それでは短編だらけの前章ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
どこかの世界 【M78時空】
どこかの世界―――
―――そして、どこかの場所……。
美しい湖とは不釣り合いなほどにボロボロに傷ついている少年が、その湖のほとりに横たわっていた。
その少年に歩み寄る一人の老人がいた。
「こんなところに、子供……? 異星人――というわけでもないようだな…。いったい……!? なんだ、この傷は…!?」
その少年は……ひどい傷を負っていた。
だが、まだ
(これ程の傷にもかかわらず……いまだに生きている。この少年は……いったい?)
その時、少年の手から一本のスティックのようなものが落ちた。
「これは……?」
そのスティックからかすかに『光』の力を感じた老人は、一つの回答に至る。
「そうか…この子も、私と同じ……」
老人はそう呟き、少年の手当てを始めた。
まだ知らぬ異世界から来たらしい〝同胞〟であるらしいこの少年を助けるために……。
***
見覚えのない場所で、少年は目を覚ました。
(ここは……?)
辺りを見回してみるが、横になったままでは周りをよく見ることができない為、どうにか体を起こすと背後から声をかけられた……。
「よう、目が覚めたかい坊や」
「……貴方はいったい……?」
声をかけてきたのは初老の男性だった。
その老人は、何やら鍋で何かを煮込んでいたらしく仄かに良い香りが漂っている。
この人は一体誰なのだろうか、という疑問が再び浮かんだ時腕の傷が痛み…そちらに注意が向く。
「いっつ……ん?」
先ほどまで気づいていなかったが、腕を見ると傷の手当てが施されており包帯が巻いてあった。
この人が手当てを……してくれたのだろうか?
「あの……えっと……これは貴方が?」
「ああ、まあそうだ。だが、それにしても驚いたよ。こんなところで子供が倒れているなんて思いもしなかったからね……。だが、無事で何よりだ」
老人は少年に微笑みながらそういった。
少年はその笑みを見て、この人が悪い人間ではないことを……なんとなくではあるが感じ取った。それと同時にまだ礼も告げていないことに気づき、手当ての礼を老人に告げる。
「そういえば、まだお礼を言っていませんね……。ありがとうございました、おかげで助かりました。あなたに出会えなければ、きっと今頃は……」
「そう気にすることはないさ。だが、君はいったいどうしてこんなところに?」
「それは……その…………」
言いづらそうにしている少年に老人はでは、質問を変えよう と言った。
「君は、〝何か〟と戦った……あるいは、何かに巻き込まれた……違うかね?」
少年は、びくっ!? と、なんでそれが分かったのか? と言いたげな反応を見せる。それを見て、「そうか……」と何かを納得した風な老人は……少年に、先ほど助けた際に彼の持っていたスティックを手渡す。
「これは、君の物で間違いないかな?」
「は、はい……」
「私は、これからかすかに光の力を感じた。だから、君が恐らく我々の同胞である可能性があると知った。それでおそらく君がこんなところに傷だらけで倒れている理由は、大体先ほど私の言ったようなものではないかと想像したわけだ……」
同胞? 光の力を感じた? 我々……? まさか――
「じゃ、じゃあ……おじいさんも、ひょっとして――ウルトラマン?」
「ああ、だが、君とは少々違うかもしれないな……。私は、君のように同化しているわけではない。この姿は、かつて私の訪れた星にいた勇気ある青年の姿を借りたものだ」
「それじゃあ……まさかこの世界は――」
「おや? 君はどうやら、我々を【知っている】世界から来たのかな?」
その通り。と老人は、少年にこの世界のことを語る。
「この世界は、私の故郷であるM78星雲『光の国』のある世界……。我々『宇宙警備隊』が守っている世界で、通称・M78時空と呼ばれている」
「じゃあここは、ウルトラ兄弟たちの守って来た世界!? じゃあ……貴方は、まさか!?」
「私の名は、モロボシ・ダン、見ての通りの風来坊ってところだ。だがきっと君は、私のもう一つの名の方も知っているかもしれないがね?」
「じゃあ……まさか…………貴方はあの――」
――ウルトラセブン!?
