空閑、緑川、諏訪、笹森が出てきます。
空閑遊真、食べる食べる。
「ほほう。玄界の食べ物はなかなかに多彩ですな。」
「なにそれ?なんかキメ台詞?」
「いや。なんとなく言ってみただけだ。」
ここはボーダー本部内にある隊員用の食堂。熟練の剣士のようなことを言ったのは空閑遊真だ。個人ランク戦は本部でしか行えないため、空閑遊真は玉狛支部所属であるがよく本部に来る。
共に食堂の机を囲む、草壁隊所属緑川、諏訪隊隊長諏訪、諏訪隊所属笹森らと一緒に今日もランク戦に励んでいた。丁度昼時になったため4人で昼御飯ということになった。
「遊真先輩は餅って食べたことあるの?」
「いや。ないな。この上の四角いのが「モチ」だろ?うどんは食べたことあるぞ。もちもちとしてうまいやつだ。」
まだこの世界に来て長くない空閑は、まだ食べたことが無いものも多い。好奇心旺盛、食欲旺盛な空閑もこの世界の食べ物の多さに日々圧倒されているようだ。本日注文したのは「ちからうどん」。
「つよそうなうどんだな。」「太刀川さんがよく食べてるよね?」「だな。そもそも太刀川が無理矢理作らせたんだったと思うぞ。」「ほほう。もしやあの強さの秘密がここに?」「あははは。かも知れないね!」というやりとりがあった末に、空閑の今日の昼食は「ちからうどん」になった。空閑の左側に座る緑川はカツカレー、向かいの諏訪はサイコロステーキ定食、斜向かいの笹森はラーメンとチャーハンのセットを頼んでいる。
「諏訪さん。今日はご馳走になって申し訳ない。」
「さすが諏訪さん!ありがとう!」
「隊長、いつもありがとうございます。」
空閑の丁寧なお礼に続いて緑川、笹森がお礼を告げる。
「A級だから次は緑川の奢りな。」
「俺、一番の年下なんだけどっ!?」
「ふむ。俺もその頃にはA級になっているかも?」
「調子にのんじゃねーよ新米。んなことより冷める前に食えよ。オメーら。」
諏訪から手を付け始め、それぞれのメニューを食べだした。
少ししたら空閑の箸が全く動いていないことに緑川が気づいた。
「遊真先輩?大丈夫?」
「もむもむもむ。もめはむもいまもまもんも。もむもむもむ。」
「口いっぱいじゃねーか!?餅一口で食ったのか!?」
「んむ、まみまんんももま……」
「遊真先輩、喋らなくて良いからゆっくり噛んでね!」
日本人からしたら餅をしらない人が口一杯に餅を頬張る姿ほど恐ろしいものはない。暫くして、空閑はなんとか餅を咀嚼し終えて「ふぅ」と一息ついた。
「空閑君、餅は一口ずつ噛みちぎって食べるんだよ。」
日本食に関して先輩でる笹森から日本食ビギナーへの指導である。
「みょーん、と伸びて噛みきれないからずるずると食べていったらみるみる口のなかを占拠されてしまいました。この力強さはやはり太刀川さんにも通じるものがありますな。」
空閑は「うんうん」と頷きながら冗談なのか本気なのかよく分からないことを言う。
「遊真先輩は知らないと思うけど、餅が喉に詰まると死ぬからね。」
日本人にとっては冗談でも何でもない分かりきったことだが、初めて食べる空閑はそんなこと知るよしもないだろう。
「む。こんな小さなものが。うーん、それは先に聞いておきたかったぞ。緑川。」
まったくだ。
「で、味はどうだったよ?」
味の感想も聞きたくなった諏訪。
「正直、噛むので精一杯でよく分からなかったな。ほのかに甘味がありました。」
「そりゃもったいねーな。まぁまた今度ゆっくり食えよ。緑川の奢りで。」
「とかいいつつ、奢ってくれるとこが諏訪さんの男前なとこだよね!」
「俺の男前ポイントはそんなとこじゃねー!」
調子にのる中学生と振り回される21才の図である。
話をしながらもランク戦の後だ、それぞれになかなかペースで食べ進めている。
「カツ旨い。カレー旨い。カツカレーは最強。」
「高い肉も良いけど、食堂のステーキってのもなかなか悪くないよな。」
「うどんはやっぱりうまいな。」
「あぁ今日のチャーハンはまともだ。美味しい……良かった……」
それぞれに舌鼓を打つなか、笹森だけが不穏なことを言う。
「え!?なに!?それ加古が作ってんのか!?」
「なんかめちゃ旨いときとめちゃめちゃ変な味の時があるって噂ですよ……」
加古の趣味チャーハンの独創性は知る人ぞ知るボーダーの都市伝説だ。実際のところ、A級部隊の隊長が食堂で調理の仕事をしているわけは無いので、加古の趣味を揶揄した噂でしか無いのだろうが……それほど加古の生み出すチャーハンは話題性があるということか。
「ふむ。加古さんのチャーハンは旨いのか。ぜひともいただきたい。」
「空閑。悪いこと言わないからやめとけ……なんで日佐人はその話聞いてふつうに頼んでだよ……」
諏訪が加古と知り合ってからもう長い。様々な筋から「加古チャーハン」の傍若無人っぷりを聞いている諏訪からすれば自分の隊員がそれに果敢にも挑むのは訳が分からない。
「もしかしたら、めちゃめちゃ旨いかも知れないじゃないですか?」
「その無駄なギャンブラー性はどこの誰から仕込まれたんだよ……」
「諏訪さんからじゃない?」
「諏訪さんだと思うぞ。」
「隊長です。」
「うるせー!誰がギャンブラーだ!ほっとけ!」
違うと言わずほっとけというあたり、諏訪にも少し自覚があるのだろう。
「笹森先輩は堤先輩に話を聞いてもそんな暴挙にでるんだな。」
と緑川。実は諏訪隊のもう一人の戦闘員の堤は、「加古チャーハン」の被害者代表である。その堤から話は聞いている筈なのに笹森は「加古チャーハン」のリスクに挑んだということになる。
笹森は「へへへ。」と、少し照れてるようだが決して誉められた訳ではない。それとも自身の隊長のギャンブル精神を受け継いだことが誇らしいのだろうか。
「オメーらさっさと食えよ。ランク戦に戻るぞ。」
笹森の暴挙から少し話が盛り上がり過ぎたようだ。諏訪が促すと、それぞれ食事を済ませわいわいと喋りながら4人は仮想訓練室に戻って行った。
次回はこの話の続きです。
何となく分けてみました。
近いうちに上げます。
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