一の戦闘を行うことは多くない。トリオンコントロールには集中とタイムラグが必要とされるため、敵に詰め寄られと身動きが取り難くなるのがシューターである。出水も例に漏れず基本的には援護や、牽制で戦線の維持を担うことが多い。そこを問題視しての今回の異種格闘技戦である。

「ほぉ。でも結果3割とれるようになるのは流石に天才出水先輩ですね。」

 媚びるような佐鳥の台詞だが、的を得た誉め言葉だ。並みのシューターには難しい結果であろう。更に相手はトップクラスのアタッカー米屋だ。

「ニノさん真似したらもっといけるかと思ってたんだけどな。やっぱりあれは普通じゃない。」

「あ。やっぱりそうなんだ。なんかあの人だけ弾の形違うもんな。」

「あれもそうなんだけど、やっぱり考え方っつーか気持ちの持っていき方?何て言えばいいかわかんねー。つまりシューターの弾の作り方って感覚的だから性格が出るんだよな。で、あの人の性格は真似しようと思って真似できるもんじゃない。」

天才シューター出水だが、格上のシューターである二宮には追い付けない部分も感じていた。と同時に自分が確実に勝っているところもあると考えている。その認識は二宮にもあるため、二宮か出水に教えを乞うた過去もある。

「ニノさんは確かに性格も尖ってますもんねー。だから弾が尖ってるのかー。なるほど!」

「そんな簡単な話じゃねーけどな。だいたいそんな感じだよ。」

佐鳥のざっくりとした解釈でも大体は合ってるようだ。

「さて。そろそろ行くか。」

「だな。腹も膨れたし。」

「お疲れさまっす!」

「あ。もしかして佐鳥暇?」

「暇です!もしかして僕も訓練混ざっていいんですか?」

「そーそー。別に無理しなくていいぜ?」

「やりたいです!米屋先輩もいいですか?」

実は隠れた人気者の佐鳥ならではの人懐っこさが発揮された。

「もちろん良いけど、設定とかどうするかなー。」

「一対一対一で良いんじゃね?」

「それ僕が的になるやつです!スナイパーにも『公平』にお願いします!」

キメ顔で上手いこと言ったつもりの佐鳥だが、

「うるせー!」と出水に叩かれた。出水にしたら人生で100回は聞かされたジョークだった。

「じゃあ2対1で1人のやつは逃げ切っても勝ちとか?」

「で、佐鳥は2の方に入れるって感じか?」

「まぁそれはどっちでもいいんじゃん?」

「佐鳥は逃げ足も一流ですよ!任して下さい!」

次の模擬戦闘をどう設定するか、三人は騒がしく相談しながら訓練室に向かった。

 




この話に特に続きは考えていません。
次話があるとすれば、太刀川の駄話です。
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