「ああ、その通り。私はウルトラセブンだ」
そういいながら、老人――モロボシ・ダンは懐から赤いサングラスを取り出す。それは、少年もよく知る物で……セブンの変身するためのアイテム・ウルトラアイ。
ウルトラセブン――M78星雲出身の宇宙警備隊員。元は、恒点観測員340号として地球へやって来た。しかしそこで出会った地球人の青年・薩摩次郎の心の美しさに感動し、地球に残り平和の為に戦うことを決めた。
地球を狙う宇宙人から幾度となく地球を守り続けた彼は、彼自身のエネルギーを犠牲にしてでも戦い続け……。ゴース星人の送り込んだ怪獣・パンドンとの戦いで…ついに限界を迎える。しかし、ゴース星人はそれでも引かずに倒されたパンドンを改造し、再び地球に送り込んだ。残っていた力を、限界などとうに迎えていたその体に鞭を打ち、彼を止めようとする恋人・アンヌの制止を振り切り、最後の戦いへと望んだ。
そうして、彼はかろうじて勝利をつかみとり……傷を癒す為、一旦地球から離れることになる……。
しかし、さらにその後もセブンは、ジャックに『ウルトラブレスレット』を授けたり、エースの支援に地球を訪れたり、タロウに襲い掛かったテンペラ―星人の脅威に兄弟総動員でやって来たこともあった。
しかしその後……、タロウに代わり再び地球の支援に向かうが、地球を狙うマグマ星人に深手を負わされ、負傷してしまい戦線を一時離脱することになる。
そこからは、地球へやって来た新たなる戦士・ウルトラマンレオを教え育てていくことになる。レオは、故郷である獅子座L77星をマグマ星人に滅ぼされ、地球へとやって来た若き戦士だった。そのため、彼は地球を第二の故郷としても文字通り死に物狂いで守り抜いて行ったが――
――円盤生物『シルバーブルーメ』の襲来により、それまでセブンとレオが必死に守り続けていった平和が安全に崩されてしまう……。
シルバーブルーメはMACの戦力を全て飲み込み、レオを除く隊員たちを殺した……。
レオは、それでも最後まで血反吐を吐くような決意で地球を守り抜いた。そうして、レオが死に物狂いで地球を守り抜いたのち……のちに80が戦うことになるマイナスエネルギーの化身達が現れるまでは、しばしの平和が続いた。
その間、セブンは形容できないほどの傷を負いながらもウルトラの母による蘇生措置でどうにか生還。
その後、長老であるウルトラマンキングと自身の弟子であるレオとその弟アストラに罪を犯してしまった息子であるゼロを託し、彼を鍛えてもらい、それまでしばらくの間は地球と宇宙の防衛にあたった。
その後は、いったん地球に留まる時期もあったが、ゾフィ―や太郎の支援により光の国へ帰還。怪獣墓場にて復活したべリアルを倒すために再び戦いに参加。そこで仲たがいしていたゼロと和解。その後は息子の動向を気にしつつも……宇宙を防衛の為日夜パトロールを続けている。
そこで、今回もパトロール中に少年と出会った――ということになる。
「本当に、貴女があの…ウルトラセブン………何ですか?」
「そうとも、私はセブンだ。最も、今の姿ならダン、の方が好ましいかもしれないがね? さて、次は私に君の名を教えてくれないだろうか?」
「あ、ハイ。そういえばまだ、名前も何も言っていませんでした……。僕は、由宇と言います。秋宙由宇です」
「ユウ……うん、良い名だ。それではユウ…君に何があったのかを聞かせてくれないだろうか?」
「……はい。僕は――」
由宇は、これまでにあったことを話した。
コスモスとの出会い、魔法やフェイトとの出会い。そして、その騒動の中心であった『ジュエルシード』についても……。
最後の戦いのとき、無茶に無茶を重ねた結果、ここに流れ着いたことまでをセブンに語り、ここが別次元の世界なら、元の世界に帰る術を見つけたいといった。
「――これが、僕の今までの全てです」
「そうか……私たちの方でも妙な時空の歪みが生じていた為、隊員を向かわせようとしていたのだが…あれが突然消えてしまったのは、君とコスモスがあれを止めたからだったのか」
「……セブン、いやダンさん。僕は帰らなくてはいけません。父さんと、そしてフェイトと――約束したんです。それに、友達になったばかりだったユーノやクロノとももっと話したい。まだやりたいことがたくさんあるんです!」
そういう由宇に対し、ダンはこう返した。
「そう焦るな、君はまだ回復しきれていない。それに、君の世界に戻ることは必ずできる。それに、きっとコスモスも時空を超える力を少なからず持っているはずだ。
私たちウルトラマンは、時空を超えることができるが……それはもちろん万全の状態であるときの話で、そうホイホイとはいかない。それこそ、ゾフィ―兄さんくらいの力やそれに見合う程の鍛錬を積めば、話は別だが」
「……」
まぁ、確かに。
ヤプールの次元に簡単に入れるゾフィ―並の力があれば、元の世界に帰るなんて楽勝だろう。しかし、今ここにゾフィ―がいるわけではない。
よって、今できることと言えば回復に努めるくらいしかない。
でもやはり、気持ちは焦る。
そんな由宇の様子を感じ取ったのか、ダンは先程作っていた料理を由宇に渡す。
「そう焦ることはない、これでも食べてとりあえずは休むことだ。君達の世界のことわざにもあったな『腹が減っては戦はできぬ』と」
「確かに……」
そういわれた後、なんだか納得してしまい、ダンの作ったスープのようなものを由宇は一気に平らげてしまった。まぁ、実際のところ、相当に空腹だったのだから無理もないが。
「っぷはぁ~! おいしかったぁ~!」
「そうか、そいつはよかった。これでも結構自信作でね」
「本当に何から何まで、ありがとうございました。それで、その……時空を超える力って一体どんな感じの物何ですか……?」
「そうだな……。簡単にイメージするとすれば……時空と時空の間に穴――トンネルと言った方がいいかな? まぁそんな感じのゲートを開け、そこに飛び込んでいく……という感じだろうか…」
「ええと……、つまり世界と世界を繋いでそこを渡る、みたいな感じ……ということですか?」
「ああ、大体そんなイメージであっている」
「じゃあ……僕の世界と、この世界を繋げたら……」
「そうだ、きっと帰れる」
「そっか……!」
セブンは笑みを浮かべる由宇を見て、笑顔になる。この少年は、きっと成し遂げる。そのための意志を、ちゃんと持っている。
また一人、この宇宙(そら)のもとに……一人の若き戦士がいることを知った。それはとても嬉しいことだ。
光の国に住む、ウルトラ戦士がこれまで……幾千幾万もの星を渡り、幾千幾万もの時を経て、紡いできた……たくさんの『絆』。それらを、また――繋いでいってくれそうな戦士たちと出会えた。
この世界の未来は――光に満ちているものに近づくだろう……。
そんな未来を担う少年と、別世界の同胞の帰還の為に今、自分ができることは……――
「――ユウ、君たちの帰還を早めるために私の光を託そう」
「えっ?」
由宇は、ダンの申し出に驚いた。焦るなと先ほど言われたばかりだというのに……。
「君の〝帰るべき場所〟は、君にとって早く帰りたいところで……。そこにはきっと、君の帰りを待っている人たちがいるのが分かった。先ほどの君の顔を見ていれば、焦るなと行った手前、掌返しのようになってしまうし……ユウ、君はまだかなり幼い。まだまだこれからの未来を担う子供に、無茶をさせるのは好ましくないが……それでも、君が仲間たちを守り抜いたのにその人たちのもとに戻れない姿を見るのは――もっと忍びない。
だから、私の光を託した程度では精々世界を超えるにしても、君の世界への道のりの半分にも満たないだろうが……私は君に、手を貸したい」
「ダンさん……いや、ウルトラセブン…………」
由宇は、そのセブンのその優しさに感動した。だから、今は……その気持ちに対して、何一つとしてお返し出来もしないが……それでも精一杯の感謝を伝えた。
「ありがとうございます…………!!」
「気にするな。その感謝は、君が、君の世界で精一杯幸せになってから……またいつの日か、私たちの世界に来て…幸せだということを教えてくれ。その時には、ぜひ私の兄弟たちや私の息子・ゼロにも会ってやってくれ」
セブン――ダンは、そう言い由宇に微笑みかけた。
「はい……!」
「ならば……行けユウ!!そして目覚めよ――ウルトラマンコスモス!!」
セブンからの光が、由宇の手にあるコスモプラックに吸い込まれていく…………!
そして、その場にもう一人。眠っていた、戦士が……再び目を覚ます。
――――ユウ……。
「コスモス……!!」
「行け、若き戦士……いや、一つの事件を解決した君たちはもう立派な勇士……勇者だ。勇敢な勇者たちよ、君たちにどうか幸運が訪れるように……」
「はい!ウルトラセブン、いずれまた……この宇宙のどこかで」
会いましょう。 と、そう告げた由宇は声高に叫ぶ。復活の雄叫び――再生の咆哮だ。
「コスモース!」
そしてその日――
一筋の光が宇宙へと飛んでいく……。
自らの世界への道を辿り、元の世界に帰り着くために…………。
おまけ:セブンの回想『愛というものについて』
ダンは、湖のほとりで一人昔のことを思い出していた。
彼には、突き放すこともなく受け入れ、そして救った女性(ひと)がいる。
私には…………それはできなかった。私は、彼女を……『アンヌ』を突き放した。
あの時、私は――――
これは、一人の地球人女性に恋をした……宇宙の戦士の過去の出来事。
――――あの日、最後の戦いに向かおうとした…………あの日。
『アンヌ……僕は、僕はね、人間じゃないんだよ。M78星雲から来た……ウルトラセブンなんだ!』
自らの正体を、彼女に告白した。
その告白にアンヌは驚いたようだった。「ビックリしただろう?」と問いかけるダンに、アンヌはすぐにそれを否定した。
『人間だろうと宇宙人だろうと、ダンはダンに変わりないじゃないの!!たとえ、ウルトラセブンだろうと!!』
その言葉にあの頃のダン――セブンは驚いた。彼女はあっさりと、たった一人の存在として、自分を見てくれた。それがどれだけ凄いことなのか、今になっても測り切れてなどいない。相手を受け入れる、無償の愛。これを行うことがどれだけ難しいことか、あれから幾年月を重ねても簡単になど…出来はしないのだ……。
だから、あの時――アンヌが自分に対して……「何者であろうと関係ない」と言ってくれたことが、当時のダンにとってどれだけ衝撃的だったか。
だから、ダンはアンヌの愛にこう答えた……。
「ありがとうアンヌ」 と……精一杯の感謝と愛を込めて。
『今話した通り、僕はM78星雲に帰らなくてはならないんだ……!西の空に……明けの明星が輝く頃――一筋の光が、宇宙へと飛んでいく――
――それが僕なんだよ!!』
そして――決戦の場へと向かうためにウルトラアイを取り出したダンを、アンヌが必死に止める。
『行かないでダン!』
しかし、あの時……当時彼の所属していたウルトラ警備隊のアマギ隊員たちが、必死に改造パンドンと戦っていた。
仲間のピンチを救う為に、ダンはアンヌの制止を振り払い――変身した。
そのあとは、血みどろの戦い。
しかし、かろうじてその戦いを征したのは……ダン――セブンだった。
そして、セブンは直ぐに体を癒す為に光の国へと飛び立った。
あの後、何度か地球を訪れたが……短い間ばかりでアンヌと出会えたことはなかった――
――いや、そういえば……一度だけ再会、いや違うか…………あれは、出迎えてくれたのだった。
ジンと別れ、元の世界へと帰還したあの時……ちょうど、この湖と似たような場所で……。彼女は、私を出迎えてくれた。
何も言わずに、ただ、笑顔で……。
あれから……どれほどの時間がたっただろうか? 息子・ゼロもすでに一人前になったほどの時間が経過した。
――久しぶりに…………地球へ行ってみようか。
湖のほとりで、一人そんなことを考えたダンの表情は――いったいどんな顔をしていたのか……。
それが満足なのか、悲しみなのか、それとも――もっと別の物か……。
それは、ダン以外誰も知らない……。
宇宙の果てで生まれた者同士…。そんな二人の恋の物語……。
セブンとの出会いを書いてみました。
なんとなく愛とかそういうものを絡めたりするなら、セブンかなぁ……と思って書いてみました。